グラスツールレース「富士チャンピオンレースシリーズ」がシーズンイン。6カテゴリーでドライバーたちが切磋琢磨!
2022年4月14日
富士スピードウェイの今季最初のレースとなる「富士チャンピオンレースシリーズ第1戦」が、4月2~3日に穏やかなコンディションのもとで開催された。新設のFCR-86/BRZレースを含む6カテゴリーで、それぞれ激しいバトルが繰り広げられた。
2022 富士チャンピオンレースシリーズ第1戦
開催日:2022年4月2~3日
開催地:富士スピードウェイ(静岡県小山町)
主催:富士スピードウェイ株式会社、FISCO-C
ナンバーつきの初代トヨタ86とスバルBRZを対象とするFCR-86BRZレースが初開催。いきなり21台を集める盛況ぶりとなった。その中で最速タイムを記したのは「今まで経験がほとんどなくて、スポットでVITAとか去年の暮れに富士でやった耐久だけなんです。でも、昨日まで1回も出せていないタイムで、頑張ってくれたメカさんと一緒に出せた感じです」と語る奈良敬志選手だった。
しかし決勝では、好スタートと鋭い1コーナーへの斬り込みで予選4番手のYOSHIKI選手がトップに浮上。奈良選手は米田利唯選手にもかわされてしまう。その後は三浦尭保選手も加えて4台で激しくトップを争い合う。2番手以下は目まぐるしく順位が入れ替わったものの、YOSHIKI選手は最後までトップを譲らなかった。
「皆さんすごくフェアなバトルをしてくれたので、安心して走れました。『久しぶりの表彰台だな、どうしよう』と思いつつ(笑)、冷静にも走れました」とYOSHIKI選手。奈良選手は2位ゴールで「経験の差が出ちゃいましたね」と反省することしきりだった。
ナンバーつきVitzによるFCR-Vitzにも20台がエントリー。その中でフロントローを分け合ったのは、ともにVitz Race時代にチャンピオン経験を持つイシカワヨシオ選手と三浦康司選手。僅差ながらも三浦選手を抑え、「最後の周がいちばん良かったんだよ、最終コーナーまで。立ち上がったら前に誰もいなかったけど(笑)。その前にスリップストリームがうまく使えたんでね」と、イシカワ選手は上機嫌。
だが、決勝では三浦選手が好スタートを切り、さらに予選3番手のジェネリック内田選手に1コーナーでインを刺され、イシカワ選手は3番手に後退する。内田選手は2周目に三浦選手を抜いてトップに立つも、次の周に抜き返されたばかりか、スタート直後の1コーナーでインカットがあり、これが走路外追い越しと判定されてドライビングスルーペナルティを科されてしまう。続いて三浦選手に襲い掛かったのは白井涼選手。さらにいったん離されていたイシカワ選手も近づいて、終盤は三つ巴のトップ争いになる。
白井選手もトップを走ったが、「最終ラップの1コーナーをいかにトップで入るか考えながら走っていました」という三浦選手に、経験という“分”があった。三浦選手が優勝を飾り、2位は白井選手。イシカワ選手は「悔しい~」と3位に甘んじた。
歴代のナンバーつきロードスターで競われるロードスターカップには5クラス28台がエントリー。日曜日の早朝に行われた予選は雨や霧に祟られて、残り8分の段階で赤旗終了となっていた。
「降っているんだか降っていないんだか分からない中途半端な状況の上に、赤旗が出る直前は1コーナーからヘアピンまで何にも見えませんでしたが、早く出ていって一発でタイムを出して首位をキープできました」と語る2.0オープンクラスの山崎善健選手がPPを獲得。背後には渡邊達也選手を筆頭とする1.8クラス勢が並ぶ中、総合3番手には1.5オープンクラスの山本謙悟選手が割って入っていた。
決勝はSCスタートでの開始となり、3周の先導の後にバトルが開始される。1コーナーの進入で山崎選手が姿勢を乱すも何とかトップをキープしたが、後方ではコースアウトが続出。その間に山崎選手に続いたのは山本選手。コーナーで差を詰める山本選手は、500ccの排気量差は如何ともし難くストレートで離される。やがて1.8クラスの大矢明夫選手と石森聖生選手も加わって、クラスの壁を越えた壮絶なトップ争いが繰り広げられるように。
その勝負は最終ラップのダンロップコーナー直前で予想外の結末を迎えることとなる。山本選手と大矢選手が接触、ともに大きく順位を落としたのだ。辛くも逃げ切った山崎選手が総合優勝を飾り、「1周ごとに状況が変化していたので、それに対応するのが大変でした。一度後ろから追突されましたが、うまく対処することができました」と安堵の表情を見せた。
総合2位で1.8クラスの逆転優勝は「予選は赤旗があって結果が出しづらかったんですが、決勝では追い上げられて良かったです」と語る石森選手。クラス2位は小林哲男選手が獲得。そして土壇場で1.5オープンクラスの優勝が飛び込んできたのは茂木文明選手で、「去年は山本選手にやられっぱなしだったので、慎重に行ったのが良かったんでしょう」と本音のコメント。
1.5チャレンジクラスでは中村進選手が終始トップを快走し、「ウェットの用意をしていなかったので神経を遣いました。壊さないよう、事故らないよう運転していたのが良かったのかもしれません」と、胸を撫で下ろしていた様子。1.6クラスは「最終ラップの最終コーナーから抜けた直線で、ギリギリ何とか」野木強選手を抜き返した竹田幸一郎選手が優勝を飾っている。
N1車両の86&BRZレースと、ナンバーつきチューニングカーによる富士86BRZチャレンジカップは、今年も混走で争われる。予選で総合トップ、PPを獲得したのは「クルマは安定しているので安心して踏めるしカウンター当てられます。僕も練習の甲斐がありました。PPは初めてで、公式戦はこれが3戦目です」と語る86&BRZの服部文雄選手だった。総合2番手はチャレンジカップJP-2Rクラス最速の小野田貴俊選手。こちらは「もうちょっと行けると思ったんですが、意外と曲がらなかったので、ちょっと足りなかったですね」と、やや不満げに語っていた。
決勝も予選同様ウェットコンディションで、SC先導2周後からレースが開始された。序盤は小野田選手、そして同じクラスの古田聡選手を背後に置いた服部選手だったが、中盤からのペースは秒単位で上回るようになり、一時は3秒以上も後続を引き離していた。しかし終盤になると86&BRZの森田幸二郎選手のペースがさらに優るようになり、総合4番手から1台、また1台と抜き続け、最終ラップの1コーナーではついに服部選手をもパス。
「車が良かったので、比較的余裕があったもんですから後半勝負と。予定どおりでした」と語る森田選手は、沖縄からの遠征で、しかも今回が初優勝! 総合3位でチャレンジカップJP-2R優勝は小野田選手。しかし、「今日はあんまりね。しょうがないですよ、道具の差もありますから。次、ぼちぼち見直してまた頑張りたいと思います」と最後まで不完全燃焼の週末になってしまったようだ。
そしてJP-2Sクラスの優勝は石川賢志選手が獲得。五十嵐剛木選手と最後まで競い合い、「ギリギリで勝てました。最後はストレートで抜いて来て、本当に鼻先だけという感じでした。優勝は初めてです。ようやく……」と、大満足の様子。JP-3Sクラスの梅原雄一選手も初優勝。だが、「雨は下手です。もうちょっと練習します。納得の走りではなかったです」と、それぞれ心境は異なっていた。
PSCJことポルシェスプリントチャレンジジャパンは2レース開催。予選で第1戦のグリッドを決め、PPはakiratea選手が獲得。そのakiratea選手、「まだ車に慣れていなくて、雨の方が限界は下がるから、経験豊富な人たちとのギャップも詰まるんで。雨で救われました」と、恵みの雨であることを強調した。
決勝の第1戦はSCスタート。だが3周の先導では十分ウォームアップできなかったようで、コースアウトが多発。クラッシュもあったことから再びSCが導入された後、赤旗中断となった。再開から間もなくダンロップコーナー進入でakiratea選手を抜いてトップに立っていたのはKEN YAMAMOTO選手。そのまま逃げ切って、PSCJデビューウィンを達成した。
「メカニックが優秀なので、任せていたらバッチリ合わせてくれました」とYAMAMOTO選手。GT3-Ⅱクラスでは「回っちゃうとおしまいなので、とりあえず置きにいきました」と語る荻原秀樹選手の優勝となった。
第2戦のグリッドは第1戦のベストラップ順に決められ、Masa TAGA選手がYAMAMOTO選手を従えてPPを獲得。再びSC3周の先導の後、レースは開始された。連勝の期待がかかったYAMAMOTO選手だったが、300Rで痛恨のオーバーランがあり、その後もダンロップコーナーのスピンで4番手に後退。
これでakiratea選手、小林賢二選手が2番手、3番手に浮上したのだが……。5周目のヘアピン進入でクラッシュが発生、荻原選手がマシンを止めていた。すぐに赤旗が出されてレースは終了。1周さかのぼって順位が決定したため、YAMAMOTO選手は命拾いの2位となり、TAGA選手の優勝となった。
「ノーミスで行けて良かったです。去年のPCCJのAmクラスでチャンピオンを獲りましたが、今年はこのシリーズで。予選が全然ダメで、セットを失敗したので、見直して良かったです。メカさんのおかげです」とTAGA選手。
GT-3Ⅱクラスでは佐藤俊介選手が優勝し、「カップカーで富士を走るのは初めてで、ミシュランのレインタイヤも初めて。とにかくスピンとかコースアウトだけは絶対しないようにやったら結果もついてきたので、良かったです」と佐藤選手。そして孤軍奮闘となったGT4クラスでは、19歳の山本聖渚選手が2戦とも完走を果たし、「新しい発見もありました」と、特に第2戦で大きな収穫があったようだ。
フォト/加藤智充 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部