勝田貴元選手、WRC第5戦は出走順やトラブルに苦しむも6位入賞!
2022年6月10日
2022年のFIA世界ラリー選手権(WRC)第5戦『ラリー・イタリア・サルディニア』が6月2日~5日、地中海に浮かぶサルディニア島北西部の街、アルゲーロを中心に開催された。TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムからWRCフル参戦2シーズン目の日本人ドライバー、勝田貴元選手はコ・ドライバーのアーロン・ジョンストン選手とともにGR YARIS Rally1を武器に、6位入賞を果たした。
2022年FIA世界ラリー選手権 第5戦
ラリー・イタリア・サルディニア
開催日:2022年6月2~5日
開催地:イタリア・サルディニア島
オープニングステージは2日の夜、島北東部のオリビアに設けられた全長3.23kmのスーパーSSで幕を明けた。短いSSだったが、勝田貴元選手はトップと0.5秒差の2番手でフィニッシュして幸先良くデイ1を走破。しかし、翌3日のデイ2で本格的なラリーが始まると、苦戦を強いられることになった。
前戦のラリー・ポルトガルではRally1車両の室内温度が高くなる問題が発生。多くの選手が厳しい戦いを強いられて、このラリーでも懸念された。しかし、勝田貴元選手によれば「今回も気温が35℃以上と暑かったんですけど、ルーフベーンの大きさやデザインを変えたことで室内に取り込む空気の量が増えたことと、他のチームと同様にエキゾーストの断熱材を追加したことで随分と改善していました。低速のSSでは暑かったけれど対策はうまくいっていたと思います」とのことだった。
暑さは和らげられたものの、このラリーで勝田貴元選手を苦しめたのが“出走順”。ドライバーズランキング3番手につけていたことで、デイ2は3番目に出走することになり、“路面の掃除役”を強いられた。「地盤の柔らかいポルトガルと違って、サルディニアは地盤が硬いので出走順の影響が大きかったと思います。簡単に言えば、アスファルトの上にビーズが転がっているような状態で、トラクションもなく、グリップもありませんでした」と語ったように、デイ2でタイムが上がらなかった。SS5で6番手タイムを出したものの、10番手前後のタイムが多く、7番手に後退した。
翌4日のデイ3は出走順が5番目になったことが、プラスに働いた勝田貴元選手。SS13では4番手タイムもマークしてペースは上向きだった。しかし、午後最初のSS14でラジエターに問題が発生。このSSは7番手をマークしたが、続くSS15とSS16は余儀なくペースダウン。17番手タイムに留まった。
ラジエターの問題について勝田貴元選手は「土曜日は特殊なフォーマットで、ミッドデイサービスがないことから、ドライバー的にもクルマ的にもタフなラリーで、クルマにダメージを受けないように気をつけていたんですけどね。この日の2本目のステージ、SS11のジャンクションで、ターマックのエッジにフロントバンパーをひっかけてしまって破損していました。そのダメージが悪化して、SS14のウォータースプラッシュの時に水圧でフロントバンパーのカーボンパネルがラジエターに突き刺さって、穴が2つ空いてしまいました」と説明した。
なんとかSS14を走り切って応急処置を施したが、「非常に注意深く走らなければならないので、ペースを大きく落として走りました」とのことで、前述のペースダウンを強いられた。それでも、この日最後のSS17で5番手タイムをマークした勝田貴元選手は総合6番手でデイ3を終えた。
こうしてデイ2は出走順、デイ3はラジエターの問題に苦戦した勝田貴元選手だったが、5日のデイ4では好タイムを連発。オープニングステージのSS18で6番手タイムをマークするとSS19で4番手、SS20とSS21で5番手タイムをマーク。総合6位を守ってラリーをフィニッシュ、貴重なポイントを獲得した。
「今回は土曜日にラジエターにダメージを受けましたが、コ・ドライバーのアーロン・ジョンストン選手が穴を見つけたり、バンパーを外したりとうまく修理してくれたうえ、水を確保してくれたりと冷静に対処してくれたおかげでラリーを続けることができました」と語る勝田貴元選手。
さらに「今回のサルディニアはサバイバルラリーでいろんなことが起こりうると予想していました。ラジエターのトラブルはあったけれど、ドライビング面で大きなミスはなかったし、トラブルがありながらも乗り越えてフィニッシュへクルマを運べたことは良かった。昨年のサルディニアは4位でフィーリングも良かったので、自分的には満足できない部分もあるけれど、カッレ・ロバンペラ選手を含めてチームも全体的に苦戦していたので我慢のラリーだったと感じています」と複雑な心境を語った勝田貴元選手。
「グラベルではターマックより良いフィーリングで走れていますが、まだペースコントロールという部分ではリスクを負えていないので、今後は引き出しを増やしながら底上げをしていきたいと思います。次のサファリラリーは昨年の大会でベストキャリアとなる2位につけたので思い入れの強いラリーですが、何が起こるか分からないので、どんなことにも対応できるように準備を進めたいと思います」と語っているだけに、6月23~26日に開催される第6戦『サファリ・ラリー・ケニア』では、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team Next Generationの勝田貴元選手の躍進に期待したい。
第5戦の優勝は、HYUNDAI SHELL MOBIS WORLD RALLY TEAM(ヒョンデ)でi20N Rally1を駆るティエリー・ヌービル/マルティン・ヤルヴェオヤ組。9つのSSを制して、待望の今季初優勝を果たした。M-SPORT FORD WORLD RALLY TEAMでプーマRally1のステアリングを握るクレイグ・ブリーン/ポール・ネーグル組が2位、ヒョンデのダニ・ソルド/カンディド・カレーラ組は前戦と同じ3位で表彰台に上った。
TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(TGR WRT)は5位のカッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組だけが完走。エルフィン・エバンス/スコット・マーティン組はデイ2で、トップでラリーをリードしていたエサペッカ・ラッピ/ヤンネ・フェルム組はデイ3でリタイアと、厳しいラリーになってしまった。しかし、ドライバーズとコ・ドライバーズ、そしてマニュファクチャラーズランキングでは首位の座を守った。
フォト/TOYOTA GAZOO Racing、Red Bull Content Pool レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部
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