九州ラリー地区戦天王山の一戦は、中村均GRヤリスが初優勝

レポート ラリー

2022年10月17日

JAF九州ラリー選手権はシリーズ6戦目となるEAST九州2022が、10月1~2日の2日間、大分県で開催された。

2022年JAF九州ラリー選手権第6戦
2022年JMRC九州ラリーチャンピオンシリーズ第6戦
EAST九州2022

開催日:2022年10月1~2日
開催場所:大分県豊後大野市周辺
主催:RC-大分

 今年の九州地区の地方ラリー選手権は全7戦が予定されている。今回の一戦が終われば残るは最終戦のみ。今年は多くのクラスでタイトルレースが接戦となっており、今回は天王山とも言えるバトルが展開された。

 シリーズ6戦目として開催された今回のEAST九州は、1995年から2005年まで開催された全日本ラリー選手権2輪駆動部門の一戦を担い、走り応えのあるグラベルSSで知られたラリー。当時から秋に行われることが多かったため、全日本ラリー開催時もチャンピオン争いが持ち込まれることが多く、毎年、白熱した一戦が続いた。

 全日本選手権の際は、臼杵市、野津町(2005年に臼杵市と合併)といったエリアを主なラリーフィールドとしたが、近年は臼杵市に隣接する豊後大野市で競技が行われるようになっており、今回の一戦も同市の山間部にあるターマックロードがSSの舞台となった。

 ラリーはまず1日土曜昼にレッキを2回行った後に、翌2日朝から競技に臨むというスケジュールで行われた。SSは1本の林道を往復で使用する形として、午前のセクション1は上り主体となる6.86kmを2回走行。サービスを挟んだ午後のセクション2は6.63kmとやや距離は短くなるが、逆走で2回走る。当然、今度は下りがメインとなる設定だ。EAST九州では今回初めて使用されたステージであり、選手達は土曜日から入念なチェックに追われる一戦となった。

豊後大野市の桜の名所として知られる蓮城寺の駐車場が今回のラリーの拠点となった。
SSに使用された林道は尾根伝いを走るロケーションに恵まれたステージとなった。

 RH1クラスはGRヤリスを駆る鹿児島の中村均/小宮新一組がSS1でベストタイム。今季もこれまで4戦4勝と圧巻の走りを見せている、ディフェンディングチャンピオンの津野裕宣/岡崎辰雄組のランサーエボXは9.2秒落ちの2番手、とスタートで出遅れてしまう。

 中村組は再走となったSS2も、SS1からタイムを落とすも、連続ベスト。対する津野組はここでも大きく遅れ、セクション2を前にしてエンジントラブルでリタイヤとなってしまう。一方、中村組はSS3でも、それまで2番手につけていた同じGRヤリスの廣川慎一/森下志朗組を8.7秒差に下すスーパーベスト。最終のSS4は廣川組が2.2秒差で喰らいついたが、ここもベストで上がってラリーを完全制覇し、優勝を果たした。

 今季参戦した3戦はすべて4位。初の表彰台をいきなりの優勝で、もぎ取った中村選手は、「今日はSS1からベストを狙って走りました。津野選手がリタイヤした後も、気を抜かずに全SSベストを獲るつもりで行ったので、最後まで集中できたと思います。SSが全体に高速寄りだったことも、ハイスピードが好きな自分には合ってましたね」と振り返った。

 中村選手は長いブランクから今年、ラリーに復帰した一人。30年前に佐賀で開催された地区戦で激しくコースアウトし、当時乗っていたブルーバードSSS-Rを失ったため、競技生活の続行を断念した。しかし同じく鹿児島在住で師匠でもある、全日本のトップラリーストだった山口修選手が、GRヤリスで復帰に向けた準備を始めたことから、同じ車両での復活を決意したという。

「休んでいる間もオートポリスを走ったり、山口さんとレーシングカートをやったりと、何がしかの車両には乗っていたので、モータースポーツの速度感をキープできていたことが今日の結果に繋がったかもしれません。でも今日は、“やっぱりラリーが一番苦しいな”、と思いました(笑)」と、中村選手は30年越しのリベンジ達成に笑顔を見せていた。

RH1クラスは中村均/小宮新一組が全SSベストと圧倒的な速さを見せて優勝。GRヤリスは九州ラリー地区戦で初の優勝を飾った。
RH1クラス優勝の中村/小宮組。「小宮さんから、抑えろ、抑えろ、とラリー中に言われ続けたお陰で完走できました(笑)」と中村選手は、九州を代表するベテランコ・ドライバーに感謝していた。
廣川慎一/森下志朗組は今季再上位の2位を獲得した。
阪本寧/境健一組は今シーズン2度目の3位に入賞。
RH1クラス表彰の各選手。

 RH2クラスは、すでに3勝を挙げているZC33Sスイフトの黒原康仁/松葉謙介組がタイトルレースで優勢に立っているが、第3戦を制したDC2インテグラを駆る若手の河本拓哉/柴田咲希組が、黒原組が優勝したラリーではすべて2位を獲得し、食らいついている。

 セクション1で先行したのは河本組のインテグラで、アンダーステアに苦しみながらも、連続してベストタイムをマーク。黒原組に7.4秒差のリードを作ってラリーを折り返す。下り主体のSSが続くセクション2では、河本インテグラが、「速度が乗るコーナーが続く中で、ギリギリ道の上にいられました」という果敢な走りでリードを拡大。今回は黒原組を最後まで寄せ付けず、快勝した。

「2ステに勝負を持ち込めれば勝機はあるかな、と思ってましたが、SS3をスタートしたら、いい感じでクルマが動いてくれたので、今日は行けると思って攻めました。セッティングを見直したことと、昨日の2回目のレッキでペースノートがうまく噛み合わなかったので、コ・ドライバーとコミュニケーションを取り直して、ノートを煮詰められたことが大きかったと思います」と河本選手。

 一方の黒原選手は、「結構、一杯一杯の走りでしたが太刀打ちできなかったですね。SS3はちょっとブレーキのトラブルが出たのですが、それがなかったとしても追いつけるタイムではなかった。道のイメージは嫌いじゃなかったですが、スイフトには、もう少しな道だった方が勝機があったかもしれませんね」と振り返った。

RH2クラスは河本拓哉/柴田咲希組は、今季2勝目となる3戦ぶりの優勝を飾った。
RH2クラス優勝の河本/柴田組。
黒原康仁/松葉謙介組は2位に終わるもシリーズリーダーの座は守った。
前田耕造/行武忠孝組は86/BRZ勢最上位の3位を獲得。
RH2クラス表彰の各選手。

 RH3クラスは、今季2勝を挙げているポイントリーダーの横手孝稀選手が不参加。同じく2勝を挙げ、ランキング2位の豊田智孝選手も主催に回ったため、本命不在の戦いになるかと思われた。しかしラリーが始まると、前戦でこのトップ2台に割って入って2位を獲得した後藤章文/山本祐介組のデミオが飛び出して、SS1、2と連続ベストをマーク。同じくデミオを駆る2番手の近藤員章/梶山剛組に8.2秒差をつけてトップでサービスに戻ってきた。

 セクション2に入ると、近藤組がエンジントラブルでリタイヤの不運に見舞われたこともあって、後藤組は独走態勢に。SS3、SS4もしっかりベストで上がって最後までライバルの追撃を許さず、今季初優勝を飾った。

「レッキの時は、危ない道だな、無事に帰ってこれるかな、と本気で思いましたが(笑)、走ってみたら、意外とリズムに乗れて楽しかったですね。昨日、レッキの後に車載ビデオを確認したら、踏んで行けばタイムを稼げる場所がかなりあったので、攻める所と逆に抑える所をしっかりとノートで把握した上で走れたのが大きかったと思います」と後藤選手。

 後藤選手のデミオは、教師として務める大分高校自動車工業科に併設された、専門学校過程である自動車工学専攻科と、九州マツダがタッグを組んだチームが今年からサポートする。学生と自動車ディーラーの連合チームということで大きな注目を集めており、この日も地元大分のテレビ局が複数、取材に訪れた。

「授業の一環でもあるので、絶対にサービスに帰ってこなければいけないのは、もちろんですが、今回は地元ということで沢山の方々が応援に来てくれたので、“今日勝たないで、いつ勝つんだ”というプレッシャーで大変でした(笑)」と、後藤選手は、最後は安堵の表情を見せていた。

RH3クラスは今季3度目の参戦となった後藤章文/山本祐介組がシーズン初優勝を達成。
RH3クラス優勝の後藤/山本組。
有川大輔/赤嶺歩組は2位に入り、今季初表彰台を獲得。
廣田敦士/徳地将組が3位に入った。
RH3クラス表彰の各選手。

 RH4クラスは、今季は第3戦からの参戦となった貞光建/麻生大智組のヤリスが3連勝を飾ってシリーズを大きくリードしている。しかし、今回はSS1では西依良樹/藤口裕介組のヤリスがベストタイム。SS2では貞光組に0.9秒遅れを取るも、トータルでは2秒差をつけてトップでセクション1を折り返した。

 しかしセクション2に入ると貞光組が反撃を開始。SS3、SS4では西依組を大きく引き離して一気に逆転に成功。そのまま逃げ切って今回も優勝を決めた。連勝記録を4に伸ばした貞光選手は、「実は1ステでちょっとしたトラブルがあったんですが、気が付かなくて、2ステの前にそれが分かって対応しました。SS3からはクルマが本来の動きに戻ったので、ベストが獲れると確信しながら走りました」。

 本来は全日本ジムカーナにも参戦経験のあるスラローマーだが、今年はラリーに専念している。ヤリスは2年目だが、今年から本格的なラリー仕様となった。「今年はラリーが終わる度に足回りを見直してきたことが結果に繋がっているような気がします」という貞光選手。「とりあえず、これからはオールスターラリーに向けて、しっかり準備していきたいですね」と大一番のラリーに意欲を見せていた。

RH4クラスは今季第3戦から参戦を開始した貞光建/麻生大智組が優勝。
今回も優勝をさらって無敵の4連勝をマークした貞光/麻生組。
セクション1は貞光組と互角の勝負を見せた西依良樹/藤口裕介組だが、2位に甘んじた。
伊藤槙吾/久保田匡紀組は今季初ポディウムとなる3位でゴールした。
RH4クラス表彰の各選手。

 RH5クラスとRH6クラスは、昨年まで1クラスだったAT限定のクラスを今年からふたつに分けたもので、RH5クラスは排気量区分なしとして、RH6クラスは1,500cc以下の前輪駆動車両と、EV、ハイブリッド等のAE車両限定としている。

 RH5クラスは、前回まで成立した4戦すべてウィナーが異なるという混戦状態。参加車種もバラエティに富み、前回の第5戦ではVWポロが優勝した。今回は第4戦のウィナーでRX-8を駆る中西昌人/岩本燿大組がSS1、SS2と連続ベストを奪取。セクション2では第3戦をFTOで制した星野元/引間知広組が2本とも僅差で中西組を下すが、6.6秒届かず。「1ステの貯金で何とか逃げ切れました」と振り返った中西組が2勝目一番乗りを果たした。

RH5クラスは中西昌人/岩本燿大組が、前半で築いたリードを守って今季2勝目を獲得。
RH5クラス優勝の中西/岩本組。
今季2度目の参戦となった星野元/引間知広組は2位に入賞。
開幕戦を制した白𡈽辰美/國貞友博組は3位に甘んじた。
RH5クラス表彰の各選手。

 一方、RH6クラスもRH5クラス同様、過去4戦で2勝を挙げたドライバーはまだ現れていないという状況。その中、シリーズ首位の若杉達哉/斉藤龍組アルトと同2位の石井誠/橋口由衣組ミラージュアスティのバトルに注目が集まったが、今回は伏兵が優勝をさらうことに。

 アクア実戦投入2戦目となった川中天兵/土谷英治組が圧倒的な速さで全SSベストをさらって大差で優勝を決めたが、川中選手は、2019年にヴィッツで地区戦のRH4クラスのタイトルを獲得した実力者だ。

 ヴィッツから移植した足回りで今回は臨んだが、「コーナリングがいいし、重いけどしっかり動いてくれるので楽しく走れました。バッテリーの問題などハイブリッドならではの難しさはありますが、今日はクラスとクルマが変わって気分転換も図れたので、来年は何とかシリーズ追えればいいかなと思っています」と、川中選手は、新たなチャレンジに意欲を見せていた。

RH6クラスは今季初参戦の川中天兵/土谷英治組が全SSベストの走りを見せて快勝した。
RH6クラス優勝の川中/土谷組。
若杉達哉/斉藤龍組は2位に入り、ポイントリーダーの座を守った。
日高重貴/小川まり組はセクション2のプッシュが効いて3位に入った。
RH6クラス表彰の各選手。
OPクラスは第2戦以来の参戦となった林大河/石原宗典組が優勝した。
OPクラス優勝の林/石原組。
OPクラス2位獲得は久木野聖/久木野文美組。
猪熊悠平/藤井海南斗組がOPクラス3位獲得。
OPクラス表彰の各選手。

フォト&レポート/JAFスポーツ編集部

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