FIAフォーミュラE第5戦マイアミE-Prixは、パスカル・ウェーレイン選手が優勝! ローラ・ヤマハがチーム初の表彰台を獲得し、日産フォーミュラEチームは失意の結果に……

レポート レース

2025年4月21日

2025年4月12〜13日、2024~2025年FIAフォーミュラE世界選手権の第5戦『マイアミE-Prix』がアメリカのホームステッド・マイアミスピードウェイで開催され、パスカル・ウェーレイン選手(タグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム)が優勝を飾った。

2024/2025 ABB FIA Formula E World Championship Round 5 Miami E-Prix/2024~2025年FIAフォーミュラE世界選手権(シーズン11)第5戦 マイアミE-Prix
開催日:2024年4月11日(金)~12日(土)
開催地:ホームステッド・マイアミスピードウェイ(アメリカ)

フロリダ州にある「ホームステッド・マイアミスピードウェイ」で初めて開催され、外周のオーバルコースと内周のテクニカルコースを組み合わせたレイアウトが使用された。
5月から雨季に見舞われるフロリダ州。金曜のシェイクダウンは大雨で中止となり、雨上がりで初の走行機会となったFP1ではニック・キャシディ選手がトップタイムを計測した。
土曜の朝に行われたFP2では、日産製パワートレインを搭載するネオム・マクラーレン・フォーミュラEチームの新星・テイラー・バーナード選手が最速タイムをマークした。
第5戦の日産フォーミュラEチームは、今季2勝を挙げてドライバーランキング首位に立つオリバー・ローランド選手が23号車、ノーマン・ナトー選手が17号車に乗車する。

予選では日産のノーマン・ナトー選手がデュエルを制してポールを獲得!

 第5戦の舞台となったホームステッド・マイアミスピードウェイは、北米の主要レースが盛んに行われるサーキットで、フォーミュラEは初開催。NASCARやINDYCARでおなじみのオーバルコースと、そのインフィールドに設けられたテクニカルコースを組み合わせたフォーミュラEオリジナルのコースレイアウトが採用された。

また、今大会は決勝が土曜に行われる日程となり、前戦のジェッダ大会第3戦で初めて導入された「ピットブースト」は行われず、ピット義務のない通常のレース進行となった。

 朝から青空が広がる快晴に恵まれた土曜日。午前中に行われたデュエル形式の予選では、クォーターファイナルとセミファイナル、ファイナルでノーマン・ナトー選手(日産フォーミュラEチーム)がそれぞれトップタイムをマークし、圧倒的な強さを見せた。

 予選ファイナルは、ナトー選手とジェイク・デニス選手(アンドレッティ・フォーミュラE)のデュエル対決となったが、先走したデニス選手がセクター3ではベストとなった1分23秒166を計測。後走したナトー選手はセクター1とセクター2でデニス選手を上回り、最終的には1分23秒037をマーク。この結果、デニス選手0.129秒差をつけたナトー選手が自身初のポールポジションを獲得した。一方、ランキングトップのオリバー・ローランド選手(日産フォーミュラEチーム)は、グループ予選で敗退。16番手から巻き返しを狙う。

 午後の決勝レースでは路面温度は50度まで上昇し、タイヤにとっても厳しいコンディションとなった。グリッドでは恒例のバーンナウトが行われるが、タイヤに熱を入れすぎないようにするためか、各車はあまりバーンアウトせずにグリッドへ整列した。

 今大会はピットブーストは行われず、アタックモードは最大350kWが8分間で、2回の起動が許される。8分の内訳は2分+6分、4分+4分、6分+2分といういつもの組み合わせだったが、この起動時間の選択が、最後の最後で大きく順位を左右することとなった。

 26周の決勝がスタートすると、フロントローのデニス選手が好発進を決めたが、予選デュエルを制したナトー選手が1コーナーを制してみせた。しかし、背後には3番手スタートのアントニオ・フェリックス・ダ・コスタ選手(タグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム)とニック・デ・フリース選手(マヒンドラ・レーシング)が続いていた。オープニングラップの最終セクターではデ・フリース選手がトップに浮上、ホームストレートではダ・コスタ選手にも並ばれ、ナトー選手は順位を下げてしまう。

 ロビン・フラインス選手やセバスチャン・ブエミ選手(ともにエンビジョン・レーシング)らも首位争いに加わり、ナトー選手は一時6番手まで順位を落としていたが、5周目にはナトー選手が先頭を取り戻すことに成功する。展開は序盤からやや”電費”レースの様相を呈しており、上位勢の順位が入れ替わりながら、ほぼ全台が隊列走行となっていた。

 9周目には、それまで5~6番手を走行していたブエミ選手が真っ先にアタックモードを起動さあせて3番手に浮上。その数周後には多くのドライバーがアタックモードを起動させて仕掛けはじめた。コース幅が広いこともあり、サイド・バイ・サイドは当たり前、時には3ワイドにもなるバトルが各所で勃発することとなり、フォーミュラE名物とも言える、目まぐるしく順位が入れ替わる展開が始まった。

 アタックモードを使用したデ・フリース選手が再びトップへと返り咲き、18番手スタートだったニコ・ミューラー選手(アンドレッティ・フォーミュラE)も一時トップに立つ。さらに、他車よりもやや遅いタイミングで、ダ・コスタ選手とパスカル・ウェーレイン選手(タグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム)がアタックモードに入った。

 ウェーレイン選手は、上位勢がアタックモードを使用していないタイミングだったことで、少しずつ順位を上げ、13周目の12番手から15周目には3番手にまでジャンプアップした。ダ・コスタ選手は15周目にトップに立ち、アタックモードが続くウェーレイン選手は2番手にまで順位を上げ、タグ・ホイヤー・ポルシェ勢がワン・ツー体制を築く。

 そして16周目にはダ・コスタ選手がアタックモードを起動させ、ウェーレイン選手が先頭に2番手で戻ったが、ウェーレイン選手のアタックモードが切れたため、再びダ・コスタ選手が首位に立ち、タグ・ホイヤー・ポルシェ勢ワン・ツー体制を堅守した。

 ところが17周目、11番手に下がっていたデ・フリース選手が、3コーナーのランオフエリアにマシンを止めてしまう。これでセーフティカー(SC)導入となった。

26周のレース終盤で赤旗中断。そこから想定外の超スプリントレースが始まる!?

 SCがピットに戻り、レースは19周目に再開した。ダ・コスタ選手は1回目のアタックモードをSC導入直前までにキレイに消化したこともあり、電池残量の強みも活かしてウェーレイン選手を引き離しにかかった。そして、翌周には2回目のアタックモードを起動させ、再びウェーレイン選手を引き離していく。ほかの車両も2回目のアタックモードを起動させていたため、ここから再び大きな順位変動が起きるかと思われた。

 しかし、20周目のシケインで、ジェイク・ヒューズ選手(マセラティMSGレーシング)とマキシミリアン・ギュンター選手(DSペンスキー)、ミッチ・エバンス選手(ジャガーTCSレーシング)による多重クラッシュが発生。まずSCが導入されたものの、ヒューズ選手が壁にヒットして右前サスペンション破損、ギュンター選手がヒューズ選手の車両に乗り上げていたことから、車両排除のために赤旗掲出となり、レースは中断された。

 車両はピットに戻され、23周目からスタンディングスタートによるレース再開が決まる。つまり、勝負はわずか4周のスプリントレースへと持ち込まれた。再開直後には、2回目のアタックモードを使い切っていなかった車両が13台連続で次々と起動させた。しかし、残り周回数が少なかったため、チェッカーまでに使い切れるかという懸念もあった。

 リスタートで首位を守ったダ・コスタ選手は、すでにアタックモードを使い切っている。2番手でリスタートしたウェーレイン選手は、1コーナーで3番手に後退したものの、2回目のアタックモードを起動させてエドアルド・モルタラ選手(マヒンドラ・レーシング)とダ・コスタ選手を次々とパスして、24周目に再び首位に浮上した。

 上位勢の中でアタックモードを使い切っていたダ・コスタ選手とモルタラ選手は、3番手でリスタートしていたロビン・フラインス選手(エンビジョン・レーシング)やナトー選手に抜かれて徐々に順位を下げていく展開となった。そして、レース中断までは下位に沈んでいて、11番手からリスタートしていたオリバー・ローランド選手(日産フォーミュラEチーム)が、最終盤で大きく順位を上げていた。

 2回目のアタックモード起動直後、一気に2台抜きを果たしたローランド選手は、続いてテイラー・バーナード選手(ネオム・マクラーレン・フォーミュラEチーム)やルーカス・ディ・グラッシ選手(ローラ・ヤマハABTフォーミュラEチーム)をパス。25周目にはダ・コスタ選手を抜いて、ナトー選手に続く4番手につける躍進を見せていた。

 今回は予定通り26周で終えることがリスタート後に発表されており、ウェーレイン選手とフラインス選手、ナトー選手、ローランド選手の順でファイナルラップを迎えた。

 ナトー選手は1コーナーでフラインス選手をパスすると、少し離れた先頭を走るウェーレイン選手を追跡する。電池残量的にも有利だったナトー選手はコーナーごとに差を詰めてゆき、最終コーナー立ち上がりで並び、チェッカー直前に仕留めることに成功。入線順はナトー選手、ウェーレイン選手、フラインス選手、ローランド選手となり、ポールポジションからスタートしたナトー選手が奇跡的な逆転勝利を飾ったかに見えた。

 しかし、2回目のアタックモードは、ナトー選手とフラインス選手、ローランド選手、そしてサム・バード選手(ネオム・マクラーレン・フォーミュラEチーム)とバーナード選手が「6分」であり、フィニッシュラインを通過する前に、割り当てられたアタックモード時間を使いきれなかったということで、フィニッシュ直後に10秒のタイムペナルティが科された。ちなみにウェーレイン選手の2回目は「4分」だった。

 この結果、2番手入線のウェーレイン選手が1位となり今季初優勝を手にした。6番手で入線したディ・グラッシ選手が2位に上がり、ローラ・ヤマハとして初の表彰台かつ初のポイント獲得を果たした。3位はダ・コスタ選手となり、ナトー選手は6位となった。

 ポイントランキングを見ると、4番手でチェッカーを受けるもペナルティで10位に繰り下がりとなったローランド選手が、15ポイント差でドライバーランキング首位をキープ。2位にはダ・コスタ選手、3位にはウェーレイン選手がつけている。

 ポイントリーダーを堅守したローランド選手は「ペナルティを受け最終的に10位で終わってしまった。運が悪かったけど、時にはこういったことも起こる。それでも、今日のレースでチームとして見せたペースは、今後に向けて大きなプラスだし、非常に競争力のある走りができたよ」と振り返った。

 次戦はシーズン初の欧州ラウンドとなる「モナコE-Prix」。5月3〜4日にモナコ公国の市街地コースを舞台に第6戦・第7戦のダブルヘッダーで開催される予定だ。

ジェイク・デニス選手との予選ファイナルを制したのはノーマン・ナトー選手。自身初のポールポジション獲得となり、不調が続くシーズンを払拭する決勝での躍進が期待された。
土曜に行われた26周の決勝は、ナトー選手が1コーナーを制した。17周目にはSC導入、20周目には多重クラッシュからの赤旗中断があり、レース後半は荒れた展開に見舞われた。
トップチェッカーはナトー選手が受けたものの、ペナルティにより10秒が加算されて6位に降格。代わって、2番手で入線したウェーレイン選手が優勝するという波乱の幕切れに。
上位で入線した選手が軒並み10秒ペナルティを受け、ウェーレイン選手が1位となり、6番手入線のディ・グラッシ選手が2位、ダ・コスタ選手が3位という表彰台となった。
ローラ・ヤマハとして初の表彰台かつ初のポイントを獲得した2位のディ・グラッシ選手。
アタックモードを使い切って下位に沈んでいたダ・コスタ選手が3位表彰台に返り咲いた。
コントロールライン直前で逆転という劇的なトップチェッカーを受けたナトー選手は6位、終盤の怒涛の追い上げで4番手入線のローランド選手もペナルティにより10位に終わった。
チーム・チャンピオンシップは、ウェーレイン選手とダ・コスタ選手の表彰台獲得で大量加点に成功したタグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチームが首位に浮上した。
今年のマイアミ大会では”FIAチェッカーフラッグ”が導入され、優勝者にはモハメド・ベン・スレイエム会長のサインが刻まれたFIAプレジデント・メダルの授与が行われた。

PHOTO/日産自動車[Nissan Motor Co., Ltd.]、Formula E Operations Limited REPORT/吉田知弘[Tomohiro YOSHITA]、三家香奈子[Kanako SANGA]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

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