信州の山岳路を駆け回る長野県シリーズが、今年も開幕!

レポート ラリー

2022年6月16日

6月上旬、今年の長野県ラリーシリーズが、安曇野の地を舞台とする上高地ラリーで開幕した。

2022年JMRC長野県ラリーシリーズ第1戦
上高地ラリー2022

開催日:2022年6月4日
開催地:長野県
主催:K.A.P.S

 40年以上の開催実績を誇るJMRC長野県ラリーシリーズは、JMRC群馬シリーズと並ぶ関東では伝統のラリーシリーズだ。今年も今回の上高地ラリーを皮切りに計5戦のシリーズが組まれ、そのすべてがターマックを舞台としたラリーとして行われる予定だ。

 また、この長野シリーズと群馬シリーズの各5戦と11月末に開催予定の南房総ラリーには、JMRC関東ラリーカップがダブルタイトルとして設定される。同ラリーカップは、関東最速のクルーを輩出することを目的に2015年から始まったシリーズだが、ユニークなのはその得点システム。

 各競技会のSS距離1kmにつき1点として換算するというもので、例えばSS総距離30kmのラリーで優勝したクルーには30点。2位のクルーにはその得点の半分、さらに3位のクルーには2位のクルーの得点の半分が与えられるという仕組みになっている。

 群馬シリーズはすでに4月に1戦が開催済みのため、今回の一戦は関東ラリーカップとしては2戦目の開催となったが、このラリーカップで上位を狙うクルーも含め、今回は昨年を10台も上回る37台が参加し、大いに盛り上がりを見せた。

 上高地ラリーの拠点として、すっかりお馴染みとなっている安曇野スイス村をスタートしたクルーは、まず午前中のセクション1では2.88kmのSSを2回走行。サービスを挟んだ午後のセクション2では、中央アルプスに連なる高地の1本の林道をひたすら駆け上がるステージに挑む。

 ここはふたつに分けて、まずSS3で4.69kmを走った後、短いリエゾンの後にSS4の4.91kmにトライする。クルーはゴール後、一旦プールされた後に、SSのステージをリエゾンで下り、再び、4.69km、4.91kmの順で2度目のアタックを行う。

 セクション1は2本、セクション2は4本のSSが待ち受け、その総距離は24.96kmと県シリーズのラリーとしては十分に走り応えのある一戦となった。なお両ステージとも、スタート、ゴール位置は異なるものの、昨年もこのラリーでSSとして使用されたステージとなる。天候は終日、晴れが続き、路面も基本的にはドライ路面が保たれたが、場所によっては滑りやすい花粉が路面に敷かれている箇所もあり、“罠”が随所に待ち受けるラリーとなった。

今年もラリーの拠点は長野道安曇野インターに近い、安曇野スイス村に置かれた。
ドライバーズブリーフィングでは、ソーシャルディスタンスが呼びかけられた。
セクション2に入ると標高が高くなり、視界も徐々に開けてくる。

 クラス1は昨年のシリーズチャンピオン、宮崎克己/石澤裕子組がSS1でベストを獲り、順調なスタートを切るが、SS2は関東屈指のラリーストである群馬の嶋村徳之/和氣嵩暁組がベストをさらい、0.7秒という僅差ながらも宮崎組を抑えてトップで折り返す。

 しかしセクション2の高地ステージに入ると宮崎組がプッシュ。SS3、SS4と嶋村組を下して首位を奪還した。だが嶋村組は、SS3のリピートとなるSS5で、7.4秒も自らの前走のタイムを詰めるスーパーベストで宮崎組を突き離して、再びラリーリーダーに立った。最終のSS6は宮崎組がベストで上がるが、嶋村組も0.6秒差の2番手で食らいついてゴール。トータル3.3秒差で宮崎組を下して優勝した。

 関東ラリーカップも踏まえて参戦したという嶋村選手は、「今回のラリーは昨年に比べて選択できるタイヤの幅が広がったので、初めて履くスポーツラジアルの感触を確かめながらセクション1は走りました。セクション2のステージは、このラリーで初めて使われた時に一度走っただけだったので難しかったですが、最後の2本は勝負が懸かっていたので、かなり攻めました」と振り返った。

「SSを4本走ってタイヤの特性を掴めていたので、攻め切れたと思います。ラリー前に足回りの仕様を変更したこともいい方向に行ったので、それもタイムに繋がりましたね。タイヤとのマッチングもまだまだ詰められると思いますが、宮崎さんが僕と同じメーカーの違う銘柄で今回、同等のタイムを出しているので、その辺はちょっと迷い所になるかもしれません(笑)」と、今後に手応えを感じた様子だった。

クラス1はSS5のプッシュが奏功した嶋村徳之/和氣嵩暁組が優勝した。
クラス1優勝の嶋村/和氣組。
一旦は首位に立った宮崎克己/石澤裕子組だったが、逆転を許して悔しい2位。
昨年のウィナー中村一朗/迫田雅子組は優勝争いには絡めず、3位に終わった。
クラス1表彰の各選手。

 クラス2は参加12台を数える激戦区となった。昨年は、今季のTGR WRCチャレンジプログラムの一員に選出された小暮ひかる選手が優勝したが、今年は当然ながら、不参加。本命なき戦いの中で、最も優勝候補に近かったのは、昨年のチャンピオンでインテグラを駆る三富仁/松野昭二組だったが、「日陰が多くて晴れでも路面が乾き切らない道は苦手意識があって」と、セクション1は昨年に続いて大ブレーキとなってしまい、2番手と出遅れてしまう。

 代わってトップで折り返したのは昨年に続いて2度目の出場となった石川紗織/川名賢組。SS2では総合でもベストとなるタイムをマーク。それが効いてセクション1を全体トップのタイムで上がり、サービスに戻ってきた。

 勢いに勝る石川組は、セクション2に入っても、SS3でクラスベストを奪い、リードを広げるが、SS4では、昨年もこのステージで速さを見せた三富組がこの日初のベスト。その後もSS6まで3連続ベストを奪って盛り返し、最終的には石川組に10秒差まで迫ったが、セクション1でのロスを埋め合わすことはできず、2番手でゴールした。

 昨年のWOMEN’S RALLYで2連覇を果たすなど、めきめきと頭角を現している石川選手は、ドライビングの師匠である川名選手のスケジュールが空いていたため、実戦を通してアドバイスを乞う目的で今回は参戦した。今年はJAF中部近畿ラリー選手権を追う予定だが、本命のシリーズに向けて、最高の肩慣らしができた一戦となった。

「セクション1は去年よりはいい走りができたと思いましたが、SS2のタイムは自分でも驚きました。相変わらず危ない道でしたが(笑)、そういう道でも対処できるように、ある程度姿勢を作ってコーナーに入れるようになってきたことが、タイムに繋がったのかなという気もします」と石川選手。

「ただセクション2は、上りのきついコーナーでのブレーキングやギアの選択など、まだまだ改善できたと思うので、また課題が見つかったという感じですね」と、来たる地区戦に向けて気合いを入れ直していた。

クラス2は石川紗織/川名賢組が、セクション1で築いたマージンを守り切って優勝した。
クラス1優勝の石川/川名組。
三富仁/松野昭二組は高速ステージでは速さを見せたが、2位でゴール。
佐川孝/齋藤彩子組は3位をキープしてラリーをフィニッシュ。
クラス2表彰の各選手。

 クラス3も参加12台と激戦区となり、セクション1から僅差のバトルが展開された。トップで上がったのはコルトを駆る中部から遠征の笹岡亮佑/加藤昭文組で、2.8秒差で遠藤政幸 /藤波誠一組のロードスター、遠藤組から1秒差で羽賀幸雄/高島幸信組のRX-8が続き、さらにマーチを駆る阪口知洋/黒岩満好組が1.5秒差で羽賀組を追いかける形で折り返した。

 しかし午後に入ると、昨年も高地セクションで速さを見せた羽賀組のロータリーパワーが炸裂。SS3でベストを奪って一気に首位に躍り出ると、その後もベストタイムを連発。トップの座をキープして、逃げ切った。白熱した2位争いは阪口組が0.2秒差で笹岡組を抑えてゴールし、セクション1の4位からジャンプアップを果たした。

 RX-3、RX-7(FC3S)そしてRX-8とマツダ車を乗り継いできた羽賀選手は、長野県シリーズでは知らぬ者のいないロータリー使い。チャンピオンもすでに何度も獲得済みだ。「RX-8はロータリーだけじゃなくて足も本当にいいクルマなので、今日はクルマに助けられました」と羽賀選手はまずは、ホッとした表情。

「セクション1は所々に花粉が浮いていて怖い道でした。初めて履くタイヤだったので、走りもギクシャクしましたが、トップから3秒落ちだったので、逆転できると思って2ステは頑張りました。午前中のクネクネしたような道だとライバルに敵わないんですが、午後のような高速のステージは勝負できるので、セッティングもそっちの方向に振っています。クルマに合った道で狙って行くという、作戦通りのラリーができたのが勝因ですね」と笑顔を見せていた。

クラス3は、セクション2で首位に浮上した羽賀幸雄/高島幸信組がそのまま逃げ切った。
クラス3優勝の羽賀/高島組。
マーチをドライブした阪口知洋/黒岩満好組が2位をゲットした。
中部から遠征の笹岡亮佑/加藤昭文組が3位に入賞した。
クラス3表彰の各選手。
OPENクラスは斉藤明宏/菅原一訓組が大差で優勝した。
OPEN2位の後藤芳生/橋本敏久組(左)と同3位の伊東美紀/山田一成組(右)。
フォト/佐久間健、JAFスポーツ編集部 レポート/JAFスポーツ編集部
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