ホームタウンのラリーに挑んだ勝田貴元選手がラリー・フィンランドで完走6位入賞

レポート ラリー

2022年8月10日

フィンランドのユヴァスキュラを舞台とした2022年FIA世界ラリー選手権(WRC)第8戦「ラリー・フィンランド」が、8月4~7日に開催された。シリーズ屈指の高速グラベルラリーにTOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムに参加中の日本人ドライバー、勝田貴元選手も参戦しており、GR YARIS Rally1を武器に6位に入賞した。

2022年FIA世界ラリー選手権 第8戦「ラリー・フィンランド」
開催日:2022年8月4~7日
開催地:フィンランド・ユヴァスキュラ周辺

 フィンランド在住6年目となる勝田貴元選手にとって、ラリー・フィンランドはまさに“第2のホームラリー”と呼べる一戦で、4日の午前中に行われたシェイクダウンでも「クルマのフィーリングは良かった」と好感触の様子。

 しかし、その日の夕刻にスタートした市街地ステージのハルユ1では「スタート直前にハイブリッドのシステムが機能しなくなって、ハイブリッドブーストが使えない状態でした。タイムは悪くなかったんですけど、自分の中ではトップタイムが取れるだろうという手応えがあっただけに、素直に悔しかったですね」と、勝田貴元選手はオープニングステージを3番手でフィニッシュした。

 翌5日は森林地帯を舞台に本格的なラリーがスタート。朝の15分間のサービスでハイブリッドシステムのトラブルを修復できたことで、勝田貴元選手はコンスタントな走りを披露していた。

「SS2でスピンをしたんですけど、まだトップを含めて僅差だったので、目標としていたポディウム争いに絡んでいけるかな……という手応えはありました」とコメント。勝田貴元選手はファーストループを6番手でフィニッシュする。

 セカンドループでは「クルマのフィーリングは良かったんですけど、パンクのリスクを避けて走りすぎたり、満足のいくプッシュができませんでした。とくに“モクシ”の2ループ目でカウンターを当てた時にステアリング上のボタンを押してしまいました。ハイブリッドブーストが1分間使えなくなったほか、エンジンもセーフティモードに入ったりと、もったいないミスをしていました」と語るように、タイムロスをするシーンも見られた。

 それでも勝田貴元選手はSS6のハルユ2でベストタイムをマークするなど、持ち前のスプリント能力を披露。総合リザルトにおいても、トップから35.5秒遅れの総合6番手でデイ2をフィニッシュした。

 翌6日のデイ3は、雨に祟られたことでウェット路面の中でラリーがスタートした。FORD Puma Rally1で5番手につけるM-SPORT FORD WRTのクレイグ・ブリーン選手とわずか3秒差につけていたことから、勝田貴元選手の追走が期待されていた。

 だが、「コンディションが大きく変わったことで、午前中はリズムをつかむことができませんでした。雨が止んだ午後は路面が乾いていったんですけど、フロントのグリップ不足を補うようにセッティングを変更したら、それが悪い方向にいって、クルマのバランスも崩れてしまいました」とのことで、苦戦を強いられていた。

 それでも勝田貴元選手は、5番手に浮上したHYUNDAI SHELL MOBIS WRTのティエリー・ヌービル選手と僅差のポジション争いを展開。しかし、「ハイスピードコーナーでスピンをした際にエンジンのリスタートに時間がかかって30秒以上もタイムロスしてしまいました。それまでヌービル選手と5番手争いをしていたんですけど、それが決定打になってタイム差が開いてしまいました」と、勝田貴元選手はこの日の最終ステージとなるSS18で痛恨のスピン。それでもポジションをキープし、総合6番手でデイ3を走り終えた。

 ハイブリッドシステムのトラブルが発生したデイ1に始まり、リズムをつかみきれずにミスをしたデイ2、ウェットコンディションに翻弄されたデイ3と、勝田選手は苦戦を強いられてきたが、「土曜日は自分がやったことに対してクルマがまったく違う動きをしていたので、自信が持てずにペースが落ちてしまいましたが、ジオメトリーを変更したことで日曜日はかなり改善され、コンペティティブなタイムに戻ってきました」と言い、勝田貴元選手は翌7日のデイ4で復調を果たす。

 勝田貴元選手はSS20およびSS21で5番手タイムをマークするなど好タイムを連発。「最後のパワーステージは2番手から6番手までがコンマ4秒の間に入る中、そこをコンマ4秒速く走れなかったので悔しいですね」と語るものの、それでも「ラリー・フィンランドを最後まで走りきれたことは良かった」と述べ、総合6位で完走を果たした。

 この結果、勝田貴元選手は出場した全てのラリーでポイントを獲得したほか、第2戦以降は7戦連続で総合6位以内で入賞し、ドライバーズ選手権でも5番手をキープ。さらに所属するTOYOTA GAZOO Racing World Rally Team Next Generationも8戦連続でマニュファクチャラーズポイントを獲得した。

 8月19~21日に開催される第9戦「イープル・ラリー・ベルギー」については「昨年はクラッシュしているし、ターマックはクロアチア以来なのでステップ・バイ・ステップで戦いたいです。改善点が多いと思うので、スペインで良い流れをつくって、ラリー・ジャパンに繋げるためにもターマックの復帰戦として経験値を積みたいと思います」と語っているだけに、勝田貴元選手の成長に期待したい。

「土曜日に自分のミスで大きくタイムロスをした部分と、リズムをつかめなかった部分が大きな敗因だと思うので、次のステップに向けて見つめ直していきたいと思います」とラリー・フィンランドについて悔しさをにじませる勝田貴元選手。

 なお、ラリー・フィンランドではHYUNDAI SHELL MOBIS WRTでHYUNDAI i20 N Rally1を駆るオイット・タナク選手が第5戦のラリー・イタリア・サルディニア以来、シーズン2勝目を獲得。一方、TOYOTA GAZOO Racing WRTの最上位はドライバー選手権で首位につけるカッレ・ロバンペッラ選手で2位入賞を果たし、ポイント争いでリードを拡大した。

 チームメイトのエサペッカ・ラッピ選手が3位で表彰台を獲得したほか、エルフィン・エバンス選手が4位につけ、パワーステージでポイントを獲得したことで、TOYOTA GAZOO Racing WRTはマニュファクチャラーズ部門でも首位をキープし、後続とのリードを拡大している。

ラリー・フィンランドを制覇したのはHYUNDAI SHELL MOBIS WRTのオイット・タナク/マルティン・ヤルヴェオヤ組。TOYOTA GAZOO Racing WRTは表彰台の2位と3位を獲得し、また2-3-4フィニッシュでマニュファクチャラーズ部門のポイントを固めた。

フォト/TOYOTA GAZOO Racing レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部

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