トップスピード160km/hオーバー! 中村直樹選手の無双を打破して新世代の刺客が初優勝。

レポート ドリフト

2022年8月31日

福島県二本松市のエビスサーキット西コースを舞台に、激しいバトルが繰り広げられたD1グランプリシリーズの第4戦と第5戦。ハイスピードの進入が勝敗を決する大きなポイントとなった。

2022 D1グランプリシリーズ 第4戦/第5戦「2022 EBISU DRIFT」
開催日:2022年8月20~21日
開催地:エビスサーキット西コース(福島県二本松市)
主催:株式会社サンプロス

 D1グランプリのシリーズ折り返しとなる第4戦&第5戦は、エビスサーキット西コースでの連戦となった。迫力あるジャンプドリフトが見ものだった南コースなき今、西コースを“ドリフトの新聖地”としたいD1グランプリ運営は、よりハイスピードな進入を要求すべく、昨年よりもスタートラインを10mほど後退させた。

 また指定ゾーンの位置を変更(昨年のゾーンは減速が難しすぎたと運営は反省したとか)し、これにより単走上位に食い込んだ選手の進入速度は160km/hを超え、そこから一気にリアを振り出して深い角度を長距離でキープすることが可能となり(もちろん危険度もアップするのだが)、日本が産み出したドリフトの重要ワード「飛距離と角度」を存分にアピールするラウンドとなった。

スタート地点から1コーナーを臨むコース風景。奥に見えるアウト側(左)にゾーン1が見える。振り出す瞬間のトップスピードは予選通過上位で160km/hオーバー、不通過でも150km/h以上をマークしていた。
今シーズンから路面保護と駆動系負担の軽減を目的にリアタイヤの規定が変更となり、今戦からトーヨーとヴァリノは新規定に対応したグリップ性能を大幅にアップさせたニューバージョンを投入。

 予選2組目に165km/hという最高の進入速度で、この日初めての99点台(99.01)をマークした松山北斗選手(TMAR)の走りは衝撃的だっが、その後の組で走行した中村直樹選手(TMAR×TEAM紫)が99.42点で抜き去り会場がどよめく。

 するとさらにその後に走行した横井昌志選手(D-MAX RACING TEAM)が、それを上回る99.45点をマーク。「単走は決勝のラダーを決めるための予選」とは言えない、純粋なドリフト技術の激突となった。シリーズチャンピオン経験3回、さらには単走に強いイメージがある横井選手だが、これが今季初の単走優勝だ。

中村直樹選手の得点を0.03点上回って、横井昌志選手が単走優勝。結果、単走ランキングで首位に立った。

 2019年、2020年のD1ライツチャンピオンである目桑宏次郎選手(Freem TEAM G-meister)は、D1グランプリにステップアップしたルーキーイヤーの昨年は2位が2回、という驚異のニューフェイスだ。その目桑選手が周囲の予想より早く表彰台の頂点に立つこととなったのが第4戦の追走。

 前日の練習走行でそれまでの2JZ改3.6Lエンジンがブローして、急遽載せ換えたのが3.0L仕様。ピークパワーは落ちたものの、高い追走技術でカバーしたようだ。そして準決勝では横井選手を破り、3度目となる決勝戦に進出した。

 目桑選手が先行の1本目、対戦相手の中村選手のプロペラシャフト折れによるリタイアで優勝が確定すると「2本とも走って勝ちたかった」と表彰式でコメント。時折り雨が降る難しいコンディション、またハイスピードバトルによるマシントラブル頻出のサバイバル戦を勝ち残ったのは、チームの総合力と言えるだろう。

後追いの中村選手のマシンにトラブルが発生してリタイアとなり、目桑宏次郎選手が感動の初優勝を遂げた。
第4戦の優勝は目桑選手、2位は中村選手、3位は横井選手、4位は松山北斗選手、5位は岩井照宜選手、6位は藤野秀之選手、7位は末永正雄選手、8位は秋葉瑠世選手、9位は川畑真人選手、10位は齋藤太吾選手。

 前日よりもレベルが上がった第5戦の単走予選。常勝主力マシンに比べてホイールベースが短く、角度に耐えにくいと言われるGRスープラを駆る松山選手が、前日をわずかに上回る166km/hの進入速度をマークし、99.80点を出してトップに立つ。

 高い車速を深い角度で減速させる技術は、ほかのGRスープラのドライバーと比べても抜きん出ていた。また今戦からトーヨーが投入したR888RDの20インチの性能の高さを証明したとも言える。横井選手と中村選手の単走ランキング争いは、前日に続き僅差で横井選手が上回って首位をキープした。

進入スピード166km/hで飛び込み、また大きな角度をつけて得点を稼いだ松山選手が、第5戦の単走で頂点に立った。

 この日の松山選手の走りは1走ごとに迫力を増していた。追走の準決勝では168km/hと進入速度をアップ。先行で後追いの姿勢を崩すことができる(速すぎる先行につられて減速が間に合わなくなる)だけでなく、後追いでもしっかり先行に合わせて齋藤太吾選手(TMAR)、川畑真人選手(TEAM TOYO TIRES DRIFT)を撃破。

 しかし、決勝では前日の第4戦の準決勝で負けた中村選手だけに、車速を高めすぎた結果、169km/hをマークするもカウンターが大きくなりすぎてステアリングの逆関節状態(ハンドルがカウンター側にロックして戻せなくなる状態)に陥ってコースアウト。

 だがつられた中村選手もコースアウトし、リアタイヤをダートに落としてビードが落ちて走行不能に。この状態は規定により失格と判定されたため、入れ替えの2本目を走らずに松山選手の勝利となった。

思い切りのいい進入でコースアウトを喫するも、単走と併せて優勝を果たして第5戦を完全掌握した松山選手。
第5戦の優勝は松山選手、2位は中村選手、3位は川畑選手、4位は柳杭田貫太選手、5位は田中省己選手、6位は藤野選手、7位は齋藤選手、8位は植尾勝浩選手、9位は横井選手、10位は目桑選手。
GRスープラを自費で購入し、3年目で初優勝を遂げた松山選手はシリーズランキング4番手。中村選手は2位獲得でもポイントが付与されずランキング3番手に。そして3位に食い込んだ川畑選手はランキング2番手に浮上。

 今回のエビスラウンドでの注目対戦は、中村選手と今回初登場の山本航選手(SPAN Racing)の第4戦ベスト16の戦いだ。LS7+スーパーチャージャーの中村選手、LSX+ツインターボの山本選手、ともにシボレーV8エンジンを搭載。独特のサウンドを響かせての対決は、中村選手の貫禄勝ちとなった。

 そしてもうひとつ、同じく第4戦ベスト16の川畑選手と秋葉瑠世選手(Team BOOSTER VALINO)の対戦。ややウェット路面で見極めが難しく、1本目で先行の川畑選手が大きくコースアウトすると後追いの秋葉選手もつられてダートへ。減点の大きかった川畑選手が敗れる結果となり、2年目の秋葉選手は追走初勝利を挙げた。

カーボンケブラー外装をまとった山本航GRスープラは、初挑戦でいきなり予選通過とあって、今後も台風の目になるだろう。
激しいクラッシュに見えてドライバーは最小限に被害を抑えていたのか、2本目の走行までに川畑選手、秋葉選手とも走行可能にまで修復されていたのが驚きだ。

フォト/藤原伸一郎(SKILLD) レポート/川崎隆介(SKILLD)、JAFスポーツ編集部

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