入門レースシリーズの「鈴鹿クラブマンレース」は随所で好バトルが展開!

レポート レース サーキットトライアル

2022年3月4日

鈴鹿サーキットで今年最初に行われるレース「2022 鈴鹿クラブマンレースRound 1」が、2月27日に開催された。例年、この時期のサーキットは身を切るような寒さに見舞われがちだが、今年は通り雨があったり、吹く風は冷たかったものの、日差しは終始穏やかで、走行には上々のコンディションだったと言えるだろう。レースはすべてトップの独走が許されず、激しいバトルの連続で大いに見応え十分な一日となっていた。

2022 鈴鹿クラブマンレースRound.1
開催日:2022年2月27日
開催地:鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)
主催:AASC、SMSC

 全6戦での開催が予定されている地方選手権の鈴鹿スーパーFJ選手権には26台がエントリー。そのうち1台が練習中のクラッシュで出場を取り消したものの、依然として活況ぶりを呈していた。

 今年からコントロールタイヤがダンロップに改められ、特性の違いに悩むドライバーも少なくない。3連覇を目論む岡本大地選手を僅差で下してポールポジション(PP)を獲得したのは参戦2年目の冬星選手で、「今週はずっと調子がよかったので、位置取りさえ上手くできればと思っていましたが、すべて決まった感じです」と非常に上機嫌。対して岡本選手は後半に勝負を賭けたが、アタック中に1コーナーで黄旗が提示される不運に見舞われていた。

 決勝では岡本選手が好スタートを切ってトップに立つが、2周目に入って間もなく1コーナーで冬星選手がトップに浮上。その後、岡本選手は「ふたりで逃げてから、勝負しようと思っていました」と、あえて冬星選手を抜かずに周回を重ねていく。だが、大木一輝選手や居附明利選手がふたりを上回るペースで急接近してきたため、急きょ作戦を変更。6周目のシケインで早めに仕掛けて、トップに返り咲く。

 この判断は適切だった。冬星選手はやがて後続の応戦一方になり、その間に岡本選手は徐々に逃げていくことができたからだ。大木選手は9周目にカットオフスイッチに手が当たる不運で失速して順位を落とすも、冬星選手と居附選手のバトルはゴール直前まで続き、辛くも冬星選手はコンマ09秒差で先着。それより1.4秒前でフィニッシュしていた岡本選手が開幕戦を制することとなった。その岡本選手は「後ろのペースが良かったんでちょっとやばいと思いましたが、いいタイミングで抜くことができました」とレースを振り返った。

2年連続のチャンピオンを獲得している岡本大地選手(FTK.レヴレーシングガレージ)が初戦を制し、幸先の良いシリーズのスタートを切った。
スーパーFJの表彰式。左から2位の冬星選手、1位の岡本選手、3位の居附明利選手。

 鈴鹿クラブマン独自のカテゴリーであるCS2は、これまで4A-Gエンジン搭載のウエスト16Cのワンメイクだったが、確保に限界が見えたことから、同じトヨタの最新エンジンM20A-FKSを新たに搭載したウエストv.Granzでの参加も可能となった。

 このv.Granzは剛性や空力も改善され、しかも2リッターということもあってタイム差が生じるかと思われたが、レブリミットを1000rpm抑えたことでその差は最小限に。なおかつ主眼とされているライフ重視は、エントラントには大歓迎の様子。

 予選でディフェンディングチャンピオンのいむらせいじ選手を抑えてPPを奪ったのは成瀬茂喜選手。1980年代にF3を戦い、5年前にVITAで復帰のベテランは、2年間の活動休止を経て再復帰。その成瀬選手は「必死に走ってPPが獲れましたが、スタートにまだ慣れていないので、なんとかついていければ……」と謙虚に語った。一方、いむら選手に続く3番手は大八木龍一郎選手で、今回はクラブマンスポーツとのWエントリーとなる。

 決勝で好スタートを切ったかに見えた成瀬選手だったが、実は直前にクルマが動いており、オープニングラップのトップを走るも、やがてドライビングスルーの指示が出される。それを知ってか知らずか、いきなり猛チャージを見せる大八木選手。一方、いむら選手はスタートに出遅れて順位を落としていた。このトップ争いは、やがて三つ巴の展開に。加わったのは予選7番手からスタートで順位を上げてきた松本吉章選手だ。

 4周目の1コーナーで大八木選手がついにトップ浮上。2周後に成瀬選手がペナルティを消化して順位を落とすとさらに単独走行に持ち込んでいた。2番手はやがて4台で競われるようになるが、一旦7番手に退いていたいむら選手のペースが速く、一台、また一台とかわしていった。最終ラップには2番手に浮上していた東督也選手の背後にまでつけたが、あえて無理はせず。その結果、後続に4秒以上の差をつけた大八木選手が優勝を飾り、東選手、いむら選手の順でチェッカーとなった。

「乗り慣れていないクルマなので、勢いで行くしかないと、序盤からガンガン行きました。いいレースができて良かったです」と優勝の大八木選手は満足そうに語っていた。

ウエストv.GranzGによるGクラス優勝は大八木龍一郎選手(WEST v.Granz)。
CS2Gクラスの表彰式。左から2位の東督也選手、1位の大八木選手、3位のいむらせいじ選手。
ウエスト16CによるCクラスは松本吉章選手(ABBEY RACING)が優勝。
CS2Cクラスの表彰式。左から2位の入谷敦司選手、1位の松本選手、3位のk.k選手。

 CS2のレース後、大八木選手が休む間もなくVITAに乗り込み、決勝レースが行われたクラブマンスポーツ。予選で大八木選手をひとり上回り、PPを奪っていたのはTOMISAN選手で、「必死に走りました、一か八か。しばらく休んでいましたけど、詰めて練習をしていたので大丈夫です」と語っていたのだが……。

 スタートで大八木選手の先行を許したばかりか、TOMISAN選手はS字で追突されて早々にリタイア。あっという間に天国から地獄に叩き落とされていた。その直前に、予選3番手からひとつ順位を上げていたのが中里紀夫選手。2周に渡ったセーフティカーの先導の後、一旦は大八木選手を逃していたが、5周目からは中里選手のペースが上回っていく。背後まで迫った最終ラップでは、1コーナーで大八木選手をかわし、そのまま逃げ切って優勝を飾った。

「いろんなことがあったレースですが、勝ててよかったです。表彰台の真ん中に立つのは2019年の開幕戦以来。本当に久々です」と安堵の表情で語った中里選手に対し、「周回数を間違えていて、完全なミスです。もう1周あったら抜いていました」と大八木選手は連勝ならず、悔しそうに語っていた。3位は巽雅剛選手が獲得、初の表彰台獲得となった。

ヴィッツRSのエンジンが搭載されたVITA-01で行われるクラブマンスポーツ。中里紀夫選手(SHINSEI MiDLAND C72)が決勝35台の頂点に立った。
クラブマンスポーツの表彰式。左から2位の大八木選手、1位の中里選手、3位の巽雅剛選手。

 予選が始まった途端、通り雨に見舞われたのがフォーミュラEnjoyで、「びっくりしました、なんで雨降ってきちゃったのって。タイヤは新品で行っていたので『これ、まずいな』って感じだったんですが、だんだん止んできてくれたので、最後にまとめられました」と語ったのは、PPを奪った山崎一平選手。狙うは年をまたいでの3連勝だ。

 しかし、決勝ではスタートで大川文誠選手の先行を許して2番手に後退。それでも大きな遅れを取らずに山崎選手は食らいついていく。そして4周目の1コーナーで満を持してトップを奪還。すると一気にペースが上がり、6周目に記したファステストラップは、2年ぶりのレコードタイム更新ともなった。

「大川選手がちょっと速かったので、隙ができるのを待ってじっくり行こうかと。抜いてからはだいぶペースが上げられて。はい、狙っていたコースレコードが出せました」と山崎選手はしてやったりの表情。

 一方、「せっかくスタートを決めたのに、ミスもあって、維持できなかったのが悔しいです。大反省です」と語るも総合2位の大川選手は、原則56歳以上のドライバーを対象としたマイスターズカップを制した。だが、その表情には明らかに悔しさがにじんでいた。

ポール・トゥ・ウィンを飾った山崎一平選手(レプリスポーツエンジョイFE2)。2分26秒617をマークしてコースレコード更新も果たした。
フォーミュラEnjoyの表彰式。左から2位の大川文誠選手、1位の山崎選手、3位の小嶋禎一選手。
マイスターズカップ優勝は、総合2位入賞を果たした大川選手(カンジ・レーシングシミュレータージム)。
フォーミュラEnjoyマイスターズカップの表彰式。左から2位の小嶋選手、1位の大川選手、3位の亀蔵選手。

 FFチャレンジには、レジェンドとまで呼ばれる松下裕一選手が1年ぶりに参戦。堂々のPP獲得にも「いい時期だから今年も出たんですけど、思うような感覚で走れないんですよ。ちゃんと練習しなきゃって思いましたね」と苦笑いすることしきり。

 決勝でもトップでレースを開始した松下選手だったが、予選2番手の林陽介選手が食らいついて離れず。しかし、抜くまでには至らないという展開が続く。やがて陽介選手の兄で、ディフェンディングチャンピオンの林大輔選手も熾烈なトップ争いに加わっていく。

 終盤のペースは、明らかに松下選手のそれではなかった。というのも、「多分、シケインで変に走ったから、残り2周でドライブシャフトがガタガタと来だして。でも、やめられないからごまかしながら走っていました。勝てて良かった」と、僅差ながらも逃げ切りを果たした松下選手。

 これに対し、「最後の方はペース上がってなかったからミスを誘っていたんですが、レジェンドの壁はなかなか(笑)。特にS字がおかしかったけど、S字で差すのは無理だし、しんどいレースでした」と陽介選手は悔しがる。しかし、「次は行きます!」ともつけ加えていた。

EG6とEK9が集うFFチャレンジは、EG6を駆る松下裕一選手(RSファクター&クルー・WM・ATS)が逃げ切って優勝を遂げた。
FFチャレンジの表彰式。左から2位の林陽介選手、1位の松下選手、3位の林大輔選手。

 鈴鹿クラブマンレースのRound1とRound3で開催されるサーキットトライアルの第1戦。今年もB車両によって争われるが、クラス区分に変更があった。まずB-1クラスは1500cc以下の前輪駆動及び四輪駆動の国産車、B-2クラスは1500ccを超える前輪駆動で過給機のない国産車、B-3クラスは後輪駆動で過給機のない国産車、B-4クラスは1500ccを超え2000cc迄の四輪駆動及び過給機つきの二輪駆動の国産車、そしてB-5クラスはB-1からB-4に該当しない車両という具合に改められた。

 なお、地方選手権ではないため、3台未満でもクラスは成立するが、シリーズとしての表彰は行われないこととなっている。今回はB-2クラスに5台、B-3クラスに6台、B-4クラスに1台、B-5クラスに2台、さらにクローズドクラスの1台を加え、計15台で争われた。

 サーキットトライアルのヒート1は通常、タイムスケジュール上の最初である早朝に行われがちだが、今回はレースの予選、決勝の合間に行われたため、2ヒートで極端なコンディション変化はなかった模様だ。

 ヒート1ではGT-RでB-5クラスを戦う小嶋健太郎選手が、計測1周目からトップタイムをマーク。同クラスのポルシェ911GT3を駆る浅井祐二選手を8秒近く引き離す。そしてB-3クラスでは長らくトップを保っていたS2000の高橋太一選手を、Zの中嶋努選手が終盤に逆転。そしてB-2クラスでは序盤のうちにトップに立ち、徐々にタイムを詰めていったFD2シビックの酒井利恭選手が、ラストラップにベストタイムを更新していた。

 ヒート2でもB-5クラスの小嶋選手は計測1周目にトップタイムを記したばかりか、タイムアップにも成功。堂々の総合優勝を飾ることとなった。小嶋選手は「GT-Rは1周目から出せるんですが、タイヤがタレるのが四駆だから早いのかもしれませんね。この結果には満足しています。コロナ禍の中、開催してくれた関係者の方に、本当に感謝です」と語った。

 B-3クラスのヒート2では、中嶋選手もまた計測1周目からベストタイムを更新。勝利を確信したのか、早々にピットに戻る余裕さえ見せていた。「ヒート1はちょっとアタックする位置を失敗し、それと走りも失敗していたので、それをヒート2で修正したって感じでした。もうちょっと頑張りたかったんですけど、皆さんタイムが上がらなかったので、今日はこれで良しとしたいです」と中嶋選手。総合3位も獲得した。

 B-2クラスではなかなかタイムの出ない酒井選手を、一旦はFD2シビックの木村芳次選手が上回るも、それでもヒート1のベストタイムには及ばず。酒井選手はまたもラストアタックでトップに立ったが、自己ベストの更新はならなかった。「コンディションは2ヒートとも同じ感じで、どっちが特別よかったわけではなかったですね。なかなかいいラップが取れなくて、何回もやり直していたんですが、それでも勝ててとてもうれしいです」と酒井選手。総合でも6位の大健闘。そしてランサーでB-4クラスを孤軍奮闘の小山裕二選手は総合12位だった。

B-1からB-4クラスに該当しない車両のB-5クラスでGT-Rを駆る小嶋健太郎選手(GTR NISMO)が総合優勝。
サーキットトライアルの表彰式。左からB-4クラスの小山裕二選手、B-5クラスの小嶋選手、Cクラスの小出芳嗣選手。
B-3クラス優勝は、総合3位でフィニッシュした中嶋努選手(DLアクアNUTECレイズZ)。
サーキットトライアルB-3クラスの表彰式。左から2位の松宮吉則選手、1位の中嶋選手、3位の高橋太一選手。
5台で競ったB-2クラスはシビックの酒井利恭選手(RG-O・ENKEI・シビック)がヒート1のタイムで逃げ切り優勝となった。
サーキットトライアルB-2クラスの表彰式。左から2位の木村芳次選手、1位の酒井選手、3位の島田博史選手。
3月1日にホンダモビリティランドへと社名変更され、また鈴鹿サーキットは開場60周年を迎えたタイミングとなりロゴマークを一新した。
年初より改修工事が行われている南コース。コース全面の再舗装を始め、カーブストーンの補修、コースラインの塗装等が施され、リニューアルは3月下旬。

フォト/遠藤樹弥、はた☆なおゆき、吉見幸夫 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部

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