TGRラリーチャレンジも後半戦に突入。初開催の「びわ湖高島」に86台がエントリー!

レポート ラリー

2022年10月11日

TOYOTA GAZOO Racing Rally Challengeの今季第9戦が、9月24~25日に滋賀県高島市を拠点として開催された。

TOYOTA GAZOO Racing Rally Challenge in びわ湖高島
開催日:2022年9月24~25日
開催場所:滋賀県高島市
主催:MUCCOLE

 今季のTGRラリーチャレンジは、第6戦までは予定通りのカレンダーで開催されたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の動きを受け、8月に開催予定だった第7戦と第8戦がともに開催中止を余儀なくされた。そのため、今回の第9戦は、実質的には約2か月半のインターバルを経た、シリーズ7戦目として開催された。

 今回のびわ湖高島ラウンドはTGRラリーチャレンジとしては初の開催。しかし高島市とラリーの絆は古く、1980年代には関西地区を代表するラリーの一戦であった、「ザ・京都ラリー」のフィールドとして、ラリー関係者からも好評を博した。

 ザ・京都ラリーは京都・大原をスタートした後に滋賀県に入り、高島市から福井県の小浜市に抜けるというルートで競われるロング・ディスタントラリーとして知られ、当時はグラベルであったステージが、今回のラリーではターマックステージとして復活している。ザ・京都ラリーを主催した京都に本拠を置くJAF加盟クラブ、マッコーレ・ラリースピリッツ(MUCCOLE)が、今回もラリーの主催を担った。

 25日午前10時に、今回のメイン会場となった高島市今津総合運動公園をスタートしたクルーは、いずれもターマックの4.48km、1.75km、0.44kmのSSをこなして一旦、サービスイン。午後も同じ順番で3本のSSにアタックしてゴールという、6SS計13.74km、リエゾンを含むトータル距離は46.33kmというコンパクトなラリーに臨んだ。0.44kmのSSは今津総合運動公園の駐車場にパイロンを置いたジムカーナ形式で行われた。

高島市の今津総合運動公園が、今回のラリーの拠点となった。
今回も90台近いエントラントが集まり、賑わいを見せた。
当日はJAFブースはじめ様々なブースに多くの来場者が訪れた。

 E-4クラスは1,501cc以上のトヨタ車限定でエキスパートを対象としたクラス。参加車種は4台がエントリーしたGRヤリスがやはり多数派だが、86、GR86のほか、懐かしのAE92トレノ、AE111レビンやアルテッツァに加え、C-HRもエントリーとバラエティ溢れる顔触れとなった。

 前戦まで4戦4勝と圧倒的な強さを見せているポイントリーダー、Aki HATANO選手が今回はエントリーしなかったため、接戦が予想されたが、SS1で2番手を15秒差に下す圧倒的な速さを見せた佐々木康行/中嶌杏里組のGRヤリスが、その後もベストタイムを連発。最終的に後続に40秒という大差をつけて今季初優勝を飾った。

 今季3度目の参戦で初の1勝をゲットした佐々木選手は、「SS1はブラインドコーナーが多い道だったので、抑えながら走ったんですが、思いのほかリードを作れたので、そのペースを最後まで維持して走りました」とひとこと。

「SS2とSS4の道は、砂や水が出ていたりと危ない道でしたが、距離が短かったので、そんなには差がつかないだろう、と無理はしませんでした」と言いつつも、この2本もしっかりベストタイムを奪取。コ・ドライバーの中嶌選手も、「同じようなパターンのコーナーが続く道で逆に大変でしたけど、何とか最後までロストせずに読み切れました」と、ゴール後はホッとした表情を見せていた。

E-4クラスは佐々木康行/中嶌杏里組が圧倒的なスピードを見せて快勝した。
原田善夫/原田枝利子組は2位に入賞(左)。北爪浩志/吉野実組が3位に入った(右)。
E-4クラス表彰の各選手。

 E-2クラスはトヨタ86(ZN6)限定のエキスパート対象のクラス。出走12台と激戦区となったが、難所のSS2、SS5でベストを奪った石川紗織/鈴木重隆組が優勝。石川選手は、「今日は同じステージの中でも、高速から低速、複合コーナーなど色んなテイストがあって難しい道でしたが、その分、経験値を上げられたラリーでした。ただ今日は凄く運だけで勝てたラリーだったと思うので、次こそは実力で勝ちたいと思います」と、気持ちを引き締めていた。

E-2クラスは石川紗織/鈴木重隆組が今季初優勝を達成。
田邊大輝/布田健悟組は2位でゴール(左)。牧野達哉/別所雄治組が3位に入賞(右)。
E-2クラス表彰の各選手。

 続くC-3クラスはトヨタ86(ZN6)を駆る初中級者対象のチャレンジクラス。優勝した第5戦以来の参戦となった貝原聖也/西﨑佳代子組が、SS4まで連続ベストを奪ってラリーをリードする。SS5では、コースアウト寸前の場面もあったが、最後まで完走を果たして首位は譲らず。SS5、SS6でその貝原組をともに0.1秒ながら凌いでベストを奪った澤井元次/加藤いづみ組は、ジムカーナのSS3でのタイムロスが響いて4番手でゴールとなった。

C-3クラスは貝原聖也/西﨑佳代子組が優勝。
中島義智/田中和幸組は2位入賞(左)。3位入賞は鈴木満也/登竜組(右)。
C-3クラス表彰の各選手。

 E-3クラスは1,500cc以下のトヨタ車限定のエキスパートクラスだが、全日本でも活躍する大倉聡選手と保井隆宏選手のコンビが期待に違わぬ速さを見せて優勝。難所と言われたステージも、「僕好みの林道だったので(笑)、この成績で終われたと思います」と振り返った大倉選手は、「激しく飛んでも壊れない丈夫なクルマを用意して頂いたお陰で走り切れました」と、チームに感謝していた。

E-3クラスは大倉聡/保井隆宏組がライバルを寄せ付けず、優勝。
細谷裕一/石垣晴恵組が2位(左)。天野浩明/羽琉組は3位に入った(右)。
E-3クラス表彰の各選手。

 E-1クラスクラスは、2代目のNCP91型 と3代目のNCP131型のヴィッツを駆るエキスパート対象のクラス。SS1でベストを奪った夫婦コンビの大山忠信/大山順子組が、その後もベストタイムを重ね、リードを広げるが、SS5は4番手タイムに沈み、このSSでベストタイムだった栗原拓也/魚井千尋組に首位を明け渡してしまう。

 しかし大山組は最終のSS6で栗原組を1.1秒差で下して、0.9秒差という僅差で再逆転に成功。今季初勝利を手にした大山選手は表彰式では、「難しいコースでしたが、コ・ドライバーの的確なノートリーディングのお陰でリズムに乗れて走れました」と、順子選手に感謝の言葉を述べていた。

E-1クラスは大山忠信/大山順子組が接戦を制した。
栗原拓也/魚井千尋組は僅差の2位(左)。山崎広喜/藤沢繁利組は3位でラリーを終えた(右)。
E-1クラス表彰の各選手。

 ヤリス限定のチャレンジクラスであるC-4クラスは、東北から遠征してきたポイントリーダーの柳本弘信/星光行組がSS1をベストで上がり、幸先の良いスタートを切るが、SS1、SS3とセカンドベストで食らいついていたnaosan/ Ryusen組が、SS4で柳本組を5.4秒凌いで首位に立つ。

 naosan組は、続くSS5で後続を4秒以上も突き離すこの日最初のベストを奪ってリードを拡大。勢いに乗って最終SSもベストを奪って、そのまま逃げ切り、TGRラリーチャレンジ参戦1年目で、初の優勝を飾った。

 naosan選手は、学生時代に参加していたラリーを再び楽しむべく、今年、約40年ぶりにモータースポーツ復活を果たした。「好きなタイプの道じゃなかったし、パワーバンドに乗せた走りもできなかったけど、今日は思ったよりもタイムが出た。自分でも不思議なんですけど、橋の欄干とか危ない所はしっかり抑えたので、まぁ年の功で勝てたんでしょうね(笑)」。ジムカーナSSも、学生時代にダートラ、ラリー含めひと通りBライセンス競技を経験したので抵抗はなかったと振り返った。

 コ・ドライバーのRyusen選手は、今年からラリーを始めたが、「一戦一戦、試行錯誤しながらやってきましたけど、今日は初めてミスコースせずに走れました(笑)。今年中に表彰台に乗れればいいいなと思っていたので、いきなりの優勝はびっくりです」と、ラリー初勝利の味をしっかり噛み締めていた。

C-4クラスはnaosan/ Ryusen組がTGRラリチャレ初優勝を達成。
柳本弘信/星光行組は2位入賞(左)。井野義一/荒川知真組が3位に入った(右)。
C-4クラス表彰の各選手。

 C-2クラスはNCP91/NCP131型のヴィッツ対象のチャレンジクラス。出走14台と今大会一番の激戦区となった。SS1のベストはBURA/KAZU組が獲るが、ジムカーナのSS3をベストで上がった塙将司/山口竜太組が首位でセクション1を折り返した。

 塙組はSS5で後続を5秒以上も突き離すベストタイムでリードを拡大。続くSS6では、「今回のラリーが自分の地元に近くて、仲間達が応援に来てくれたので、気合いを入れ過ぎてしまいました」と、パイロンタッチでタイムロスするも、SS5までに築いたマージンで第4戦に続く2勝目を獲得。シリーズランキングでもトップに浮上した。

C-2クラスは塙将司/山口竜太組がシーズン2勝目を飾った。
村上賢悟/堀田真衣希組は2位入賞(左)。犬塚仁浩/松原周勢組は3位でゴール(右)。
C-2クラス表彰の各選手。

 アクア限定のC-1クラスも、13台が出走とホットバトルが予想された。ラリー序盤に飛び出したのは、横山慎太郎/鳥居耕太組と、地元滋賀から参戦の水野裕治/本居正晃組の2台。 SS3を終えた段階では横山組が水野組に0.3秒差をつけてトップで折り返すが、セクション2に勝負の行方は持ち込まれた。

 しかしSS1の再走となったSS4では、「道が荒れてくると、やる気が出るんです(笑)」という横山組が一気にスパートして、水野組を6秒差に従える圧巻のベスト。続く難所のSS5でも、横山組は後続を2.6秒差で下して独走態勢に持ち込み、そのまま逃げ切った。

 横山選手は、2014年のもてぎチャンピオンカップレースのVITAトロフィークラスで年間王者に輝いたという生粋のレーシングドライバー。スーパーFJをドライブした経験も持つ。就職で中部地区に移り住んだことをきっかけに、新城ラリーの主催等で知られるMASC(モンテカルロオートスポーツクラブ)の門を叩き、ラリーも始めた。

 7月に京都で行われたJAF中部・近畿ラリー選手権では、クラブの先輩である全日本ドライバー、鮫島大湖選手のコ・ドライバーを務め、優勝したが、今回はその際の経験が生きたという。「ハードなコンディションのラリーでの、競技への取り組み方や、ペースノートの作り方・読み方等、鮫島さんから多くのことを教わったので、今日はそれをドライバーの立場からフィードバックできたんです」と勝因を振り返った。

「今日の優勝で、荒れた道でも行けるんだという自信が持てた気がします」と横山選手。ラリーのトップドライバーが多く在籍する、最高の環境の中でステップアップを狙っていきたいという、ラリーストとしての成長も期待していきたいところだ。

C-1クラスは横山慎太郎/鳥居耕太組がセクション2でリードを広げて優勝。
水野裕治/本居正晃組は2位(左)。西木孝浩/中村貴也組は3位に入賞した(右)。
C-1クラス表彰の各選手。

フォト&レポート/JAFスポーツ編集部

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