中四国ラリー最終戦は長江修平ランサーが、雨のホットバトルを制す
2022年9月15日

JAF中四国ラリー選手権の今年の最終戦が、愛媛県久万高原町のグラベルフィールドを舞台として開催された。
2022年JAF中四国ラリー選手権第4戦
2022年JMRC中国・四国ラリーシリーズ第4戦
MACラリーin 久万高原
開催日: 2022年9月4日
開催場所: 愛媛県久万高原町
主催: MAC
今年のJAF中四国ラリー選手権は、3月に広島で開幕。その第1戦は舗装の林道SSと、ダートトライアルコースとして知られるテクニックステージタカタでのグラベルSSを舞台とする、MIXラリーとして開催されたが、徳島での第2戦、高知での第3戦はオールグラベルのラリーとして行われた。
今回の一戦は、全日本ラリー選手権の一戦、久万高原ラリーと同じく、ハイランドパークみかわがラリーの拠点となったが、ここ数年、舗装が舞台となっている全日本ラリーとは違い、グラベルが主体のラリーとなった。
セクション1では、全日本ラリーでも使われたグラベルの「大谷支線」ステージ5.90kmをまず2回走行。サービスを挟んだ午後のセクション2ではスタートから2kmほど舗装を走った後に、グラベルに入り、途中から大谷支線に合流する9.32kmの「イワタケ」ステージを2回走る。グラベルのステージは基本的にはすべて下り方向で走る設定となった。
ラリー当日は、朝から雨が降ったりやんだりという不安定な天候に終始した。大谷支線ステージの大半は計4本走る形となったため、ラリー後半はワダチができ、石や岩も掻き出される難コンディションに。舗装区間も雨が降った後の午後からの走行となったため、非常に滑りやすい道となった。

FG-1クラスは8台によって争われた。このクラスは開幕2連勝を飾ったマクリン大地/大橋正典組がタイトルレースを大きくリードしている。前回の第3戦で今季初優勝を遂げた長江修平/中岡和好組は、第2戦で主催に回り、不参加となったため、そのロスが響いて17ポイント、水を開けられている苦しい展開だが、マクリン組との直接対決は、今季1勝1敗。長江組としては、タイトルの行方は別としても、最終戦で勝ち切りたいところだ。
その長江組はSS1で2番手のマクリン組に2.1秒差をつけるベストを奪って順調なスタートを切る。マクリン組に0.1秒遅れて今季2度目の参戦となったベテランの堀川竜二/池田茂組が3番手につけた。
SS1の再走となるSS2はマクリン組が長江組を0.6秒差で下してベスト。1.5秒差まで長江組に詰め寄ったが、堀川組もこのSS、長江組に0.1秒差で喰らいついて、トータルでも2.3秒差につける3番手をキープ。トップ2を射程距離に入れたまま、三つ巴に持ち込んでセクション1を終えた。
スタート直後の2km舗装区間を含むグラベルSSが2本待ち受けるセクション2。最初のSS3では堀川組が長江組を2.1秒差で下すベストを奪い、マクリン組をかわして2番手に浮上して、長江組に0.2秒差に迫った。
最終のSS4ではトップ2台がウェットグラベルの下りを果敢に攻め切る走りを見せたが、ステージ後半で堀川組が痛恨のコースオフ。コース復帰なるも、ベストを奪った長江組に14.2秒差の遅れを取ってしまい、逆転は果たせず。長江組が今季2勝目をさらった。敗れたとは言え堀川組はマクリン組を抑えて2位を確保。マクリン組は3位でゴールした。
「SS3はそんなには攻めなかったんですが、堀川さんに負けて、0.2秒差に詰め寄れたので、最後は気合い入れないと絶対勝てないと思って全開で攻めました。今日の堀川さんは本当に速かったです」と長江選手。地区戦ではマクリン選手にタイトルを譲る形となったが、近畿以西のグラベルラリーイベントを対象とする西日本グラベルラリーツアーシリーズでは、まだ可能性を残しているだけに、気持ちを引き締め直していた。





FG-2クラスは今季2度目の参戦となった近畿の山口貴利/山田真記子組のブーンX4がSS1、SS2を連取。2番手のFFのCA4Aミラージュを駆る二野下幸夫/梶山剛組に、12.9秒差をつけてラリーを折り返した。ポイントリーダー、松岡竜也/縄田幸裕組はSS1はセカンドベストを奪ったが、二野下組から7.3秒差の3位と苦しいスタートとなる。
波乱が起きたのはSS3。トップを快走していた山口組のブーンX4が、水を吸ってしまった影響か、エンジンが吹けなくなる症状が出てスローダウン。5番手までタイムを落としてしまう。このSSでベストを奪った二野下組が首位に浮上し、関東から遠征してきた高田修/箕作裕子組が23秒差で2番手に続く展開で最終SSに臨んだ。
最終のSS4はエンジン復調なった山口組がこの日3度目となるベストで上がるが、SS3でのタイムロスは大きく、二野下組を捉えずことはできず、3番手でゴール。結果、二野下組が高田組を従えたまま、トップで逃げ切った。
2013年に岡山で開催されたJMRCオールスターラリー以来、9年ぶりのラリー参戦となった二野下選手は、かつてランサーを駆って中四国戦のトップラリーストとして活躍した経歴を持つ一人。
「いつバーストしてもおかしくないような路面だったので、セクション1を走り終えた後は、“今日は勝てんな”と正直、思いました。だから今日の優勝は、たまたまバーストしなかっただけで、ライバルの不調に助けられての結果なので、運が良かったとしか言いようがないですね。それとワダチができたことも、昔の荒れた道のラリーを走ってきた自分には味方してくれました」と二野下選手。
全盛期をともに戦い、名コンビと言われた梶山剛選手とのコンビネーションも今回は冴えた。「僕は下りを走る方が楽に感じるんですが、ここの下りは、昔走っていた時から、怖いな、というイメージがずっとあって。でも本当に危ない所は、梶山選手がその都度、教えてくれたので助かりました」とコ・ドライバーに感謝しきりだった。なおこのクラスは松岡/縄田組がシリーズ首位を守ってタイトルを確定した。





FG-3クラスは、このクラスの第一人者である松原久/和田善明組が今季も絶好調。負けなしの3連勝を飾っており、今回は満点チャンピオンをかけた一戦となったが、全SSベストタイムを奪って完勝。後続に1分以上の大差をつけて、シリーズ完全制覇を達成した。




FG-4クラスは、FG-2クラスの松岡選手と同じ一六レーシングに所属する若手の片岡大士/相原貴浩組が、MIXラリーとなった開幕戦を制したが、オールグラベルの第2戦、第3戦では百戦錬磨の大ベテラン、松井繁往選手と山岡信雄選手が速さを見せて、第2戦は松井組が、第3戦は山岡組がそれぞれ優勝を飾った。
このベテランの2組は開幕戦をパスしたため、ポイントでは片岡組に首位を譲っているが、ともに逆転の可能性を大いに残しての最終戦となった。そしてラリーが始まるとグラベルの経験が少ない片岡組はやはり苦戦を強いられ、オールグラベルのSS1、SS2では山岡組がベストを連取。2位の松井組に早くも16.3秒差をつけてトップでサービスへ帰ってきた。
片岡組は山岡組に25.5秒遅れての4番手。このままのオーダーなら、山岡組がチャンピオンを手にする計算だが、片岡組はセクション2のSS3から早速、反撃を開始。序盤の舗装区間を踏み切った片岡組が10.7秒差で山岡組を下して、この日初のベストを獲得。一気にチャンピオン確定圏内の2番手に浮上した。
最終のSS4。後半区間のグラベルは、前述したように、セクション1でも使用したため、この日4度目の走行となり、一部は深いワダチもできるコンディションとなったが、片岡組はSS3から4秒詰めるタイムでゴール。
一方、首位を守るべく果敢なアタックを見せた山岡組は、ゴールまであと数100mというところでマシンに突然、駆動系と見られるトラブルが発生してスローダウン。ゴールまで戻ることができず、無念のリタイヤとなった。
波乱のラリーを制した片岡選手は、「実はSS3の舗装からダートの入口で、曲がり切れずに真っ直ぐ行っちゃったんですよ。普通なら、コースアウトしてリタイヤというミスでしたけど、たまたま舗装が続いていたから助かった。今日はミラクルが起こり過ぎて、まだ夢のようです」とゴール後も興奮覚めやらぬ様子。
「今日も道の上にいるだけで精一杯というラリーでしたが、クルマを壊さずに完走するという今年の目標を全戦、達成できたからこそ、ついてきてくれた結果だと思います。まだまだ先輩の方々にはキロ何秒も離されていて、技術的には未熟ですが、チャンピオンを戴けるというのは本当に光栄なことです」と、あっという間に過ぎ去ったシーズンを振り返っていた。







フォト&レポート/JAFスポーツ編集部
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