元地方選手権チャンプの森川貴光選手が全日本FP-3部門で悲願の初優勝!

レポート カート

2022年9月30日

2022年全日本カート選手権シリーズの西地域の戦いを締めくくる第5戦。FP-3部門では森川貴光選手(HIRAI PROJECT with Ash)が、大集団の熱闘を制して歓喜の初優勝を果たした。またFS-125部門では、百瀬翔選手(HRS JAPAN)が4戦連続のポール・トゥ・ウィンを飾っている。

2022年JAF全日本カート選手権 FS-125部門/FP-3部門 西地域第5戦
2022年JAFジュニアカート選手権 FP-Jr部門/FP-Jr Cadets部門 西地域第5戦

開催日:2022年9月17~18日
開催地:中山カートウェイ(岡山県和気町)
主催:株式会社山陽スポーツランド

 2022年の全日本カート選手権シリーズもいよいよ大詰め。西地域は東地域よりひと足先に、この中山大会で5戦すべてを終了する。西地域の参加者たちに残されているのは、東西統一競技会のみだ。

 今年の全日本選手権において、岡山県和気町の中山カートウェイは全長740mともっともコンパクトなサーキット。ゆえに決勝はFS-125部門、FP-3部門ともに30周と、こちらもシリーズ中もっとも周回数が多く、体力の面でもハードな戦いとなる。

 週末にかけて西日本に接近していた台風14号は、決勝日には九州に上陸し、中山カートウェイも不安定な天候となっていた。最初の予選が始まる時には空一面を雲が覆い、決勝の時間帯にはその雲が厚みを増し始める。しかし、すべての決勝が終わるまで天気は何とか持ちこたえ、レースは4部門の全ヒートともドライコンディションで行われた。

FP-3部門西地域第5戦

 3台のスポット参戦を含めた19台が出走したFP-3部門。まずタイムトライアルでトップタイムをマークしたのは、前日から良好な手応えをつかんでいた森川選手だ。それに0.037秒差で続いたのは、同じチームの大槻直選手(Ash)。3番手に佐藤こころ選手(チームナガオ)がつけた。

 17周の予選では、鈴木恵武選手(Formula Blue 増田スピード)が5番グリッドから快調にポジションを上げ、中盤にはトップに浮上。だが、終盤に森川選手がこれを抜き返し、決勝のポールは森川選手のものとなった。2番手は鈴木選手。3~4番手に佐藤選手と大槻選手が続いた。

 そして決勝。30周の戦いが始まると、綺麗にスタートを切った森川選手を、2周目に鈴木選手がパスしてトップに立った。先頭集団を形成するは鈴木選手、森川選手、佐藤選手、大槻選手、内海陽翔選手(シナジーリンクス)の5台だ。

 森川選手はしばらく鈴木選手の後ろを走ると、8周目にトップに復帰して自らレースをリードしていく。5台がピタリ一列に連なった先頭集団は、順位の変動こそ少ないものの、ヒリヒリした緊迫感を発散しながら周回をこなしていく。

 その局面に変化が生じたのが17周目。やや苦しいペースだった鈴木選手に代わって、好調の大槻選手が2番手に上がり、森川選手追撃の役割を引き継いだ。森川選手の真後ろに張りついてラップを重ねた大槻選手は、レースが大詰めに入った26周目、ついにトップの座を奪う。

 しかし、森川選手は翌周に大槻選手を抜き返し、残り4周を先頭のまま走り切った。ウィナーは森川選手だ。FP-3部門が地方選手権として行われていた時代には全勝チャンピオンに輝いたこともある森川選手だが、“全日本”FP-3ではこれが初優勝。森川選手はウィニングランでガッツポーズを繰り返して歓喜を爆発させた。

 レース後、笑顔の森川選手は「完全に自分でレースをコントロールできた印象です。決して全周フルプッシュというわけではなく、後ろのペースを自分と比較しながら観察して、このくらいのペースで最後の3周を走れば勝てるなっていう手応えをつかめたので、そこまではタイヤを温存しながら走りました。狙いどおりのレースができて、非常に満足しています」と語る。

 傍目には実力伯仲の接戦に見えたレースは、実は森川選手の支配下にあったものだったようだ。一年前の中山大会では、最終ラップの劇的な逆転でトップゴールを果たしながら、思わぬ車検失格で涙を呑んだ森川選手。「忘れ物を取りに来るつもりでここに乗り込みました」との言葉を実現させ、見事に昨年の無念を晴らして見せた。

 躍進が目を引いた大槻選手は、2位フィニッシュで初の表彰台を獲得。3位の鈴木選手は悲願の初勝利こそならなかったものの、今年2度目の表彰台に立ち、西地域のポイントリーダーとして東西統一競技会に挑むこととなった。

「僕としては非常に価値のある1勝だったと思います」と全日本優勝を笑顔で喜んだ森川貴光選手。「今年の自分のスタイルとして、レースウィークしか(そのコースを)走らないことにしています。そのコースでパッと走っての対応力をつけるトレーニングをしているんですが、ここに来てやっとクルマづくりや運転のポイントが分かってきて、この結果につながりました」と紆余曲折がありながらも、ようやく努力が報われた結果となった。
2位は大槻直選手、3位は鈴木恵武選手。
FP-3部門表彰の各選手。

FS-125部門西地域第5戦

 FS-125部門は、レギュラー陣4台にスポット参戦の1台が加わった5台でのレースとなる。その決勝を制したのは、今回も百瀬選手だった。ポールから決勝に挑んだ百瀬選手は、スタート直後に近江川暖人選手(HRS JAPAN)に逆転を許して2番手に後退。それを中盤に抜き返してトップに戻ると、以降は背後に追いすがる後続を背後に従えたまま30周を走り切った。

 予選も決勝も1位でフルマークの35点獲得を4戦続けたことは、チャンピオン争いの上でライバルたちに大きなインパクトを与えたことだろう。続く2位はタイムトライアルで百瀬選手を上回る速さを見せた近江川選手。白石いつも選手(HRS JAPAN)が3位に入って今季2度目の表彰台登壇を果たした。

 もうひとり注目を浴びたのが、福岡からスポット参戦してきた石田瑞季選手(BRAVO-RACING)だ。全日本が初めてなら、パリラX30エンジンのレースも初めての石田選手。決勝は最後尾からのスタートだったが、そこから尻上がりに調子を上げてポジションアップを重ね、中盤には2番手に浮上してトップ百瀬選手の真後ろを走って見せた。最後はエンジントラブルでリタイアに終わったが、見事な輝きを放った23歳の全日本デビューだった。

西地域ポイントリーダーとして圧巻の勝利を見せた百瀬翔選手は「率直に、とてもうれしいです。昨年の中山大会では苦戦して前を抜けなかったので、それを克服できたのは成長できた部分なのかなと思います」と語り、「東西統一競技会が行われる鈴鹿サーキットは走り慣れているコースなので、自分ができることを出し切って、勝って一年を締めくくりたいと思います」とチャンピオン獲得に向けて気を引き締め直した。
2位は近江川暖人選手、3位は白石いつも選手。
FS-125部門表彰の各選手。
「一番後ろから上がっていくのは楽しかったです。2番手に上がった時は興奮して、キターッて感じでした。自分としては満足のレースができました」と、走りに注目が集まったスポット参戦の石田瑞季選手。

FP-Jr部門/FP-Jr Cadets部門西地域第5戦

 同時開催のジュニアカート選手権・西地域第5戦。出走5台のFP-Jr部門では、伊藤聖七選手(かあと小僧with Ash)が優勝。予選でアクシデントに巻き込まれて最後尾から決勝をスタートすることになったが、4周でトップに立って4勝目を獲得した。2位は1ポジションアップの山代諭和選手(quaranta sei YRT with GEMINI)。前日のアクシデントのため借り物のフレームで戦うこととなった田邊琉揮選手(TAKAGI PLANNING)が3位に入った。

 出走6台のFP-Jr Cadets部門では、澤田龍征選手(LUCE MOTOR SPORTS)がポール・トゥ・ウィン。スタートでトップを奪った道尾柊哉選手(ハラダカートクラブ)をオープニングラップのうちに抜き返すと、以降はブッチ切りのワンサイドゲームで3勝目を手に入れた。2位の元田心絆選手(RT Schritt)は今季4度目の表彰台。前戦のウィナー横山輝翔選手(Energy JAPAN)が3位となった。

「今までの練習の成果を発揮できて勝ててうれしいです。トップに立ってからも、周りはストレートの伸びが良くて追いつかれてしまったけれど、勝ちたい気持ちの強さでバトルに勝つことができたと思います」と言う伊藤聖七選手。「東西統一競技会では(東地域の)酒井龍太郎選手に絶対勝ちたいです」とコメントした。
2位は山代諭和選手、3位は田邊琉揮選手。
FP-Jr部門表彰の各選手。
ポイントランキングでは3番手に甘んじるも、見事な快走でシリーズ3勝目を飾った澤田龍征選手。レースについては「ぜんぜん余裕のレースでした。もし抜かれてもすぐ抜き返せるし、不安はありませんでした」と自信を持って走ったようだ。残すは東西統一競技会のみ、ライバルたちを抑えて逆転チャンピオンを狙う。
2位は元田心絆選手、3位は横山輝翔選手。
FP-Jr Cadets部門表彰の各選手。

フォト/JAPANKART レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部

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