勝田貴元選手がサファリ・ラリー・ケニアで総合3位獲得! GR YARIS Rally1が1-2-3-4フィニッシュの快挙!!

レポート ラリー

2022年6月29日

ケニアの首都ナイロビの北西約100kmに位置するナイバシャで6月23~26日に開催された、2022年FIA世界ラリー選手権(WRC)第6戦「サファリ・ラリー・ケニア」。2021年に19年ぶりに復活した大会で、ステージは荒れたラフロードで知られ、サバイバルラリーが展開される。このアフリカラウンドにTOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムに参加中の日本人ドライバー、勝田貴元選手も参戦しており、GR YARIS Rally1を武器に好タイムを連発して3位入賞。2021年の同大会で2位に入賞して以来、キャリア2回目の表彰台を獲得した。

2022年FIA世界ラリー選手権 第6戦「サファリ・ラリー・ケニア」
開催日:2022年6月23~26日
開催地:ケニア・ナイバシャ周辺

 注目のオープニングステージは23日の夜、ナイロビ中心部に設定されたスーパーSSで幕を開けた。同SSで6番手タイムをマークした勝田貴元選手だったが、「翌日から本格的なラリーが始まったんですけど、サバイバル戦ということを意識して抑えすぎました」と、24日のSS2は慎重な走りに徹したことにより、トップから16.9秒遅れの9番手タイムでフィニッシュする。

 しかし「SS2で落としすぎたので、その部分を改善してプッシュしたところ、タイムも上がったしフィーリングも良かったです」と語るように、勝田貴元選手はSS3で2番手タイムをマーク。続くSS4で3番手タイム、SS5とSS6で2番手タイムをマークした。

 まさに序盤から好タイムを連発した勝田貴元選手だが、「前走車がトラブルによりコース上に留まっていたこともあって、ダストの影響がありました。また前走車がクラッシュしたことで、大きな岩が出て、止まるぐらいのスピードまで落としたことで30秒ぐらいタイムをロスしてしまいました」

「オーガナイザーが救済のために、フィニッシュタイムよりも12秒速いタイムで計上してくれましたが、データを見る限り、それ以上にロスをしていたのが残念でした」と、この日の最終ステージとなるSS7はトップから18.9秒遅れの4番手タイムでフィニッシュ。それでも勝田貴元選手はトップのカッレ・ロバンペラ選手から14.6秒差の2番手でデイ2をフィニッシュしている。

「SS7でのタイムロスは残念ですけど、長いラリーなのであまり深く考えずに次の日に進みました」と言う勝田貴元選手は、翌25日のデイ3でも素晴らしい走りを披露していた。

 この日のオープニングステージとなるSS8は「ペースノートを聞きながら走っているときに、ひとつのコーナーの情報を聞き逃してしまいました。次のコーナーがどのアングルのコーナーが分からなくなって、全開で行けるセクションでフルブレーキをかけながら走ってしまい、そこからリズムを崩してしまいました」とのことで、トップから18.8秒遅れの7番手タイムに伸び悩み、総合順位でも3番手に後退した。

 それでも「ひとつのSSのタイムで気持ちが左右されないように進めていくだけです」と、SS9では4番手タイムをマーク。さらにSS10はタイヤにダメージを受けながらも5番手タイムをマーク。そしてSS11では3番手タイムをマークするなど、勝田貴元選手は復調を果たしていた。

 このように予想外のハプニングに見舞われながらも、強靭なメンタルで克服してきた勝田貴元選手に対し、今度は突然の豪雨が襲いかかった。

「SS12の出走前に雨が降ったことで、フルドライの区間があれば泥だらけの区間もあったりで、難しいコンディションでした。そこでコースアウトしたこともあってタイムを落としてしまいました」と語るように、SS12で勝田貴元選手はトップから27.1秒遅れの6番手タイムに伸び悩み、総合順位でも4番手に後退してしまう。

「SS13も難しいコンディションだったので、いろいろなドライビングを試してみたんです。そうしたら新たなドライビングスタイルが見つかり、いいイメージで走れました」と勝田貴元選手。具体的には左足ブレーキの使い方に工夫を採り入れたようだ。

「今まではブレーキの時はブレーキだけ、スロットルの時はスロットルだけ……といったように極端に分けていたんですけど、滑る路面では左足ブレーキを活用することが重要だとエンジニアに言われまして。今回のサファリは非常に極端なコンディションになっていたし、1~2秒ロスしても失うものはなかったので、いろんなドライビングを試していました」

「その中で、スロットルとブレーキを同時に踏み続けるぐらい左足ブレーキを使っていたんですけど、今までになかったグリップ感やトラクションを感じることができました。実際にその区間はデータで見てもタイムが良かったんです。自分の中では大きな気づきで、このラリーで一番の収穫になりました」と語る。

 事実、「SS13はパンクをしたんですけど、その前まではベストタイムをマークしたセバスチャン・オジエ選手より速いタイムで走れていました」と言うとおり、勝田貴元選手はパンクをしながらもトップから10.6秒遅れの3番手タイムをマークし、総合順位でも3番手でデイ3をフィニッシュしていた。

 こうして2回のパンクに見舞われながらも総合3番手でデイ3を走破した勝田貴元選手は、26日のデイ4でも再び粘り強い走りを披露する。

「最終日は前も後も大きく離れていたので、クルマにダメージを受けずにフィニッシュすることを意識しました。午前中はエンジンルームからオイルが漏れていたり、午後に関してはハイブリッドブーストが使えなかったりと、簡単な状況ではなかったんですけど、デイ3までに築いたギャップをうまく使いながら走れました」

 トラブルが頻発したものの、それでも勝田貴元選手はポジションを守り抜き、「トップタイムは奪えませんでしたが、僅差の2番手タイムを何回か出せたり、3番手タイムを出したりと安定していたので、個々のSSでのパフォーマンスには満足しています」と3位入賞を果たす。

「昨年の2位よりは順位が下でしたけど、総合的なうれしさを感じました。僕のコ・ドライバーのアーロン・ジョンストン選手にとっても初の表彰台なので、大きな週末だったと思います」とコメントする勝田貴元選手。サファリ・ラリーとしては2大会連続での表彰台獲得だ。
初のポディウムフィニッシュとなったコ・ドライバーのジョンストン選手を、表彰台獲得のTOYOTA GAZOO Racingのクルーたちでお祝い。勝田貴元選手はジョンストン選手に向けてシャンパンを浴びせかけてともに喜びを共有した。

 キャリア二度目のポディウムフィニッシュを遂げた勝田貴元選手、「パンクをした際に、ベタ落としでもいいから走り切れるようになりました。というのもパンクをした状態でプッシュすると、サスペンションなどにダメージを受けることがあるんですけど、パンクをしても後からリカバーできるという手応えもあったので冷静に対処できるようになりました」と自身の成長を語る。

 今回の好リザルトの要因について、勝田貴元選手は「チームが壊れないクルマをつくってくれたことでしょう。トラブルを未然に防ぐために改善してくれ、ケニアに着いてからも1時間ごとのスピードで開発してくれました」

「例えば、フロントバンパーのグリルメッシュをシェイクダウンの終了後に現地で屈強なものに変更したんです。ラフなセクションを通過した際にグリルメッシュがラジエターに食い込むことがあったので、もし変更していなければ確実にダメージを受けていました。そういった意味でもチーム力の強さを感じました。デザイナーやエンジニア、メカニックには感謝しています」と付け加える。

「ロバンペラ選手も速いし、エルフィン・エバンス選手も速いです。それにエサペッカ・ラッピ選手も次戦から帰ってきます。トヨタ以外のチームでも強力なライバルがいるので、簡単ではないけれど……優勝は近づいてきていると思います。ドライビングの引き出しを増やしながらチャンスをつくっていけば、そう遠くない将来に優勝できると手応えを感じています」と勝田貴元選手。

 次戦のラリー・エストニアについて「スムーズな路面でハイスピードのラリーなんですけど、フィンランドよりはルーズで轍ができやすいんです。昨年は完走できていないので、ロベンペラ選手のオンボードを見ながらペースノートに合わせたりと、これからしっかり準備してきたいと思います」

「エストニアやフィンランドのようなハイスピードラリーで結果を得るためには、ドライバーとしてのポテンシャルを見せることだと思うので、フィンランドにつなげられるように戦いたいです」と語るだけに、7月14~17日に開催される第7戦「ラリー・エストニア」ではTOYOTA GAZOO Racing World Rally Team Next Generationの勝田貴元選手の躍進に期待したい。

 なお、サファリ・ラリー・ケニアではTOYOTA GAZOO Racing WRTでGR YARIS Rally1を駆るカッレ・ロバンペラ選手が今季4勝目を獲得。チームメイトのエルフィン・エバンス選手が2位に入賞。3位の勝田貴元選手に続いて、スポット参戦のセバスチャン・オジエ選手が4位につけたことで、トヨタ勢が1993年のサファリ・ラリー以来、29年ぶりに1-2-3-4フィニッシュを達成した。

ここまで6戦4勝と強さを発揮しているカッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組。2位はエルフィン・エバンス/スコット・マーティン組、3位は勝田貴元/アーロン・ジョンストン組。そしてセバスチャン・オジエ/ベンジャミン・ヴェイラス組が4位となり、GR YARIS Rally1は1-2-3-4フィニッシュを達成。

フォト/TOYOTA GAZOO Racing レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部

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