試練の一戦となったアクロポリス・ラリー。勝田貴元選手がトヨタ勢で最高位の6位を獲得
2022年9月14日
2022年FIA世界ラリー選手権(WRC)第10戦「アクロポリス・ラリー・ギリシャ」が9月8~11日、ギリシャのラミアを拠点に開催。1951年に初開催を迎えたこの伝統のグラベルラリーにTOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムに参加中の日本人ドライバー、勝田貴元選手も参戦しており、GR YARIS Rally1を武器に6位入賞を果たした。
2022年FIA世界ラリー選手権 第10戦「アクロポリス・ラリー・ギリシャ」
開催日:2022年9月8~11日
開催地:ギリシャ・ラミア周辺
2021年に8年ぶりにWRCに復帰したアクロポリス・ラリーは、ラフグラベル戦として知られる。今季はラリーウィークを通して好天に恵まれたことから、フルドライコンディションの中でラリーが開催された。
昨年は同ラリーのレッキに参加したものの、諸事情により本番への出場を果たせなかった勝田貴元選手は、8日の夕刻にアテネのオリンピック・スタジアムで行われたオープニングステージとなるSS1を18番手タイムでフィニッシュ。
18番手とはいえ、トップとのタイム差はわずか3.5秒。勝田貴元選手は「タイヤのライフを考えてスムーズに走ることだけを意識していました」と語っていたのだが、ライバルよりもSSに対する経験が乏しく、マシンのセッティングが合わなかったことで、翌9日のデイ2でもさらに苦戦を強いられることになったのである。
デイ2のオープニングステージとなるSS2で11番手タイムと出遅れた勝田貴元選手は、SS3で13番手タイム、SS4で再び11番手タイムとペースが伸び悩む。SS5で7番手タイムをマークするものの、SS6で9番手タイム、SS7で10番手タイムと低迷した。
この原因について勝田貴元選手は「5番手スタートだったんですけど、それでも石が乗っていて滑りやすい状態でした。イメージ的にはタイルの上にビーズが乗っている状態で、グリップもしなければトラクションもかかりませんでした。それにSS2/SS4は、ペースノートのフィーリングが良くなくて自信を持って走れませんでした」とのこと。
さらに「マシンについてもシェイクダウンからフィーリングが良くなかったので、金曜日のデイ2は全てのSSでセッティングを変えていました。ミッドサービスがなく、タイヤフィッティングゾーンしかないので、車高とかダンパーのクリックとか、デフのプリロードなどできる範囲は限られましたが、それでも試行錯誤していました」と勝田貴元選手は振り返るものの、それでもセッティングを合わせきれずに総合10番手でデイ2をフィニッシュすることになったのである。
翌10日のデイ3でも勝田貴元選手の苦戦は続いており、「セッティングを大幅に変えてみたんですけど、デフの方向性が逆だったみたいで、SSに残っているだけでも難しい状況でした。とにかくサービスまでクルマを持っていくことだけを意識して走っていました」と、SS8で13番手タイム、SS9で15番手タイム、SS10で10番手タイムに低迷。
ミッドサービスでセッティングを変更するも、「午前中よりは良くなったんですけど、出走順も2番手スタートで滑りやすかったこともあって、自信を持って走れませんでした」と述べた。勝田貴元選手はセカンドループでもSS12の7番手タイムが精一杯……という状況だったが、それでも脱落者が続出したことで、総合7番手でデイ3をフィニッシュした。
そして11日のデイ4、「ジオメトリーを変えたんですけど、1本目はいいフィーリングで走れなかったです」と言い、勝田貴元選手はSS14を10番手でフィニッシュした。しかし、「2本目はダンパーのセッティングを逆方向に持っていたところ、フィーリングが良かったです」と、SS15で6番手タイムをマーク。それだけに最終ステージとなるSS16でのパフォーマンスが期待されていたのだが、勝田貴元選手は予想外のトラブルに祟られることとなった。
「パワーステージへ向かうリエゾンで、水が漏れていて水蒸気が出てきました。ラジエターは問題なかったんですけど、どこから漏れているのか分からなかったので、セーフティモードで走りました」と勝田貴元選手。さらに「エンジンの状態を見るためにダッシュボードを見ていたんですけど、ワイドに膨らみすぎてパンクしてしまいました」とのことで、SS16を20番手でフィニッシュすることになったのである。
それでも勝田貴元選手はライバルたちが相次いで脱落した結果、初めてのアクロポリス・ラリーで6位完走。カッレ・ロバンペラ選手、エルフィン・エバンス選手、エサペッカ・ラッピ選手らTOYOTA GAZOO Racing WRTのメンバーも相次いでトラブルに祟られたことから、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team Next Generationの勝田貴元選手がトヨタ勢の最上位でフィニッシュすることになった。
そのトヨタ勢の失速の原因について勝田貴元選手に尋ねると、「それぞれトラブルの出た原因は違うんですけど、持ち込みのセッティングが合っていなかったことが大きいと思います。ここまで調子良くトヨタ勢の誰かが表彰台に乗れるような状態でしたが、それでも紙一重なので、セッティングを外せばこういった状況になると思います」と説明。
その上で勝田貴元選手は「エルフィン選手は厳しい状況でも表彰台を争っていました。ファクトリーチームで戦うためには自分もそこにいないといけません。安定を求めてきたからこそパフォーマンスを欠いている部分もあるのでシフトしていきたいです」とのことだ。
こうして勝田貴元選手にとって初のアクロポリス・ラリーは悔しい一戦となったが、「次のニュージーランドも初めてですが、セバスチャン・オジエ選手以外は初めてだと思うので、経験の差がつかないと思いますし、今年最後のグラベルラリーなので、楽しみながらプッシュしたいと思います」と前向きだ。9月30日~10月2日にかけてニュージーランドで開催される第11戦「ラリー・ニュージーランド」でも勝田貴元選手の動向に注目したい。
なおアクロポリス・ラリー・ギリシャでは、HYUNDAI SHELL MOBIS WRTでi20 Rally1を駆るティエリー・ヌービル選手が今季初優勝を獲得。チームメイトのオイット・タナック選手が2位、ダニ・ソルド選手が3位表彰台を獲得したことで、ヒュンダイ勢が初めて1-2-3フィニッシュを達成した。
フォト/TOYOTA GAZOO Racing レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部
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