タカタで開催の中国地区戦は新コーナーも登場!浜孝佳ランサーがオーバーオールV
2022年8月3日

JAF中国ダートトライアル選手権は、いよいよシリーズ後半戦に突入。7月17日に第5戦が行われた。
JAF中国ダートトライアル選手権第5戦
JMRC中国ダートトライアルチャンピオンシリーズ第4戦
JMRC全国オールスター選抜第4戦
‘22スピリット ダートトライアル
開催日: 2022年7月17日
開催場所: テクニックステージタカタ(広島県安芸高田市)
主催: SPIRIT
テクニックステージタカタでの地区戦は今季4度目の開催。残る2戦は山口の楠ハイランドパークとタカタが1戦のみとあって、タカタを得意とするドライバーにとっては、ここでしっかりとポイントを積み重ねておきたいところだ。
今回最大の注目は、従来のキャロッセコーナーの奥に新設されたコーナーが、初めてコースの一部として使用されたことだ。今回は右回りを採用したため、コーナーの進入の手前は上り勾配の長いストレート区間となり、コーナーの脱出後はクランク状のセクションを通過後、コース中央部に向かって、今度は一気に下りのストレートを全開で踏み抜くという設定となった。
高速コースとして知られるタカタは、ある程度の速度を維持しながら進入するコーナーが多く、今回のようなストップ&ゴーのセクションは珍しい。選手の中には、「今までのタカタにはなかった新感覚のコーナーですね」と語る選手もおり、特に第1ヒートでは、新コーナーの進入に戸惑い、失敗する選手も多かったようだ。難攻不落のグラベルサーキットに新たな名物コーナーが誕生した形だ。
また、この新コーナーとともに今回大きな勝負所となったのが、モンテカルロコーナーを急勾配で下った後にクリアするフルターン。ここも速度を落として進入しないと、アウト側の砂利のフカフカにはまって大きくタイムロスするため、今回はドライバーとしての幅広い対応力が問われるコースとなった。





前戦で今季初成立となったAE+クラスは、今回も3選手が参加し、2戦連続の成立となった。第2ヒートで、前戦優勝の小野守選手が2分16秒台までタイムを詰めて一旦はトップに立ったが、第1ヒート首位の河野鉄平選手が2分15秒89をマークして逆転。そのまま逃げ切ってアクア対決を制した。





第2戦以来、2度目の成立となったATクラスは、デミオCVTでダブルエントリーした西村颯人選手と行友優太選手が1-2フィニッシュを決めた。ともに山口大学自動車部に所属する二人がドライブしたデミオCVTは、自動車部の先輩である、昨年の全日本ダートトライアル選手権チャンピオンの太田智喜選手が、ATクラスを盛り上げようと用意したレンタル競技車だ。
この日がデミオ初ドライブだった優勝の西村選手は、「最初は“ATでダートラってどうなんだろう”って思ってたんですが、走ってみたら楽しかったです(笑)。学生の大会はいつも、そんなに速度が出る設定ではないんですが、初めて地区戦の社会人用のコースを走って今まで体験したことのない速度域で走れたので、アドレナリン出まくりでした(笑)」と興奮が収まらない様子だった。





PN1+クラスは、ともにフィットを駆る藤原祐一郎選手と山谷隆義選手が今季も激しいバトルを見せている。この二人に割って入って第3戦を制したのが、長野から遠征する全日本ドライバー、飯島千尋選手のZC32Sスイフト。藤原選手も近畿在住とあって、このクラスは遠征組が速さを見せている。
しかし第1ヒートを首位で折り返したのは地元の山谷選手で、2番手の藤原選手に2秒以上の大差をつけ、好調をアピールする。だが第2ヒートに入ると、飯島選手が大きくタイムを上げて2分3秒83をマーク。対するフィット勢は2分4秒の壁を超えることができず、飯島選手がトップを守って今季2勝目をマークした。
「新コーナーは、進入より、立ち上がった後の方が面白いですね。そのまま下って、今まで体験したことのない車速で高速S字に進入するので、勘が狂ってしまいました」と飯島選手。「2本目は新コーナーの進入も合わせられたし、大体のことはできたと思います」と勝因を振り返った。





NPSAクラスは、今季負けなしの3連勝を飾っている坂本幸洋選手のミラージュが、今回も両ヒートともベストで上がる走りを見せて快勝した。「ストレートではライバルに負けてしまうので、細かい所でタイムを稼ぐ走りをしました。最近よくあるフルターンは得意なセクションなので、タイムを詰められたと思います」と振り返った坂本選手だが、注目の新コーナーは、「2本とも失敗しました。ちょっと攻略法をじっくり考えないといけないですね」と今回は苦戦した様子だった。





SA1クラスは、“2強”の川本圭祐、松岡修司両選手が激しいトップ争いを展開した。第1ヒートはランキング首位の川本選手がトップタイム。新コーナーで大きく失敗した松岡選手は2番手は確保するも、4秒以上も離されてしまう。
しかし松岡選手は第2ヒートでは、「多少、外した所もあったけど、いい路面を踏んでいけました」と言う走りで、10秒近くもタイムを縮め、1分58秒93でゴールする。「ドライタイヤでは勇気のいる路面だったので、ウェットタイヤで勝負しました」という松岡選手に対して、ラストゼッケンの川本選手はドライタイヤを選択。だが、「ラインにこだわり過ぎて大人しい走りになってしまいました」と0.38秒、松岡選手には届かず。松岡選手が今季2勝目を獲得した。
「新コーナーは1本目は突っ込んでしまったけど、2本目は何とか回れました(笑)」と、ホッとした表情を見せた松岡選手は、コルト・バージョンRで、10月にタカタで開催される全日本戦での金星を狙う。「全日本に向けていい練習ができました」と激戦を振り返った。





RWDクラスは、第3戦を制した横山修二選手が今回は不参加。今季は前戦から参戦を開始した徳永紘行選手のMR2がライバルの86勢を大差で下して2連勝を遂げ、2勝目一番乗りを果たした。このクラスも最終戦までタイトルレースがもつれる可能性が大きくなってきた。





NS1クラスは参加10台と、SA1クラスと並んで今回最多のエントリーを集めた。このクラスは、昨年の全日本タカタラウンドを制した浜孝佳選手が開幕2連勝と好調なスタートを切ったが、前戦はチームメイトでもある川戸惟寛選手が制して一矢報いた。
第1ヒートはこのトップ2を尻目に西田ツカサ選手が首位で折り返すが、第2ヒートでは、自らの暫定ベストを塗り替えた西田選手を川戸選手が約1秒突き離して逆転する。しかしそれもつかの間、最終ゼッケンの浜選手は、今大会で唯一、1分50秒切りを果たす1分49秒57をマーク。タイトルを手繰り寄せる3勝目をさらった。
「たまにジムカーナを走る自分には、フルターンの設定がだいぶ助けてくれました」と笑った浜選手。注目の新コーナーの手前の直線では4速が吹け切ったという。「進入は1本目は止まれなかったので2本目は早めにブレーキを踏みました。意外と合わせ込むのが難しいコーナーですね。立ち上がった後のクランクも路面が一定でなかったので、ラインの取り方で悩みました」。
「ただ、全体的にはまずまずの走りができたと思うし、タイムも悪くなかったので、本人的にはまだ不調なんですけど(笑)、ここから抜け出したいですね」と、浜選手は全日本タカタ連覇に向けて好感触を掴んだ様子。連勝を狙った川戸選手は、「左肩を痛めてしまってサイドを引くのがつらくてフルターンで失敗してしまいました。ただ、それがなくとも追いつける差ではなかったですね」と、今回は脱帽といった表情を見せていた。





一方、FFの改造車による熾烈なバトルが毎回展開されているSCD1クラスは、こちらもタカタでの全日本優勝経験者の一柳豊選手が、第2ヒートで「気持ちよく狙い通りの走りができました」という走りで第1ヒートの3位から逆転優勝。シーズン3勝目を獲得して、タイトルレースで俄然、優勢に立った。





SCD2クラスは、過去4戦すべてウィナーが入れ替わるという群雄割拠のシリーズとなっている。今回は、関東から遠征して開幕戦を制したアキマただゆき選手も参戦し、役者が揃い踏みした一戦となった。
第1ヒートでは第2戦の覇者である西元直行選手が総合ベストのタイムで折り返したが、第2ヒートでは望月浩孝選手が、1分50秒14まで一気にタイムを詰めて首位に躍り出る。最終走者の西元選手には50秒切りの期待もかかったが、逆転はならず。望月選手が2勝目一番乗りを果たし、ランキングもトップに立った。
望月選手の駆るマシンは、GR86風のカウルを纏っているが、中身は、故大井義浩選手が駆った全日本ダートトライアル選手権史上に残る名マシン、キャロッセGTOだ。タカタに隣接するボディショップタカタのガレージで長く眠っていたマシンを昨年からリファインを開始し、今年は地区戦に本格的に参戦している。10月の全日本選手権にも参戦の予定だ。
「昨年、色々とやって信頼性が確保できたので、今年からチューニングに入っているという段階ですが、まだエンジンには手を付けていないので、パワーも出せていないです」とは望月選手。新たなカウルで仕立てられた全日本の歴史に刻まれたスーパーマシンの復活も、大いに期待したいところだ。






フォト&レポート/JAFスポーツ編集部