寒さを吹き飛ばさんばかりの熱きバトル! OKAYAMAチャレンジカップレース開幕!

レポート レース サーキットトライアル

2022年3月1日

2022年の最初のレースは、2月20日に岡山国際サーキットで開催された「OKAYAMAチャレンジカップレース」。当日早朝は路面が凍結しており、その後も時折雪が舞うほどのまさに極寒と言うべきコンディションとなっていたが、それぞれ熱いバトルによって吹き飛ばされていた。

2022 OKAYAMAチャレンジカップサーキットトライアル
JAF地方選手権岡山国際サーキットトライアル選手権第1戦

開催日:2022年2月20日
開催地:岡山国際サーキット(岡山県美作市)
主催:株式会社岡山国際サーキット、AC

2022 OKAYAMAチャレンジカップレース第1戦
開催日:2022年2月20日
開催地:岡山国際サーキット(岡山県美作市)
主催:株式会社岡山国際サーキット、AC

 JAF地方選手権としてシリーズが組まれている岡山国際サーキットトライアル選手権は、共通のレギュレーションを採用する筑波サーキットやスポーツランドSUGOと同様に、クラス区分を変更。9クラスに細分化されて、より多くの車両に参加しやすく、かつ勝機を与えやすいよう配慮された。

 そのシリーズ最初の大会が2月20日に岡山国際サーキットで開催されたが、残念ながらエントリーは8台に留まった。それでも気筒容積2400cc以下で国産2輪駆動のB車両によるCT4クラス、気筒容積1600cc以下で国産2輪駆動のB車両によるCT5クラスは成立し、逃げ切りあり逆転ありの展開となった。

 ただし、本来は慣熟走行を1周行った後の8時30分から開始されるはずだったヒート1は、路面温度が氷点下でモスSは凍結していたため、15分間のディレイとなる。ようやくスタートしても路面は濡れたままだった。

 ここでの総合トップはCT1クラス(排気量、駆動制限なしのB車両)のFK8シビックを駆る石田泰久選手、CT4クラスのトップはスイフトスポーツの野添光治選手、そしてCT5クラスのトップはノートニスモの山下猛選手だったものの、ドライに転じるであろうヒート2が、本当の争いになるのは明らかだった。一方、話題の新型GR86を投じたCT4クラスの大住拓選手は、予定外のピットストップを強いられたため、ウォームアップが間に合わずにクラス3番手に甘んじていた。

 ヒート2は予想どおり路面はしっかり乾いた。ヒート1で総合2番手だったGRヤリスの福冨航平選手が、計測2周目に約10秒もの短縮を果たしてトップに立つ。それから2周後にはさらに2秒縮め、しっかりクールダウンも入れてラストアタックにすべてを賭けたが、惜しくもタイム更新とはならなかった。

 CT1クラスとしては不成立だったものの、総合優勝を飾った福冨選手は「朝と昼とではコンディションが全然違っていて、ヒート1は何もなかった(苦笑)。ヒート2は気持ちよく走れました。GRヤリスでは2年目、去年の暮れにLSDを入れて、かなりいい感じになってきました。もうちょっと台数が増えて成立してくれたら、もっと盛り上がると思います」と語った。

 CT4クラスも大住選手が計測2周目にヒート1から約20秒の短縮を果たし、一躍トップに浮上! 2周後にはさらにコンマ5秒縮めて、2位の野添選手を5秒引き離すこととなった。これが新型GR86のJAF公認競技における初勝利となったが、「狙っていました!」と大住選手。

 さらに「ヒート1の初めに計測器の不備があったということで、一回確認でピットに戻りました。路面もほぼほぼ凍っていたから、ここはまぁ仕方ないと。ヒート2でしっかりタイムが出せてよかったです。このGR86はデビューしたてのマシンで、とりあえず足回りとブレーキバッド、あとバケットシートとシートベルトを換えただけです。本当に何もしていないのに、それでもいいタイム出たので、ポテンシャルはすごく高いと思います。今年はシリーズを追いかけてチャンピオン目指します」と語っていた。

 一方、CT5クラスは山下選手の逃げ切りの展開に。タイムが伸び悩んだデミオ15MBの山村純一選手を尻目に、山下選手は徐々にタイムを詰め続けていく。ラスト2周で記したベストタイムはコンマ6秒差ではあったが、一度もトップを明け渡さなかった。

「あっちに行ったりこっちに行ったりしながら、なんとか走ってきた感じでした(笑)。まだいけるとは思うんですけど、何しろ不慣れなもんで。優勝はこれが2回目です。いつも山村さんにやられていましたので、今年はずっとこの調子でいきたいです」と山下選手。

新型GR86が岡山国際サーキットトライアル選手権を制した! CT4クラス優勝は大住拓選手(RGO・IDI・エナペ・DL・OS・86)。
国産メーカー1600cc以下の2輪駆動B車両で競うCT5クラスは、山下猛選手(NPC東京ノートニスモ)が制した。
CT1クラスは2台エントリーで不成立ながら、GRヤリスを駆る福冨航平選手(狂猿レーシングGRヤリス)が総合優勝を果たした。

 鈴鹿サーキットでの1戦を加えて全4戦の開催が予定されているNゼロVitz。かつて九州のVitzマイスターだった三浦康司選手が初参戦してきた。予選でトップに立つことが予想されたものの、すぐにピットに入ってしまう。その間に昨年のスーパーカート岡山シリーズのSK-2チャンピオンで、四輪初レースの日野皓介選手がトップに躍り出る。勢いに乗る日野選手は、なおもコースを攻め立てていったが、勢い余って2コーナーでクラッシュ! 赤旗中断の間に路面状態はかなり向上し、再開後は三浦選手が予想どおりトップを奪っていた。

「ウェットの空気圧で出たんですけど、『これ、もうドライだ』ということでエアを上げるべく一回ピットに入ったという感じでした。決勝は老獪に楽しくやれたらいいですね」と三浦選手。2番手にはスーパーFJから転向の坂野貴毅選手がつけていた。

 雪こそ舞うものの、完全にドライコンディションに転じていた決勝では、スタートを決めた三浦選手がオープニングの1周だけで早くも2秒6の差を後続に対してつける。もちろん、その後もアクセルをまったく緩めることなく走り続けて、10周で実に18秒の差をつける圧勝となった。

 対照的に激しかったのが2番手争い。スタートで予選3番手の小田健治選手に並びかけられた坂野選手は、なんとかこらえて逆転を許さず。しかし、鯉江保秀選手を加えて最後まで3人で激しいバトルを繰り広げる。必死にガードを固め続けた坂野選手だったが、抵抗を許されたのは7周目まで。小田選手の逆転を許し、表彰台に上がるに甘んじた。なお、日野選手はマシンのダメージが大きく、出走は許されず、ホロ苦の四輪レースデビューとなっていた。

「良かったです、ホッとしました。今日は(2分)1秒台を刻み続けることを目標にしていました。たぶん今回限りのスポット参戦になると思いますが、これからの人の目標になるといいですね。楽しかったです」と三浦選手。

優勝は後続を突き放してトップをひたすら快走した三浦康司選手(NAVUL☆NUTEC☆制動屋Vitz)。
NゼロVitz関西シリーズ第1戦の表彰式。左から2位の小田健治選手、1位の三浦選手、3位の坂野貴毅選手。

 ND5が3台、NA6が4台、計7台での戦いとなったN1ロードスター。昨年の最終戦に続きポールポジション(PP)を獲得したのはND5の樋口紀行選手、2番手はNA6の金森成泰選手だった。その樋口選手は「路面は難しかったですね。ちょっと乾いてきたところもあったんですが、なかなか攻めきれずで。徐々に上げていけましたが、まだまだ練習不足ですね。決勝はドライになるでしょうから、もっと頑張ります」とコメント。

 そして金森選手は「ミスしないように慎重にいきました。全体トップを狙っていたんですが、樋口選手も速いし、NDも速くなってきたんで。その分、決勝は頑張ります。今年はフォーミュラEnjoyをやることになりまして、ロードスターはスポット参戦の予定です」と語っており、本格移行の前に久々の総合優勝を狙っていたのは間違いない。

 スタートを決めたい金森選手、決勝では逆に下坂和也選手に1コーナーで並ばれ、モスSで前に出られてしまう。その間にリードを広げた樋口選手は、終始1分53秒台での周回を重ね続けて逃げていく。ただし、当の本人にしてみれば「本当は52秒台がどのぐらい出るのかなってトライしていたんですが、出ませんでしたね」とレース後に苦笑い。

 逆に後方では下坂選手、金森選手、橋村剛選手といったNA6勢に、ND5の大月崇央選手を加えた4人での激しいバトルが繰り広げられる。2周目に前に出たのは金森選手だったが、3周目に下坂選手に抜き返され、次の周には橋村選手の先行を許すことに。そして中盤になってようやく熱の加わった感もあった大月選手が6周目からオーバーテイクの連発で、7周目には総合2番手に浮上。だが、樋口選手にプレッシャーをかけるまでには至らなかった。

 総合3位でゴールの下坂選手はこれがうれしい初優勝となり、「スタートは良かったです、うまいこと切れました。金森さんは一番の目標だったので、前を走れて感無量です」と大喜びの様子だった。

ND型ロードスターで競うDクラスは樋口紀行選手(nodi roadster)が優勝した。
N1ロードスターDクラスの表彰式。左から2位の大月崇央選手、1位の樋口選手、3位の植村真一選手。
NA型ロードスターのAクラス優勝は下坂和也選手(SPEC-Dロードスター)。
N1ロードスターAクラスの表彰式。左から2位の橋村剛選手、1位の下坂選手、3位の金森成泰選手。

 N1-86が5台、Nゼロ-86が4台の混走レースにおいて、昨年のチャンピオン佐藤俊介選手を僅差で抑えてPPを獲得したのは、スーパーFJやFIA-F4の経験を持つ中村賢明選手だった。今回はハコでの初レースで「意外と面白いマシンで、緊張もそんなにせず攻められたので、良かったです。佐藤選手とはタイム差もそんなにないので、油断はできないですね」と語る。

 実際、佐藤選手は中村選手を上回っていたタイミングもあったが、駆動系のトラブルでラストアタックができず。路面状態は徐々に良くなっていただけに、最後まで走り続けていたらどうなっていたことか。一方、Nゼロ-86では「うれしいです。決勝も遠慮なく行かせていただくつもりです」と語る、荒川美恵子選手がトップにつけていた。

 決勝では1コーナーへのホールショットを決めた中村選手だったが、佐藤選手もピッタリ食らいついて離れない。そればかりかヘアピンで早々と逆転に成功。その後も次第に差を広げていったのだが……。好事魔多しとはまさにこのこと。中村選手との差を3秒とした6周目のモスSでミッショントラブルに見舞われ、マシンを止めたのだ。これで中村選手は労せずしてトップに返り咲き、慎重な走りの中、逃げ切りに成功。

「スタートも今ひとつでしたし、その後もシフトミスが何回か。でもデビューウィンが飾れて、チームにいい弾みをつけられたと思います」と中村選手。今年は同じチームからスーパー耐久にも出場するだけに、最高のシーズンインとなった格好だ。

 Nゼロ-86では、荒川選手が最後まで水野裕治選手と土肥潤選手の猛攻をしのぎ続けて優勝。その荒川選手は「楽しんできました。ちょっと後ろが迫ってきたんですけど、『そんなところでは抜けんぞ』ってところで攻めてくるから、かえって自信を持って走れました。私の方が立ち上がりは速いので」と、経験の差を明らかにしていた。

ハコ車初レースでポールを獲得、そして優勝を飾ったのは中村賢明選手(HTP.Maple86)。
N1-86の表彰式。左から2位の藤井大温選手、1位の中村選手、3位の永井良周選手。
荒川美恵子選手(MIEKO86)が迫り来る後続をしっかり抑えてNゼロ-86で優勝を果たした。
Nゼロ-86の表彰式。左から2位の土肥潤選手、1位の荒川選手、3位の水野裕治選手。

 2021年シリーズチャンピオン大八木龍一郎選手が、鈴鹿シリーズと富士シリーズに集中するため、卒業。王者不在ながらなお、WEST VITAはエントリー25台と依然大盛況。新たな覇権争いが注目される中、「VITAでレースするのは初めてで、以前はカートをやっていました。一昨年は全日本の西地域でFS-125部門を、去年18歳になって四輪をやり始めて、スーパーFJの鈴鹿で最終戦と日本一に出場しました。今年は岡山のVITAと鈴鹿のスーパーFJに出る予定です」と言う19歳の新鋭、小川涼介選手が初PPを獲得した。

「今の予選は最初に出て行った時はかなり路面が悪くて、タイムが出るか分からなかったんですけど、サインボードで自分の順位がだんだん上がっていって、帰ってきたらトップを獲れていたのでホッとしました」と、何とも初々しい様子の小川選手。2番手は清水康友選手が、そして3番手は中西亮平選手が獲得した。

 決勝では小川選手が好スタートを切って1コーナーに真っ先に飛び込むも、清水選手も遅れずに続いていく。逆に中西選手は出遅れてしまったばかりか、1コーナーのオーバーシュートで大きく順位を落としてしまっていた。

 2周目に入ったホームストレートで、いったんは前に出た清水選手だったが、1コーナーのブレーキングで踏ん張り、小川選手はトップを取り戻す。その後は大山正芳選手も加わり、激しいトップ争いを繰り広げるが、キャリア豊富な相手にも小川選手は一歩も引かず。僅差ながらもトップを守り抜いて初優勝を飾った。

「スタート前はすごく緊張していたんですけど、始まってからは何とか冷静に走ることができたので、それで勝てたんだと思います。この調子でシリーズを戦っていきたいです」と小川選手。またひとり、気になるドライバーが現れた。そして、昨年までは旧型エンジン搭載車を対象としていたトロフィークラスは、基本50歳以上のドライバーが対象となり、初戦は下垣和也選手の優勝となった。

初めてのVITAで優勝を遂げた小川涼介選手(MOLECULEモノコレ萬雲塾VITA)。
WEST VITAの表彰式。左から2位の清水康友選手、1位の小川選手、3位の大山正芳選手。
下垣和也選手(SOUEISHA-VITA)はトロフィークラスで優勝となった。
WEST VITAトロフィークラスの表彰式。左から2位の長田茂久選手、1位の下垣選手、3位のTAKE chan選手。

 いきなりWヘッダー開催となったポルシェトロフィーは、予選のベストタイムで第1戦、セカンドベストタイムで第2戦のポールを決めることに。今大会最初の予選とあって、路面もまだウェット状態だった中、“漢”たちはこぞってドライタイヤで走行。徐々にタイムを詰めていく中、ラストアタックで松島豊選手がトップタイムを記すも、セカンドベストタイムではAG選手がトップで、2戦のPPを分け合うこととなった。

「まだ濡れたままだったので、めちゃくちゃ怖かった(笑)。最後に引っかかってベストタイムだったので、もう1周あればもう1回行けて、第2戦も落とさずに済んだかと思うと残念ですけど、みんな同じ条件ですからね」と、松島選手は少々悔しそう。逆に「おっかなびっくりで、手探りと言いますか、速い方があんまり頑張らなかったようなので(笑)。PPは初めてですよ、いつも中団なので」とAG選手はうれしそうだった。

 すっかり路面も乾いた決勝レース第1戦。ここでAG選手はスタートに失敗、松島選手が一気に楽になり、「最後まで(1分)35秒台でラップしようと思ったんですが、最後の方は36秒台に落ちてきて、まだまだですね。次のレースは絶対に最後まで35秒台をキープしたいと思っています」と語ったとおりの圧勝に。

 一方、2番手争いは激しく、MUSASHI選手とクラスBの滝澤智幸選手、そして追い上げてきたAG選手の三つ巴となるが、AG選手は7周目のWヘアピンでコースアウト。そして逆転はならなかったが、滝澤選手がクラスBのまず1勝目を挙げた。「クラスが違うので、無理はしませんでした。ぶつけちゃいけないので。いけたと思うんですよ、無理すれば。ただ、それは自重しました」と滝澤選手。

 決勝レース第2戦はAG選手が好スタートを決め、松島選手がやや出遅れたことで、滝澤選手が2番手に浮上。MUSASHI選手を交えてのトップ争いがまたも熾烈を極める中、「タイヤがきつくなってしまって」と真っ先に脱落してしまったのがAG選手だった。4周目のリボルバーで滝澤選手の逆転を許したばかりか、徐々に順位を落とす羽目に。その後、滝澤選手は冷静な走りでトップを守り抜き、クラス2連勝を総合優勝で飾ることとなった。

「1戦目の雪辱を果たしました。クラスが違っても総合優勝となると話は別ですね。我ながら頑張ったと思います」と滝澤選手。これに対し、「スタート失敗しちゃったので、それが後々まで尾を引いて、クラス下のクルマに負けちゃって情けないです。でも、連勝できたので良かったと思うことにします」と松島選手は、反省半分の様子であった。

予選でトップタイムを叩き出したクラスAの松島豊選手(TEAM930RUSH)が第1戦優勝。
ポルシェトロフィー第1戦クラスAの表彰式。左から2位のMUSASHI選手、1位の松島選手、3位の久岡卓司選手。
クラスB優勝は激しい上位争いを繰り広げた滝澤智幸選手(FachAutoTech)。
ポルシェトロフィー第1戦クラスBの表彰式。左から2位のWanimon選手、1位の滝澤選手。
松島選手(TEAM930RUSH)が第2戦も制してクラスAで2連勝を果たした。
ポルシェトロフィー第2戦クラスAの表彰式。左から2位のMUSASHI選手、1位の松島選手、3位のAG選手。
第2戦クラスB優勝の滝澤選手(FachAutoTech)は総合でもトップ。第1戦の借りを返した。
ポルシェトロフィー第2戦クラスBの表彰式。左から2位のWanimon選手、1位の滝澤選手。

フォト/吉見幸夫 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部

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