九州ダートラ夏決戦第2ラウンドは、井上博保GRヤリスがオーバーオールウィン!
2022年8月19日

九州地区のダートトライアル地区戦は7月31日、スピードパーク恋の浦で今季6戦目となるバトルが展開された。
2022年JAF九州ダートトライアル選手権第6戦
2022年オールスター選抜第6戦
とびうめダートラフェスティバル2022
開催日:2022年7月31日
開催場所:スピードパーク恋の浦ダートコース(福岡県福津市)
主催:TOBIUME
2月に開幕した今年のJAF九州ダートトライアル選手権は、夏の到来とともにシリーズ後半戦に突入。7月3日に開催された第5戦から4週間のインターバルを経て、第6戦が7月31日に行われた。今回の大会が終われば、残るは2戦のみ。タイトルレースを巡るバトルが各クラスで白熱した。
高低差のあるスピードパーク恋の浦では、下りのセクションの攻略が大きなポイントとなっている。コース最上部のオーシャンコーナーを右回りでクリアした後に急勾配を下ってアプローチする高速の左コーナーは、全日本戦でもお馴染みの名物コーナーだ。
しかし今季の地区戦では、この左コーナーに進入せずに右に進んで、下段にあるテクニカルセクションに突っ込むレイアウトが2度設定され、従来の恋の浦とは違った新たな攻略法をドライバーに求める形となっている。
そして今回、この設定がまたしても採用されることに。「3度目ともなれば、もう定番でしょう。来年の全日本でも採用されるのでは?」と語るドライバーも現れるなど、様々な憶測も呼び、全日本恋の浦にスポット参戦を考える地区戦戦士の間でも大きな話題を呼ぶこととなった。



PN1+クラスは第1ヒート、昨年、6戦全勝で満点チャンピオン獲得した水野喜文選手が第1ヒートでベストを奪う。今年は前回の第5戦からこのクラスに復帰した水野選手だが、若手の篠原徹選手に敗れて、ZC32Sスイフトでの連勝が途絶えた。
その篠原選手は昨年からダートトライアルを始めた29歳。昨年はDC2インテグラでS1クラスに参戦し、シリーズ3位につけた。スイフトに乗り換えた今年は第2戦からPN1+クラスに参戦。第3戦で地区戦初優勝を飾ると、その後、3連勝。ダートラ2年生とは思えない速さを見せている。
第2ヒートに入ると水野選手は1分45秒340まで暫定ベストを詰めるが、後続のドライバーは46秒の壁を越えられないまま、最終ゼッケンの篠原選手が出走。第1ヒートでは水野選手から3秒以上も遅れる平凡なタイムに終わった篠原選手だったが、第2ヒートでは1分43秒782を叩き出して逆転に成功。再び、水野選手を下したことで、過去の3連勝がフロックでなかったことを証明した。
「1本目は全体的にアクセルが踏めてなかったので2本目は気合い入れました。2本目に砂が掃けて硬い路面が出てくるような所でも行けるようにセッティングを合わせているので、自信を持って踏んでいけました」と篠原選手。「真っ直ぐ下ってくるレイアウトは今年もう3度目ですけど、水野さんはまだ慣れてないと思うので、その差で勝てたんだと思います(笑)」と振り返った。





一方、今年4度目のクラス成立となったN1クラスは4台のZC33Sスイフトによるバトルとなった。過去3戦は、スイフトで全日本優勝経験も持つ永田誠選手がいずれも制しているが、今回は今年、CJ4Aミラージュからスイフトに乗り換えた藤崎清選手が、第2ヒートで永田選手を0.1秒差で振り切ってスイフトでの初勝利を飾った。
ライバル選手がウェットタイヤを選択する中、敢えてフロントタイヤのみドライタイヤを履いた藤崎選手は、「やっぱりタイヤ選択が当たったことが勝因です」とコメント。「昼の慣熟歩行で歩いてみたら、硬い所があったのでドライで行ってみることにしました。冒険しないと、永田さんには勝てないですから(笑)。後半の下りで失敗してますが、前半は踏み切れたので、その貯金で勝てたと思います」と勝負を決めた第2ヒートの走りを振り返った。





今年、盛り上がりを見せているRWDクラスは、S2000、ZN6・86、NB6Cロードスターに加え、シルビアはPS13、S15の2台がエントリーと、すべて異なる5車種が出走。賑やかな顔触れとなった。
今回は、ともに今季すでに2勝を挙げている橋本英樹S2000と良本海86の2台によるバトルが第2ヒートで白熱したが、1分44秒412までタイムを詰めた橋本選手に軍配が上がることに。
橋本選手と言えば、数年前まではインテグラで豪快な走りを見せる地区戦のトップドライバーとして知られていたが、S2000に乗り換えて新たなチャレンジを開始した。ただし、その攻撃的な走りは変わらず、「今回も1本目は何度かリアをぶつけてしまいました(笑)」とのこと。「ただ、そのお陰で2本目は要所で抑える走りができたので、それが勝因です」。このクラス、さらなるニューカマーの登場を期待したいところだ。





S1クラスは、今季参戦した4戦で3勝と変わらぬ速さを見せる2021チャンピオンの中村凌選手が、第1ヒートは2番手の川﨑佳弘選手に3秒近い大差をつけて折り返し、4勝目に向けて順調な滑り出しを見せる。
しかし第2ヒートに入ると川崎選手が2WD総合でも断トツのベストとなる1分41秒128の好タイムを叩き出して暫定トップに。さらに吉田カオル選手が40秒808までベストを更新する。最終走者の中村選手は40秒905をマークして川崎選手を交わすも、再逆転はならず。吉田選手が今季初優勝を果たした。
トップ3台が0.32秒の間にひしめく接戦を制した吉田選手は、「やっと勝てました(笑)。1本目、ホイールスピンが止まらなかったので、2本目はタイヤを前後入れ替えて走ったら、路面が良くなったこともありますが、1本目に比べたら全然、踏めました。大きなミスもなく、いい路面を外さずに、まあまあの走りはできたと思います」。
FFのCA4A型のボディに1,600ccの4G61ターボエンジンを載せたミラージュは、20年乗り続けてきた。「去年、フロントをエボVの足回りに変えたらトラクションがかなり良くなりました。まだまだやれる部分があるので、今後も乗り続けるつもりです」と、ミラージュは進化途上とのこと。このクラスを掻き回す一台の活躍を、これからも期待したい。





S2クラスは、昨年、並み居る強豪を抑えてチャンピオンを獲得した九州期待の若手、岡本泰成選手のランサーが、今季も開幕3連勝を遂げてV2は手堅いかと思われたが、第4戦、第5戦はGRヤリスを駆る全日本ドライバーの井上博保選手が連勝して、巻き返している。
今回は、今年からGRヤリスを全日本に投入して4月、地元で開催の第2戦を制した岸山信之選手が、N車両ながら第1ヒート、1分36秒906のタイムで暫定首位の座を奪う。しかし、このクラスも当然ながら2本目勝負の展開に。
第2ヒートでは、まず小山茂樹選手が1分35秒台に叩き入れると、馬場一裕選手が34秒160まで優勝タイムを吊り上げる。対して後続の岸山選手は、「気持ちよく走り過ぎてしまいました(笑)」とボディをヒットしてタイムロス。馬場選手を上回ることはできない。
しかしラス前の井上選手は1分32秒564というこの日、総合ベストとなるスーパータイムでゴール。さすがの岡本選手も、このタイムには迫れず、34秒台にとどまったため、井上選手が岡本選手に並ぶ3勝目をマーク。ポイントランキングでも岡本選手を1ポイントながら上回ってトップに立った。
「2本目は、1本目で突っ込み過ぎた所を抑えて行ったら、うまく行きました。今日はかなり使ったタイヤで走ったので、(タイヤの)角がない分、いつも以上にタテのトラクションを意識した走りに徹したのが良かったと思います」と井上選手。
「全日本が長いインターバルに入った、この夏の間にセッティングを変えたら、一気に乗りやすくなったので、全日本でも、同じGRヤリスを駆る黒木選手に続けるような、いい成績を残したいですね」と、9月から再開する全日本戦にも意欲を見せた。





4WDの改造車クラスが盛んな九州地区は、S2、C、Dと3クラスが毎年、成立している。Cクラスは、今年からエボXを投入した全日本レギュラーの岩下幸広選手が、優勝2回、2位3回という抜群の安定感でトップに立っているが、かつて全日本の改造車部門で速さを見せていた濵田隆行選手も、井上選手から譲り受けたエボXで3勝を挙げてマッチレースに持ち込んでいる。
第1ヒートは、岩下選手が濱田選手に2秒差をつけて折り返したが、第2ヒートでは新品タイヤで勝負に出た濱田選手が、「オーシャンコーナーのワダチは、クルマが壊れてもいいくらい、イチかバチかで、思いっきり突っ込みました」という気迫の走りを見せて1分33秒062までタイムアップ。暫定トップの座を奪取した。対する岩下選手は、「セッティングを変えたのが裏目に出てしまいました」と、0.7秒、濱田選手に届かず、濱田選手の4勝目を許す形となった。
「岩下選手のNEWマシンがどんどん速くなっているので、今日は絶対、勝って置きたかったんですよ。2本目は最初はアクセルを長く踏める走りで行ったんですが、それができる路面ではなかったので、途中から新品タイヤのグリップを生かす走りに切り換えました」と濱田選手。「全日本を追っていた時とはまた違った熱いバトルができて本当に面白いです」と終盤の決戦を見据えていた。





毎戦、激しい三つ巴が展開されているDクラスも、激しく砂塵舞い上がるバトルが今回も展開されたが、第1ヒートをベストで上がった江川博選手が、2ヒートでも、「1回のシフトミスを除けば、ほぼ満足できました」という走りでトップタイムを奪取。ライバルの橋本和信、五味直樹両選手に並ぶ2勝目をマークした。
全日本ではお馴染みとなったカローラをドライブする江川選手だが、地区戦では全日本でも長く乗ってきたランサーをチョイスする。「地区戦はドライタイヤを使うことがまずないので、ウェットタイヤに合わせた仕様に仕上げていますが、地区戦は地区戦で大変です(笑)。ただ今日の優勝で、ランサーもまだまだ戦えるクルマだと改めて分かったので、残り2戦でタイトルを狙って行きたいですね」。トップ3台のポイント差は僅か6ポイント。やはり最後は勝ち星の数がものを言う戦いになりそうだ。






フォト&レポート/JAFスポーツ編集部