九州ラリー地区戦第3戦は、チャンプ津野裕宣ランサーが開幕3連勝
2022年5月27日
JAF九州ラリー選手権は、5月14~15日の週末、伝統の一戦、ACK SPRINGラリーがシリーズ第3戦として行われた。
2022年 JAF九州ラリー選手権第3戦
JMRC九州ラリーチャンピオンシリーズ 第3戦
TRD RALLY CUP by JBL 2022 第1戦
2022 ACK SPRING ラリー
開催日:2022年5月14~15日
開催場所:福岡県豊前市、築上町
主催:ACK
ACK SPRINGラリーは、かつて九州を代表する全日本ラリー選手権として開催されてきた北九州オートクラブ(ACK)主催の一戦の流れを汲むラリーだ。1990年代には大分のオートポリスや、その周辺のタフなグラベル林道を舞台とするサバイバルな全日本戦として人気を集めたが、最近は大分県との県境に近い福岡県南部のエリアを主たるフィールドとして地区戦を開催している。
今回の一戦も大分県に近い豊前市、築上町の山間部にステージが設定された。豊前市の岩屋公民館をベースとして開催されたラリーは5月14日午前に2周のレッキを行った後、午後にLEG1がスタート。この日はまず8.7kmのターマックのSSに2回アタックする。明けた15日のLEG2は、HQ、サービスが置かれたこの岩屋公民館を挟んで、前日とはちょうど反対側の山岳部に位置する舗装のSSを3回走ってゴールという設定だ。
15日のSSは10.68kmという長丁場で、この日だけで32.04kmのSSが待ち受ける。LEG1の2本17.40kmと合わせてSSの総距離は49.44kmと、2日間、たっぷり走り込む、全日本フォーマットにも近いラリーとなった。SSのステージは約1.5車線ほどの幅が確保され、しっかりした舗装が敷かれた好ステージだが、前日の13日に降雨があったため、LEG1では一部にウェットの箇所が残った。
RH-1クラスは昨年、参戦した5戦すべてを制してシリーズチャンピオンを獲得した津野裕宣選手のランサーが、今年も開幕2連勝と絶好調。このラリーは昨年も制しており、今回も優勝候補の筆頭だったが、LEG1で津野/大庭正璽組を3.0秒差で下したのは、九州のインプレッサマイスターとして知られる松尾薫/平原慎太郎組のGDBインプレッサだった。
開幕戦、第2戦ともに僅か1本ではあったが津野組を凌ぐスピードを見せていた松尾組は、この日もSS1は津野組に0.1秒遅れるも、SS2では3.1秒のリードを築いて首位に立った。しかしLEG2最初のSS3ではフロントタイヤ2本を新品にしてラリーに臨んだ津野組が、松尾組を13.7秒も突き離すスーパーベストをマーク。SS4では松尾組が0.9秒差まで盛り返したが、最終のSS5では津野組が再び8.4秒差で松尾組を下して、逆転で開幕3連勝を達成した。
「LEG1のような道は松尾選手が速いので、やられると思ってたんですが、想定していたよりは引き離れなかったので、気持ち的に仕切り直しができたのが大きかった」という津野選手。「前回から、去年まで使っていた外国製タイヤから国産のタイヤに変えたんですが、全然違うというくらい、良くて。2戦目ということもあってタイヤにも慣れてきたので、今日は最初から全開で行けました。でも、久し振りにしびれたラリーでしたね(笑)」と激戦を振り返った。
一方、松尾選手は、「精一杯の走りでしたが、追いつけなかった。特に今日は、タイヤが後半厳しかったですけど、津野さんが速かった。多分、ちょっとずつコーナーの立ち上がりで引き離されて、距離が長い分、差が広がったんでしょうね。でもクルマの動きは凄くいいし、自分自身も復調してきた感じがあるので、次戦以降も頑張りたいですね」と、次戦以降のリベンジに意欲を燃やしていた。
一方、RH-2クラスは、今季、開幕から3位、2位と悔しいラリーが続いた河本拓哉/柴田咲希組のインテグラが、LEG1で連続ベストを奪い、大量リードを築いて折り返した。前戦のウィナーの黒原康仁 /松葉謙介組のスイフトは、「去年もそうだったけど、なぜかこの道はタイムが出ないんですよ」と、4番手でLEG1を終えて、大きく出遅れる。
LEG2では黒原組が調子を取り戻してSS3はセカンドベスト。SS4では今回初のベストも奪うが、SS5は河本組が0.8秒競り勝って、有終の美を飾る今回4度目のベストタイム。黒原組に27秒の大差をつけて今シーズンの初優勝をもぎ取った。
「SS1から全開でした」と振り返った河本選手は、「LEG1のようなアベレージスピードの高い道は元々好きなんですけど、前日の雨が残ってやや荒れていた路面もあったので、そこで踏んで行ければマージンが作れるはずだ、という作戦通りのラリーができましたね。開幕から2戦、勝てなかったことで気づいた自分の走りのムダな部分を、今回は削り落としながら走れた気がします」と会心のラリーを振り返った。
RH-3クラスは、今季初参戦となった豊田智孝/美野友紀組のヴィッツが、全SSベストの走りを見せてライバルを寄せ付けず優勝を飾り、昨年のシリーズチャンピオンの貫禄を見せた。昨年のこのラリーで、通常履いているタイヤの納品が間に合わず、たまたまサイズダウンしたタイヤで走った経験が、今回は役に立ったという。
「昨年、タイムが出せたので今回は同じサイズの外国製のタイヤで走ったんですが、それが当たりました。初めて履くタイヤだったので最初は様子見で走ろうと思ったのですが、師匠の黒原さんから、“どんなラリーでもSS1から全開で行かないとダメだ”と、いつも言われているので、最初から攻めました。そこで限界の走りをしたことでタイヤの特性が掴めたので、SS2から、タイヤを生かす走りに変えたことがタイムに繋がったと思います。去年はライバルの自滅で勝てたラリーが多かったんですが、久しぶりに今回は走り勝てた気がする楽しいラリーでした」と、豊田選手には納得の一戦だったようだ。
6台が参加したヤリスによる、事実上のワンメイククラスとして行われたRH-4クラスは、前戦のウィナーである松本弥青選手が、LEG1でリタイヤという波乱のスタートとなる。この中、LEG1からリーダーに立ったのは今季初参戦だった昨年のチャンピオン、貞光建選手と今回が初ラリーだった麻生大智選手のヤリスだった。
昨年まではジムカーナ仕様だったヤリスを今回はラリー仕様に変えて臨んだという貞光選手は、ジムカーナが本業のドライバー。「新しい仕様の足回りの感触を確かめながら走りましたが、ギャップなどでの動きも良くなり、路面の悪い所でも何とかコントロールできるようになりました」と、手応えを掴んだ様子。終わってみれば全SSベストで上がる快勝だったが、「SS3でちょっとぶつけてしまった影響だと思うんですが、最後のSSをゴールした後にスローパンクチャーが始まってしまって。SSがもう1本あったら危なかった」と実は薄氷の勝利だったことを明かした。
続くRH-5クラスはAT/CVT車が対象のクラス。昨年までは1クラスのみの設定だったが、台数が集まり人気を博したため、今年からこのAT/CVT車が対象のクラスをふたつに分け、RH-5クラスは排気量制限なしとして、RH-6クラスは1,500cc以下の前輪駆動車対象とした。開幕戦はRH-5クラスのみが成立し、第2戦は逆にRH-6クラスが成立したが、今回は新規定下、初めて両クラスが成立の運びとなった。
新生RH-5クラスは、開幕戦を制した白𡈽辰美/國貞友博組のスイフトスポーツがSS3までラリーを大きくリードしたが、SS4で痛恨のスピンを喫してマージンを一気に吐き出し、このSSでベストを獲った星野元/引間知広組のFTOに首位を譲り渡してしまう。星野組は最終のSS5でも追撃する中西昌人/岩本燿組のRX-8を6.7秒差で下して逃げ切った。
「SS1でスピンしてかなりタイムロスしたので、今回はトップ争いを邪魔しないつもりだったんですが、思わぬ形でチャンスが回ってきたので(笑)、最終SSは頑張りました」と言う星野選手。FTOは今回が初ドライブだったが、「今日の道はパワーのあるクルマが速いのは分かっていたので、FTOには有利でしたね。でも今回はヘアピンでも我慢して、98%は2速ホールドのまま走りました(笑)。私は今回が最後になると思いますが、FTOはクラブ員が引き継いで乗るので、このクラスを盛り上げていきたいですね」と、今後のこのクラスの発展に期待を寄せていた。
一方、RH-6クラスは地区戦2戦目の学生ドライバー、藤井海南斗選手と猪熊悠平選手のコンビが全SSベストの走りで快勝した。藤井選手がドライブしたピンク色のヴィッツは、在籍する九州工業大学自動車部の部車で、九州ラリー界ではすっかりお馴染みの一台。前戦も同じ自動車部の林大河/横手孝稀組がドライブして優勝しているので、ピンクヴィッツは2連勝ということになる。
藤井選手は開幕戦でピンクヴィッツをドライブ。RH-6クラスが不成立となったため、RH-3クラスにエントリーしたが、大差の2位に敗れた。「開幕戦ではボロ負けしたんですが、今回は同じAT車に乗る白𡈽さんにSS1でタイムで勝てたので、自信を持って走れました。タイヤも前回走った時以上に喰ってくれた感じがあったので、攻められました」という藤井選手は今回、LEG2ではヤリス勢を凌ぐタイムもマーク。「想定以上のタイムが出たので、自分でも驚いています」と笑顔を見せていた。
TRD RALLY CUP by JBL 2022 第1戦
全国五か所を転戦する、2022年のTRD CUPが九州からスタート!
今回のACKスプリングラリーでは、TRD RALLY CUP by JBL 2022が併催され、シリーズの開幕戦を迎えた。TRD RALLY CUPは今年も10月22~23日に長野で行われる最終戦まで全国を転戦する全5戦のシリーズとなる予定で、昨年同様、全戦がJAF地方ラリー選手権に併催される形で行われる。
第2戦(7/30高知)、第3戦(8/20~21秋田)はグラベルとなる予定だが、第4戦(10/1~2愛知)、そして最終戦は舗装ラリーとなるため、今年は舗装3戦、グラベル2戦のシリーズとなる。クラス分けは今年も、NCP131&NCP91ヴィッツ対象のCUP-1と、トヨタ86(ZN6)&スバルBRZ(ZC6)対象のCUP-2の2クラスが設定される。車両については舗装&グラベル共用の指定部品のサスペンションの装着が義務付けられるが、タイヤ・ホイール関連規定については、TGRラリーチャレンジとの共通化が図られており、ステップアップを考えるクルーにも配慮されたシリーズになっている。
CUP-1クラスは、TGRラリーチャレンジ出身で昨年もこのシリーズに参戦した塩田卓史/中根達也組の1台のみの出走となったが、無事、完走を果たして幸先の良いスタートを切った。中部地区在住の塩田選手は、「九州地区のラリーは初めて来ましたが、パターンの似たコーナーが多いと思ったら、いきなりハイスピードコーナーが現れたりと、難しいラリーでした。最後まで攻め切れませんでしたね」と初挑戦のACK SPRINGラリーの印象を語った。
CUP-2クラスは、レディスドライバーのHARU選手と山下秀選手のコンビのBRZが優勝を果たした。昨年は山下選手がドライバー、HARU選手がコ・ドライバーで、ヴィッツで参戦したが、今年はコンビを入れ替え、車両もHARU選手の所有するBRZでCUP-2クラスの方へエントリーした。
HARU選手も中部の愛知在住だが、群馬のラリーショップである千明自動車からレンタルしたスイフトでラリーを始めたことから、激戦区のJMRC群馬ラリーシリーズやL-1ラリーに参戦してきた実績を持つ。
「複合コーナーが多かったので、守りの走りをしないといけないのかなと最初は思いましたが、SS2からは攻めの走りができたので、今日も楽しく走れました。地区戦の86/BRZの人達のタイムも意識しながら走りましたが、ラリータイヤの割には頑張った方だと思います(笑)」と自らの走りを振り返ったHARU選手。このクラスも残念ながら参加1台にとどまっただけに、「色々なラリーを走れる楽しいシリーズだと思うので、ライバルの方々の参加をお待ちしています」と、次戦以降の盛り上がりに期待を寄せていた。
フォト&レポート/JAFスポーツ編集部
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