TMSC富士ジムカーナシリーズ最終戦で、関口彰86がオーバーオールウィンの走りでタイトルを防衛!
2022年1月6日

富士スピードウェイジムカーナコースを舞台とする、TMSC富士ジムカーナシリーズの2021年最終戦が12月11日に開催された。
TMSC富士ジムカーナシリーズ2021第4戦
開催日:2021年12月11日
開催場所:富士スピードウェイジムカーナコース(静岡県小山町)
主催:TMSC
3月14日に開幕した2021年のTMSC富士ジムカーナシリーズは、5月9日に第2戦が行われた後、約5か月のインターバルを経て10月17日に第3戦が行われた。これは2021年の夏に、開催場所の富士スピードウェイが東京五輪の会場となったことによるもので、これに伴い、2020年は11月に開催されたシリーズ最終戦は一か月スライドして、12月11日に開催の運びとなった。
全4戦というスケジュールは2020年から変更はないが、今回の最終戦は過去3戦を大きく上回る61台がエントリーした。新型コロナウイルス感染症がやや収束の動きを見せたことも良い方向で影響したと思われるが、2020年の最終戦のエントリーリストと比較しても、各クラスとも同じような比率で台数増となっており、2022シーズンに向けて明るい話題を提供してくれる形となった。
富士ジムカーナシリーズの会場であるジムカーナコースは、レーシングコースのメインスタンドの裏手を上った所にある長方形のクローズドされたコース。ほぼフラットで路面も数年前に改修されて、グリップが向上したと評判のコースだ。パドックはコースの上段にあるので、コースの全景を望むことができる。
決勝は2ヒートで競われるが、第1ヒートの前に全クラス、慣熟走行が設定されるので本番のコースを3回走る事ができるのもこのシリーズの特徴のひとつ。またトップスラローマーが終日立ち会って、デモランを行い、実況で各選手の走りを分析してくれるのも、参加者には心強い。
2021年は全日本ジムカーナ選手権にロードスターで参戦したSHUN選手がそのアドバイザー役を務めたが、今回はSHUN選手が都合により欠席となったため、チームの先輩に当たるユウ選手がアドバイザーを務めた。ユウ選手は実況で各選手の走りを分析。非常に示唆に富んだ的確なアドバイスであるため、選手達はその実況を録音し、第2ヒートで早速フィードバックするという姿も見受けられた。




JAF公認クラブのトヨタ・モータースポーツ・クラブ(TMSC)の主催するシリーズとあって、このシリーズの最大の特徴はトヨタ車を対象としたクラスが3クラス用意されていることだ。トヨタ1クラスは1,600cc未満のトヨタ車が対象で、今回は6車種7台による戦いとなった。優勝はアクアを駆った福島賢太郎選手で、石毛那典選手のヴィッツが2位、前戦で優勝した大村裕治選手のカローラアクシオは3位だった。
福島選手はミラージュでJAF関東ダートトライアル選手権に参戦する本来は土系のドライバーだが、今回はレンタル車のアクアで開幕戦に続く2勝目を獲得。「1本目でミスコースしてしまったので、いつも以上に2本目の前の慣熟歩行を真剣にやってイメージトレーニングしたのが良かったと思います」と背水の陣で臨んだ2トライ目を振り返った。
「勝負所の最後のスラロームの入口で合わせ込むことができたのが勝因ですね。何とかサイドで向きが変わってくれたので理想的な姿勢でスラロームに入れました。でも今回走ってみて、ますますアクアがいいなと思いました。普段はミラージュで競技に出ていますが、ダートラやラリーもアクアで走ってみたくなったので、ちょっと探してみます(笑)」とすっかりアクアのポテンシャルが気に入った様子だった。


1,600cc以上2,000cc未満のトヨタ車が対象のトヨタ2クラスは13台がエントリーし、最大の激戦区となった。トヨタ86(ZN6)が圧倒的に多数派だが、参戦が認められているBRZ(ZC6)も2台参加した。またアルテッツァも2台エントリーしている。第1ヒートのベストはランキングトップの関口彰選手の86でただ一人、55秒台をマーク。前回の優勝者で同じく86を駆った全日本スラローマーのかつこ選手が56秒898で続いた。
第2ヒートで逆転を期したライバル勢だったが、56秒の壁は厚く、誰も55秒台に乗せることはできず、かつこ選手もタイムダウン。このため、ウイニングランとなった最終ゼッケンの関口選手は54秒975までタイムを上げてゴール。第2ヒートでタイムを詰めた磯貝恭一選手が2番手に上がり、かつこ選手は3位となった。
オーバーオールウィンももぎ取ってシリーズチャンピオンも決めた関口選手は、「まぁまぁよく走れたと思います。ちょっと失敗もしていますが、狙っていた54秒台を出せたので納得の走りでした」とひとこと。勝負所については、「やっぱり最後の、“おむすび”からスラロームに至るセクションだったと思います。スラロームはこのシリーズでは、たまにありますが、今日はうまくハマってくれました。“おむすび”はともかく小さく回ることを意識しました」と話した。


一方、2,000cc以上のトヨタ車が対象のトヨタ3クラスは駆動方式を問わないとあって、GRヤリスとMR2の戦いに。第1ヒートはそのMR2を駆った西一美選手がトップに立つが、第2ヒートでは、1本目でパイロンタッチに泣いた森隆司選手のGRヤリスが西選手の暫定ベストを凌いで首位を奪う。再逆転を期した西選手は0.01秒、森選手を上回ってゴールするが、痛恨のパイロンタッチ。森選手が優勝をさらった。


トヨタ車対象のクラス以外のクラスでも、各クラスでコンマ差の接戦が展開された。NTFクラスは清澤祐介選手のスイフトが56秒130で第1ヒートの暫定首位を奪って折り返す。第2ヒートでは55秒867までタイムを詰めてトップをキープしたまま、ともに今シーズン1勝をあげている後続のラスト2台の走りを待った。第1ヒートで0.14秒差の2位につけた坂本恒治選手が55秒台に入れてくるが、0.2秒及ばず。ラストの若命孝樹選手は55秒台に届かず、3位に留まったため、清澤選手の優勝が決まった。
「今日は、“おむすび”以降のセクションをどれだけ丁寧に走れるかの勝負だったと思いますが、そこで後手後手に回ってしまった1本目から修正できた分、タイムが詰められたんだと思います」と振り返った清澤選手は北陸出身のドライバー。2014年に地元の富山イオックスアローザで開催された全日本ジムカーナ選手権で、まったくの無名ながら優勝を遂げた実績の持ち主だ。
しかし、「全日本で勝ってからは、“燃え尽き症候群”になってしまって(笑)。しばらくはモチベーションが持てなかったんですけど、このクルマに乗り換えたら、またやる気スイッチが入りました」。パイロンジムカーナが主流の北陸で腕を磨いただけに、富士のようなフルパイロンコースは得意だが、「車速を敢えて上げずにテクニカルな設定となることが多いこのシリーズは、自分にいつも試練を与えてくれるので、好きな大会です。練習を積んだ成果を見届けるためにも、これからもここは走りたいですね」と完全復活を誓っていた。


参加9台とこちらも激戦区となったNTR2クラスはクラス1番ゼッケンで走った大多和健人選手が56秒062をマークしてトップで折り返す。大多和選手は第2ヒートでは55秒台に入れてゴールするも、パイロンタッチでベスト更新はならず。しかし後続の選手も暫定ベストを塗り替えることができない。あっと言う間にラストゼッケン、藤田幸児選手のトライを迎えるが、ここで藤田選手は大多和選手を何と0.016秒凌ぐタイムでゴール。土壇場で優勝をさらった。
大会前に、同じ富士の練習会でコースオフしてリアセクションを痛めた藤田選手は、「ぶつけた記憶が残っていて怖かったんですけど、逃げたらダメだと思って敢えて今回は出場しました。何とかタイムを上げられて良かったです」と、“引きずらない”ために走ったトライが結果をもたらしたことに安堵の表情を見せた。「2本目の前に、ユウ選手の実況を聞き直してみたら、自分の思っていた通り、リアを流しすぎていたと指摘されたので、そこをしっかり修正できたことが勝因ですね」と名アドバイザーに感謝していた。


参加4台がすべて異なる車種だったNT4クラスは、最も旧車に当たるGC8インプレッサをドライブする池田友久選手が、こちらも0.1秒差という接戦を制してシーズン3勝目をマークしてシリーズチャンピオンも決めた。池田選手もポイントにあげたのはゴール前のセクション。
「スラロームに入る前のターンを1本目で失敗したので2本目は慎重に行きました。慎重すぎたと周りからは言われましたが、多分そうしなかったら、またミスしたと思います」と池田選手。「新しいクルマと戦うのは楽しいですけど、今回は自分の暫定ベストを逆転された後のトライだったので滅茶苦茶つらかったです」と最後はホッとした表情を見せていた。



















フォト&レポート/JAFスポーツ編集部