GTワールドチャレンジ・アジアのタイトル争いは最終戦となった岡山国際サーキットで決着!

レポート レース

2022年10月3日

6大会12戦で争われる「2022ファナテック・GTワールドチャレンジ・アジア・パワード・バイ・AWS」は、当初の予定では最終大会の舞台となるはずだったインドネシアのマンダリカサーキットの改修が間に合わず中止。そのため、岡山国際サーキットの2戦が今シーズン最後の戦いの場となった。チャンピオンはどのクラスも未確定とあって、単純な勝ち負けだけではない、さまざまなドラマも繰り広げられていた。

2022 Fanatec GT World Challenge Asia Powerd by AWS & Fanatec Japan Cup Rd.4
開催日:2022年9月24~25日
開催地:岡山国際サーキット(岡山県美作市)
主催:株式会社岡山国際サーキット、AC

 すでにオーバーオールのチャンピオン候補は5人に絞られ、CarGuy Racingの木村武史選手とケイ・コッツォリーノ選手、そしてTriple Eight JMRのジェフリ・イブラヒム選手とニック・フォスター選手が同点で並び、Yogibo Racingの横溝直輝選手にも可能性は残されていた。

 レース1では横溝選手がポールポジション(PP)を獲得。しかし仮に2連勝してなお、ライバルの2チームの結果次第という状況とあって、まずはシルバーカップのチャンピオンを狙いにいくという。ちなみに木村選手は4番手、ジェフリ・イブラヒム選手は5番手からスタートを切る。

 レース1の決勝では横溝選手が1コーナーへのホールショットを決めると、そのまま逃げ続けていく。シルバーカップの車両はハンデとして30kgウェイトを追加されているばかりか、CarGuy Racingとともに快進撃を重ねたことで、今大会はフェラーリ488 GT3のBoPが改められている。パワーを絞られていたが、そんなことを感じさせないほどの速さを見せていた。

 ところがスタートから15分ほど経過したところで、バックストレートでストップした車両があり、さらにモスSにはデブリが落下していたため、セーフティカー(SC)が導入されて、横溝選手が築いていた3秒ほどのリードは水の泡と化す。しかも車両回収に予想以上の時間を要したため、SCラン解除はピットウィンドーオープンと同時となる。

 Pro Amクラスのジェントルマンドライバーたちがすかさずピットに入る中、もちろん横溝選手はステイし、リスタートと同時に猛プッシュ。これが功を奏して、パートナーの藤波清斗選手にトップの座はもちろんのこと、約5秒のリードも渡すこととなった。

 一方、木村選手からバトンを託されたコッツォリーノ選手は3番手でコースに復帰。ファステストラップの連発で、前を行くポルシェをヘアピンでかわすと、その勢いのまま藤波選手にも迫っていく。差は徐々に縮まっていったが、最後は約1秒2の差で藤波選手が逃げ切りに成功。

 Yogibo RacingがSUGOのレース2以来となる2勝目をマークした。またフォスター選手は、コッツォリーノ選手に次ぐ3位。これでCarGuy Racingはタイトル争いで一歩だけTriple Eight JMRをリードして、レース2に臨むこととなった。

 そしてGT4クラスでは、GTO Racing Teamのブライアン・リー/安岡秀徒組が最後までトップを譲らず、2勝目を挙げていた。

レース1 GT3総合優勝はYogibo Racingの横溝直輝/藤波清斗組。
レース1 GT3総合2位はCarGuy Racing、3位はTriple Eight JMR。
レース1 GT3の総合表彰式。左から2位のCarGuy Racing(木村武史/ケイ・コッツォリーノ組)、1位のYogibo Racing(横溝/藤波組)、3位のTriple Eight JMR(ジェフリ・イブラヒム/ニック・フォスター組)。
レース1 GT3 Pro-Am優勝はCarGuy Racingの木村/コッツォリーノ組。
レース1 GT3 Pro-Am2位はTriple Eight JMR、3位はABSSA Motorsport。
レース1 GT3 Pro-Amの表彰式。左から2位のTriple Eight JMR(イブラヒム/フォスター組)、1位のCarGuy Racing(木村/コッツォリーノ組)、3位のABSSA Motorsport(小泉洋史/澤圭太組)。
レース1 GT3 Am優勝はTeam Uematsuの植松忠雄/内田優大組。
レース1 GT3 Am2位はComet Racing、3位はAMAC Motorsport。
レース1 GT3 Amの表彰式。左から2位のComet Racing(山﨑裕介/辻子依旦組)、1位のTeam Uematsu(植松/内田組)、3位のAMAC Motorsport(アンドリュー・マクファーソン/ウィリアム・ベン・ポーター組)。
レース1 GT4 Silver-Am優勝はGTO Racing Teamのブライアン・リー/安岡秀徒組。
レース1 GT4 Silver-Am2位はCREF Motor Sport、3位はTeam GMB。
レース1 GT4 Silver-Amの表彰式。左から2位のCREF Motor Sport(YUKO/井上雅貴組)、1位のGTO Racing Team(リー/安岡組)、3位のTeam GMB(羽田野宏明/細川慎弥組)。
レース1 GT4 Am優勝はAkiland Racingの大山正芳/植田正幸組。
レース1 GT4 Amの表彰式。左から2位のComet Racing(坂井一裕/藤井正明組)、1位のAkiland Racing(大山/植田組)。

 レース2でPPを獲得したのは、D'station Racingの藤井誠暢選手。その脇に並んだのがフォスター選手で、コッツォリーノ選手はPLUS with BMW Team Studieの荒聖治選手を間に挟んで4番手となっていた。

 注目のスタートではグリーンシグナルの点灯後、藤井選手とフォスター選手、そしてコッツォリーノ選手が1コーナーにスリーワイドで飛び込むも、辛くも藤井選手がトップを死守。いったん引いたコッツォリーノ選手だったが、2コーナーまでにフォスター選手に並び、鼻先を出して飛び込んだ直後に姿勢を乱し、クラッシュパッドにマシンを打ちつけてしまう。

 即座にSCが導入された上に、当たりどころが良かったことで、コッツォリーノ選手は戦線復帰となったものの、ラップダウンとなって王座獲得はもはや絶望的かと思われた。だが、アクシデント発生要因はフォスター選手の接触によるものと判定されて、やがて100秒ストップのペナルティの命が! やむなくピットに入ったフォスター選手は、奇しくもコッツォリーノ選手の後方でコースに戻ることとなる。

 そんな後方で生じていたドラマを知ってか知らずか逃げ続けていたのが藤井選手だったものの、2番手に浮上した荒選手もギャップの拡大を2秒ほどに留めていた。しかし、藤井選手が絶対の信頼を寄せるパートナー星野敏選手にとっては、それで十分だった。藤井選手と荒選手はピットウインドークローズド寸前まで交代を遅らせ、同時にピットイン。コースに戻って1周しただけで、星野選手は山口智英選手を3秒離してきたからだ。

 一方、ドライバー交代後も木村選手はイブラヒム選手を従えていた。いずれも入賞圏外とあって、順位が入れ替わってもCarGuy Racingのふたりはチャンピオンとなる。そこは意地と意地のぶつかり合いというか、お互いクリーンファイトを繰り広げていた。

 星野選手は難なく逃げ切り、D'staion RacingはSUGOのレース2以来となる2勝目をマーク。2位はPLUS with BMW Team Studieが獲得し、ポルシェセンター岡崎の永井宏明/上村優太組が3位となった。

 そしてドライバーチャンピオンは木村選手とコッツォリーノ選手に確定する。「まるでジェットコースターみたいなレースでしたね。気持ちがいったんは乱降下しましたが、ペナルティは妥当でしょう。今はもうハッピーな気分です」とコッツォリーノ選手が語れば、木村選手も「すごいレースでしたね。フェアなジャッジを下してもらえたことに非常に感謝しています。レース後に向こう(イブラヒム選手)から寄ってきて握手してくれたし、僕はクリーンなバトルができたので、すごく楽しめました。これがレースですね」と満足そうだった。

 ブレーキに不安を抱えていたこともあり、Yogibo Racingは6位に留まるも、横溝選手はマストとしていたシルバーカップのチャンピオンを確定させた。そしてGT4クラスでは、予選トップだったTeam GMBの羽田野宏明/細川慎弥組がレースの大半をリードしていたものの、GTO Racing Teamのリー選手が終盤の凄まじい追い込みで、なんと1000分の1秒差で大逆転! 安岡選手ともどもチャンピオンに輝いている。

レース2 GT3総合優勝はD'station Racingの星野敏/藤井誠暢組。
レース2 GT3総合2位はPLUS with BMW Team Studie、3位はPorsche Center Okazaki。
レース2 GT3の総合表彰式。左から2位のPLUS with BMW Team Studie(山口智英/荒聖治組)、1位のD'station Racing(星野/藤井組)、3位のPorsche Center Okazaki(永井宏明/上村優太組)。
レース2 GT3 Am優勝はReap Fueling Ambitionsの濱口弘/大蔵峰樹組。
レース2 GT3 Am2位はTeam Uematsu、3位はBingo Racing。
レース2 GT3 Amの表彰式。左から2位のTeam Uematsu(植松/内田組)、1位のReap Fueling Ambitions(濱口/大蔵組)、3位のBingo Racing(武井真司選手)。
レース2 GT4 Silver-Am優勝はGTO Racing Teamのリー/安岡組。
レース2 GT4 Silver-Am2位はTeam GMB、3位はCREF Motor Sport。
レース2 GT4 Silver-Amの表彰式。左から2位のTeam GMB(羽田野/細川組)、1位のGTO Racing Team(リー/安岡組)、3位のCREF Motor Sport(YUKO/井上組)。
レース1 GT4 Am優勝はAkiland Racingの大山/植田組。
レース1 GT4 Amの表彰式。左から2位のComet Racing(坂井/藤井組)、1位のAkiland Racing(大山/植田組)。
GT3ドライバーズ・チャンピオンシップのタイトルが確定した木村/コッツォリーノ組。またジャパンカップの2つのタイトルも確定。

フォト/遠藤樹弥 レポート/松原一生、JAFスポーツ編集部

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