佳境のタイトル争い、ランキング2番手の佐野雄城選手と3番手の金子修選手が、トップの小田優選手に待ったをかける優勝

レポート カート

2022年9月9日

国内カートレースの最高峰、全日本カート選手権OK部門の第7戦/第8戦が9月3~4日、千葉県・茂原ツインサーキット東コースで開催。第7戦ではOK部門3年目の金子修選手(TONYKART RACING TEAM JAPAN)が、第8戦では同2年目の佐野雄城選手(BirelART AccessRacing)が、ともに初優勝を飾った。

2022年JAF全日本カート選手権OK部門 第7戦/第8戦
開催日:2022年9月3~4日
開催地:茂原ツインサーキット東コース(千葉県茂原市)
主催:MTC

 全5大会10戦で行われる全日本カート選手権OK部門の2022シリーズは、いよいよ大詰めを迎えた。第7戦/第8戦が行われる茂原ツインサーキット東コースは、ミニサーキットとして自動車やバイクの走行にも使用されている全長1170mのコースで、カートレースの舞台としては非常に広大なもの。例年の大会では、よく効くスリップストリームを活かして頻繁なオーバーテイクの応酬が繰り広げられている。

 ここまでの6戦では17歳のルーキー小田優選手(Drago CORSE)が3勝を挙げてポイントランキングの首位を快走中。佐野選手が4度の表彰台登壇で同2番手に続いている。

 2デイ制の大会では、1日目にタイムトライアルと第7戦の予選ヒートが、2日目に第7戦の決勝と第8戦の予選・決勝が行われる。参加は全31台だ。

アップダウンのある全長1170mのロングコースで繰り広げられる全日本カート選手権の茂原大会。
迎えた第7戦と第8戦、これまで6戦中3勝を挙げている小田優選手がポイントリーダーとして君臨している。

OK部門第7戦

 1日目のタイムトライアルは全車をA/Bふたつのグループに分けて行われ、Aグループに出走したルーキーの堂園鷲選手(Energy JAPAN)が42秒238の総合トップタイムをマーク。前大会は体調不良で欠場した堂園選手だが、復帰戦で変わらぬ速さを披露した。Bグループに出走した半田昌宗選手(TEAM WOLF)と三村壮太郎選手(Rosa Drago CORSE)が42秒304の同タイムでこれに続き、セカンドベストの差で半田選手が2番手、三村選手が3番手に。

 ここまでをブリヂストン・ユーザーが占め、4番手にヨコハマタイヤ・ユーザーの渡会太一選手(Drago CORSE)が続いた。ダンロップ・ユーザーでは皆木駿輔選手(Croc Promotion)の16番手が最上位。ポイントリーダーの小田選手は11番手、同2番手につける佐野選手は10番手だ。

 1日目の16時過ぎから行われた第7戦の予選ヒートでは、7番グリッドから金子選手が躍進。5番グリッドからオープニングラップに大きく順位を上げて先頭に立っていた加藤大翔選手(PONOS HIROTEX RACING)を中盤にパスし、トップでゴールして決勝のポールを獲得した。2番手は、序盤の遅れを挽回した半田選手。ホットなバトルを演じた三村選手が3番手、堂園選手が4番手となった。

 一夜明けて大会2日目。第7戦の決勝は9時55分に始まりを迎えた。周回数は26周。空を覆っていた雲は途切れ、青空がのぞき始めた。数週間前の酷い暑さは去ったが、それでも日差しはまぶしく、まだまだ体力面では厳しいコンディションだ。

 スタートに向かうローリングの最中、半田選手がストップ。レースはセカンドグリッドが空席のまま始まった。まず戦いの機先を制したのは堂園選手。スタート直後に2番手へ上がると、すかさず金子選手をパスし、オープニングラップをトップで終えた。ところが5周目、堂園選手が突如スローダウンしてストップ。チェーントラブルだった。

 これで金子選手が先頭に戻り、2番手に三村選手が続く展開に。2台は0.5秒ほどの間隔のまま緊迫のラップを重ねていく。その状況に変化が現れたのは、レースの折り返し点を過ぎたころ。三村選手のペースが落ち、2台の間隔が開き始めた。17周目、金子選手はリードを1秒に広げて完全な独走状態に。一方、三村選手にはスタートの出遅れを取り戻した小田選手が迫ってきた。

 金子選手はペースを落とすことなく周回を続け、ピットレーンで見守る仲間に向けてナンバー1サインを掲げながらチェッカーをくぐった。2019年のOK部門デビューイヤーから速さには定評のあった俊英に、ついに訪れた初優勝の瞬間だ。加えてこれは、今季のOK部門で初めてのポール・トゥ・ウィンだった。

 小田選手は残り3周で三村選手の前に出て2位を獲得。三村選手は苦境に陥りながら粘り強く走り切って3位を手にした。4位は10番グリッドから浮上の佐野選手。それに清水啓伸選手(Drago CORSE)が続いた。そして5位までをブリヂストン・ユーザーが占める中、ダンロップを履く皆木選手が3番手集団に加わって6位でフィニッシュ。ヨコハマタイヤ勢では渡会選手が26番グリッドから這い上がって9位に入っている。

これまで数々のファステストラップを刻みながらも、表彰台の頂にあがることが叶わなかった金子修選手が、ついに優勝。「めっちゃうれしいです。とにかくそのひと言です。初優勝まで長かったですし、僕がレースを始めたころから力になってくださった方々に結果で恩返しをしたいと思っていたので、それを実現できて良かったと思います。以前は予選が終わると決勝が不安に思えたりもしたんですが、最近はひとつひとつの結果を素直に受け入れることを心がけるようになって、それがいい方向に変わる一因だったのかなと思います」とコメント。
2位は小田優選手、3位は三村壮太郎選手。
第7戦表彰の各選手。

OK部門第8戦

 第8戦は、午後に入ってから予選が行われた。ここでは渡会選手が2周目にトップを奪うと、そのまま17周を走り切り、ヨコハマタイヤ装着車を決勝のポールにつけて見せた。2番手のゴールは金子選手。序盤の出遅れから猛追を見せた佐野選手が3番手に。4番手、5番手に堂園選手と小田選手が続いた。

 第8戦決勝の開始時間は15時55分。陽はかなり傾いたが、真昼の暑さはまだ収まる気配を見せない。スローペースのローリングから26周の戦いが口火を切ると、渡会選手は狙いどおりにトップのままレースを開始することに成功。その背後では2番手の位置をめぐってポジションチェンジが相次ぎ、渡会選手のトップ快走を後押しした。

 結局、渡会選手はブリヂストン優位がささやかれる中で9周目まで先頭の座を守り、トップ陥落後も活発な走りで6位入賞を果たした。タイヤに厳しいとされる茂原でのこの活躍は、2020年のOK部門王者の実力を改めて知らしめるものだった。

 渡会選手から10周目にトップを引き継いだのは佐野選手。それに続いた堂園選手はやがて後続とのバトルに巻き込まれ、佐野選手は大きなリードを得た。レース後半は、佐野選手のひとり旅。最終的に後続を3秒近く引き離した佐野選手は、右拳を力強く握ってフィニッシュした。

 今季6人目のウィナーの誕生だ。2020年のOK部門初年度から非凡な速さを披露していた15歳の佐野選手。2年目の今季は勝てそうで勝てないレースが続いたが、そのもどかしさを吹き飛ばすような快走で堂々の初勝利をつかみ取った。

 2位は半田選手。ハードな戦いを繰り広げるセカンドグループを抜け出して、OK部門2年目で初の表彰台登壇を果たした。その後方では金子選手、堂園選手、清水選手が激しいバトルを繰り広げ、堂園選手が最終ラップの逆転で3位表彰台に。金子選手が4位、清水選手が5位となった。

「茂原にはもともと苦手意識があって……」と語る佐野雄城選手。「厳しいレースになるのかなと思いながらレースウィークを迎えて、土曜日までは調子が良くなかったけれど、日曜日になったら調子が良くなってきて、優勝することができました」と初勝利を喜んだ。「いつも決勝はペースがいいんですが、タイムトライアルと予選で沈んだりスタートで出遅れてしまったりしていたことが、今まで勝てなかった理由のひとつなのかなと思います。次の鈴鹿は得意なコースなので、チャンピオンを獲れるよう頑張ります!」とランキング2番手から逆転王座を狙う。
2位は半田昌宗選手、3位は堂園鷲選手。
第8戦表彰の各選手。

 これで2022シリーズは全10戦のうち8戦が終了。ポイントランキングでは、第8戦を7位で終えた小田選手が198点で首位をキープしているが、2番手の佐野選手が7点差に、3番手の金子選手が26点差に迫ってきた。残すは11月12~13日に開催される鈴鹿大会の2戦。熱き戦いの結末は、いまだ不透明なままだ。

フォト/JAPANKART、長谷川拓司、JAFスポーツ編集部 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部

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