雨に翻弄されたレースはトップチェッカー車両にペナルティ。HELM MOTORSPORTS GTR GT3が逆転で2勝目
2022年8月8日
ENEOS スーパー耐久シリーズ2022 Powered by Hankook 第4戦「スーパー耐久レース in オートポリス」は、7月30〜31日に大分県日田市のオートポリスにおいて5時間レースとして行われた。時折り雨が降る難しいコンディションの中、残り1時間になり雨量が増え、HELM MOTORSPORTS GTR GT3(鳥羽豊/平木湧也/平木玲次組)とD'station Vantage GT3(星野敏/藤井誠暢/近藤翼組)がトップを何度も入れ替えるバトルを演じ、D'station Vantage GT3がトップチェッカーを受けた。しかし黄旗追い越しのペナルティ50秒が加算され、HELM MOTORSPORTS GTR GT3が今季2勝目を挙げることになった。
ENEOS スーパー耐久シリーズ2022 Powered by Hankook 第4戦「スーパー耐久レース in オートポリス」
TOYOTA GAZOO Racing Yaris Cup 2022 西日本シリーズ第5戦
2022 N-ONE OWNER'S CUP Round.10
開催日:2022年7月30~31日
開催地:オートポリス(大分県日田市)
主催:株式会社オートポリス、APC
第4戦は最大勢力のST-5クラスが台数調整によりスキップとなり、ST-X、ST-Z、ST-TCR、ST-Q、ST1~4クラスに全45台がエントリーした。また今回、ST-Xクラスは日産GT-Rが3台、メルセデスAMGが2台、レクサスRC F、ポルシェ911、今季初参戦となるアストンマーティン・ヴァンテージ、スポットで初参戦となるBMW M4が各1台の全9台と、今季最多のFIA GT3車両がそろい、総合優勝を争うことになった。
公式予選はA/Bドライバーの合算タイムで決まる。30日は曇りで時々細かい雨が落ちてくるようなコンディションでスタートした。ポールポジションを獲得したのはポルシェセンター岡崎911GT3R(永井宏明/上村優太/伊藤大輔組)で、フロントローにはスポット参戦のPLUS with BMW Team Studie(山口智英/荒聖治/坂本祐也組)が並び、第3戦SUGOを制したGrid Motorsport AMG GT3(マーティン・ベリー/高木真一/黒澤治樹/山脇大輔組)が3番グリッドにつけ、4番グリッドにはAドライバー予選でコースコンディションが良かったST-QクラスのENDLESS AMG GT4(小河諒/川端伸太朗/菅波冬悟組)が並んだ。
決勝レースは、曇りながら時々霧雨の落ちる気温25度程度と涼しいコンディションの11時ちょうどにフォーメーションラップがスタートし、11時3分にシグナルがグリーンになりバトル開始となった。序盤の4周目にトップを奪ったのは、6番グリッドスタートのTKRI松永建設AMG GT3(DAISUKE/元嶋佑弥/中山友貴組)の元嶋選手だったが、スタートから1時間が経過した直後に右リアのホイールが脱落するというトラブルのためにスローダウンして緊急ピットイン。これでD'station Vantage GT3の藤井選手がトップに立った。
またスタート前の暖気運転中にラジエターから水が漏れてピットスタートとなったDAISHIN GT3 GT-R)大八木信行/青木孝行/藤波清斗組)の青木選手が、4周目にファステストラップを叩き追い上げ、一瞬だけ暫定トップに立ったが追い上げもそこまでだった。
12時45分過ぎに最初のピット作業を終えた時点で、トップはD'station Vantage GT3の星野選手、5番手スタートだったHELM MOTORSPORTS GTR GT3の平木湧也選手、ポルシェセンター岡崎911GT3Rの上村選手、PLUS with BMW Team Studieの山口選手、Grid Motorsport AMG GT3の高木選手という順。
スタートから3時間を経過した時点では、D'station Vantage GT3の星野選手、HELM MOTORSPORTS GTR GT3の平木玲次選手、ポルシェセンター岡崎911GT3Rの伊藤選手、Grid Motorsport AMG GT3のベリー選手、PLUS with BMW Team Studieの坂本選手、TKRI松永建設AMG GT3の元嶋選手という順だったが、やがてTKRI松永建設AMG GT3が前を走る2台を抜き去り4番手に浮上した。
レースも残り1時間半となる14時20分過ぎから雨量が増え、2台の車両がコース脇で止まったこともありこの日3回目のフルコースイエロー(FCY)となったが、その前にHELM MOTORSPORTS GTR GT3、D'station Vantage GT3は最後のピットインを済ませていた。
15時の時点では、ポルシェセンター岡崎911GT3R、TKRI松永建設AMG GT3、HELM MOTORSPORTS GTR GT3、D'station Vantage GT3の順だったが、雨量が増えたことでトップ2台であるポルシェセンター岡崎911GT3Rの上村選手とTKRI松永建設AMG GT3のDAISUKE選手は、共に雨量が増えると読み116周目にピットインしてレインタイヤに交換。しかしその後はスリックタイヤのままでステイしたHELM MOTORSPORTS GTR GT3とD'station Vantage GT3の方がラップタイムが速く、この2台がレースをリードしていくことになった。
レースも残り35分となったころ、128周目の100Rから第2ヘアピンまでの間に、D'station Vantage GT3の近藤選手がHELM MOTORSPORTS GTR GT3の平木湧也選手をかわしてトップに立ち、今季初優勝を大きく手繰り寄せた。しかし雨量がさらに増えたことで、平木湧也選手はスリックタイヤでの走行を諦め130周でピットインしてレインタイヤに交換。これでトップD'station Vantage GT3と2番手HELM MOTORSPORTS GTR GT3の差は60秒差に広がった。だが今度は133周で近藤選手がピットインしてレインタイヤに交換すると、平木湧也選手が再逆転してトップに立つことに。
しかしD'station Vantage GT3の近藤選手はHELM MOTORSPORTS GTR GT3の平木湧也選手との差を一気に縮め、140周目のファイナルコーナースタンド下でインに飛び込み再々逆転でトップに立った。142周目の100RでDENSO LEXUS RC F GT3(永井秀貴/嵯峨宏紀/小高一斗組)がマシントラブルのために白煙を吐いてストップ。ここの手前では黄旗が掲出されていたが、近藤選手はそれを見逃しバックマーカーを追い越してしまっていたようだ。
レースは直後にこの日4回目のFCYとなり、残り2分15秒で解除となった。この解除のタイミングでHELM MOTORSPORTS GTR GT3の平木湧也選手はD'station Vantage GT3の近藤選手を144周目のストレートでかわしトップを奪ったが、第2ヘアピンで近藤選手がまたもや平木湧也選手を抜き返し145周でトップチェッカーを受けた。しかしレース後に近藤選手の黄旗追い越しで50秒のペナルティが加算されて2位となり、HELM MOTORSPORTS GTR GT3が富士24時間以来の今季2勝目を飾ることになった。
ST-Zクラス(全9台)は3時間20分経過時点でトップを走行していたGRGarage水戸インター GR SUPRA GT4(山崎学/坪井翔/野中誠太組)が、サスペンショントラブルのためにタイヤが白煙を吐いて緊急ピットイン。中盤まで上位争いをしていたシェイドレーシング GR SUPRA GT4(HIRO HAYASHI/清水英志郎/山田真之亮組)も駆動系トラブルで後退し、5ZIGEN AMG GT4(大塚隆一郎/太田格之進/金石年弘組)が富士24時間以来の今季2勝目を挙げポイントリーダーに立った。
ST-TCRクラス(全2台)はTeam Noah HONDA CIVIC TCR(塚田利郎/蘇武喜和/小串康博/清瀧雄二組)が終盤に接触でサスペンションアームを曲げてピットインを強いられたが、それまでのマージンがあり3連勝。
ST-1クラス(全3台)はD'station Vantage GT8R(星野辰也/織戸学/浜健二/JAKE PARSONS組)がST-ZクラスからST-1クラスへクラス替えをしての初優勝。ST-2クラス(全7台)はKTMS GR YARIS(平良響/荒川麟/奥住慈英組)が開幕から3連勝。
ST-3クラス(全5台)は埼玉トヨペットGBクラウンRS(服部尚貴/吉田広樹/川合孝汰組)が、終盤に川合選手がスリックタイヤのままで頑張って今季3勝目。ST-4クラス(全4台)はTOM'S SPIRIT GR86(河野駿佑/松井孝允/山下健太組)が3連勝を挙げた。
ST-Qクラス(全6台)は、ENDLESS AMG GT4がST-Xクラスの9台に続く総合10位でフィニッシュ。Nissan Z Racing Concept(田中哲也/田中徹/三宅淳詞組)とTeam SDA Engineering BRZ CNF Concept(井口卓人/山内英輝/廣田光一組)は、マイナートラブルを抱えながらも完走。ORC ROOKIE GR Corolla H2 concept(佐々木雅弘/MORIZO/石浦宏明/小倉康宏組)は8回の給水素ピットインを無事に終えて完走した。
スーパー耐久レース in オートポリスのサポートレースとして、ナンバーつきワンメイクレースのTOYOTA GAZOO Racing Yaris CupとN-ONEオーナーズカップが行われた。
TOYOTA GAZOO Racing Yaris Cup 2022 西日本シリーズ第5戦
TOYOTA GAZOO Racing Yaris Cup 2022 西日本シリーズ第5戦は、お互いスリップストリームを使い合った、水野大選手と神谷裕幸選手がフロントローに並ぶこととなった。
「オートポリスは好きなサーキットで、レース展開は難しいし、タイヤに厳しいんですが、そこはうまくやりたいと思います」とポールポジションを獲得した水野選手。
決勝では、水野選手が好スタートを切り、神谷選手を早々に引き離したが、第1ヘアピン立ち上がりでアクシデントが発生したため、セーフティカーが導入される。先導は3周目まで続き、3番手につけていた黒田保男選手がリスタートのタイミングを見誤ったため、その後は完全に水野選手と神谷選手の一騎討ちで、トップが争われた。常にコンマ差で水野選手の背後につけていた神谷選手だったが、隙を見せてくれないため、なかなか仕掛けることができず。
「お互い、速いところと、そうでないところが違っていたんで、それが逃げられた理由かもしれませんね」と水野選手が久々の優勝を飾った。また2位に甘んじたとはいえ、神谷選手はしっかりポイントランキングのトップを死守していた。
その後方の3番手争いも激しく、黒田選手が地元のルーキードライバー村上凌晟選手、森口優樹選手らを従えていたが、5周目の2コーナーで村上選手が逆転。その後はベテランの強烈なプレッシャーに屈することなく、3位を守って村上選手が初めて表彰台に上がっていた。
2022 N-ONE OWNER'S CUP Round.10
N-ONEオーナーズカップ第10戦は、Yaris Cupとダブルエントリーの塚原啓之選手がポールポジションを獲得。「Yarisに続いての予選だったので、N-ONEではよりガンガン行くことができました。下見もできたって感じですね。兄は獲っているんですが、初めてのポールで、非常に嬉しく思っています。ここは抜けるところが少ないので、守りながら安全に、後ろを見ながら走りたいと思います」と塚原啓之選手。2番手には地元ドライバーの本田淳一郎選手がつけていた。
予選タイムが僅差だったこともあり、決勝でも塚原啓之選手と本田選手による激しいバトルが繰り広げられるかと思われたが、そのとおりだったのは1周目の第1ヘアピンまで。進入でコントロールを失って、大きく順位を落としてしまったからだ。これで予選5番手だった下司翔太選手が2番手に浮上し、塚原啓之選手はほぼ1秒のリードを奪う。
一時は下司選手を近づけた塚原啓之選手だったが、結果的には1周目に築いた貯金を守り抜いた。「ポールも初めてなら、優勝も初めてです。本田選手がいなくなってからは楽になって、タイヤを温存しながら走っていました」と笑顔で塚原啓之選手は語っていた。
一方、下司選手は第9戦のウィナーでもある岩間浩一選手から猛攻を受け続けるも、最後まで凌いで2位でフィニッシュ。岩間選手は連勝ならず、3位となった。
フォト/遠藤樹弥、吉見幸夫 レポート/皆越和也、はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部