全日本ジムカーナ最終戦5クラスでタイトル争いの中、激戦BC1は神里義嗣選手の初王座が確定

レポート ジムカーナ

2025年10月10日

今シーズンの全日本ジムカーナ選手権の最終戦となる第8戦「NRC鈴鹿BIGジムカーナ」が、10月4〜5日に三重県鈴鹿市の鈴鹿サーキット南コースで開催された。

2025年JAF全日本ジムカーナ選手権 第8戦「NRC鈴鹿BIGジムカーナ」
開催日:2025年10月4~5日
開催地:鈴鹿サーキット南コース(三重県鈴鹿市)
主催:NRC

 今シーズンは、前戦までにPE2、PN2、PN4、BC3の4クラスでチャンピオンが確定していたが、残るPE1、PN1、PN3、BC1、BC2の5クラスは、タイトルの行方がこの最終戦まで持ち越しとなっている。各クラスともシリーズポイントは混沌とした状況となっていて、誰が栄冠をつかむのか、注目の1戦となった。

 決勝日の天候は、早朝から霧雨模様で路面はウェットコンディションだったが、第1ヒートが始まるころには霧雨がやみ、路面も少しずつ乾いていく状況に。第1ヒート終了後に行なわれる慣熟歩行中にふたたび雨が降り出すものの、第2ヒートがスタートするころには雨はやみ、第1ヒートよりも路面が乾いた状況から競技がスタートしたことから、各クラスともベストタイムを更新する選手が続出。第2ヒートの一発勝負の様相となった。ところが、BC1クラスの途中から雨が降り出し、路面コンディションはヘビーウェット状態に。そのため、BC1クラス後半ゼッケン、BC2クラス、BC3クラスの選手のタイムアップが難しい状況になり、チャンピオン争いにも雨が大きく影響することとなった。

注目の最終戦は雨が上がったと思ったら再度降ってきたりと、競技の勝敗に影響する天候となった。
恒例の全日本ジムカーナ選手会によるパレードランも雨模様での実施となった。
日本で唯一となる国際格式のカートコースを逆走するレイアウトで、スタート直後とゴール直前に2カ所のパイロンターンのセクションを設定。基本的にはコースジムカーナだが、90度、180度、270度、360度と多彩なターンセクションが選手らを待ち受けた。

BC1クラス

 最終戦を迎え、4人の選手がチャンピオン獲得の権利を持つBC1クラスは、第1ヒートで神里義嗣選手(ホンダ・CR-X)がベストタイムを奪い、チャンピオン確定に王手をかける。一方、タイトルを争う伊藤眞央選手(ホンダ・インテグラ・タイプR)も0.107秒差の2番手につけ、第2ヒートでの逆転を狙う。

 白熱の第2ヒートは1分17秒台の攻防戦となり、第1ヒート5番手の山越義昌選手がベストタイムを更新したころから雨が降り出し、路面はまたたく間にヘビーウェットコンディションへと変化していく。このコンディションに、第1ヒートトップの神里選手、2番手の伊藤選手は大幅にタイムダウンとなり山越選手が今季初優勝を獲得。「雨がポツポツ来ていたので、もう攻めるしかないと思いました」という清水翔太選手(ホンダ・インテグラ・タイプR)が開幕戦以来の表彰台となる2位に入賞。今シーズンから全日本にフル参戦している牧田祐輔選手(ホンダ・インテグラ・タイプR)が初表彰台となる3位となった。

 注目のチャンピオン争いは、第7戦を終えて神里選手と同点トップの西井将宏選手(ホンダ・インテグラ・タイプR)が第1ヒートをDNFで終わり、雨に翻弄された第2ヒートは下位に沈む中、第1ヒートのタイムで10位となった神里選手が有効得点に1点を加算。わずか1点差で、神里選手が自身初となるシリーズチャンピオンを確定させた。

BC1クラス優勝は山越義昌選手(BS茨中摩摺セラ渦シビック)。
天候が変わりゆく中「最後に運が味方してくれましたね」という山越選手が勝利。
2位は清水翔太選手(ローリングYHセラ・インテグラ)、3位は牧田祐輔選手(協和整美S+YH牧速インテグラ)。
BC1クラスの表彰式。左から4位の久保田尊治選手、2位の清水選手、1位の山越選手、3位の牧田選手、5位の東毅選手、6位の橋本克紀選手。
神里義嗣選手が初となる全日本チャンピオンを確定させた。

PE1クラス

 チャンピオン候補がアルピーヌ・A110Rを駆る大橋政哉選手と山野哲也選手に絞られたPE1クラスは、第2ヒートで先頭ゼッケンの山野選手がベストタイムを更新してくるが、ハーフウェット路面の第1ヒートを制した深川敬暢選手(アウディ・TT RS)がドライ路面の第2ヒートでもベストタイムを更新。「アルピーヌ・A110に勝つため、テスラやアウディを乗り継いできました。やっと、念願を果たせました」という深川選手が、待望のPE1クラス初優勝を飾った。

 2位には、山野選手とダブルエントリーの野島俊哉選手が入賞。山野選手は大橋選手を上回る3位になり、「レースと日程が重なったりクラス不成立の大会が多かった今年は、いつもの年よりも大変なシーズンになりましたが、最後はしっかり大橋選手より上位でフィニッシュすることができました」と、9年連続25回目のチャンピオンを確定させた。

PE1クラス優勝は深川敬暢選手(DLエナペタルWinmaXTT)。
A110勢に勝って悲願のクラス初優勝を果たした深川選手。
2位は野島俊哉選手(EXEDY71RS A110R)、3位は山野哲也選手(EXEDY71RS A110R)。
PE1クラスの表彰式。左から4位の大橋政哉選手、2位の野島選手、1位の深川選手、3位の山野選手、5位の古谷知久選手。
山野選手が9年連続25回目となる全日本チャンピオンを確定させた。

PN1クラス

 チャンピオン候補が朝山崇選手(トヨタ・ヤリス)と斉藤邦夫選手(トヨタ・ヤリス)に絞られたPN1クラス。第1ヒートはシリーズランキング2番手の斉藤選手が4番手に沈む中、ランキングトップの朝山選手がベストタイムをマークし、タイトルに王手をかける。

 ドライ路面となった第2ヒートはベストタイム更新ラッシュが続く中、斉藤選手が1分21秒台のタイムでベストタイムを更新。クラスラストゼッケンの朝山選手はパイロンペナルティが加算され下位に沈み、斉藤選手が今季3勝目を挙げるとともにシリーズポイントでも朝山選手を逆転してチャンピオンを確定させた。

 2位には「第2ヒートは急に路面が良くなって、ドライビングが少し荒くなってしまいました」という矢島融選手(トヨタ・ヤリス)が入賞。3位には第1ヒートのパイロンペナルティをしっかりとリカバリーした阪本芳司選手(トヨタ・ヤリス)が入った。

PN1クラス優勝は斉藤邦夫選手(ネッツ群馬ジースパイス ヤリス)。
第1ヒートのリベンジを果たして今季3勝目を飾った斉藤選手。
2位は矢島融選手(DLBRIGATSヤリスITO)、3位は阪本芳司選手(エリアスポーツヤリス71RS)。
PN1クラスの表彰式。左から4位の中根卓也選手、2位の矢島選手、1位の斉藤選手、3位の阪本選手、5位の岡直輝選手、6位の金澤和幸選手。
斉藤選手が13回目となるシリーズチャンピオンを確定させた。

PN3クラス

 今季3勝ずつを挙げているユウ選手(トヨタ・GR86)と川北忠選手(マツダ・ロードスターRF)がタイトルを争うPN3クラスは、第1ヒートで川北選手がトップタイムをマークするが、ユウ選手も0.012秒差の2番手につける。

 ベストタイム更新ラッシュとなった第2ヒートは、まずは西野洋平選手(トヨタ・GR86)が1分17秒792のタイムでベストタイムを更新。その後、西野選手のタイムがなかなか更新されない展開が続く中、第1ヒートトップの川北選手が「細かいミスもあり、想定したタイムより少し遅かったんですけど、大きなミスはなかったと思います」と1分17秒401のタイムでベストタイムを更新。クラス最終走者のユウ選手は、「路面が良くなって、逆転のチャンスはあったんですけど、届かなかったですね」とトップに0.197秒及ばず2位に終わり、川北選手が今季4勝目を獲得。シリーズでは最終戦の逆転劇で川北選手が2年ぶりとなるシリーズチャンピオンを確定させた。2位にユウ選手、3位に西野選手がそれぞれ入賞した。

PN3クラス優勝は川北忠選手(ORC DL ロードスター)。
追いすがるライバルを引き離して両ヒートトップで優勝した川北選手。
2位はユウ選手(BS DRONE☆ GR86)、3位は西野洋平選手(BSカローラ栃木GR宇都宮86)。
PN3クラスの表彰式。左から4位の遠藤貴郁選手、2位のユウ選手、1位の川北選手、3位の西野選手、5位の安藤祐貴選手、6位の野島孝宏選手。
川北選手が2年ぶり6回目となるシリーズチャンピオンを確定させた。

BC2クラス

 チャンピオン候補が若林拳人選手(ロータス・エキシージ)と広瀬献選手(ホンダ・S2000)に絞られたBC2クラスは、第1ヒートで若林選手が広瀬選手を0.973秒差に抑えるベストタイムをマーク。一方、ドライセットで挑んだ広瀬選手は、「クルマのパッケージ的には問題はなかったんですけど、乾ききっていない路面はS2000にとっては厳しかったですね」と2番手につける。

 第2ヒートは無情の雨が降り、両者とも大幅にタイムダウン。第1ヒートの結果で若林選手が今季5勝目を挙げ、2年連続となるチャンピオン獲得を確定させた。2位に広瀬選手、3位には「第1ヒートはターンで少し引っかかったり、目に見えるミスもあったんですけど、高速セクションはうまくまとめることができたと思います」という飯野哲平選手(マツダ・RX-7)が入賞した。

BC2クラス優勝は若林拳人選手(BS若自速心コ犬ZRエキシージ)。
「1本目は路面が完全に乾ききっていなかったので、ミッドシップのエキシージの方が少し有利だったんでしょうね」と勝因を語る若林選手。
2位は広瀬献選手(WMマロヤBS林歯科セラS二千)、3位は飯野哲平選手(DLクスコWM犬RPfRX-7)。
BC2クラスの表彰式。左から4位の梅村伸一郎選手、2位の広瀬選手、1位の若林選手、3位の飯野選手、5位の小林キュウテン選手、6位の西森顕選手。
若林選手が2年連続4回目となる全日本チャンピオンを確定させた。

PE2クラス

 PE2クラスは、ハーフウェットの第1ヒートでクラス唯一となる1分25秒台のタイムでトップに立った高江淳選手(BMW・ミニ・クーパーS)が、第2ヒートでもベストタイムを更新。「ドライ路面の第2ヒートもベストタイムを更新できたことが大きかったですね」という高江選手が、今シーズン2勝目を獲得した。

「何とか高江選手に勝ってシリーズ3位を確保したかったんですけど、残念です。それでも、第2ヒートは精一杯走ることができたと思います」という大川裕選手(スズキ・スイフトスポーツ)がトップに0.322秒差の2位に入賞。今シーズンのチャンピオンを確定させている河本晃一選手(マツダ・ロードスターRF)が3位だった。

PE2クラス優勝は高江淳選手(DL☆REOひかりBPFミニ)。
「ウェット路面の第1ヒートはFFの有利性を発揮することができました」という高江選手が両ヒートでベストタイムを刻んだ。
2位は大川裕選手(DLセラメタSEIJOスイフト)、3位は河本晃一選手(CP2・BSロードスターRF)。
PE2クラスの表彰式。左から4位の藤原雄司選手、2位の大川選手、1位の高江選手、3位の河本選手、5位の髙屋隆一選手、6位の西村修一選手。

PN2クラス

 第1ヒートは6名の選手が1分24秒台にひしめき合う混戦となったPN2クラスは、「第2ヒートは路面が良くなったので、勢いで攻めました(笑)」という武内靖佳選手(マツダ・ロードスター)が1分19秒213のタイムでトップに立つ。その後も1分19秒台に突入する選手が現れるものの武内選手のタイムには届かず、全日本3戦目の武内選手が全日本初優勝を飾った。

 0.199秒差の2位には「最後のターンでリヤを抑えるのが少し鈍くなってしまい、それがタイム差になったんでしょうね。悔しいです」という古田公保選手(マツダ・ロードスター)が入賞。3位には、すでに今シーズンのチャンピオン獲得を確定させている藤井裕斗選手(マツダ・ロードスター)が入った。

PN2クラス優勝は武内靖佳選手(DLトーマスRAYロードスター)。
僅差の激戦を制してうれしい初優勝を飾った武内選手。
2位は古田公保選手(DL505XPLロードスター)、3位は藤井裕斗選手(BSコサWmEBRロードスター)。
PN2クラスの表彰式。左から4位の中田匠選手、2位の古田選手、1位の武内選手、3位の藤井選手、5位の永川悠太選手、6位の大江光輝選手。

PN4クラス

 PN4クラスは、すでにタイトルを確定させている津川信次選手(トヨタ・GRヤリス)が、第1ヒート、第2ヒートともライバルを1秒以上引き離す走りをみせ、今季6勝目を獲得。

 2位には、「最後の最後に360度ターンで失敗してしまいました」という若林隼人選手(トヨタ・GRヤリス)が入賞。「後半のスラロームまでは完璧に攻めることができたんですけど、最後のターンは予想よりグリップが高くて回し切れませんでした」という堀隆成選手(トヨタ・GRヤリス)が3位だった。

PN4クラス優勝は津川信次選手(DL☆BRIDE☆URGヤリス)。
両ヒートをブッちぎりの速さで制した津川選手。
2位は若林隼人選手(摩摺セラR若自DL速心渦ヤリス)、3位は堀隆成選手(DL・EX・堀自ヤリス)。
PN4クラスの表彰式。左から4位の秋山義忠選手、2位の若林選手、1位の津川選手、3位の堀選手、5位の亀山伸一選手。

BC3クラス

 BC2クラスと同様、第1ヒートで勝負が決まったBC3クラスは、クラス唯一となる1分14秒台のタイムをマークした菱井将文選手(トヨタ・GRヤリス)が今季5勝目を挙げ、今シーズンを締めくくった。「ドライの第1ヒートもさることながら、ウェットの第2ヒートは得意だったはずなんですけどねぇ……」と首をかしげる大橋渡選手(スバル・インプレッサ)が2位に入賞。「シーズンを通して、自分の走らせ方に悩んだ年でしたね」という一色健太郎選手(トヨタ・GRヤリス)が3位となった。

BC3クラス優勝は菱井将文選手(BS・クスコGRヤリス)。
すでにチャンピオンを確定させている菱井選手が最終戦も勝利でシーズンを締めくくった。
2位は大橋渡選手(DLプレジャーインプレッサ)、3位は一色健太郎選手(ATS速心WmDLRSKヤリス)。
BC3クラスの表彰式。左から4位の奥井優介選手、2位の大橋選手、1位の菱井選手、3位の一色選手、5位の堂本直史選手、6位の桃井守選手。

SLWクラス

 併催されたスーパー・ライトウェイト(SLW)クラスは、島村芳人選手(ケータハム・スーパーセブン)が優勝。2位には同じくケータハム・スーパーセブンの藤井孝輔選手が入賞した。

併催のSLWクラス優勝は島村芳人選手(HMCSセブンKENT)。

PHOTO/CINQ、大野洋介[Yousuke OHNO] REPORT/CINQ、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

ページ
トップへ