初優勝ラッシュに沸いた東地域。FS-125部門は独走状態で塚本凛世選手が優勝

レポート カート

2022年4月28日

栃木県・モビリティリゾートもてぎで開催された全日本カート選手権2022シリーズの東地域開幕戦では、参戦2年目のドライバーの初優勝が相次ぎ、FS-125部門では塚本凛世選手(K.SPEED WIN)が、FP-3部門では大越武選手(BEMAX RACING)が表彰台の中央に立った。

2022年JAF全日本カート選手権 FS-125部門/FP-3部門 東地域第1戦
2022年JAFジュニアカート選手権 FP-Jr部門/FP-Jr Cadets部門 東地域第1戦

開催日:2022年4月23~24日
開催地:モビリティリゾートもてぎ北ショートコース(栃木県茂木町)
主催:株式会社モビリティランド

 2022年の全日本カート選手権・東地域は、西地域に後れること2週間、モビリティリゾートもてぎ北ショートコースで開幕を迎えた。出走はFS-125部門が17台、FP-3部門が16台とまずまずの盛況ぶりだ。なお今季から始まったEV部門の第2戦は不成立となっている。予選と決勝が行われる大会2日目のサーキットは終日、上空が雲に覆われる天候となった。

 この日の昼休みには、今回のFP-3部門の参加者のうち、昨年の同部門・東地域に参加して年間ランキングの上位を得たドライバー2名に対して活躍を讃える賞典の授与式が行われ、ランキング10位の大越選手と同13位の富下李央菜選手(Formula Blue TKC)に、このレースのワンメイクエンジンであるヤマハKT100SECが贈られた。

日本カート選手権オーガナイザー協会の饗庭喜昭代表理事より、FP-3部門振興策のヤマハKT100SECエンジンが2選手に贈呈された。対象は2021年東地域シリーズ上位かつ本大会に参加した大越武選手と富下李央菜選手。

 水冷125ccエンジンで行われるFS-125部門は、2021シリーズの上位ランカーがステップアップなどでごっそりと抜け、顔ぶれがガラリと入れ替わった。今回の参加者のうち、昨年の最上位ランカーはシリーズ10位の五十嵐文太郎選手(Formula Blue エッフェガーラ)だ。また、西地域をホームとする強豪ドライバーが複数参戦してきたことも、今季の東地域の大きなトピックスと言えよう。

 タイムトライアルでは同部門2年目の15歳、塚本選手がトップタイムをマーク。0.076秒差の2番手は、全日本初年度の戦場にアウェーの東地域を選んだ13歳の中井陽斗選手(TEAM EMATY)だ。

 16周の予選では、塚本選手が中盤からリードを広げて先頭のままゴールし、初の決勝ポールを獲得した。中井選手も2番手をキープしたままゴール。3番手には、スタートで5番グリッドからのポジションアップに成功した五十嵐選手が上がってきた。

 決勝の開始を前に、曇り空から細かい雨がほんのわずか降ってきたが、それもレースに影響を及ぼすほどではなく、30周のレースは全車スリックタイヤ装着で行われた。

 戦いの火蓋が切られると、中井選手はオープニングラップで大きくポジションダウン。代わって2番手に上がった五十嵐選手は、6コーナーで塚本選手をかわして先頭に立つが、10コーナーで塚本選手がポジションを取り返し、トップで1周目を終えた。

 3番手には5番グリッドの喜納颯矢斗選手(Racing Team YRHKS)が浮上。2周目、その前に出て五十嵐選手の真後ろにつけたのは、7番グリッドから挽回してきた落合蓮音選手(Formula Blue Ash)だ。2020年のジュニア選手権FP-Jr部門王者で西地域をホームとする落合選手は、予選まで慣れないコースにやや手を焼いていたが、決勝に至って調子を上げてきた。

 五十嵐選手が牽引するセカンドグループでは、大集団の接近戦が展開。6周目には落合選手が2番手に上がった。そんな競り合いを尻目に、トップを行く塚本選手は着々とリードを広げ、7周目にはアドバンテージを1秒以上に拡大した。ここからは塚本選手のひとり舞台。最後は2番手を4.5秒も引き離し、塚本選手は右手でナンバー1サインを掲げてチェッカーを受けた。昨年はランキング24位、最上位は6位だったドライバーが、大きな飛躍を果たしての初優勝だ。

 塚本選手の後方では五十嵐選手が落合選手を抜き返し、終盤にはリードを広げて2位でフィニッシュして初表彰台へ。落合選手は真後ろに松浦光聖選手(Moty's RS GEN)を従えて、全日本デビュー戦を3位で終えた。4位の松浦選手に続いてゴールした鈴木悠太選手(RT WORLD)はフロントフェアリングのペナルティで12位に降格。替わって9番グリッドから発進した豊島里空斗選手(HRTwithカローラ新茨城CSI Racing)が5位、スタートに向かうローリングに出遅れて最後尾からのレース開始となった加納康雅選手(TIGRE)が6位となった。

「最後まで集中を切らさず走り切れたと思います」と語る塚本凛世選手。飛躍の理由を尋ねると「去年はドラゴコルセに乗っていたんですが、チームの方に『OTKとの相性がいいんじゃないか』とアドバイスをいただいたので、今年はそちらに乗り換えたらかなり調子がよくなりまして、勢いに乗ってこの大会に臨みました」と、得意なもてぎで初優勝を飾った。
2位は五十嵐文太郎選手、3位は落合蓮音選手。
FS-125部門表彰の各選手。

 100cc空冷エンジンを使用するFP-3部門の決勝は、28周のレースだ。ポールから発進して1周目を先頭で終えた春日龍之介選手(SPS川口)は、2周目のアクシデントで4番手に後退。代わって富下選手がトップに立った。

 その富下選手を5周目にパスしてラップリーダーとなったのは、予選の最終ラップで先頭から3番手に陥落した大越選手だ。大越選手と富下選手の後ろには、3番手まで順位を戻した春日選手が近づき、中盤からは3台がやや間隔を空けて一列に並ぶ先頭集団が形成された。

 この緊迫感あふれるトップ争いの中、大越選手は0.3~0.5秒のリードを保ったまま周回を重ね、ライバルを真後ろまで接近させることなくフィニッシュ。昨年、3度のスポット参戦をすべて2位で終えた16歳のもてぎマイスターが、2年目の全日本で初優勝を果たした。

 2位はレース中盤に富下選手を逆転した春日選手。富下選手は3位フィニッシュにとどまるも、表彰台ゼロに終わった昨シーズンのリベンジに挑む3年目のFP-3部門の初戦を、まずは表彰台獲得でまとめた。

参戦2年目となる大越武選手は「初優勝でうれしかったです。2番手がずっと真後ろにいると思ってドキドキしながら走っていたので、達成感がありました。決勝は序盤で先頭に立てたので、そのまま逃げ切るだけでした。2番手とはけっこう離れていたことを知らなくて、ミスしないように慎重に走っていました。今年もフル参戦するかどうかは微妙ですが、次も頑張ります」と語った。
2位は春日龍之介選手、3位は富下李央菜選手。
FP-3部門表彰の各選手。

 この大会ではジュニア選手権・東地域第1戦が同時開催された。FP-Jr部門では、女性ドライバーの松井沙麗選手(BEMAX RACING)がデビューウィン。0.008秒差でタイムトライアルの1位と2位を分け合った酒井龍太郎選手(ミツサダ PWG RACING)が予選でエンジン不調に陥り最下位となる中、予選も決勝も独走を演じてパーフェクトウィンを果たした。酒井選手は最後尾からの挽回で2位を獲得。2021ランキング3位の岡澤圭吾選手が3位となった。

 FP-Jr Cadets部門では、決勝終盤に関口瞬選手(TECORSA)と常川将太郎選手(Teamぶるーと)の先頭争いがアクシデントへと発展し、代わって優勝は松居寿來選手(ガレージC)と坂野太紘選手(EDO Marine Racing Team)によって争われることに。2台は一丸となって競り合いを続けた末、横一線に並んでフィニッシュ。その結果は、鼻の差で松居選手のデビューウィンとなった。0.034秒及ばず2位に終わった坂野選手は、ヘルメットを脱ぐと悔し涙をぽろぽろとこぼした。4台一列の3位争いをものにしたのは、西地域から遠征の前田蒼介選手(Team REGOLITH)だった。

「昨年(FP-Jr Cadets部門に参戦)は開幕戦で勝てなくてシリーズ1勝しかできなかったし、デビューウィンもできなかったことなので、とってもうれしいです。決勝の最初はなかなか差が開かなくてドキドキしていたんですが、半分くらい過ぎてからは後ろを気にしないようにして走りました」と松井沙麗選手。今年の目標はチャンピオンを獲ることだという。
2位は酒井龍太郎選手、3位は岡澤圭吾選手。
FP-Jr部門表彰の各選手。
僅差でトップチェッカーを受けた松居寿來選手が優勝。「すごいうれしいです。坂野太紘選手が最終ラップの最終コーナー手前でイン側に寄ったので、そこからアウト側に来られないようにギリギリまで寄せて、最後にアウト側に振って立ち上がりでクロスをかければ、自分の方が速度が延びるので、勝ったなと思いました。今年の目標はチャンピオンです」
2位は坂野太絃選手、3位は前田蒼介選手。
FP-Jr Cadets部門表彰の各選手。

フォト/JAPANKART、長谷川拓司、JAFスポーツ編集部 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部

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