小田優選手、最高峰部門鮮烈デビューの開幕2連勝!

レポート カート

2022年4月28日

全日本カート選手権OK部門の2022シリーズが開幕。モビリティリゾートもてぎ北ショートコースで行われた第1戦/第2戦ではニューカマーたちが大活躍を演じ、同部門デビュー戦の小田優選手(DragoCORSE)が2連勝を飾った。

2022年JAF全日本カート選手権OK部門 第1戦/第2戦
開催日:2022年4月23~24日
開催地:モビリティリゾートもてぎ北ショートコース(栃木県茂木町)
主催:株式会社モビリティランド

 国内カートレースの最高峰、全日本カート選手権OK部門の2022シリーズ開幕戦は、栃木県・モビリティリゾートもてぎ北ショートコースで開催された。レースは大量12名のルーキーたちの参戦もあって、出走32台の盛況ぶりに。チーム移籍やマテリアル変更で心機一転のドライバーも多く、パドックの光景は2021年から大きく様変わりした。

 シリーズは全5大会/10戦で構成され、今季も1大会2レース制を採用。まずタイムトライアル(TT)で第1レース・第2レース両方の予選のスターティンググリッドを決め、その後に予選と決勝を2回繰り返す方式だ。

 2DAY開催のもてぎ大会では、1日目にTTと第1戦の予選を、2日目に第1戦の決勝と第2戦の予選・決勝を行う。1日目はまずまずの好天。最高気温は25度を越え、4月下旬にして初夏を思わせる暑さとなった。

 1日目午後のTTは、全32台を抽選でふたつのグループに分けて行われた。そこで35秒004の総合トップタイムをマークしたのは、長年履きなれたヨコハマからブリヂストンへとタイヤをチェンジして話題を呼んだ三村壮太郎選手(Rosa Drago CORSE)だった。だが、三村選手は走路妨害でトップタイム末梢のペナルティを受け、コースレコード更新は幻に終わった。

 代わってTTトップとなったのは、三村選手と同じ第2グループで2番手のタイムをマークした小田選手。得意とするコースでのOK部門デビュー戦で、予選両ヒートのポールを獲得だ。半田昌宗選手(TEAM WOLF)がセカンドロウを獲り、三村選手は3番手に。ブリヂストン勢が上位を占拠する中、ルーキーの加藤大翔選手(PONOS HIROTEX RACING)が少数派のヨコハマ・タイヤで4番グリッドにつけて場内をざわつかせた。

 昨年のチャンピオン佐々木大樹選手(TONYKART RACING TEAM JAPAN)は7番グリッド、FS-125チャンピオンとしてOK部門に挑んできた堂園鷲選手(Energy JAPAN)は9番グリッドに。ダンロップ・ユーザーでは15番手の鈴木斗輝哉選手(TGR TEAM TAKAGI PLANNING)が最上位だった。

 続いて行われた第1戦の予選では三村選手が速さを見せた。危なげのないオーバーテイクでスイスイと順位を上げ、トップでゴールして決勝のポールを獲得。小田選手は三村選手を追って2番手でゴールし、それに続いたのは佐々木選手と堂園選手だ。

 5番手は地元勢のルーキー野澤勇翔選手(BirelART Access Racing)。前半戦をリードしてみせた加藤選手は、3番手走行中の最終ラップにコースを飛び出したが、それでも6番手でゴールしてまずまずのグリッドにつけた。

 一夜明けて大会最終日。空は全面を雲に覆われ、気温も1日目からかなり下がった。各メーカーのタイヤと気候のマッチングが興味をそそるところだ。第1戦の決勝は午前9時15分のスタート、30周の長丁場だ。

 その序盤戦ではベテランの佐々木選手が躍進した。オープニングラップで2台をかわしてトップに立つと、後続を引き連れてレースを牽引していく。しかし、佐々木選手は5周目にトップの座を三村選手に明け渡すと、徐々に後退。5番手走行中の21周目にストレートで突如スピンを喫してマシンを止めた。その後も佐々木選手はトラブルやアクシデントでまともに戦うことができず、もてぎ大会は不本意なレースに終始してしまった。

 ラップリーダーは三村選手、堂園選手と代わり、続いてその座を引き継いだのは佐野雄城選手(BirelART Access Racing)だった。8番グリッドからぐいぐいと順位を上げてきた佐野選手は、11周目にトップに立つと背後に0.5秒強のギャップを築いて疾走する。だが、佐野選手はレースが終盤戦に入るとタイヤが苦しくなり、22周目にトップから陥落、徐々に優勝争いから引き離されていった。

 終盤のトップ争いは、三村選手と小田選手の一騎討ち。ここで最後まで速さを見せたのは小田選手だった。24周目に三村選手をパスして先頭に立った17歳のルーキーは、タイヤが厳しくなった30歳のベテランをじわじわと引き離していく。そしてチェッカーの瞬間、小田選手は右手でナンバー1サインを掲げて勝利を宣言した。3年間のFS-125部門参戦で果たせなかった全日本初優勝を、最高峰部門の初レースで達成だ。

 0.8秒ほど後れて三村選手が2位フィニッシュ。佐野選手は3位に終わったが、光る速さをようやく結果に結びつけ、OK部門2年目にして初表彰台獲得に成功した。ダンロップ勢もまずまずのパフォーマンスを見せ、鈴木選手が24番グリッドから7位でフィニッシュしている。

「めっちゃうれしいです、本当に。全日本のFS-125部門でも優勝経験がなかったので、いちばん上のクラスで勝ててうれしいです」と喜びを爆発させた小田優選手。「自分なりにペースを抑えて走っていて、予選で他の人よりタイヤを残すことができたのがいちばんの勝因かなと思います。決勝は2番手スタートだったので、ある程度落ちることは覚悟していて、落ちてからすぐ上がるんじゃなく、タイヤを傷めないように少しずつ上げていこうと思っていました。6番手くらいまで(の後退)は許容範囲だと考えていました。終盤は三村選手がトップを走っていたんで、その後ろに着いて後続との差を広げようと開けようと思いました。トップに出て1周して後ろを見たらだいぶ離れていたので、(三村)壮太郎君は抜く前からだいぶタイヤが滑っていたし、これで大丈夫だと思いました。スタート前は顔には出さなかったけれど、ものすごく緊張していました。次はもうちょっと順位を抑えながら、もっとタイヤをうまく使って走りたいです」と語った。
2位は三村壮太郎選手、3位は佐野雄城選手。
第1戦表彰の各選手。

 第2戦の予選はお昼休みの前に行われた。ここで鮮烈な速さを見せたのが加藤選手。スタートで一気にトップを奪うと、1周目から独走を続けて決勝のポールを獲得した。2番手のゴールは、チームを移籍して2年目のOK部門に挑む渡部智仁選手(Rosa Drago CORSE)。それに小田選手と三村選手が続いた。

 決勝は予定どおり午後3時にスタートを迎えた。雲は厚さを増し、わずかな雨がポツポツと落ち始めたが、スリックタイヤでのレースには支障のない程度に留まっている。

 ポールの加藤選手はここでも圧巻のスピードを披露、スタートを決めて序盤でリードを2秒以上に開いてみせた。13周目まで先頭でレースを引っ張った加藤選手は、中盤から急速に戦闘力を失ってポジションダウン、16周目にマシンを止めたのだが、14歳のルーキーとヨコハマの鮮烈な速さはレースを見守る人たちに強い印象を残した。

 加藤選手からラップリーダーの座を引き継いだのは、堂園選手だった。11番グリッドからの挽回でトップに立った堂園選手は、目を見張るスピードで一気に独走態勢を築いた。この全力疾走には理由があった。前走車の群れを縫っての追い上げの代償で、堂園選手のマシンのフロントフェアリングは接触により内側に入っていた。5秒加算のペナルティは確定的だ。それに気付いた堂園選手は、リードを5秒以上に広げて勝利を手にするべく、タイヤの負担を承知でマシンにムチを入れていたのだ。

 レースが終盤戦に入ると堂園選手の不安は的中、無理を強いてきたタイヤの劣化が進んでスピードを失った。そこにセカンドグループの熾烈なバトルから抜け出してきた小田選手が急接近する。残り3周、ついに小田選手が堂園選手を目の前に捕らえた。そして、残り2周で逆転。ウィナーは今度も小田選手だった。破竹の2連勝を遂げた小田選手から0.5秒ほど後れてフィニッシュした堂園選手は、後続を5秒以上引き離しており、ペナルティを受けてもなお2位の座を守った。これでルーキー勢が1-2フィニッシュだ。

 3位は最終ラップに順位を上げた佐野選手のものに。連続表彰台の佐野選手は、ポイントランキングでも首位の小田選手に続く2番手に着けた。4位は25番グリッドから急浮上の清水啓伸選手(Drago CORSE)。3番手を力走した渡部選手は、最終ラップの攻防で順位を下げるも5位に入賞。6位の半田選手、7位の金子修選手(TONYKART RACING TEAM JAPAN)も活発な戦いで場内を沸かせた。

開幕2連勝の小田選手は「最初はペースを落としてタイヤを労わりながら走っていたんですが、途中から順位を落としてしまって。そこはあまり気にしなかったんですけれど、堂園選手があまりにもリードを広げてしまったんで、ちょっと焦りました。自分の予想では残り10周くらいで堂園選手のペースが落ちると思っていたんですが、意外と落ちなくて、さすがに追い付けないまま終わるのは嫌だと思って、こちらもタイヤが残っていたので、タイヤを全部使ってでも必ず追い付こうと思って全力で走りました。ファイナルラップになるとブロックが始まってしまうだろうから、どちらもタイヤがない状態で抜けずに終わってしまって、もしかしたら後ろも追い付いてきちゃうかもしれないので、先に抜くのが最適かなと思って勝負に行きました。FS-125でも勝てなかった、自分のいちばん好きなコースで勝てて、本当にうれしかったです。まだ修正できる部分がいっぱいあるので、この調子でもっとタイヤを労われるように、次に向けてやっていきたいと思います」とコメント。
2位は堂園鷲選手、3位は佐野選手。
第2戦表彰の各選手。

フォト/JAPANKART、長谷川拓司、JAFスポーツ編集部 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部

ページ
トップへ