鈴鹿サーキット南コース改修による変化とは?

その他 カート

2022年4月26日

鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)国際レーシングコースのバックストレッチ南側に位置する南コースが、1~3月の全面改修を完了。4月17日にリニューアル後初のレーシングカートが行われた。そこで、レースに参加したドライバーたちのコメントとともに、南コースがどう生まれ変わったのかを詳しくお伝えしていこう。

 全日本カート選手権やワールドカップカートレースの舞台として幾多のドラマを生み出し、また鈴鹿サーキットレーシングスクールのトレーニング会場として新しい才能を輩出してきた南コース(全長1264m/幅員10m)は、今年1月4日から3月22日にわたって営業を休止し、全面的な改修工事が実施された。これは1989年の同コース誕生以来、最大規模のリニューアルだ。

ロードローラー等の大型重機が入ってコース全体の大掛かりな改修となった南コース。

 コースは全周にわたって路面を再舗装し、経年劣化による凹凸や舗装の継ぎ目がなくなって、表面が極めてスムーズになった。その舗装に用いられた特殊アスファルトは、水が溜まりにくい材質が選ばれ、加えてコース脇の排水機能も大幅に改善。25R先など雨天時に水溜りが発生しやすかった箇所のコースサイドには水を流すスリットが切られた。これによって路面のグリップが向上するとともに、水溜りの発生を大幅に抑えている。

真新しさを感じさせる黒々としたアスファルト。凹凸がなくなってフラットな路面に変貌を遂げた。
雨天時の水捌けを向上させるために、コースサイドには要所にスリットが入れられている。

 コースサイドの縁石も変更。CIKの規定に沿って、イン側は高さが10cmから6cmに下げられ、バイク走行ではヒザが当たりづらくなった。アウト側の縁石は基本的に以前のままなのだが、9番ポスト前の部分のみ薄い三角錐状の複雑なくぼみを持つ“ネガティブカーブストーン”が設置された。ここはCIKの規定では樋状のくぼみを持つものとされているのだが、バイク走行での安全性を考慮して、今回のネガティブカーブストーンが採用されている。

縁石もリニューアルされ、アウト側の高さはそのままに、イン側は以前よりも低くなった。
縁石に凹凸がつけられているネガティブカーブストーン。極力乗り上げないようにしたい。

 また、コース上にペイントされる白線などのラインはFIMの規定に沿って、すべて滑りにくい塗料を使用。その幅はFIA/CIK/FIMの規定に沿って、従来の15cmから10cmに細く変更されている。ピットレーンのダミーグリッドも、真新しいポジション表示のラインとグリッド番号がペイントされ、各車のポジションの視認性が大きく向上している。

ラインが細くなったことでコース幅が広く感じられるようだが、実際は錯覚のようだ。
ピット前のダミーグリッドにはポジションのラインが表示されてとても分かりやすくなった。

 コースサイドのスポンジバリアは、中身をそのまま用いてカバーを新しいものに変更。屋根付きピットやコントロールタワーは再塗装されて綺麗になり、そこに記されていたロゴタイプは、3月1日の社名変更に伴いお目見えした新しいものに。表彰式で使用するバックボードのデザインも、モノクロームの新ロゴ入りのものに一新された。また、数年前の落雷で故障したままになっていたインフィールドの電光掲示板は撤去されている。

転倒時に側壁への衝突を吸収してくれるスポンジバリアも張り替えられて一新された。
鈴鹿サーキット開場60周年となる2022年、南コースも新たなロゴへと改められた。

 コースの機能・美観面の改善に加えて、レース参加者や観客の利便性向上も図られ、最終コーナー外側と西パドック奥のトイレにはシャワートイレを採用。加えて最終コーナー外側のトイレには、男性用/女性用とも更衣室が新設された。さらに、コースと外周路を区切るフェンスは、根元が腐食するなどで危険になっていた部分を新しいフェンスに変更。それに伴い、フェンスの色も以前のグリーンから、コース外側からの写真撮影で邪魔になりづらいダークブラウンに替わった。

最終コーナー外側にあるトイレの個室の一角に設けられた、着替えに重宝する更衣室。
劣化のあったコースを囲うフェンスは新しいものに交換され、ダークブラウンとなった。

 こうして全面的に生まれ変わった南コースでは、事前にカート、バイク、フォーミュラを走らせて路面の油浮きを取り除いた上で、4月17日にリニューアル後最初のレースとして2022 鈴鹿選手権シリーズ第1戦 カートレース IN SUZUKAが開催された。

 参加者からは「コース幅が広くなったように感じる」という声が複数聞かれたが、数字上はコース幅に変わりはなく、これはコース脇の白線が細くなるなどの変更による錯覚だと思われる。

JAF地方選手権FS-125/X30部門参戦・加納康雅選手のインプレッション

「新しくなったコースではフロントタイヤが遠心力に負けずにちゃんとついてくるんですよ。でも、スピードが速くなっているからなのか、リアタイヤは遠心力に負けちゃって、ずっと流れていくイメージなんです。オーバーステアでもなくアンダーステアでもなく、なんかよく分からない状態です。僕はちょっと乗りにくく感じていますね。前の路面だと、リアタイヤが滑っても滑る中で止まるところがあるというか、滑ってもコントロールがしやすかったんです。でも新しい路面は滑り出したら止まらなくて、ずっと横に流れていく感じなんです」

鈴鹿選手権シリーズYAMAHA SSクラス参戦・高村宏弥選手のインプレッション

「路面がすごくスムーズになって走りやすくなりました。逆にスムーズすぎてブレーキングのポイントとかがすごく難しくて、特にヘアピンが難しいです。あそこが唯一低速コーナーで、行き過ぎちゃうので、気をつけて走っていました。昔の路面だったら多少デコボコがあって、ヘアピンの手前も路面のつなぎ目みたいなのがあったんで、それをブレーキングの基準にしていたけれど、それがなくなっちゃって、ブレーキングが難しくなりました。速く走るポイントはブレーキングですね。まだ意識しながら走っている感じですね」

 タイムトライアルはドライコンディションで行われ、開催全8クラス(うち1クラスは今季新設されたもの)のうち6クラスで従来のコースレコードを更新。ドライバーたちの話題となっていたグリップ向上がタイムで実証された。

 ただし、レコードタイムの上がり幅は6クラスの平均で0.458秒強、最大だったSenior MAXで0.643秒。2週間前の練習走行では2秒近いタイムアップが確認されていたといい、今回の上がり幅は予想を下回るものに留まった。これはレースウィークに強い風が吹くなどコンディション面の影響があったためと推察され、今後のレースではさらなるタイムの向上が予想される。

 大会当日は午後から本降りの雨に見舞われウェットコンディションでのレースとなったが、以前のような深い水溜りがコース上に現れることはなかった。この点でもコース改修の効果が確かめられたと言えよう。

 南コースでは11月12~13日に全日本カート選手権・OK部門第9戦/第10戦及び東西統一競技会の開催が予定されている。その大一番に向けてドライバーやチームがどれほど新路面の攻略を進めていくか、大いに興味がそそられるところだ。

フォト/吉見幸夫、JAFスポーツ編集部 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部

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