鈴鹿スーパーFJ選手権は森山冬星選手が3勝目! 三つ巴の様相を抜け出してタイトル争いをリード
2022年6月23日
全7戦で争われる「2022 鈴鹿クラブマンレース」は、6月18~19日の開催で早くも4戦目となり、シリーズも折り返しを迎えることとなった。予選が行われた土曜日は猛烈な通り雨に何度も見舞われ、決勝レースが行われた日曜日は夏日となり、暑さとの闘いを強いられることに。
2022 鈴鹿クラブマンレース Round.4
開催日:2022年6月18~19日
開催地:鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)
主催:AASC、SMSC
全6戦で競われる地方選手権の鈴鹿スーパーFJ選手権は、残すところ2戦のみとなった。これまでの展開としては完全な三つ巴。2勝ずつ分け合う森山冬星選手と居附明利選手がほぼ一線上に並んで、1戦欠場のある岡本大地選手が追う展開だ。Wヘッダーだった前大会から、岡本選手はマシンに何らかの不調を抱えているようで、実際土曜日の午前に行われたスポーツ走行ではトップの居附選手にほぼ2秒も遅れていた。
その意味では、予選で降った雨が岡本選手にとって「恵みの雨」となった。まず計測1周目にトップに立ったのは卜部和久選手。間もなく山本聖渚選手がトップに躍り出るも、即座に消去されてしまったのは、シケインのデブリを撤去するための赤旗が提示された後に、山本選手は計測ラインを通過していたからだった。この中断がなければ、ルーキーのふたりに決勝レースで違った光景を見せていたかも。
予選再開直前にエア圧を改めたことが裏目に出て、卜部選手がタイムを伸ばせずにいる中、しっかりトップに立ったのが居附選手。これに続いたのが山本選手だったが、ラスト2周のアタックで森山選手がしっかり2台の間に割って入っていた。そして4番手は岡本選手が獲得。
「最初のアタックがうまくいかなかったので、赤旗が出てかえって良かったです。再開後はしっかり温められたので、攻めて走ることができました」と居附選手。
ドライコンディションに転じた決勝レースでは、スタートを決めて居附選手がトップに浮上し、森山選手、岡本選手の順で1コーナーに飛び込んでいく。その岡本選手は「1周目に命かけてアグレッシブに行きました」と、シケインでインを差して2番手に浮上するも、立ち上がりの加速が鈍って1コーナーで森山選手に抜き返されてしまう。
この間に居附選手は逃げかけたが、しっかりタイヤに熱が入ってからは森山選手の方がペースで優り、岡本選手を引き離すとともに、徐々にトップにも迫っていく。6周目にはテール・トゥ・ノーズとなり、7周目の1コーナーで森山選手はついにトップに浮上。逆に居附選手はその後に生じたシフトフォークの損傷で無念のリタイアを喫してしまう。
これで3勝目を挙げた森山選手はランキングのトップに浮上し、「やっと、こういうレースができたって感じですね。序盤は本当にきつかったんですけど、途中からマシンも乗りやすくなって、諦めず追いかけていったら、ああいう展開になって本当に良かったです。最終戦も気を抜かず、優勝だけを狙っていきます」と語った。
実際、有効ポイントの関係上、最終戦で居附選手は優勝すれば逆転可能であるが、2位以下であれば、森山選手はリタイアしようともチャンピオンが確定する。まさに勝った方に栄冠が輝くという、最高のシチュエーションとなった一方で、岡本選手の3連覇の可能性は潰えていた。
岡本選手が2位でゴールし、その後方では大木一輝選手や高木悠帆選手と激しいバトルを繰り広げていた渡会太一選手が3位を獲得。鈴鹿で初めて表彰台に立つこととなった。
VITA-01が36台、CS2が11台と、大量のエントリーを集めたMEC120。このMEC120とはクラブマンスポーツ(VITA-01)とCS2(ウエスト16Cとv.Granz)の混走による2時間耐久で、かつてのクラブマン300kmの薫陶を受け継いだレースである。初年度の昨年は60分で競われたが、今年は120分に延長されたことから、「今後1年ごと1時間ずつ延ばされて、22年後には24時間レースになっているのでは!」と、パドックのあちこちで軽口も聞こえてきた。
ポールポジションはCS2-Gクラスの大島和也/樋口紀行組が獲得し、コンマ5秒差で小山美姫/依田学嗣組が続いた。大島選手は「最初に僕が行って、後半の方がコンディションも良くなっていたので、抜かれるかなと思っていたんですけどね。雨は強かったんですが、VITAにあまり絡まずに済んだのがタイムを出せた要因かもしれません」とコメント。
一方のCSクラスは最後の最後にベストタイムが更新され、岸本尚将/有岡綾平組がトップを獲得し、「最後の一発に賭けて、だんだんと準備していって最後にバンと出した感じです」と、狙いどおりの展開に岸本選手は満足そうだった。
決勝レースはピットストップの義務づけが2回、またピットロード入口から出口までの滞在時間は180秒。ドライバーひとりでの参加も可能とあって、連続周回数に制限はなかった。そして展開はというと、セーフティカー(SC)がコースアウトした車両やデブリの回収のために4回も導入され、その間にピットストップも可能とあって、SCのタイミングに合わせられたか否かで、大いに有利・不利が分かれる格好となった。
ポールスタートの大島選手は序盤から後続を引き離し、小山選手と熾烈なバトルを繰り広げるも、鉄壁のガードで逆転を許さず。樋口選手との最初の交代は16周目で、SCとは合わせられなかったものの、再び大島選手と代わったのは29周目で、4回目のSCランと合わせられ、マージンを得たかに見えた。しかし、その直前に追い越しが……。ドライビングスルーペナルティを課せられ、万事休すかと思われた。
ところが大島選手の挽回がすさまじく、あれよあれよという間に順位を上げていく。ギリギリまで最後のピットストップを遅らせていたチームを尻目に、待望のトップに返り咲いたのは残り15分を切った38周目だった。鼻息荒く走り続けていたせいかWチェッカーとなるミステイクもあったが、60秒加算のペナルティを課せられてなお逃げ切りに成功した。
「良かったです。無事じゃなかったけど、ポール・トゥ・ウィンできて。Wチェッカーは見逃してもらえませんでしたが(苦笑)。パドルつきのこういうレーシングカーには乗ったことがなかったんですが、すぐ乗り慣れたので自信にもつながりました。今年はシリーズで参戦するレースは特になくて何も決まっていないんですが、こういう感じでスポット参戦したり、シーズン後半に向けて新しい挑戦をしていきたいと思っています」と大島選手。樋口選手は「僕が勘違いしてやらかしているので、優勝できて良かったです。本当に大島選手には感謝しています。今はホッとしています」と語っていた。
総合2位は吉村一悟/寺西玲央組で、総合3位は松本吉章/中村賢明組。ウエスト16CによるCS2-Cクラスの優勝と2位を獲得。最終ラップのシケインで左リアの足回りが折れるハプニングもあったが、かろうじてゴールできたことで好結果を得ていた。
CSクラスはトップスタートの岸本選手が、阪口良平選手や富田竜一郎選手といったGTドライバー、そしてディフェンディングチャンピオンの大八木龍一郎選手を相手に、一歩も引かぬ激走を序盤に見せていた。しかし、岸本選手から有岡選手への交代をSCに合わせられずに順位を落としてしまう。
一方で競い合っていた3人はジャストタイミングでピットに。しかもシングルエントリーの大八木選手はもちろんのこと、阪口選手もWスティントとしたことで、やがてトップは一騎討ちとなっていく。そんな中、大渋滞に巻き込まれた大八木選手は接触でフロントカウルを失ってしまう。そのまま走り続けていたが、やがて走行にも支障を来すようになり、ピットに戻ってリタイアを余儀なくされる。
これで独走状態とした阪口選手は総合で一時トップを走るも、堀田誠選手との交代が行われていなかった。登録されたドライバーは必ず走らなければならないという規定があり、ようやく代わったのがゴールまであと10分を切ったタイミング。その間に3番手に後退したばかりか、ラスト2周のヘアピンで追突される不運も……。
気づけばトップに立っていたのは猪爪杏奈選手だった。予選こそ12番手だったものの、着実に順位を上げて、パートナーの岡本大地選手からの交代をSCに合わせられたこともあって、いつしか2番手に浮上。そして終盤にトップが転がり込んできた格好だ。総合でも4位でゴールし、男女ペアで参戦のミックスジェンダークラスの優勝も合わせて獲得した。
「展開に恵まれてびっくりしました! 走っている時は全然どこ走っているか分からなかったんですけどね。岡本選手に今週末ずっと教えてもらっていたので、それを意識しながら走っていました」と猪爪選手。そして岡本選手は「良かったです、本当に。たまたまSCのタイミングと交代を合わせられて、その時に勝てる場所にいたのも良かったんでしょう。猪爪選手もミスなく走ってくれたおかげです」と、半信半疑の様子で喜びを語ってくれた。
2位は中里紀夫選手が予選19番手からの追い上げで獲得し、これでCSクラスのランキングトップにも浮上。3位は後藤武史/大井偉史組が獲得した。
NゼロVitz関西シリーズ第3戦の予選は、開始から間もなく雨が降るというクセの強い状況。ためらうことなく計測1周目からアタックしたドライバーだけが上位につけることとなった。
開幕2連勝の三浦康司選手を僅差で抑えてポールポジションを獲得したのは坂野貴毅選手で、「早めにアタックしないとまずいと思ってアタックしたら、バックストレートでスリップも使えました。自分もミスなく行けて、なんとかタイムを一発で出せたら、強く雨が降ってきたので、本当に良かったです、タイミングですね!」と、大満足の様子。
しかし決勝となると、三浦選手の方が一枚上手だった。スタートを決めて坂野選手の前に出ると、一瞬たりとも隙を見せず。大きくは離されなかった坂野選手だったが、逆転のチャンスは最後まで与えられなかった。
「スタートは僕がうまくいって、坂野選手が失敗した感じでしたね。チームメイトなので安心してレースができたのが良かったです。離すことはできませんでしたが、彼も若いので成長が早いですね。おっさん、負けないように頑張ろうと思います。実は鈴鹿で初優勝なんです」と心からうれしそうに語っていた。3位は白井涼選手が、オープニングラップの大渋滞をくぐり抜け、予選6番手から順位を上げていた。
鈴鹿初開催のナンバーつき86/BRZは、シリーズではなく単発ということもあってか、わずか5台のエントリーに留まった。しかし、雨の予選はさながらシーソーゲーム。角谷昌紀選手と青柳貴明選手が激しくトップを争い合う。そして最後の一発を決めた角谷選手がポールポジションを獲得した。
「実は雨が苦手で、最後の2周ぐらいで来たという感じでした。後から思うと、もうちょっと詰められるところあったな、って」と角谷選手。
決勝も激しいバトルが繰り広げられるかと思われたが、スタートが決まった角谷選手のひとり舞台に。最終ラップのファステストラップを記録するほど、アクセルを最後まで緩めず走り、最後は13秒差の圧勝となった。その角谷選手は「全開で走りたかったので、最後まで! 1周目のシケインだけ失敗しているんですが、あとは何事もなく優勝できて良かったです」と語った。2位は水野裕治選手が獲得。
64台が予選に臨んだTOYOTA GAZOO Racing Yaris Cup 2022 西日本シリーズ第4戦。初めてのポールポジションを獲得したのはTAGAMI DAISUKE選手で、「コースインが遅れたのでなかなかクリアラップが取れなかったんですが、最後はうまくタイミングが合ってトップになれました。Yarisには昨年から乗り始めて、雨の日を走るのが今日初めてだったので、自分でもちょっと予想外でした」とのこと。
決勝ではスタートに出遅れて森口優樹選手の先行を許したTAGAMI選手だったが、2周目の2コーナーでトップを奪い返す。その後、2番手が目まぐるしく入れ替わり、その都度、TAGAMI選手に激しく迫るも、しっかりとガード。
最後の刺客は前回のウィナー神谷裕幸選手だったが、やはり前に出ることを許さず、初優勝を飾った。TAGAMI選手は「後ろからのプレッシャーがすごく、ちょっと余裕のないところも出てしまったので、そのあたりは次以降の改善点です。でも、やっぱりうれしいですね」とコメント。神谷選手に次ぐ3位は森口選手が獲得した。
フォト/遠藤樹弥 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部