真夏日の北海道・十勝で、クラブマンカップレースが盛況! 各クラス見ごたえのあるレース展開に
2022年7月12日
十勝インターナショナルスピードウェイを舞台に全5戦で争われる「北海道クラブマンカップレース」の第2戦が7月3日に開催された。本来は全国的にまだ梅雨の時期であり、梅雨のない北海道だからこそ、雨の心配もなく最高のコンディションに恵まれる……という印象なのだが、今年は6月中に全国的に梅雨が明け、十勝は北海道らしからぬ真夏日となり、不可思議なコンディションだった。
2022 北海道クラブマンカップレース 第2戦
開催日:2022年7月2~3日
開催地:十勝インターナショナルスピードウェイ クラブマンコース(北海道更別町)
主催:MSF株式会社、TOSC
多くのドライバーが練習を開始した金曜日は気温が20度を下回って、涼しいを通り越していたぐらいだったのが、土曜日からは一転して30度を超えてしまった十勝インターナショナルスピードウェイ。それでも湿気が少なく、心地よい風も吹いていたから、日陰にいればなんとか凌げるという状況ではあった。
北海道クラブマンカップレース第2戦の目玉は、何と言っても十勝初開催のJAFフォーミュラ4地方選手権シリーズだ。昨年はオートポリスで開催されエントラントからも好評だったことから、「今度は十勝で」という多くの要望を受けて実現した形だ。
Wヘッダー開催となり、レース1のグリッドは予選のベストタイム、レース2のグリッドはセカンドベストタイムで決定される。ちなみに十勝でフォーミュラのレースが開催されるのは、1997年のFJ1600地方選手権が最後とあって、実に四半世紀ぶりとなる。
本大会にエントリーした選手にF4で十勝を走った印象を聞いてみた。まずは佐々木孝太選手が「十勝をフォーミュラで走るって新鮮だなぁ、って。その基準を調べてみたんですが、1994年ぐらいにミハエル・クルム選手がF3で1分15秒ぐらいだったんですね、このクラブマンコースで」
「マシンの進化とか考慮したらその辺りが目標タイムかなと思ってきたんですが、路面が変わっていない分、そこまでは行きませんでしたね。走ってみた感じとしては、何度も十勝を走っているから違和感ないんですけど、みんな慣れていないし、クリッピングがフラットなので分かりにくいみたいです。そういう意味では、クリップの感覚をつかみにくいっていうのはありますね」と語ってくれた。
十勝初挑戦となるハンマー伊澤選手は、「ひと言で表現すると“面白い”です。初めは直線と直角コーナーの繰り返しのような気がして、加速してはブレーキ、加速してはブレーキというイメージだったんですが、平均スピードを全体的に上げた方がいいなと思い始めています。イケイケみたいな感じで面白いですよ」
一方、九州から遠征の吉田宣弘選手は、「このサーキット、キツいですね。路面がバンピーで振動も来るから、走行すると結構身体に堪えます。アップダウンがないので走りやすいし、コースも覚えやすいですけど、その中に難しさがあるという。楽しんでいます、思い出づくりを(笑)」と高評価ではあった。
予選でベストタイムを記録し、レース1のポールポジション(PP)を獲得したのは佐々木選手だった。しかし、セカンドベストタイムでは伊澤選手の方が優って、レース2のPPを奪われてしまう。
「思ったよりも上がらなかったです。クルマもバランスが悪くて、ひとつもPP獲れないんじゃないかってほどでした。向こうはトップスピードが伸びるようなんで、何か考えないと」と思案気味の佐々木選手。
これに対し、「びっくりしました。タイムは揃えていたので、ひょっとしたらと思っていたんですけどね。スタートさえ大きなミスしなければっていう感じなんですが、ここまでの3戦、実は全然ダメなんです(苦笑)」と伊澤選手の方が前向きに受け止めていた。
レース1ことシリーズ第4戦決勝では、「出だしは良くなかったんですけど、思ったよりハンマーさんも失敗していたようで」と、スルスルと前に出た佐々木選手。これとは対照的に、伊澤選手は予選3番手の黒沼聖那選手、4番手の吉田選手にもかわされていた。
そればかりか、伊澤選手はわずか2周でピットイン。強敵の脱落後もお構いなしにアクセルを踏み続けた佐々木選手は、14周のレースで2位に17秒以上の差をつける圧勝で、「気を抜いたらまわりの人たちに失礼なので、最後までプッシュして走ろうと思っていました」と、ようやく笑みを浮かべることとなった。
2位は黒沼選手で、終始単独走行。そして3位を獲得した宮下源都選手は予選こそ5番手だったものの、1周目で8番手まで順位を落としてしまう。それでも3周目には4番手に上がり、その時点で3秒以上あった吉田選手との差を徐々に詰めていく。そして9周目の最終コーナー進入で抜き去るという展開だった。
完走扱いにはならなかったものの、ピットインからレースに復帰した伊澤選手は「燃料系トラブルでした。全然燃圧が上がらなくなって……。でも解消したので、次のレースは頑張ります」とコメント。
そのレース2において、今度はスタートを決めて佐々木選手が自力でトップに立つも、伊澤選手が食らいついて離れない。だが、それも中盤まで。差が1秒に広がると、佐々木選手は一気にペースを上げてファステストラップを連発。最後は3秒差で再び独走し、2連勝を挙げて今季3勝目をマークした。
「スリップストリーム使われちゃうと……ってくらいの差しかなかったから、とりあえず逃げちゃおうと、面白くないレースをしました! 練習でニュータイヤを使わず、予選ではバランスが今イチ悪かったので、実績あるユーズドで行ったんですけど、それでもファステストラップが獲れたので良かったです」と佐々木選手。
2位の伊澤選手は「ラスト5周ぐらいからタイヤ、あと人間的にもタレてきちゃったんですが、途中まで着いていけたので、次回への期待材料とします」と語っていた。3位は黒沼選手が獲得し、また40歳以上のドライバーを対象とするジェントルマンクラスでは、吉田選手がきっちり連勝を飾っていた。
シリーズ第3戦と銘打たれているが、実質今季初戦となるTOYOTA GAZOO Racing Yaris Cup東日本シリーズの予選には、30名が臨むこととなった。そんな中、計測1周目からベストタイムをマークし、トップを最後まで守り抜いたのが、ゼッケン1を誇らしげにつける昨年のグランドファイナルウィナーの大森和也選手だった。
「練習走行からかなりいい感じでタイムは出ていて、『落ち着いて普段どおりに走れば大丈夫だよ』って言ってもらっていたので、あまり緊張することなく走れました。皆さんのおかげです。スタートが下手くそなので(苦笑)、スタートをバチッと決めてミスしなければ行けると思います」と大森選手。
だが決勝では、失敗とまでは言わないものの、より好スタートを切った予選2番手の島拓海選手の先行を、大森選手は許してしまう。それでも離れることなく続いていたことから、2周目の2コーナーで早々と勝負をかけたのだが……。大森選手の誤算は背後に渡辺圭介選手が続いていたことと、一発で仕留められなかったこと。ふたりのわずかな失速を、渡辺選手が逃さず捕らえてインを差す。
トップに立った渡辺選手に島選手は続いたものの、大森選手は小林伸匡選手、そして黒田保男選手にもかわされて5番手に後退。その後はそれぞれのグループで、激しいバトルが続いていく。
「島選手が『ふたりで逃げてから』ってサインを出してくれたので、後ろを離すことができました」と渡辺選手。その思惑どおり、3番手争いは大激戦。さらに藤室優太選手を加えて4人で競い合う中、最後に3番手に立った黒田選手が、終盤にはトップ争いにも近づいていったが、時すでに遅しの印象はあった。
渡辺選手が辛くも逃げ切りを果たしたのに対し、「あとでやろうとなったんですけど、渡辺選手は速いので、うまくいかなかったですね」と、島選手は少々後悔気味のようではあった。3位は黒田選手が獲得し、4位は札幌在住の小林選手。大森選手は悔しい5位となった。
VITA-01北海道シリーズ第2戦では、ディフェンディングチャンピオンの佐藤元春選手が、大島良平選手の2戦連続PPを阻止。その佐藤選手は「予想より温度が高い分、タイヤの発熱がいつもより早いので、最初に決めなきゃと思い、前半でタイムを出して無事PPが獲れて良かったです。このまま逃げ切りたいと思います」と語った。一方、大島選手は僅差での2番手に「もうちょっとだったんですけどね。決勝ではなんとか食らいついていって、自分はミスらずに、相手のミスを待ちたいと思います」と、逆襲を密かに誓っていた。
決勝ではスタート直後の3コーナー進入で接触があり、2台がストップ。即座に赤旗が出される波乱の幕開けとなった。ドライバーひとりが緊急搬送されるも、大事には至らず。レースはセーフティカースタートによって仕切り直されることとなった。
リスタートではトップを守った佐藤選手ながら、その次の周には大島選手が勝負に出て、1コーナーでトップに浮上。さらに坂本幸照選手を加え、序盤は3台で激しくトップを争い合う。だが、王者に対して大島選手は少しも隙を見せず、着実に周回を進めていく。
終盤には坂本選手が離れ、完全なる一騎討ちに。最後の最後まで逆転のチャンスをうかがっていた佐藤選手ではあったが、コンマ3秒差で逃げ切られて連勝ならず。うれしい初優勝を飾った大島選手は「ノーミスで走り続けても、佐藤選手は全く離れてくれなかったので、もう精神がボロボロです(笑)」と、まず喜びよりもハードだったレースを振り返ることを第一声にあげた。
そして佐藤選手は「うまいレース展開でした。仕掛け切れなかったので負けちゃいました。前回の反省をしっかり踏まえていたようですね」と、大島選手への賛辞も惜しまなかった。3位は坂本選手で、予選11番手から追い上げて浅井康児選手が4位を獲得した。
今年から始まったナンバーつき車両によるTS-86/BRZ Raceは2台、そして2年目のN0-Vitzには5台が参戦。今後エントリーが増えることが期待される2カテゴリーだ。
PPはもちろんTS-86/BRZの三浦稔呂選手が獲得するも、「私はずっとFFで、86にはまだ2回しか乗ったことないんです。一昨日着いたもので! なのに今日すぐレースなんです。クルマばかりかタイヤにも慣れていないので、これからまだまだ上がっていくでしょう」と、陰能裕一選手を僅差で従えていたが、決勝には自信ありの様子。
N0-Vitzは全国自主転戦!? の三浦康司選手が、地元ドライバーの阿部晃太選手、加藤由記選手らに1秒以上の差をつけてトップとなり、「昨日はほとんど走れませんでした。予選の途中でエアを上げてみたら、それが良くて、普通は出ない後半のタイミングで更新することができました。アホなフライングとかしなければ(笑)、どこまで逃げられるかというレースをしてみたいと思います」と三浦康司選手。
決勝では2名の三浦選手による思惑どおりのレースとなった。まずTS-86/BRZでは三浦稔呂選手がスタートから飛び出し、陰能選手を寄せつけず。が、「ちょっとクルージングみたいになって、クルマを慣らしながら走っていました。でも、こんなものではダメですね、これからもっと頑張ります」と6秒差をつけてなお、納得がいかぬ様子だった。
そしてN0-Vitzでは、三浦康司選手が好スタートを切ったのに対し、阿部選手が加速を鈍らせてほぼ最後尾まで後退。しかし、徐々に順位を上げてゴール直前のストレートで加藤選手をコンマ04秒差、まさに鼻の差で振り切って2位となった。
そんなドラマチックな展開を尻目に、三浦康司選手は12秒差での圧勝に。もし、阿部選手が普通にスタートを切れていれば、ここまで大差がつかなかったかもしれない。とは言え、「コンスタントにタイムを刻むことを意識して、後ろを気にしなくて良かったので、思ったとおりのレースができました。ポール・トゥ・ウィンは2月の岡山以来なので、めちゃくちゃうれしいです。ここまで6戦6勝、まだまだ行きますよ」と、実に満足そうだった。
3台のみ参戦のN1-1000では、なかむらりょうこ選手が前戦に続くPPを獲得で、「もうちょっと出せたかな、という感じはするんですが、やっぱり暑さと戦う方が大変です。昨年は1年間休んでいて、今年2戦目の割にはまぁまぁかなという感じです。決勝の時間にはもうちょっと気温も下がって、頭が冴えるようになればいいなと思っています」となかむら選手。
しかし、決勝では思いがけぬ藤原広紫選手の猛攻を受ける。ぴたりと食らいついて離れなかったばかりか、7周目の1コーナーでは逆転を許してしまったからだ。しかし、なかむら選手も諦めずにチャージをかけて、次の1コーナーでトップに再浮上。すると肩の荷が降りたのか、ラスト3周はファステストラップの連発で、逃げ切りに成功。
「途中でちょっとやばいとヒヤヒヤしていました。優勝は初めてではなく、N1-1000が始まって2年目、8年ぐらい前なんですが、その年の最終戦でWレースを連勝して以来なんで、すごく久しぶりです。ウエイトハンデのあるレースなので、大変なんですけど、これからも勝っていきたいと思います」となかむら選手。
フォト/遠藤樹弥、加藤和由 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部