併催サポートレースのTCRジャパンシリーズとN-ONEオーナーズカップも激戦のバトルが繰り広げられた。

レポート レース

2022年4月20日

4月9~10日に全日本スーパーフォーミュラ選手権、そして全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権の開幕戦サポートレースとして、TCRジャパンとN-ONEオーナーズカップが開催された。舞台となった富士スピードウェイは、首都圏よりちょうど1週間遅れで桜が満開。周辺のみならずコース脇にも少なからず植えられており、激しいバトルの背景を映えさせていた。

2022 TCR JAPAN Series 第1戦 Saturday Series/Sunday Series
N-ONE OWNER'S CUP Rd.2
(2022年JAF全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権 第1戦内)

開催日:2022年4月9~10日
開催地:富士スピードウェイ(静岡県小山町)
主催:富士スピードウェイ株式会社、FISCO-C

 国際規格のツーリングカー「TCR」によって争われるTCRジャパンシリーズは今年も全6戦の開催を予定し、引き続き土曜日にはサタデーシリーズ、日曜日にはサンデーシリーズが行われることとなっている。決勝は23分間+1周で競われることも従来どおりだ。

 その話題と言えば、コントロールタイヤがダンロップに改められたことと、昨年サタデー/サンデーシリーズのWタイトルを獲得したHIROBON選手が愛機クプラTCRを新車にスイッチし、連覇を目指すことだ。

「タイヤはライフが長くなったし、車も進化して乗りやすくなって、しかもストレートも速くなりました」とHIROBON選手は上機嫌。その気持ちを表すかのように、2回の予選はいずれもトップタイムを記録し、Wポールポジション(PP)を獲得した。それだけに「決勝もスタートさえ失敗しなければ、大丈夫でしょう」と語っていた。

 サタデーシリーズ決勝では予選3番手から塩谷烈州選手が好スタートを切るが、1コーナーまでにHIROBON選手の前に出るまでには至らず。コカコーラーコーナーでも逆転を試みるも仕掛けきれず、その間にHIROBON選手を逃したばかりか、近づいてきた予選4番手の加藤正将選手にダンロップコーナーで抜かれてしまう。

 1周目を終えた時点で1秒半のリードを築いたHIROBON選手に、2周目からは加藤選手と塩谷選手が連なって急接近。やがて大蔵峰樹選手と猪爪杏奈選手も加えて5台でのトレイン状態とするも、少しもプレッシャーとなっていなかったのは、1周コンマ1秒と違わぬ精度で周回を重ねていたからだ。

 その上で「最後の方だけ振り切るつもりだった」というHIROBON選手が、最終ラップにまさかのトラブルを抱えた。ストレートで突然失速、最高速も20km/h以上ダウン! この機を逃さず1コーナーで加藤選手が前に出て、コンマ2秒差で逃げ切ったのだ。3位は塩谷選手で、4位でゴールの大蔵選手は違反スタートのペナルティで5秒加算され、猪爪選手と順位を入れ替えていた。

「諦めの悪さと、スタートから(タイヤが)コールドのスピードでしょう。無駄にレースやっている経験で(苦笑)、そこしかチャンスがないと思っていたので、すぐ2番手に上がれたのが勝因ですね」と加藤選手。

 HIROBON選手の失速について、チームのBRP奧村浩一代表は「たぶんスロットルのセンサー。今のクルマって電子制御だから、何らかのエラーが出たのかも。カプラーとか原因になりそうなものは、すべて交換したのでたぶん大丈夫でしょう」と分析したが、果たしてサンデーシリーズ決勝では?

TCRJサタデーシリーズ優勝は加藤正将選手(Audi Team Mars)。
左から2位のHIROBON選手、1位の加藤選手、3位の塩谷烈州選手。

 サンデーシリーズ決勝で無難なスタートを切ってトップに立ったのはHIROBON選手。まだタイヤが温まっておらず、ヘアピンで姿勢を乱すが、トップは何とかキープする。そしてやはりスタートで順位を上げていた塩谷選手が猛攻する展開。

 HIROBON選手はサタデーシリーズほどの安定感がなかったものの、終盤はじわりじわりと差を広げ、最後は約1秒4差で塩谷選手を抑えてトップチェッカーを受けた。3位は加藤選手で、4位は今度こその大蔵選手。

「今日は何とかなりました。最後まで心配でしたけどね! 前半はペース抑えて、後半のために。でも、前半思いのほか来られたので、少し焦りました」とHIROBON選手は苦笑い。

TCRJサンデーシリーズ優勝はHIROBON選手(バースレーシングプロジェクト【BRP】)。
左から2位の塩谷選手、1位のHIROBON選手、3位の加藤選手。

 今回が第2戦目となるN-ONEオーナーズカップでは、予選の終盤に転倒車両があり、赤旗が出されて早々に終了する。その状況の中、計測1周目にトップタイムを記した塚原和臣選手がPPを獲得した。

「富士でPPは初めてです。3年目で初めて獲れました。計測1周目がエンジンも冷えていて、タイヤも冷えていてちょうど良かったんじゃないでしょうか、気温も高かったですし。1周でうまくまとめられました。ただ、決勝は厳しそうな気がするんですが、表彰台には踏み留まりたいんですけど」と塚原和臣選手。

 弟の塚原啓之選手が、近藤雅之選手に続く3番手につけるも、走路の安全規定および走路外走行複数のペナルティで3グリッド降格となり、代わって亀井涼選手が3番手に繰り上がる。

 決勝では塚原和臣選手がスタートを決めて、トップからレースを開始。これに近藤選手、亀井選手が続くが、2周目に差し掛かって間もなく塚原啓之選手が4番手に浮上。その直後のヘアピンで接触があり、1台が転倒してコースサイドに留まったことから、セーフティカー(SC)による先導が2周にわたって行われた。

 SCがピットに戻った後のリスタートを塚原和臣選手がしっかり決め、近藤選手も負けず劣らずで、逃してはくれず。むしろその後方でうまいリスタートもあり、塚原啓之選手が3番手に浮上。抜かれた亀井選手は吉田祐太選手の先行もその後許していた。

 だが、塚原和臣選手に近藤選手が迫れたのは1周のみ。予選タイムをも上回るファステストラップを塚原和臣選手は叩き出し、これを決め手として残る2周は逃げ切り成功。決勝前の弱気なコメントとは裏腹な展開になった。

「オイルの番手を変えたりしてだいぶセッティングも変えたんですが、それが功を奏してか、逆にいい方向に運びました。何とか逃げ切れて予想外の展開でした」と塚原和臣選手。2位は近藤選手が獲得し、そして塚原啓之選手が3位でゴールしたことから、「よく上がってきたね」とねぎらいの言葉も欠かさず。

N-ONEオーナーズカップ優勝は塚原和臣選手(ツカハラN-ONE)。
第2戦の表彰式。左から2位の近藤雅之選手、1位の塚原和臣選手、3位の塚原啓之選手。

フォト/石原康 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部

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