全日本カート西地域FP-3部門は緊迫の展開。岩下桂都選手が全日本デビューウィン!
2022年5月11日
兵庫県・神戸スポーツサーキットで開催された全日本カート選手権西地域第2戦。20台オーバーのにぎわいとなったFP-3部門では、スポット参戦の岩下桂都選手(チームナガオ)がホームコースでデビューウィンを飾った。また、FS-125部門では百瀬翔選手(HRS JAPAN)が独走で初優勝を果たした。
2022年JAF全日本カート選手権 FS-125部門/FP-3部門 西地域第2戦
2022年JAFジュニアカート選手権 FP-Jr部門/FP-Jr Cadets部門 西地域第2戦
開催日:2022年5月7~8日
開催地:神戸スポーツサーキット(兵庫県神戸市)
主催:KSC
兵庫県の南寄りに位置する神戸スポーツサーキットは、全長960mのカート・バイク用コース。133mの長いメインストレートを持つ一方で、コーナーは複雑に組み合わされており、テクニカルコースの一面も持つサーキットだ。
決勝日のサーキット上空は快晴。日差しは初夏のまぶしさなのだが、冷たく強い風が終日コースに吹きつけ、肌寒い一日となった。
今大会最多、22台のエントリーを集めたのがFP-3部門。アダルト層の地元ドライバーを中心に多くのスポット参戦があり、前戦より7台増のレースとなった。最年少13歳、最年長55歳のドライバーたちの平均年齢は26.7歳。“大人のホビーカーターの檜舞台”というFP-3部門設立当初の趣旨そのものの顔ぶれだ。
そのタイムトライアルでトップタイムをマークしたのは17歳の岩下選手。ここ神戸のローカルレースでトップコンテンダーとして活躍中の学生ドライバーが、初参戦の全日本でも速さを見せつけた。0.026秒差の2番手はフル参戦2年目の15歳、内海陽翔選手(シナジーリンクス)。3番手には最年少13歳、アウェーの西地域での2戦目を迎えた鈴木恵武選手(Formula Blue 増田スピード)がつけた。
16周の予選は動きの多いヒートとなった。ポールの岩下選手はスタートで出遅れて4番手まで後退。3周目には女性ドライバーの佐藤こころ選手(チームナガオ)がトップに立ったが、佐藤選手は中盤に後続の猛攻を受けて順位を下げると、アクシデントに巻き込まれてマシンを止めた。
代わって先頭に出た内海選手の真後ろには、ポジションを挽回してきた岩下選手が迫る。だが、内海選手は岩下選手に逆転のチャンスを与えることなくこのヒートを走り切り、初の決勝ポールを手に入れた。2番手の岩下選手から3秒ほど後れてゴールしたのは鈴木選手。宮地健太朗選手(Ash)が4番手のゴールで決勝グリッドの2列目を手に入れた。
決勝は26周のレースだ。そのスタートでは鈴木選手が2番手に浮上。すると2周目に岩下選手が鈴木選手を抜き返して2番手に戻る。この競り合いの間に、ポールの内海選手は1秒のリードを築いてラップを重ねていった。
岩下選手は徐々に鈴木選手を引き離し、前を行く内海選手を追う。すると、10周目あたりからトップと2番手の間隔が詰まり始め、折り返し点を迎える頃には内海選手に岩下選手が追いついた。息詰まる優勝争いの始まりだ。
14周目、岩下選手は内海選手のテールを捕らえると、間を置かず勝負に出てトップに浮上。19周目には内海選手が岩下選手を抜き返すが、岩下選手はその周のうちに再々逆転を成功させてラップリーダーの座を取り返した。ここから2台はテール・トゥ・ノーズのまま、緊迫感あふれるタンデム走行を延々と続けていった。
内海選手は「中盤くらいからペースが悪くなってきて、早めにキャブレターを調整したりチョーキングしたりしていた」という苦しい状況の中、岩下選手のテールに懸命に食い下がる。しかし、内海選手にトップ奪還を仕掛けるだけの余力はもう残っていなかった。そして迎えたチェッカーの瞬間、緊張から解き放たれた岩下選手は何度もナンバー1サインを突き立てた。
ホームコースでの全日本初参戦を勝利で飾り、爽快な笑顔で表彰台の中央に立った岩下選手。今年後半は受験勉強に専念してレース活動を控えるそうなのだが、二度目の参戦を期待したくなるデビューウィンだった。
内海選手は0.177秒差で2位に留まったのだが、自己最上位の6位を大きく更新。前戦でも予選で3番手を得ており、2020年のスポット参戦から3年目の参戦で飛躍を予感させるレースだった。
単独走行で3位フィニッシュの鈴木選手は、ポイント獲得すら危うい状況だった大会初日の苦境を克服して、地元の実力者が居並ぶ中での表彰台ゲット。翌週末にはFIAカーティングアカデミートロフィーのデビュー戦を控えており、次の決勝が終わるのを待つことなくベルギーへと旅立っていった。
鈴木選手の後方で展開された久富圭選手(Formula Blue Ash)と森川貴光選手(HIRAIPROJECT With Ash)のチームメイト対決は、久富選手が逃げ切って4位に。6位の宮地選手に続き、予選でアクシデントに巻き込まれて14番グリッドに沈んだ坂上真海選手(TAKAGI PLANNING)が、7ポジションアップの7位フィニッシュで1年ぶりの復帰戦を締めくくった。
FS-125部門は出走6台。もともとスポット参戦の予定だった前戦のウィナーと2位の選手がここを欠場したことで、戦況はさらに混沌としてきた。シリーズポイントを取れるのは3位まで。ひとつのミスがノーポイントに直結する、油断のできない一戦だ。
このレースは、14歳の百瀬選手のパーフェクトウィンで決着した。百瀬選手はタイムトライアルで2番手に0.3秒以上の大差をつけるトップタイムを叩き出すと、予選も決勝も序盤から独走、無敵の速さで2年目の初優勝を果たした。前戦では下馬評で優勝候補の筆頭に挙げられながら4位に終わった百瀬選手。その反省からプレッシャー対策を書籍で学んでこの大会に臨み、ついに実力を結果に結びつけた。
2位フィニッシュは近江川暖人選手(HRS JAPAN)。単独走行を続けて2戦連続の表彰台に上ると、ひと足先に初優勝を果たした同期のチームメイトに「次は逃げられないよ」と笑顔で言い放って場内の爆笑を誘った。やはり単独走行での3位は菊田悟選手(TEAM CRESCENT with ONE POINT)。前の2台に逃げられこそしたが、ほぼ1年ぶりの表彰台獲得に手応えをつかんだ様子だった。
同時開催のジュニア選手権東地域第2戦。FP-Jr部門では伊藤聖七選手(かあと小僧 with Ash)がポールからの独走で2連勝を飾った。伊藤選手の後方では山代諭和選手(quaranta sei YRT with GEMINI)と中西凜音選手(チームナガオ)のバトルが繰り広げられ、最終ラップの最終コーナーの逆転で、同部門デビュー戦の中西選手が2位を獲得。山代選手は2戦連続の3位表彰台となった。
前戦からほぼ倍増の13台が出走したFP-Jr Cadets部門では、ポールの横山輝翔選手(チームナガオ)が後続を着実に引き離して独走、4戦目での初優勝を達成した。その後方では3台一列の接近戦が続き、澤田龍征選手(Felice)がこの集団の先頭を守り切って2位に。0.1秒差でデビュー戦の清永旺佑選手(HIGUCHI RACING TEAM)が3位となった。
フォト/JAPANKART レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部