”WEC富士”が3年ぶりに開催! TOYOTA GAZOO Racing 8号車が232周で優勝し、ホームコースで1-2フィニッシュを飾る!!
2022年9月27日

2019年10月の開催以来、FIA世界耐久選手権(WEC)が富士スピードウェイに帰ってきた。雲ひとつない晴天に恵まれた決勝日は、小林可夢偉選手率いるTOYOTA GAZOO Racing 7号車がポールポジションからスタートし、同チーム8号車が母国優勝を飾った。
2022 FIA World Endurance Championship Round 5 6 Hours of FUJI
(2022年FIA世界耐久選手権第5戦 富士6時間耐久レース)
■開催日:2022年9月9~11日
■開催地:富士スピードウェイ(静岡県小山町)
■主催:富士スピードウェイ(株)、FISCO-C







新型コロナウィルス感染症のパンデミックにより、2020年から国際レースの開催が見送られてきた日本のモータースポーツ界。しかし、たゆみない関係者の努力により今年は3年ぶりに開催が実現し、多くの世界選手権大会が再び来日することになった。
その先陣を切ってやってきたのはFIA世界耐久選手権(WEC)。シリーズ第5戦となる今回のレースは、3日間を通して好天に恵まれた静岡県・富士スピードウェイで、9月9日(金)〜11日(日)に行われた。
WECは現在4クラスで争われているが、そのトップカテゴリーは、2021年からハイパーカー規定に車両規則が変更されている。そのハイパーカーが富士に初めて姿を現すということで、熱心なファンが初日から会場に足を運んだ。
日本のコンストラクターとしてこのハイパーカークラスに参戦しているのがTOYOTA GAZOO Racingだが、トヨタとしては2012年からWECのトップカテゴリーであるLMP1Hクラスに参戦を開始し、途切れることなく活動を継続してきた。そして2021年には、自動車メーカーのワークスチームとしては初めてハイパーカー「GR010 HYBRID」をシリーズに投入している。
トヨタと同様に、2021年からハイパーカーでシリーズに参戦を開始したグリッケンハウスは、残念ながら今回来日を見送ったが、2022年のシリーズ第4戦・モンツァから"リアウイングレス"のハイパーカー「9X8」をシリーズにデビューさせたプジョー・スポールが初上陸した。プジョーにとって、スポーツカーレースでの活動は2011年以来となる約11年ぶりのことだ。
加えて、旧規定のマシンを走らせるアルピーヌもハイパーカークラスに1台体制で参戦。トップカテゴリーにはBoPで性能を調整された5台で争われることになった。これに続く激戦区のLMP2クラスには13台、2022年でクラスが廃止されるGTEプロクラスには5台、ジェントルマンドライバーとプロドライバーが組んで争われるGTEアマクラスには13台が参加。全36台でレースは行われた。
9日の金曜は90分間のフリー走行が2回行われ、各チームともにレースに向けてのシミュレーションを実施。10日の土曜午後からは、GTEクラスと、ハイパーカー&LMP2クラスの予選がそれぞれ10分間ずつ行われた。
この予選でポールポジションを獲得したのは、チーム代表とドライバーを兼任する小林可夢偉選手がアタッカーを務めたTOYOTA GAZOO Racing 7号車。「アタック中に、目の前でアルピーヌがアクセルを抜いたため、完璧なラップではなかった」というものの、小林選手は1分29秒234というタイムをマークした。
チームメイトの8号車はブレンドン・ハートレー選手がアタッカーを務めたが、わずかに100分の2秒及ばず2番手に留まった。これに続く3番手は36号車アルピーヌ。そして、93号車がソフトタイヤ、94号車がミディアムタイヤと、使用するタイヤを分けてアタックを行なったプジョー・スポール勢は、4番手、5番手で続いた。
全車が同じシャシー、同じエンジン、同じタイヤを使用していることで、毎回激戦となっているLMP2クラスでは、JOTAの38号車がクラスポールを獲得。GTEプロクラスではポルシェGTチームの92号車、GTEアマクラスではTFスポーツのアストン・マーティン33号車がそれぞれクラスポールを獲得している。
そして決勝日。11日の日曜は朝から富士山が雄大な姿を現した。麓から頂上まで全く雲がかからないというのは、この季節珍しく、来日している海外チームやWECのスタッフたちも大喜び。絶好のコンディションの中で、午前11時に6時間のレースがスタートする。
スタートから好調ぶりを見せたのはTOYOTA GAZOO Racingの2台。まずは小林選手がスターターを務めた7号車がレースをリード。セバスチャン・ブエミ選手がスターターを務めた8号車がそれに続く。7号車は37周を終えたところ、8号車はその翌周に最初のピットストップ。いずれも給油と左側のタイヤ2本を交換してコースに戻る。ここから8号車が7号車を追い詰める展開となる。
小林選手が「金曜からブレーキが安定せず、2スティント目に入ると厳しかった」と言うように、7号車はなかなかペースを上げられず、64周目のダンロップコーナーでは首位交代。ここから8号車がジワジワと7号車を引き離していく展開となった。
その後方では序盤、3位争いが激化。プジョー陣営の中では、富士の経験が豊富なジェームス・ロシター選手がスターターを務めた94号車が、13周目に僚友の93号車をオーバーテイク。1回目のピットストップを終えると、アルピーヌの前に出ることに成功し、3番手に浮上する。
しかし、ロシター選手が76周を走り切り、2番手のロイック・デュバル選手に交代してしばらくするとトラブルに見舞われる。マシンは後方から白煙を上げ、94号車は94周を終えたところで緊急ピットイン。その修復に20分ほどを要し、大きく遅れることとなった。
このトラブルは、エンジンオイルのラインのフィッティングが緩み、そこからオイル漏れを起こしたというもの。「LMP1H時代よりもテレメトリーでピットに送られるデータが制限されているため、チームもなかなか原因の特定ができず、作業に時間がかかったんだ」と、レース後、デュバル選手は語っていた。
その1時間15分ほど後、148周を終えて、ミッケル・イェンセン選手からポール・ディ・レスタ選手に交代したプジョー93号車にも、94号車と全く同じトラブルが発生してしまう。ディ・レスタ選手はアウトラップを走っただけで一旦ピットに戻ることに。この時の作業はわずか7分ほど。それでも、プジョー勢はアルピーヌから遅れを取ることになってしまった。
一方、TOYOTA GAZOO Racingは全くトラブルフリーで6時間を走破。平川亮選手がゴールのドライバーを務めた8号車が危なげなく優勝を飾り、7号車が2位に入って、ホームコースで完全な1-2フィニッシュを達成している。この結果、8号車のドライバーたちは、前戦・モンツァを制して選手権をリードしていたアルピーヌのドライバーたちと、全くの同ポイントで最終戦・バーレーンを迎えることになった。
そして、アルピーヌは2周遅れの3位フィニッシュ。今回はBoPで40馬力ほど削られていただけでなく、燃料タンクの容量の違いから、TOYOTA GAZOO Racingよりピットストップが1回多かった。プジョー93号車は4位、94号車はクラス5位だが総合20位という結果となった。ただし、プジョーも、デビュー戦のモンツァよりは大きく信頼性をアップさせていたのが印象的だった。
LMP2クラスは、ピットストップの戦略がチームごとに分かれた。セーフティカー導入やフルコースイエローが出る可能性を期待して、最後のスプラッシュを引っ張っていたのは、ポールスタートのJOTA38号車やプレマ・オーレン・チームの9号車。しかし、最後までレースはグリーンだったため、結局その2台はチェッカーまであとわずかという所で無念のピットイン。通常の作戦を遂行した31号車WRTがクラス優勝を果たしている。
また、GTEプロクラスでは、2台揃ってトラックリミット違反のペナルティーを受けることとなったポルシェGTチームや、レギュラーピットインした際に、ピットロードに入った所でガス欠するハプニングに見舞われた64合はコルベットを退け、AFコルセのフェラーリ488 GTE Evoが1-2フィニッシュを飾っている。
GTEアマクラスでは、ポールスタートのTFスポーツ33号車が逃げ切って優勝。また同クラスでは、同じくTFスポーツがマシンメンテナンスを担当した777号車D' Station Racingが3位入賞を果たした。予選ではタイム抹消となり最後尾からのスタートだったが、そこから追い上げての入賞で、ドライバーの星野敏選手と藤井誠暢選手にとっては、2021年のモンツァ戦以来、富士では初のWEC表彰台獲得を達成している。



















PHOTO/Yasushi ISHIHARA[石原康]、FUJI INTERNATIONAL SPEEDWAY[富士スピードウェイ]、TOYOTA GAZOO Racing、JAFSPORTS[JAFスポーツ編集部] REPORT/Yumiko KAIJIMA[貝島由美子]、JAFSPORTS[JAFスポーツ編集部]
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