全日本カートの松井沙麗選手がファイナリスト4名に勝ち残る! 「FIAガールズ・オン・トラック - ライジングスターズ」の2022年シュートアウトが終了

ニュース レース カート JAFWIM

2022年9月2日

2022年のFIAガールズ・オン・トラック - ライジングスターズにノミネートされた全日本カート選手権を戦う松井沙麗選手が、8月中旬にフランスで行われたシュートアウトでジュニア枠の4名に勝ち残り、「フェラーリドライバーアカデミー」入りに一歩近付いた。

 FIAウィメン・イン・モータースポーツ委員会が推進する「FIAガールズ・オン・トラック - ライジングスターズ」は、世界の12歳から16歳の女性を対象とした、レーシングドライバーの才能を発掘かつ育成し、モータースポーツのプロとして高いレベルに引き上げることを目標とした育成プログラム。「フェラーリドライバーアカデミー(FDA)」の「FDAワールドスカウティングプログラム」と連携して3年前から定期的に行われている。

 今年のプログラムには12の国と地域から6名のシニアドライバーと8名のジュニアドライバーが参加。8月17~21日に行われたフランスのポールリカール・サーキット周辺でのシュートアウトとトレーニングキャンプにてそれぞれ4名への選考が行われ、11月にはFDAの支援を受けるための、それぞれ1名への最終選考が行われることになっている。

 今回のプログラムでは、メンタルやフィジカル領域のワークショップやテストが用意され、メディア対応などについてのトレーニングも行われている。また、ウィンフィールド・レーシングスクールでは、レーシングカートを使った実技も実施。プラクティスや予選、スーパーポールセッションを経て、決勝レースのシミュレーションも行われた。

 また、オフトラックのワークショップのプログラムは321 Perform社が提供し、FIA北米担当副代表のDaniel Coen氏が監修した。サーキットでの実技については、スパ24時間レースの勝者でもあるRahel Frey氏、日本でのカート経験もあるFIAウィメン・イン・モータースポーツ委員会のCathy Muller氏やFDA関係者によるジャッジが行われている。

 このジュニアドライバー枠に、唯一の日本人として全日本カート選手権を戦う松井沙麗選手がノミネートされたのは既報の通りだが、この度のシュートアウトとトレーニングキャンプに挑んだ松井選手が見事に4名の枠に勝ち残るという快挙を成し遂げ、11月の最終選考「FDAカート/F4スカウティングキャンプ」に進む権利を獲得することになった。

 帰国した松井選手に、シュートアウトとトレーニングキャンプの感想を伺った。

「今回は3日間のセッションで、初日にメンタルやフィジカルのトレーニングがあって、残り2日でカートに乗りました。コースでは、速さだけじゃなくて、バトルする能力も見られていたみたいです。カートは初めて乗るフレームで、路面もタイヤも初めてだったので、それに対応し切れなかったところもあります。日本のコースは路面がいいのでよく曲がるし、タイヤもいいので、合わせるのが難しかったです」。

「ドライビングで苦労したのはアクセルワークですね。慣れている方式と違っていて、もっと細かいアクセルコントロールが必要なのかと思ったら、そうでもなくて(笑)。コーナーの途中で踏むとリアが出るし、出口で踏むのでは遅いし……。エンジン特性も含めて、アクセルのタイミングが難しかったです。でも、一番とまどったのは路面の違いでした」。

 FIAウィメン・イン・モータースポーツ委員会のDeborah Mayer委員長も見守る中、ウィンフィールド・レーシングスクールや321 Perform代表者も交えたファイナリスト選考では、8名のジュニアドライバーのリザルトはかなり僅差であったとも伝えられている。

「実は今回、エクアドルのドメニカ(Domenika Arellano選手)っていう子とすごく仲良くなれたんです。でも、今回の選考で、最後の最後で争うことになったのがドメニカだったんですよ。僅差で私は受かることができましたが、ドメニカもすごく頑張っていたし努力していましたから……。ドメニカの思いもあるので、このあと、自分はもっと頑張らないといけないなと思いました」。

「今回の挑戦を通じて、言葉の重要さを一番に学びました。最終選考に向けて、もっとコミュニケーションをとれるようになって、敗者の気持ちも背負って、育成ドライバーになって帰ってきたいと思います!」と松井選手は思いを新たにする。

 シニアドライバー4名は、11月のFDA F4スカウティングキャンプに参加して、選ばれた1名はFDAの支援を受けてイタリアF4選手権を戦うことになる。そして、ジュニアドライバー4名は、11月のFDAカートスカウティングキャンプでの選考を経て、1名がFDAの支援を受けながら国際カートシリーズを戦う予定となっている。

 11月の最終選考に選ばれたファイナリストたちの明るい未来に期待したい。

●シニアドライバーのファイナリスト:
- Alice Buckley選手(オーストラリア)
- Chloe Chong選手(英国)
- Chloe Grant選手(英国)
- Aurelia Nobels選手(ベルギー)

●ジュニアドライバーのファイナリスト:
- Lisa Billard選手(フランス)
- Zoe Florescu Potolea選手(イタリア)
- 松井沙麗選手(日本)
- Mathilda Paatz選手(ドイツ)

今回のシュートアウトとトレーニングキャンプは、フランスのポールリカール・サーキットにあるウィンフィールド・レーシングスクールを中心に行われた。
ジュニアドライバーの参加者は8名。唯一の日本人として松井沙麗選手が挑戦した。
シニアドライバーの参加者は6名。F4車両の乗車を想定したトレーニングを受ける。
フィジカルやメンタル面でのトレーニングやテストなど、オフトラックのワークショップも充実する。もちろんカートによる模擬レースも行われ、総合的なスキルの評価を行った。
FIAウィメン・イン・モータースポーツ委員会のDeborah Mayer委員長も現地を訪れた。
シニアドライバーのファイナリスト4名。左からオーストラリアのAlice Buckley選手、ベルギーのAurelia Nobels選手、英国のChloe Grant選手、英国のChloe Chong選手。
ジュニアドライバーのファイナリスト4名。左から松井沙麗選手、フランスのLisa Billard選手、ドイツのMathilda Paatz選手、イタリアのZoe Florescu Potolea選手。
現地ですぐに仲良くなれたという”戦友” ドメニカとのツーショット。彼女の思いも乗せて、松井選手は11月のFDAカートスカウティングキャンプに挑むことになった。
フランスから帰国してすぐ、地方選手権に向けて走り込みを行っていた松井選手。日本人、そしてアジア人として新たな道を拓くことになる”孤軍奮闘”を応援したい。

PHOTO/FIA REPORT/JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] CO-OPERATIONS:飯田裕子[Yuko IIDA]

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