腕利きの実力者が集った富士のVITA耐久レース。男女ペアのミックスジェンダークラスが初開催!
2022年5月20日
VITA-01によって富士スピードウェイで競われる「FCR-VITA」も、今年で6シーズン目に突入。そして、すでに他のサーキットで行われている耐久レースが初開催された。富士チャンピオンレースシリーズ第2戦と併せ、5月14日に予選&決勝レースが行われた。エントリー台数は43台とあって、ほぼフルグリッド。また初の試みとして、男女ペアでの参加が条件のミックスジェンダークラスが設けられた。
2022 FCR-VITA 第1戦 2H耐久
(2022 富士チャンピオンレースシリーズ第2戦内)
開催日:2022年5月14日
開催地:富士スピードウェイ(静岡県小山町)
主催:富士スピードウェイ株式会社、FISCO-C、SCCN
FCR-VITAとして初めて開催される耐久レースは2時間で競われた。給油を要する際のピットストップには、ピットロード入口から出口までの通過に3分間を要することが義務づけられたが、回数やドライバー交代に関しては一切の制約なし。
1回の給油は20Lまでとされ、一般的には45分から50分の連続走行が可能であるとされていたから、2ピットが常套手段との予想で、若干生じる余裕からピットタイミングをずらすことで勝機を得られるのでは、と思われていた。だが実際にはさらに上を行く戦術が採られることとなった。
レースでは1台につき1~3名の乗車が可能であるが、予選は15分の計測が1回だけで、しかも走行できるのは登録されたAドライバーのみ。早朝まで降り続いていた雨が残る、難しいコンディションの中での走行となった。だからこそ、光ったのがプロの技ともいうべきか?
ポールポジションを獲得したのは、堀田誠選手とペアを組む阪口良平選手で、2番手はDAISUKE選手とペアを組むTATSUYA KATAOKA選手。
「内圧設定を間違えて、走り出してすぐ『まずい』と気づいたんですが、なんとかポールが獲れて良かったです」と阪口選手が言えば、「ドライだったら沈んでいたと思うので、濡れていたからこそ結果を残せて個人的には満足です」とKATAOKA選手。ともに面目躍如に、ほっと一安心の様子だった。
そして3番手は大竹将光選手が獲得。ミックスジェンダークラスのトップともなり、同クラスでは女性ドライバーがスタート担当の義務づけとあって、ペアを組む山本龍選手に好ポジションをプレゼントすることとなった。
路面が濡れたままの状態でスタートが切られた決勝レースでは1コーナーで混乱もあり、ここをトップでクリアしたのは予選4番手だった富田竜一郎選手。これに続いたのはやはり3ポジションアップとなった塚田海斗選手だった。いったんは抜け出しかけた富田竜一郎選手は、どうやら本調子ではなさそう。間もなく7台の車両の接近を許し、トップグループが形成される。
5周目の1コーナーでトップを争っていた富田竜一郎選手と塚田選手が揃ってブレーキングミス。その脇をかいくぐってトップに躍り出たのが、予選9番手だった武村和希選手だ。ただし、そのまま逃げることが許されなかったのは、8周目からセーフティカー(SC)が導入されたため。
先導は約10分、車両回収に3周を要した間にスタートから30分を経過しようとしていたことから、リスタート直後には早くも最初の給油を行うチームも。その中のひとりが、オープニングラップのうちにミックスジェンダークラスのトップに立っていた翁長実希選手で、2スティント連続走行を敢行する。
SCがコースを離れてからも武村選手、塚田選手、富田竜一郎選手、KATAOKA選手によるトップ争いは続いていく。予想外だったのは、これら上位陣が50分過ぎてなお、まだピットに入って来なかったことだ。22周目に入って、ようやく2番手の塚田選手と3番手の富田竜一郎選手がピットイン。23周目にはKATAOKA選手が、そして24周目にトップの竹村選手がピットに滑り込んでくる。この時、すでにスタートから55分が経過。それでもまだピットに入っていない車両もあった。
1時間を経過して間もなく、26周目にミックスジェンダークラスの山本選手が大竹選手にバトンタッチ。それでもまだ入って来なかった、小西岬選手が1時間5分経過した29周目にようやくピットに戻ってくる。このあたりが1ピットを狙っていることは、もう疑うことのない事実となっていた。代わってトップに立ったのは塚田選手で、ハイペースでの周回を重ねてマージンを稼ごうという作戦のようだ。
その塚田選手が二度目の給油を行ったのは、残り22分となった43周目。しかし、トップに立っていたのは小西選手で、2番手は大竹選手。塚田選手はなんとか3番手で返り咲くも、先行する2台とは1分以上の差があった。そして小西選手と大竹選手の間にも、15秒ほどのギャップがあった……はずなのだが、45周目には1秒差に急接近。明らかに小西選手のペースが鈍い。47周目には明確な速度差で、大竹選手が前に出る。ガス欠ではなく、小西選手は足回りにトラブルを抱えていたのだ。
ラスト4周で塚田選手は2番手に浮上、対照的に小西選手は8位でゴールするのが精いっぱい。そんなドラマを尻目に大竹選手は難なく逃げ切り、山本選手とともに総合優勝。そしてミックスジェンダークラスの優勝を獲得!
「1ピットは予定どおりです。いや、素晴らしい! 本当に大竹くんが頑張ってくれました。FIA-F4で頑張っていたいいドライバーなので、これが機会になってまたチャンスをつかんでくれれば最高ですね」と山本選手は、自身の優勝以上に大竹選手の奮闘を絶賛した。その一方で、大竹選手が「最初の想定よりもさらに燃費に余裕を持って走っていたんですけど」と謙遜気味に語る様子が印象的だった。
2位は塚田選手が獲得し、3位は早めの給油が功を奏してもいた翁長選手と徳升広平選手で、ミックスジェンダークラスの2位も獲得。翁長選手にとっては翌日のKYOJO-CUPに向けて、最高の勢いづけとなったに違いない。
フォト/鈴木篤 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部