F1角田裕毅選手は初のシンガポールGPで予選10番手獲得も、リタイアを喫す

レポート レース

2022年10月6日

2022年のFIAフォーミュラ1世界選手権(F1)に参戦中、日本の期待を背負う、アルファタウリの角田裕毅選手。第17戦シンガポールGPでは10番グリッドから、久しぶりにポイント獲得を狙えるレースを見せるも、アクシデントによって悔しいリタイアとなった。

2022年FIAフォーミュラ1世界選手権 第17戦
シンガポールグランプリ

開催日:2022年9月30日~10月2日
開催地:マリーナベイ市街地コース(シンガポール)

 夏休み明けのヨーロッパラウンド3連戦を終えたF1サーカスは、2019年以来の開催となるアジアラウンドに入った。久しぶりに開催されたシンガポールGPの舞台となるマリーナベイ市街地コースは、2008年に初開催。現在では開催数も増えている、現地時間の夜に決勝が開催される“ナイトレース”も、このGPが発祥となっている。

 昨年F1にデビューした角田選手にとっては、マリーナベイ市街地コースは初挑戦。金曜日のフリー走行から1周でも多く走り込み、コースを覚えて車両の感触を確かめたいところだ。フリー走行1回目では26周を走り込み、1分46秒081をマーク。ナイトセッションとなるフリー走行2回目(FP2)で、さらにペースを上げていきたいところだったのだが、燃料系のトラブルが発生。わずか11周の走行に留まり、1分45秒211で17番手となった。

「このコースについて理解を進めている最中だったなか、FP2を早く終えなければならなかったことが残念です。走行時間をフルに活用したかったのですが、燃料システムの問題が発生してしまい、明日の走行に向けて修復しなければならなくなりました。とにかく、今はFP3を最大限に活用することに集中しています。できる限りの準備をして予選に臨みたいです」(FP2終了後の角田選手のコメント)。

 土曜日は前日とうって変わり雨模様となった。角田選手の車両は前日のトラブルの修復が完了、トラブル発生による遅れを取り戻すべく、午前中のフリー走行3回目(FP3)に臨んだ。ただ、前日とはコンディションが違うということもあり、FP3では15番手。しかし、午後の予選では目覚しい走りを見せた。

 Q1から雨は上がったものの、コースが完全に乾いていなかったこともあり、各車ともインターミディエイトタイヤを履いてアタック。ここで角田選手は1分55秒314を記録し、8番手に食い込んだ。続くQ2でもペースを上げていった角田選手は早めにタイムアタックを行い、1分53秒848をマーク。トップ10への生き残りをかけた戦いは熾烈を極めたが、なんとか8番手に留まり、Q3進出を果たした。

 そしてQ3では、路面が乾いたと判断して、各車がドライタイヤのソフトを装着する中、角田選手はインターミディエイトでアタックを敢行。一時は2番手につけたのだが、状況としてはソフトの方が優勢で、セッション終盤に進むにつれて、順位が落ちていった。角田選手もソフトでアタックするが、ベストタイムは1分51秒983で10番手となった。

「まずはトップ10圏内からレースをスタートできることになり嬉しいです。FP3からうまく挽回できました。正直Q3進出は難しいと思っていたので、今日の予選に関しては満足です。ただ、Q3は少し残念でした。スリック(ドライ)であと1周走れていれば、もっとタイムを縮めることができました。でも、全ては経験ですし、今日のことからも学ぶことはできます。とにかくレースに気持ちを集中させたいです」(予選終了後の角田選手のコメント)。

 入賞圏内からのスタートで、第6戦以来のポイント獲得に期待がかった角田選手。決勝もウエットコンディションとなったのだが、直前に集中豪雨に見舞われ、スタートを約1時間遅らせることになった。雨は止んだものの、コース上には水が残っていたため、各車インターミディエイトでスタート。10番グリッドの角田選手は、2つ順位を落とすものの、ポイント圏内を目指して力強く走行していた。

 ただ、滑りやすいウェット路面ということもあり、序盤から各所でアクシデントが発生。セーフティカーが2回出動するなど、波乱の展開となった。レース中盤に入ると、走行ライン上の路面は完全に乾き、ドライへの交換を試みる車両も出てきた。

 その中で、角田選手は33周目にミディアムタイヤに交換、レース後半の追い上げに備えたのだがその直後、ターン10でのブレーキングで止まりきれず、バリアの餌食に。市街地コースではバリアやウォールがコース際に迫り、小さなミスでもリタイアにつながりやすい。ポイント獲得の可能性が大きかった1戦を、自らのミスで落とす結果となってしまった。

「すごくトリッキーなコンディションでした。インターミディエイトからスリックに交換するタイミングが難しかったですが、(リタイアの場面は)僕のミスでした。ブレーキングポイントの判断を完全に誤り、スピードを出しすぎた状態でコーナーに進入した結果、ウォール(バリア)に突っ込んでしまいました。自分に苛立ちを感じています」

 このGPでも、ポイント獲得とはならなかった角田選手。しかし、次戦は初の母国凱旋となる日本GPを迎える。ここまでは良くない流れが続いているが、逆にシンガポールGPまでで不運を全て出し切った、というとらえ方もできるかもしれない。いずれにしても、日本GPでの角田選手の好走を期待したい。

シンガポールGPを開催するマリーナベイ市街地コースは、風光明媚なシンガポールの中心地に特設されるサーキット。シンガポールを訪れたことがある方であれば、通ったことがある道や、訪れたことがある建物の前をF1が駆け抜ける、サーキットとは異なる新鮮なレースシーンを観戦できる。

 優勝争いでは、レッドブルのマックス・フェルスタッペン選手が、ドライバーズチャンピオン二連覇に王手をかけたGPとなった。しかし、そのフェルスタッペン選手に思わぬトラブルが発生し、波乱が起こった。予選Q3でフェルスタッペン選手は燃料が足りなくなる可能性がある、とのことで途中までトップタイムを更新していたアタックを断念、8番手に沈んだのだ。ポールポジションはフェルスタッペン選手と王座を争うフェラーリのシャルル・ルクレール選手、2番手をフェルスタッペン選手のチームメイト、セルジオ・ペレス選手が獲得した。

 決勝では、ペレス選手がスタートでルクレール選手をかわしてトップを奪取。ペレス選手は湿度が高いために乾きが遅い路面状況を読みながら、巧みにレースを牽引。6台がリタイアした荒れたレースで、ペレス選手はスタートで立ったトップを譲ることなく、今季2勝目を挙げた。フェルスタッペン選手は8番グリッドからの挽回を期してスタート。果敢にオーバーテイクをしかけたことで、タイヤにトラブルを抱えて14番手まで後退することがあったが、7位でフィニッシュ。ドライバーズチャンピオン二連覇は日本GPに持ち越しとなった。

第7戦モナコGP以来の優勝を挙げた、セルジオ・ペレス選手(レッドブル)。11勝も挙げて絶好調のマックス・フェルスタッペン選手の陰に隠れているが、2勝の他に6回も2位を獲得し、レッドブルのコンストラクターズランキングトップの維持に、大きく貢献している。

フォト/Red Bull Content Pool レポート/吉田知弘、JAFスポーツ編集部

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