北海道伝統の一戦、糠平湖氷上トライアルが2年ぶりに復活!

レポート ダートトライアル

2022年2月9日

1月22~23日の週末、北海道上士幌町の糠平湖で、JAF北海道ダートトライアル選手権の今年の開幕を告げる氷上トライアルが行われた。

2022年JAF北海道ダートトライアル選手権第1戦
2022年JMRC北海道WinmaXダートトライアルシリーズ第1戦
2022年JMRCオールスター選抜第1戦
第43回 糠平湖氷上タイムトライアル

開催日:2022年1月22~23日
開催場所:糠平湖氷上特設コース(北海道上士幌町)
主催:TEAM-OSC

 北海道のダートトライアル地区戦が、恒例の糠平湖氷上タイムトライアルで今年も開幕した。北海道の冬と言えば、以前は各地でスノートライアルが開催されてきたが、今年で43回目を数える糠平湖氷上タイムトライアルは、その中でも最古参のイベントとして長く親しまれてきた。

 近年の糠平湖氷上タイムトライアルは暖冬の影響を受けてなかなか湖面が凍らず、主催の帯広スピリットカークラブ(TEAM-OSC)はコース作成に苦心する年も多かったが、昨年は降雪や凍結に関する事情からではなく、新型コロナウイルス感染症拡大を受けて開催を断念するという苦渋の選択を強いられた。

 同感染症については収束どころか、北海道も第6波の兆候が道内各地で現れ始めた時期と重なるタイミングでの開催となったが、開催に当たっては無観客としたほか、大会14日前からの体調確認書の提出、接触確認アプリのインストールなど、主催者は万全な感染防止対策を施した上で、2年ぶりとなる氷上トライアルを実現させた。

 凍結した湖面の上を走って順位を競うというも全国でも例のないこの競技会の最大の特徴は、その広大な湖面に用意されたコースをハイスピードドライビングで堪能できるということにある。4速全開も珍しくはないが、今年は例年よりもさらに高速寄りの設定が待ち受け、参加者から好評を博した。

 その豪快なドライビングを可能にしているのが、競技走行に限定してスパイクタイヤの装着が認められていることで、上位の結果を狙うドライバー達は、年イチのこのイベントのためにスパイクタイヤを用意して臨む。多くの参加者達は土曜の練習走行で一年ぶりに履くスパイクタイヤの感触を確かめた上で、決勝でフルアタックを敢行するという形だ。

糠平湖氷上トライアルは、湖の約半分程度の部分を使用して行われ、パドックも凍結した湖面の上に設定される。パドックの奥がコースとなる。
会場に設置された外気温計はマイナス20度を指す。今年、国内で冬に行われるJAF公認競技会の中で最も寒い場所で開催されるのが、この糠平湖氷上トライアルだ。
当日のコース図。高速セクションを攻め切った後にタイトコーナーで車速を落としてゴールというのがこのトライアルの定番レイアウトだ。
身も凍る寒さの中、参加者達は凍結した湖面も顔を覗かせるコースを慣熟歩行する。
スパイクタイヤの使用が認められるのがこの大会の特徴。外国製のスパイクタイヤを装着するドライバーが多い。
エキスパートクラスには奴田原文雄選手も出場。昨年、米国のパイクスピークヒルクライムにエントリーした日産リーフe+をベースとしたスペシャル4WDマシンをドライブした。時には雪の中、走行することもあるパイクスの変化の激しいコンディションを想定して、今回は主にバッテリー関係のテストを兼ねての参戦となった。

 JMRC北海道WinmaXダートトライアルシリーズのJ-2クラスは4WDを駆る初中級者対象のクラス。第1ヒートは、昨年のシリーズランキング2位の村上幸丈選手が2番手を5秒以上も突き離す1分45秒955でトップに立つ。村上選手は第2ヒートではタイムを落とすも、このヒートでも村上選手を脅かすドライバーは最後まで現れず、悲願のシリーズチャンピオン獲得に向けて幸先の良い1勝をあげた。

 道北の士別より参加した村上選手はドリフトを経て昨年からダートラに参戦した一人。当然、糠平は初出場だったが、見事なデビューウィンを飾った。「去年まで乗っていたCP9AランサーからCT9Aランサーに乗り換えたばかりなので、昨日の練習走行でも全然乗りこなせず、ダメだったんです。それで師匠にインカーと外撮りの動画を送って相談したら、ACDのモードを変えてみろと言われたので、今日はターマックモードで走ったら、CP9Aと同じような感じで走れました。それがタイムに繋がったと思いますが、CT9Aを乗りこなしたということにはならないので、微妙ですね(笑)」と村上選手。とは言え、優勝タイムは、地区戦のクラスで2位に入るという堂々たるタイムだった。

 師匠とは、学生時代から一緒にモータースポーツを楽しんできた同郷の山上智也選手。ここ数年は活動を休止しているが、全日本にもスポット参戦した、速さには定評のあるラリードライバーだけに、師匠のラリーの経験が弟子に伝授されてのスーパーベストだったようだ。「ラリーにも興味はありますが、“ラリーに出たら絶対に落ちる”と師匠に止められているので(笑)、スナガワで開催されるラリーのような、道から落ちなくてすむようなラリーがあれば出たいと思います」と、村上選手はグラベルシーズンの到来を待ちわびている様子だった。

J-2クラスでは村上幸丈選手が優勝し、チャンピオン獲得に向け、順調な滑り出しとなった。
J-2クラス上位入賞の各選手。

 地区戦最初のクラスとなったFF-1クラスは昨年のチャンピオン、左近弘道選手が第1ヒートから2番手に1秒差をつけるタイムで折り返し、貫録を見せる。このクラスは第2ヒート、上位陣は軒並みタイムダウン傾向となり、左近選手もベスト更新は果たせず。トップ3は第1ヒートのオーダーのまま競技を終え、結果、左近選手が逃げ切ることとなった。

「皆、一緒ですけど、糠平を走るのが2年ぶりなので、昨日走ってもスパイクの走り方を忘れている部分があって、今日も内心は、“大丈夫かな”という感じでスタートしました」という左近選手。「正直、1本目は様子見した所もあったので、もうちょっと行けたかなとも思いますが、去年のグラベルとほぼ同じセットで走ってタイムが出せたので、クルマもドライバーも調子を維持できているという感じはあります。何とか今年もチャンピオンを狙って、全日本のスナガワでもいい所に行きたいですね」と、しっかりとした手応えを掴んだ一戦になったようだ。

FF-1クラスは昨年のチャンピオン、左近弘道選手が第1ヒートのタイムで優勝。
FF-1クラス上位入賞の各選手。

 一方、FF-2/4WD-1クラスは、昨年もストーリアでタイトルを守った北海道の“レジェンド”原宴司選手が今回は不参加。北海道から全日本を転戦している内藤修一選手が、「ラインが取れなかったり、シフトミスしたりと、もう少し行けるはずだと思いながら走っていた」という走りながらも第1ヒートのベストを奪う。1本目の修正を期して臨んだ第2ヒートだったが、「ワダチができた所が荒れていて特に高速区間では慎重にならざるを得なかった」とタイム更新はならず。しかしライバルも苦戦を強いられてタイム更新は果たせず、こちらも第1ヒートのタイムで内藤選手が逃げ切った。

「ちょっと不本意な走りでしたが、苦労してきたスイフトのセットが去年一年でようやく煮詰まって来たので、その結果として逃げ切れたと思いますね。原さんと勝負したかった、という気持ちはありますが(笑)、今年は皆、自分と同じZC33Sスイフトに乗り換えてきたので、今までと同じように地区戦で切磋琢磨して全日本に挑みたいです。若い人も速くて刺激になるので、決して楽な戦いになるとは思っていません」と内藤選手。その若手で昨年のJ-1クラス王者の張間健太選手が、地区戦クラス初戦ながら、先輩達を抑えて堂々の2位を獲得している。

全日本のレギュラードライバーである内藤修一選手がFF-2/4WD-1クラスを制した。
FF-2/4WD-1クラス上位入賞の各選手。

 続くRWDクラスは5台が出走したが、このクラスになると両ヒートのタイムが拮抗するようになり、路面コンディションが持ち直し始める。優勝はトヨタ86で約1年半ぶりに実戦に復帰を果たした田中光徳選手で、新型BRZを持ち込んだ小野寺俊選手に約2秒差をつけた。結果的には第1ヒートのタイムで逃げ切った形だが、「2本目は速度が乗る所でワダチから外れてしまってタイムロスしました。ワダチに最後まで入れられていれば、2秒は詰められたと思います」と振り返った。

「しばらく休んでいたので、この週末はともかく走りたかったという所ですね。1本目はタイムをしっかり残すつもりで走りましたが、逆に攻めすぎたりしていい感じではなかったです。去年のシリーズの1位と2位のドライバーが今日はいなかったし、その中でも新型に乗り換えた和泉(泰至)選手と戦ってみないことには、自分の調子がどこまで戻っているか分からないので、早くグラベルで勝負したいですね」と田中選手。全日本でもトップクラスの速さを誇る地元の第一人者との対決を心待ちにしていた。

RWDクラスは田中光徳選手が第1ヒートのタイムで逃げ切った。
RWDクラス上位入賞の各選手。

 4WD-2クラスは、第2ヒート完走を果たしたドライバーの中で唯一タイムアップできなかった島部亨選手のCZ9Aランサー・エボリューションXが優勝。第1ヒートでマークした1分43秒346は今回、総合でも2番手に入り、ナンバー付き車両として断トツのトップタイムで、昨年のシリーズチャンピオンの貫禄を見せつけた形となった。

「今回はいい氷でしたね(笑)」と島部選手。「1本目から昨日の練習で掴んだいいイメージ通りに走ろうとしましたが、それがうまくハマってくれた感じです。後半はオーバーランしないように、気を付けて走りました。“これで勝てないなら今日は仕方ない”くらいの走りはできたと思います。2本目はダメダメでしたけど(笑)。今年も、コロナでこの先どうなるか分からないということを考えると、凄く大きな1勝だと思うので、この後も取りこぼしがないように頑張りたいですね」。

 昨年は開幕戦を落とし、中盤から追い込みをかけてタイトルをものにしただけに、先手必勝を果たしたその言葉には実感がこもっていた。なお今回の開幕戦では、札幌市のモータースポーツショップ、technical service SCENEに拠点を置くJAF加盟クラブ、team-SCENEのメンバーが、成立した4クラスを総ナメにする活躍を見せた。今年もteam-SCENEの強豪達を軸とするチャンピオン争いが展開される可能性は高いが、グラベルシーズンでのライバル達の巻き返しも大いに注目される一年となりそうだ。

4WD-2クラスでは島部亨選手が第1ヒートのタイムで優勝をさらった。
4WD-2クラス上位入賞の各選手。
J-1クラスでは白山真司選手が快勝した。
J-1クラス優勝の白山選手。
CLOSED-1クラスは笹原孝志選手が逆転で優勝を果たした。
CLOSED-1クラス上位入賞の各選手。
CLOSED-2クラスでは第1ヒート、ノータイムに終わった太田清隆選手が第2ヒートで断トツのベストを叩き出して優勝した。
CLOSED-2クラス上位入賞の各選手。
全日本ドライバーが本州からも駆け付けたエキスパートクラスは、地元の田辺剛選手が唯一人、1分40秒を切るタイムを叩き出してオーバーオールウィンを飾った。
フォト/加藤和由 レポート/JAFスポーツ編集部
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