落合蓮音選手が鈴鹿の地方カート選手権でタイトル確定

レポート カート

2021年12月8日

地方カート選手権・鈴鹿選手権シリーズの今季最終戦が開催され、鈴木悠太選手(RTワールド)が初優勝。チャンピオン争いは意外なレース展開の末、落合蓮音選手(Ash with Hojust)の戴冠が確定した。

2021年JAF地方カート選手権 FS-125/X30部門 第5戦
2021 鈴鹿選手権シリーズ第7戦 KARTRACE IN SUZUKA

開催日:2021年11月28日
開催地:鈴鹿サーキット国際南コース(三重県鈴鹿市)
主催:SMSC

 地方カート選手権・鈴鹿選手権シリーズは、鈴鹿南コースのローカルレースシリーズである鈴鹿選手権シリーズ カートレース IN SUZUKAのFS-125/X30部門にかけられた全5戦の選手権。地方選手権と鈴鹿選手権のそれぞれのポイントスシステムによってシリーズランキングが集計される。今回は、そのシリーズ最終戦だ。

 ここまでの4戦では落合選手が2勝、卜部和久選手(Team EMATY)と宮島昊雅選手(ATEAM Buzz Motorsports)が1勝を挙げ、落合選手と卜部選手がチャンピオン獲得の権利を持ってこの最終戦に臨むこととなった。

 大会当日の空は快晴。冬を迎えて空気はキンと冷えているが、日差しは穏やかで風もなく、上々のレース日和だ。エントリーはコースの最大出走台数にあと1台と迫る33台。最年少12歳、最年長52歳のドライバーたちが各地からこの一戦に集まってきた。

 タイムトライアルで48秒910のトップタイムをマークして新コースレコードを樹立したのは卜部選手。2~4番手に鈴木悠太選手、鈴木浬選手(UNION RT / K project)、北野雄丈選手(EHRE motorsport)と続き、落合選手は5番手につけた。

 ここからレースは、思いもよらない展開の連続を迎えることとなる。

 10周の予選ヒートでは、4周目に先頭に立った鈴木悠太選手が決勝のポールを獲得。2番手に五十嵐文太郎選手(チーム エッフェガーラ)、3番手に北野選手と続き、卜部選手と落合選手は激しいバトルの中でポジションを落としたところから挽回して、卜部選手が5番手、落合選手が6番手でゴールした。

 ここでひとつめの“まさか”が起こる。落合選手がローリングスタート時の隊列復帰で違反があったと判定されて失格になり、決勝を最後尾33番手のグリッドからスタートすることとなったのだ。ポイントレースで落合選手がやや優位に立っていたタイトル争いの流れは、これで卜部選手に移ったかに思えたのだが……。

 16周の決勝が始まると、卜部選手は1周目から順位を上げ、鈴木悠太選手と五十嵐選手の真後ろにつけて3台で先頭集団を形成する。落合選手は前走車を次々とパスしていくが、レースの折り返し点近くでの順位は12~13番手。卜部選手が3位になった場合の有効ポイントを上回れる5位まで上がることは、ほぼ絶望的だった。

 だが、ここでふたつめの“まさか”が起きた。8周目の最終コーナー入り口で路面状態の急変があったか、4番手以降のマシンが次々とコントロールを失い、10台近くのマシンが相次いでコースを飛び出したのだ。9周目に入るメインストレートを一列に連なったまま通過する鈴木悠太選手、五十嵐選手、卜部選手。そこから大きく間隔を空けてストレートに姿を現したのは、落合選手だ!

 先頭集団はこの辺りからバラけ始め、やがてそれぞれが単独走行となった。鈴木悠太選手の独走開始だ。残り3周、五十嵐選手が突然マシンを止め、卜部選手が2番手に上がった。落合選手が3位なら、卜部選手は鈴木悠太選手を抜いて優勝すればチャンピオンになれる。しかしこの時、トップ鈴木悠太選手の姿は2秒近くも彼方。2周半で追いつくことは不可能だった。

 そして迎えたチェッカーの瞬間、鈴木悠太選手は初勝利の歓喜に両手を高々と挙げた。卜部選手は2位で静かにゴール。そこから8秒以上遅れて、落合選手は3位でフィニッシュラインを通過すると、右手を突き上げ喜びを爆発させた。落合選手85点、卜部選手82点。誰も想像できなかったドラマで、2021シリーズのチャンピオン争いは幕を閉じた。

初優勝の鈴木悠太選手は「ポールスタートの決勝を迎えた時は、レースを楽しもうと思いながら緊張もあって、複雑な気持ちでした。途中まで五十嵐選手が真後ろにいて、めちゃめちゃ辛かったです。そこから後ろとの差が開いて、だいぶ気楽になりました。去年はずっと悔しいレースが続いたし、やっと勝てて……。ゴールの瞬間はすごくうれしかったです。今回の結果は、ここまで力になってくれた親や、速いクルマをつくってくれたチームのおかげなので、みんなに感謝したいです」と安堵の表情を見せた。
FS-125/X30部門の表彰式。左から2位の卜部和久選手、1位の鈴木悠太選手、3位の落合蓮音選手が登壇。
3位フィニッシュでチャンピオンを確定させた落合選手。「最後尾のグリッドになってチャンピオンは99%無理だろうなと思ったけれど、どこまでいけるかやってみよう、自分を見てくれている人たちを楽しませるレースをしようと思ってスタートしました。自分が4番手に上がったと分かった時は気分が爆上がりしたけれど、すごく緊張もしました。ゴールした瞬間は、最後尾からここまで上がって来られたうれしさと、チャンピオンになれたうれしさが込み上げてきました」と笑顔でコメントした。

 この大会では他に、鈴鹿選手権として5クラスのレースが行われた。

 17台が出走したJunior MAXクラスでは、トップ走行中の西田未来選手(HRS JAPAN)がスピンを喫して大きく後退し、中井陽斗選手(TEAM EMATY)が初優勝。6番グリッドから順位を上げた城優輝選手(ERS with SACCESS)が2位、佐藤佑月樹選手(RT WORLD)が3位となった。

Junior MAX優勝は中井陽斗選手。
Junior MAXの表彰式。左から2位の城優輝選手、1位の中井陽斗選手、3位の佐藤佑月樹選手が登壇。

 6段変速エンジンのワンメイクレースROK-SHIFTERクラスでは、全日本OK部門で活躍中の選手も多く参戦する中、東拓志選手(NEXT-ONE Racing)がポールから得意のスタンディングスタートを決めて独走で総合優勝。デビュー戦を見事2番手でゴールした田中風輝選手(TAKAGI PLANNING)は、スタート進行時の違反で3ポジション罰退のペナルティを受けて5位に。同クラス2戦目の大宮賢人選手(MOMOX KART RACING)と飛躍のレースを演じた丸山陽平選手(HRT with GG)が2位・3位に繰り上がって、共に初表彰台に立った。

 また、35歳以上対象のマスタークラスでは、岡本孝之選手(ハラダカートクラブ)がスタートでふたつポジションを上げて東選手の後ろに浮上し、総合6位フィニッシュでクラス優勝を果たした。

ROK-SHIFTER優勝は東拓志選手。
ROK-SHIFTERの表彰式。左から2位の大宮賢人選手、1位の東選手、3位の丸山陽平選手が登壇。
ROK-SHIFTER Master優勝は岡本孝之選手。
ROK-SHIFTER Masterの表彰式。左から2位の加藤丈宜選手、1位の岡本選手、3位の西野武志選手が登壇。

 今回最多の40台が出走したYAMAHA SSクラスでは、全車をふたつのグループに分けてタイムトラアルと予選ヒートを実施し、セカンドチャンスヒートを経て34台の決勝進出者を決定。決勝では2番グリッドからスタートした脇万葉選手(TEAM EMATY)が、2位の伊藤聖七選手を2秒以上引き離して優勝を飾った。15歳と12歳のヤングジェネレーションふたりに続いて3位でフィニッシュしたのは、27歳の渡邊雅人選手(NEXT-ONE Racing)だった。

YAMAHA SS優勝は脇万葉選手。
YAMAHA SSの表彰式。左から2位の伊藤聖七選手、1位の脇選手、3位の渡邊雅人選手が登壇。

 最年少21歳、最年長72歳の21台が参加したAVANTIクラスでは、辻元拓馬選手(ハラダカートクラブ)が5秒半もリードを広げてポール・トゥ・ウィン。2番グリッドの北山深翠選手(FARM RACING)はリタイアを喫し、小川昌悟(Toko Sport with KC NAGAHARA)が2位、加藤雄祐選手(ハラダカートクラブ絆)が3位に入賞した。

AVANTI優勝は辻元拓馬選手。
AVANTIの表彰式。左から2位の小川昌悟選手、1位の辻元選手、3位の加藤雄祐選手が登壇。

 鈴鹿選手権の最年少カテゴリー、カデットオープンクラスには8歳から12歳の34台が出走。4台一丸の目まぐるしいトップ争いが繰り広げられた末、澤田龍征選手(Eiwa Racing Service)が勝利を遂げた。藤村太郎選手(ハラダカートクラブ)はゴール目前に2台を抜き、自己最上位を大きく更新する2位に。ポールスタートの鈴木春風選手(Team EMATY)は3位フィニッシュとなった。

カデットオープン優勝は澤田龍征選手。
カデットオープンの表彰式。左から2位の藤村太郎選手、1位の澤田龍征選手、3位の鈴木春風選手が登壇。

フォト/JAFスポーツ編集部 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部

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