GT3車両とGT4車両が競うGTワールドチャレンジ・アジアがスポーツランドSUGOで初開催!
2022年9月2日

SUGOチャンピオンカップレースシリーズ第5戦が、8月20~21日にスポーツランドSUGOで開催された。また2022ファナテック・GTワールドチャレンジ・アジア・パワード・バイ・AWSも同日に開催。このところ荒天に見舞われ続けていた東北地方、この週末はようやくその悪天候から脱却して穏やかな陽気に恵まれることが予想されていた。ところが、土曜日はにわか雨……。最もとばっちりを受けたのが、GR86/BRZ Cupのプロフェッショナルシリーズの予選で、戦前の予想とはまったく異なる展開となった。
2022 SUGOチャンピオンカップレースシリーズ Round.5
開催日:2022年8月20~21日
開催地:スポーツランドSUGO(宮城県村田町)
主催:株式会社菅生、SSC
本来、6大会12戦で行われるはずだった2022ファナテック・GTワールドチャレンジ・アジア・パワード・バイ・AWSは、インドネシアで開催予定の最終大会が中止となり、残る戦いはスポーツランドSUGO、そして岡山国際サーキットの大会だけとなった。
そのレース1ではいきなり波乱の幕開けとなる。Yogibo Racingの横溝直輝選手が2番手から絶妙のスタートダッシュを決めてトップに立ったのに対し、ポールシッターであるAAS Motorsportのタナート・サティエンティラクル選手は、出遅れた上に後続車両に追突されて大きく順位を落としたからだ。さらに2周目のヘアピンでコースアウトした車両もあり、3周目からほぼ10分間に渡ってセーフティカー(SC)が導入される。
それまでの2周で早くも5秒以上のリードを築いていた横溝選手にとって、せっかくの力走が水の泡と化したが、バトル再開後は何事もなかったかのように再び逃げていく。そしてピットレーンオープンから間もなく、横溝選手は藤波清斗選手とバトンタッチ。トップのまま藤波選手はレースを折り返したが、その背後にCarGuy Racingの木村武史選手と交代したばかりのケイ・コッツォリーノ選手が続いていたのは予想外だったかもしれない。
フェラーリ488GT3同士で激しくトップが競われるも、追われる立場である藤波選手はプレッシャーに屈することなく周回を重ねていく。対してコッツォリーノ選手も「フェラーリはやっぱり空力マシンだから、前にいられると抜けない」と逆転の決め手を欠く。20分以上に及んだ死闘の末、藤波選手は逃げ切ってYogibo Racingに初優勝をプレゼントした。
「久々にこんなギリギリのレースをしたので、いい刺激になりましたし勉強にもなりました。コース前半は向こうが速かったですが、高速の後半はこっちが速かったので問題なく行けました」と藤波選手。そして、「とにかくチギって藤波選手に渡したかったのでベストを尽くしました。SCが入って『わぁ!』と思ったんですけど、最後までトップを守った藤波選手がいい仕事をしたし、チームも本当にいい仕事をしてくれました」と横溝選手は大喜びの様子だった。
2位のCarGuy RacingはPro-Amの優勝を飾り、Amの優勝は総合8位だったTeam Uematsuの植松忠雄/内田雄大組が獲得。そしてGT4では、GTO Racing Teamのブライアン・リー/安岡秀徒組が優勝した。













レース2ではポールポジションからCarGuy Racingのコッツォリーノ選手が逃げまくった。レース1の2位獲得でピットストップ時間が20秒追加されるため、後半を担当する木村選手を少しでも楽にしようという考えだ。ピットレーンクローズまであと数秒というところまで交代を遅らせ、実際に20秒以上のリードを築き上げていた。
代わった木村選手も貯金を切り崩すどころか、一時は自らリードを広げていた。そして終盤には相次いだタイヤトラブルを避けるため、明らかにペースを抑えていたほどだ。誰の目にも最終ラップまで安全圏であると思われたが、チェッカー目前で木村選手はスローダウン!その脇をすり抜け、トップでチェッカーを受けたのはD'station Racingの星野敏選手だった。それまでも3台で激しく2番手を競っていたが、土壇場で思いがけぬ結果が舞い込んだ。
「いや、信じられません。でも良かったです」と語る星野選手に対し、木村選手は「もっと離れていると思っていたんですが……、ちょっとペースをゆっくりさせすぎました」とお茶を濁すも、何らかのトラブルを抱えていたのは間違いない。
「僕らのクルマはストレートがBoPのせいで遅いから、バトルになると厳しかったんです。最後、星野さんが抜いてくるなんて思ってもいなくて、最高のレースになりましたね!」と、D'station Racingの藤井誠暢選手は、星野選手の健闘を大いに讃えていた。
Amの優勝はReap Fueling Ambitionsの濱口弘/大蔵峰樹組が獲得し、総合では7位に。目まぐるしくトップが入れ替わっていたGT4は、Akiland Racingの大山正芳/植田正幸組の優勝となった。









第2戦目となるTOYOTA GAZOO Racing GR86/BRZ Cup 2022のクラブマンシリーズでは、予選の開始直前に小雨が降り出すも、本格的に路面を濡らすまでには至らず。そんな状況においても、出走をあえて遅らせ、しっかりクリアラップが取れた勝木崇文選手が初めてポールポジションを獲得する。
「みんな、パラっと来たんで一気に行ったんでしょうけど、僕は大丈夫だろうと信じて。なんとかスペースのいいところを見つけて走れました。狙いどおりでしたけど、本当はけっこうキツかったですよ、精神的に!」と勝木選手。2番手タイムを菱井将文選手が出すも、四輪脱輪で採用されず8番手に降格。2番手には初のフロントローとなる岡田友輔選手がつけた。
決勝では岡田選手が好スタートを切り、並ばれた勝木選手は3コーナーまでしっかり踏ん張って逆転を許さず。その後はじわりじわりと差を広げていくこととなった。そして終盤になって岡田選手に迫ってきたのが菱井選手だった。
1周目を終えた段階で菱井選手は5番手に上がり、咲川めり選手と競いながら前方との差を詰めていく。8周目のSPコーナーインで前に出ると、より速さは増して、11周目には松井宏太選手、岡田選手を相次いでパスして2番手に。「はなっから後半勝負のつもりで。ああ疲れた〜、でも楽しかったです」と菱井選手。
そして勝木選手は「やっと勝ちました~。今まで速さはあっても、それを結果に残せなかったので、本当にうれしいです。スタートは力んじゃったんですけど、なんとか守れました。その後はペースに自信があったので、落ち着いて攻め切ることができました」と初優勝を心から喜んでいた。
一方、プロフェッショナルシリーズは予選で強い雨に見舞われて予想外の展開に。せっかく決めたドライセットが通用しなくなったばかりか、本来はワンアタックの段取り。終盤になって路面は若干乾いていったから、周回を重ねたことでガス欠症状に見舞われた車両もあったほどだ。そんな状況において、ネクセンタイヤ・ユーザーが大暴れ。近藤翼選手がポールポジションを獲得し、岡本大地選手も4番手につけた。
「急にウェットになっちゃって。でも調整した内圧がうまくいきました。一番時計が出て良かったです。前回の専有走行でもトップだったんですが、今回は予選で再現できたので、決勝でも頑張ります」と近藤選手。ふたりの間には、松井孝允選手と小河諒選手が割って入っていた。
ドライコンディションに転じた決勝レースでは近藤選手が好スタートを切るも、松井選手がぴたりと食らいついて離れない。そればかりか「バックストレートで松井選手に抜かれそうになって、『これ、最終コーナーでやられるな』って思って無理して踏んで行ったら、ちょっとオーバーランして……」近藤選手は4番手に後退、その隙を逃さず捕えて松井選手がトップに立つ。だが、2番手、3番手に浮上した岡本選手と冨林勇佑選手が、松井選手を逃してくれず。
5周目のストレートで冨林選手をあえて先行させた岡本選手。その狙いは「素直に前に行かせて、前でぐちゃぐちゃになったところで行けたら、と思っていたんです」だったが、「そんな下心は全然通用しませんでした」とも。その結果、中盤からのトップ争いは松井選手と冨林選手の一騎討ちに転じていく。
テール・トゥ・ノーズでの戦いが最後まで続くも、「スタート勝負だと思って、内圧をスタートに合わせたら本当にそのとおりで。後半つらいのは分かっていたので、ポイントを押さえました。冨林選手が速いのはすぐ分かったので、ちょっと切り替えて一瞬落として、真後ろについてもらいました」と、そこは松井選手の冷静な判断が光った格好だ。松井選手はハコのスプリントでは、これが初優勝となった。
2位の冨林選手はプロフェッショナルシリーズ移行後、これが初の表彰台にとなり、「松井選手はめちゃくちゃ上手くて、なかなかミスをしなかったので、抜く隙はなかったですね。まだまだ伸び代はあるということで、(優勝は)次にお預けということで」と、自信を確信に変えていた。






予選を2組に分けて行ったTOYOTA GAZOO Racing Yaris Cup 2022東日本シリーズ第5戦では、A組のトップを渡辺圭介選手が、B組のトップを松原亮二選手が奪うも、タイムに優ったのは渡辺選手で、ポールポジションを獲得した。
「計測3周目に出したタイムでしたが、セクター1とセクター2でベスト/ベストを出せました。まだタイヤは生きていたし、最終コーナーの手前で前方2台のスリップに入れたので、それがとどめで効きました」と渡辺選手。
決勝では3番手スタートの大森和也選手が好発進。松原選手を1コーナーでかわして渡辺選手に続く。まずはこの3台でトップが競われるも、2周目に発生したアクシデントにより、5周目までセーフティカーが導入される。
バトル再会後も三つ巴状態は続き、8周目は馬の背~SP~最終コーナーと目まぐるしく順位を入れ替えていた。その激しさのあまり、それまで離していた後続を近づけてしまったのは、松原選手にとっては誤算だったはず。次の周に横田剛選手の先行も許していたからだ。
熱闘は最後まで続き、辛くも渡辺選手の逃げ切りとなったはずが、8周目のトップ争い中に走路外追い越しがあったようだ。これにより、渡辺選手は40秒加算のペナルティで35位へと降格。
「行けそうだったんですけど、行くと後ろからも来ちゃうので、いろんなことを考えながら走っていました。一騎討ちだったらもっと行けたんですけど、『今日はこのへんで手を打ったろか』って、そんな感じでした」と、2位でゴール後に語っていた大森選手だったが、結果的にはこの冷静な判断が功を奏して2勝目を手にした。
2位はYaris Cupでは初レースとなる横田選手が獲得し、3位は松原選手。そしてCVTクラスも初参戦のクルマドーさっちゃん選手の優勝となった。






フォト/吉見幸夫 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部
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