TCRジャパンシリーズ第4戦で猪爪杏奈選手、N-ONEオーナーズカップ第11戦では岡村英莉選手がポールポジション獲得! 真夏のもてぎでアツき決勝バトルが展開された!!
2022年9月7日

モビリティリゾートもてぎで開催されたスーパーフォーミュラのサポートレースであるTCRジャパンシリーズとN-ONE OWNER'S CUPでは、女性ドライバーが予選で大活躍! 変わりやすい天候の元、それぞれの決勝レースでは熾烈なバトルが展開された。
2022年JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権第7戦/第8戦
TCR JAPAN SERIES 2022 Round4 Saturday/Sundayシリーズ
2022 N-ONE OWNER'S CUP Rd.11
開催日:2022年8月20~21日
開催地:モビリティリゾートもてぎ(栃木県茂木町)
主催:ホンダモビリティランド(株)、M.O.S.C.
シリーズ大詰めのJAF全日本スーパーフォーミュラ選手権第7戦と第8戦のサポートレースとして、全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権と、TCRジャパンシリーズ第4戦、そしてN-ONEオーナーズカップ第11戦がモビリティリゾートもてぎで開催された。
TCRジャパンシリーズは、例年スーパーフォーミュラと併催されてきたが、今シーズンは開幕戦の富士スピードウェイ大会以降は併催ではなく、6月の岡山国際サーキット大会、7月のスポーツランドSUGO大会の単独開催を経て、この第4戦で久々に併催された。
今大会のスーパーフォーミュラは1大会2レース制だったため、TCRジャパンシリーズの予選は土曜の朝8時に凝縮され、サタデーシリーズとサンデーシリーズ予選が連続して行われ、決勝については、それぞれ土曜と日曜のお昼に行われるスケジュールとなっていた。今大会の参加台数は9台。HIROBON選手や塩谷烈州選手らベテランも参戦する。
土曜の天候は金曜から一転した曇り空で、例年よりは涼しい印象。しかも午後には雨予報となっていたため、決勝での展開が読めない状況の中で、サタデーシリーズの予選が始まった。ところがセッション開始から早々に3コーナー立ち上がりでのクラッシュが発生。バリア修復が必要となったため、この後に続くサンデーシリーズ予選、スーパーフォーミュラ第7戦の予選、N-ONEオーナーズカップ予選までが15分遅れに変更された。
ドライ路面で行われたサタデーシリーズ予選では、開幕戦富士と第3戦SUGO大会で2勝を挙げているAudi Team Marsの加藤正将選手がトップタイムを計測。シリーズリーダーを走るHIROBON選手とコンマ010秒差という僅差ながら、加藤選手がサタデーシリーズのポールポジションを獲得した。加藤選手は以下のように語る。
「赤旗は若干想定外で、TCR車両はリアタイヤが温まりにくいので、まずフロントに履かせて1周して温めて、前後履き替えてアタックする選手が多いんですよ。そのため、せっかく温めたタイヤが赤旗で冷めてしまったので、型にハマって走るタイプのドライバーにはちょっと難しかったのかなと思います。自分は無駄にレース歴が28年あるので(笑)、状況に合わせられて、その結果、僅差ですが、ポールを獲れたのかなと思ってます」。
赤旗中断からバリア修復を経て、15分遅れで始まったサンデーシリーズの予選では、今年からDOME RACINGからCIVIC TCRでシリーズ参戦する猪爪杏奈選手がトップタイムを計測した。サクセスウェイトを積む2番手の加藤選手や3番手のHIROBON選手にはコンマ2秒差を付け、猪爪選手がサンデーシリーズのポールポジションを獲得した。
「サタデー予選は赤旗になって、冷えたタイヤに自分が合わせきれなくて、思ったアタックができませんでした。タイムも2分2秒台だったので若干不安がありました。でも、サンデー予選では、タイヤ4輪ニューから始まるので、気持ちを切り替えて行ったら、今までの練習通りの思い切ったアタックができたので、気持ちよく走れた感じです」と語る猪爪選手。猪爪選手は第2戦サンデーシリーズ岡山大会以来2度目のポール獲得となった。
サタデーシリーズ決勝は、スーパーフォーミュラ第7戦決勝を前にした12時40分からスタート。ポールポジションの加藤選手に続き、シリーズ首位のHIROBON選手が2番手に並びシグナルがブラックアウト。スタートでは好スタートを決めたHIROBON選手に対して、加藤選手がイン側にラインを変えて加藤選手がホールショットを奪う。猪爪選手は4番グリッドの西澤嗣哲選手に並び懸けられるも、2コーナーでは前に出て3番手を死守する。
23分+1周の決勝レースは、加藤選手がやや引き離し、HIROBON選手と猪爪選手が追いかける展開。しかし、残り16分頃からコース各所に雨粒が落ちてきてワイパーを回す選手も出始めた。猪爪選手はHIROBON選手をテールツーノーズで追いかけ、加藤選手は両者を2秒以上引き離して一人旅となっていた。ところが、レース終盤ではHIROBON選手が加藤選手に詰め寄る猛プッシュ。テールツーノーズにまで持ち込んでいた。
しかし、残り2分のヴィクトリーコーナーでは、先行する加藤選手の挙動が不安定となり車両はコースオフ。最終コーナーはインカットして本コースにまっすぐ戻った加藤選手に、後続のHIROBON選手が交錯し、あわやクラッシュの事態を辛くも避けたHIROBON選手がストレートでコースに復帰するも、3番手を走る猪爪選手が1コーナー進入でHIROBON選手に並び、2コーナー立ち上がりでもサイドバイサイドを演じる展開となった。
その間に加藤選手の車両はスローダウン。そして3コーナーでは、インを死守したHIROBON選手が猪爪選手をかわしてトップに立った。未だ小雨が降り続く状況ながら路面はドライコンディションを維持しているが、残り5秒で先頭のHIROBON選手がコントロールラインを通過したため残り後2周のバトルとなる。余力を振り絞り逃げを打つHIROBON選手。猪爪選手との差はコンマ差から1.5秒程度に開き、HIROBON選手が逆転でトップフィニッシュとなった。3位にはTCRJ初参加の西澤選手が入り表彰台を獲得した。
「スタートはめちゃくちゃ決まったんですが、2速に入れるタイミングが悪くて失速して、前に行かれちゃいました。序盤はトップがかなり飛ばしていったので、自分がそれについて行くと後半でタイヤが厳しくなるのは解っていたので、前半は様子見でしたね。後半ではちょっとずつ追いついて、最後はグーンと詰まったので、これはあと4周ぐらいあるしチャンスかなと思っていたんです。タイヤもまだまだイケそうでしたし。だから、あの展開(加藤選手のトラブル)がなくても、あのペースなら勝負はできたかなと思います」
サタデーシリーズ決勝をこう振り返るHIROBON選手。これで今季2勝目を挙げたHIROBON選手がサタデーシリーズ首位を堅守。22ポイント差の2位には猪爪選手、今回予選で5ポイント、決勝で4ポイントを獲得した加藤選手がシリーズ3位につけている。








第4戦サンデーシリーズ決勝が行われる日曜は、土曜の曇り空とは打って変わって快晴に恵まれた。スーパーフォーミュラ第8戦決勝レースを控えた、強い日差しが照りつける12時40分に23分+1周のレースがスタートした。
ポールポジションは猪爪杏奈選手。昨年のもてぎでTCRデビューを果たした猪爪選手だが、今季2度目のポールスタートということで、初優勝の期待がかかる。2番グリッドは加藤正将選手。サタデーシリーズ決勝では、レース終盤にステアリングが右に切れないトラブルに見舞われており、足回りの交換を伴うマシン修復を経ての参戦となった。
スタートでは猪爪選手が好スタートに成功。加藤選手は蹴り出しに失敗し、3番グリッドのHIROBON選手が加藤選手をパスして2番手に浮上する。1コーナーでは3車身ほど離した猪爪がホールショットを奪い、HIROBON選手と加藤選手のベテランを後続に従える。
コース中盤では猪爪選手が逃げるものの、コース後半から前半にかけてはHIROBON選手が猪爪選手に詰め寄り、パッシングとマシンを左右に振った挙動で前走車にプレッシャーをかける。タイヤマネジメントに定評があるHIROBON選手のプレッシャーに耐えながら、猪爪選手は自身のラインと首位を死守。この膠着状態はレース終盤まで繰り広げられた。
上位勢のラップタイムは徐々に落ちていくものの、3番手の加藤選手とのギャップは約4.5秒にまで開いている。上位2台の膠着した攻防戦が動いたのは残り4分の、10周目に入ったストレート。これまでよりイン側のラインを走る猪爪選手に対して、1コーナーのアプローチで大外からイン側にラインを変えたHIROBON選手。猪爪選手はインを絞めるものの、2コーナー進入ではHIROBON選手が1台分空いたスキを付いて猪爪選手に並ぶ。
2コーナーからサイドバイサイドで3コーナーにアプローチするも、イン側の猪爪選手に対して、再び大外からアプローチしたHIROBON選手がアウト側で僅かに先行。そのまま4コーナー立ち上がりで猪爪選手を交わし、残り3分30秒でトップに浮上した。HIROBON選手はペースを上げて猪爪選手を引き離すも、猪爪選手もコース中盤では詰め寄る粘りを見せる。しかし、2台の差は徐々に広がりあえなくレース終了。HIROBON選手がサタデーシリーズに続いてもてぎ大会を制し、加藤選手が3位表彰台を獲得した。
「車両の特性が違うシビックが前にいると少し厳しいかなと思っていたんですが、意外と付いていけましたね。あとはタイヤがどのくらいで落ちてくるのかなというのを待っていた感じです。ラインを変えて揺さぶりをかけましたけど、どうせタイヤは落ちてくるだろうと思いながら、自分はタイヤを使わずにやってました。何度か抜こうとは思いましたが、チャンスは1~2コーナーだろうと思ってましたから、あのタイミングでうまく決まりましたね(笑)」とは優勝したHIROBON選手。
サンデーシリーズではシーズン3勝目を挙げたHIROBON選手は、シリーズ2位につける加藤選手との差を23ポイントに広げた。シリーズ3位には猪爪選手がつけている。
今年のTCRジャパンシリーズはあと2大会。FIA世界耐久選手権(WEC)富士ラウンドと併催される第5戦、JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権最終大会JAF鈴鹿グランプリで行われる第6戦で、サタデー/サンデーシリーズ合計4レースが残されている。









スーパーフォーミュラとスーパーフォーミュラ・ライツ、TCRジャパンシリーズに併催されたN-ONEオーナーズカップ第11戦。今季は全国8箇所のサーキットで全15+ファイナル1大会が予定され、モビリティリゾートもてぎでは3月の開幕戦以来、2度目の開催となった。
N-ONEオーナーズカップ第11戦の予選は、土曜に行われたスーパーフォーミュラ第7戦の予選後から20分間で行われた。曇り空ながらドライコンディションに恵まれ、比較的早いタイミングからのアタックが有効となっていた。
セッションの早々にトップタイムをマークしたのは女性ドライバー、710号車CUTZ&NUT N-ONEを駆る岡村英莉選手。続いて、今回は2019年以来の参戦となった吉田綜一郎選手が2番手、小林雄太選手が3番手タイムを計測する。ポイントリーダーの塚原和臣選手は下位に沈み、塚原啓之選手も5番手留まり。そんな中、和田将人選手が終盤でタイムを出してきたが、岡村選手の2分47秒655には約コンマ3秒届かない2番手に留まった。
この結果、岡村選手、和田選手、吉田選手の順で上位グリッドが固まった。しかし、4番手と5番手の選手に失格判定が下されて予選順位が改訂されることになり、6番手タイムだった地元のベテラン・阿久津敏寿選手が4番グリッドを獲得することになった。
第11戦の決勝は日曜のオープニングレースとなり、前日から夜にかけて降った雨の影響が心配される状況ながら、8時25分から7周のレースがスタートする。
N-ONEオーナーズカップでは女性ドライバーも活躍中で、2017年第6戦富士大会では高橋純子選手が優勝、小山美姫選手も2017年に2勝、2018年に1勝している。今回ポールポジションを獲得した岡村選手は、長年戦ってきたシリーズで、2021年には表彰台も獲得していることから、パドックでは悲願の勝利を期待する雰囲気が漂っていた。しかし、当の岡村選手は静かに乗車準備を進め、神妙な面持ちでグリッドに向かった。
スタートでは岡村選手がホールショットを奪い、和田選手、吉田選手という順番でレースが進む。後続では7番グリッドの森本進一選手が5番手に順位を上げて阿久津選手との接戦となる。3周目には吉田選手が和田選手をパスして2番手に上がり、首位の岡村選手を追いかける。そして4周目、吉田選手が岡村選手のアウトに並んでオーバーテイク。続いて5周目、岡村選手に90度コーナーから迫った和田選手が2番手に上がる。首位に上がった吉田選手は和田選手を従えて、2台で後続を引き離しにかかる展開となった。
レース終盤、トップの吉田選手と2番手の和田選手は逃げの体制を敷く中で3位争いが激化。N-ONEオーナーズカップらしく、ファイナルラップまで順位変動が起きる。6周目の90度から7周目の3、4コーナーにかけてはダンゴ状態となり、上位を狙った森本選手は阿久津選手に差し替えされ、阿久津選手が熾烈な3番手争いを制することになった。
第11戦は吉田選手が優勝、2位は和田選手、3位は阿久津選手。4位は森本選手、5位は巻幡剛志選手、6位は吉田祐太選手で、岡村選手は7位に終わった。今大会で大量得点を加算した和田選手はジャンプアップ。シリーズ4位に浮上している。
「路面はほとんどドライになっていて、バトルしているときに濡れた所があるかな、という程度でした。でも、路面自体は昨日の予選とは違ってて、スーパーフォーミュラの予選後の路面に比べると、その感覚で行くとアンダーステアが結構きつかったですね。それでみんな突っ込み過ぎたりしてたんじゃないかと思います。ボク自身2年ぶり、すごく久しぶりにN-ONEに出たんです。今回はホンダカーズ新潟中央さんにお話をいただいてスポット参戦となりました。何とか優勝をプレゼントしたかったので、それが達成できて良かったです。バトルも楽しかったですし、N-ONEってこんなに走るのが面白かったっけ? という感じでした(笑)。久しぶりに乗って、N-ONEでしか味わえない楽しさがあるんだな、ということを改めて感じました」とは、優勝の吉田綜一郎選手。
「2番グリッドからなるべく早く前に出て、そのまま逃げることを狙ってました。それが自分のミスもあって、3番手の吉田さんに抜かれてしまって……。でも、そこで崩れずに前の2台に付いていって、十分取り返すことができたので、最低限の走りは出来たのかなと思います。今回は雨を想定していたので、ほぼドライ路面で御の字です。タイヤの持ちも曇り空がうまく作用してくれたと思います」と語るのは2位の和田将人選手。
「上位争いで接触があるかなと想定して、少し離れて様子を見ていました。みんな残り2周で勝負をかけて来ると想定してましたが、バックストレートからバトルが始まっちゃって(笑)。それに合わせて、1コーナーから前半辺りで抜けるなと計算して、うまく抜くことができました。今日の路面は、金曜日に比べると、スーパーフォーミュラが走る分、路面にどうしてもコンパウンドが乗るみたいで、僕らはエコタイヤなので、接地感とかがあまり良くなかった感じですね」とは3位の阿久津敏寿選手。









PHOTO/石原 康、JAFスポーツ編集部 REPORT/JAFスポーツ編集部
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