シリーズの行方を占う大事な後半戦。FS-125部門の百瀬翔選手、FP-3部門中村海斗選手ともに圧巻の走りで勝利をつかむ!

レポート カート

2022年8月24日

夏の終わりに開催された全日本カート選手権・西地域第4戦、FS-125部門では百瀬翔選手(HRS JAPAN)が圧巻の独走で3連勝を飾り、FP-3部門では中村海斗選手(チームナガオ)がホームコースで3勝目を遂げた。

2022年JAF全日本カート選手権 FS-125部門/FP-3部門 西地域第4戦
2022年JAFジュニアカート選手権 FP-Jr部門/FP-Jr Cadets部門 西地域第4戦

開催日:2022年8月20~21日
開催地:神戸スポーツサーキット(兵庫県神戸市)
主催:KSC

 2022年の全日本カート選手権は、東西各地域の前半3戦が終了。いよいよシリーズの後半戦に突入する西地域第4戦が、兵庫県・神戸スポーツサーキットで開催された。このコースで全日本選手権が行われるのは今季、第2戦に続いて2回目だ。決勝日を迎えたサーキットは、朝から本降りの雨。その雨は昼前に止み始め、午後の決勝はほぼドライコンディションで行われることとなった。

FS-125部門西地域第4戦

 水冷125ccのワンメイクエンジンを使用するFS-125部門には8台が参加した。ここまでの3戦で、西地域では百瀬選手が2勝を挙げて95点を獲得、東地域では落合蓮音選手が同じく2勝で94点と、ほぼ横一線に並んでシリーズをリードしている。百瀬選手にとっては、チャンピオン獲得のためにも落とせない一戦だ。

 その百瀬選手は、まずタイムトライアルでライバルたちを0.2秒以上引き離すトップタイムをマーク。乾き始めたコースにレインタイヤで臨んだ予選でも、激しく競り合う後続を尻目に独走のまま走り切って決勝のポールを手に入れた。

 ドライコンディションに変わった決勝でも百瀬選手のスピードは陰りを見せず、スタート直後の2番手争いにも乗じてオープニングラップで0.7秒ほどのリードを築くと、そのアドバンテージを3周で1秒、6周で2秒と順調に広げ、ワンサイドゲームで勝利を飾った。これで百瀬選手は3戦連続のポール・トゥ・ウィンだ。

 2位でフィニッシュした近江川暖人選手(HRS JAPAN)は、最後尾の8番グリッドからのスタートだった。百瀬選手に迫る速さを見せながら、予選では2周目にチェーンが切れてリタイアに。そこから百瀬選手を上回るタイムを叩き出しながら6台を抜き、今季2度目の2位を獲得した。それでも「1位になれそうなレースだったから……」と、近江川選手は少し悔しそうな顔だ。

 3位となった15歳のルーキー福岡主税選手(SCUDERIA SFIDA)は、これが初表彰台にして初ポイント獲得だ。7番グリッドから臨んだ予選では、乾き始めたコースでスリックタイヤをチョイスすると、前を行くレインタイヤ勢をかわして3番手でゴール。そして決勝ではスタートで2番手に上がると、アタックを仕掛ける後続と強気のバトルを繰り広げ、他車より予選の16周分多く走っているタイヤを最後までもたせた。

 このレースウィークはチェーンが切れるトラブルの続発に悩まされ、決勝日の朝にはフレームが折れていることが発覚、さらに決勝ではエンジンが不調に陥るピンチもあった福岡選手。問題散発を乗り越えてつかみ取った3位は、ひときわ感慨深いものだったという。

「決勝の不安要素を強いて挙げるなら、近江川選手がちょっと怖かったですね」とレースを振り返る百瀬翔選手。「前回はタイムがバラついたけれど、今回は安定して走ることができたので良かったのかなと思います。シリーズポイントやチャンピオンのことはあまり意識していなくて、目の前のレースを着実に勝ち進めようと思っています。次の中山はタイムの差もあまりないコースなので、自分のバトルの弱さをしっかりと直して、でもできれば混戦ではなく、また独走で勝ちたいですね」と、ここまで3勝のアドバンテージを持ちながら、チャンピオンについては「なれればいいな」程度の意識とのこと。
2位は近江川暖人選手、3位は福岡主税選手。
FS-125部門表彰の各選手。

FP-3部門西地域第4戦

 空冷100ccのワンメイクエンジンを使用するFP-3部門。19台によるその戦いは、中村選手の圧勝に終わった。

 ポールから26周の決勝に臨んだ中村選手は、スタートラインの直前でアクセルオンの間合いを探り合う2番手以降に対して、ひとり鋭い加速で発進して、オープニングラップで一気に1.8秒近いリードを築くと、知り尽くしたホームコースでチェッカーまで独走を続けて今季3勝目を果たした。

 今回と同じ神戸で行われた第2戦で、中村選手は優勝候補の筆頭に挙げられながら、まさかのノーポイントに。ほぼ完勝と言える今回のレースで、その屈辱を晴らしてみせた。

 決勝前半でその中村選手以上の注目を浴びたのが、スポット参戦の地元勢、14歳の中尾正義選手(チームナガオ)だった。5番グリッドから2周で2番手に躍り出た中尾選手は、中村選手を上回るスピードでホームコースを駆け抜け、2秒以上前方に逃げていた中村選手を1秒差まで追い詰めてみせた。後半は中村選手に再び差を広げられたものの、デビュー2戦目での快走は、その名前を大いに印象づけるものだった。

 6台一列の熱戦になった第3集団ではポジションチェンジがたびたび繰り返され、ここを終盤に抜け出した向田一聡選手(SLT.RT ANT)が3位を獲得。未勝利ながら西地域のポイントリーダーに立っている鈴木恵武選手(Formula Blue 増田スピード)は、予選で不調に陥ったものの、決勝は挽回して4位でフィニッシュ、中村選手と1点差でポイントリーダーの座をキープしている。

優勝した中村海斗選手は「雨の予選でも晴れの決勝でもトップを走れて良かったです。スタートしてすぐ後ろを振り返ったら誰もいなくて、うまくスタートを切れたと思います。自分の走りをまっとうしました。このアドバンテージのおかげで誰にも追いつかれず逃げ切れたかなと考えてます」と勝因を語るとともに、「前回の神戸(第2戦)が0点だったので、これ以上どこも落とせないプレッシャーがあったりします。でもチャンピオンより目の前の1勝を獲りに行きたいので、次の中山も勝って、そこでチャンピオンに王手をかけたいなと思います」とチャンピオン争いに強い意欲を表した。
2位は中尾正義選手、3位は向田一聡選手。
FP-3部門表彰の各選手。

FP-Jr部門/FP-Jr Cadets部門西地域第4戦

 同時開催のジュニアカート選手権・西地域第4戦。6台が出走したFP-Jr部門では、ポールの伊藤聖七選手(かあと小僧 with Ash)が1周目から後続を置き去りにして独走、3勝目を獲得した。スタート直後のポジションダウンを、ファステストラップを記録しながら挽回した山代諭和選手(quaranta sei YRT with GEMINI)が2位に。4番グリッドからのスタートで2台抜きを演じた石田馳知選手(ハラダカートクラブ with ZEAL・WM)が3位に入賞し、2年目の初表彰台に登壇した。

 8台が出走したFP-Jr Cadets部門では、ポイントリーダーの澤田龍征選手が欠場する中、横山輝翔選手(Energy JAPAN)が2勝目を挙げて暫定ランキングの首位に浮上。3番グリッドからのスタートでトップに躍り出た元田心絆選手(RTSchritt)が、自己最上位となる2位でフィニッシュ。今季初参戦の森谷永翔選手(ERS with SACCESS)が、タイムトライアルと予選をトップでゴールし、決勝では3位に入賞した。

「めっちゃうれしいです!」と喜ぶ伊藤聖七選手。「前回の御殿場で勝てなかった悔しさを、この神戸で後ろを引き離して勝って晴らすことができたので、良かったと思います。決勝のスタートの時にすぐ後ろでぶつかっているのが見えたので、そこで引き離そうと思って本気で走りました。残り2戦も今日みたいにブッチ切りで勝ってチャンピオンになりたいです」とコメント。
2位は山代諭和選手、3位は石田馳知選手。
FP-Jr部門表彰の各選手。
シリーズ2勝目を挙げポイントリーダーとなった横山輝翔選手は「予選より速く走れて一番前でゴールできたのでうれしいです。(元田選手にトップに出られた場面では)後で巻き返せるから大丈夫だと思っていました。独走になってからは、スピンしないように安全に、でも後ろを離せるタイムで走りました。残る中山も鈴鹿も勝って、チャンピオンにたどり着こうと思います」と語った。
2位は元田心絆選手、3位は森谷永翔選手。
FP-Jr Cadets部門表彰の各選手。

フォト/JAPANKART レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部

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