3年ぶりのF1日本グランプリが鈴鹿サーキットで開催! マックス・フェルスタッペン選手が2年連続チャンピオンに輝く!

レポート レース

2022年10月17日

2022年のFIAフォーミュラ1世界選手権(F1)第18戦「Honda日本グランプリレース」が10月7~9日に鈴鹿サーキットで開催され、雨の中でポール・トゥ・ウィンを決めたレッドブルのマックス・フェルスタッペン選手が2年連続のワールドチャンピオンに輝いた。

2022 FIA FORMULA 1世界選手権シリーズ第18戦 日本グランプリ
Formula 1 Honda Japanese Grand Prix 2022
2022 FIA F1世界選手権シリーズ第18戦 Honda日本グランプリレース
(Porsche Carrera Cup Japan 2022 第11戦併催)

開催日:2022年10月6~9日
開催地:鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)
主催:SMSC

レースウィークの木曜日。3年ぶりにF1日本グランプリが鈴鹿サーキットに帰ってきた。
木曜の午後にはドライバーのプレスカンファレンスが行われ、久々の鈴鹿の印象を語った。
F1パイロットとして凱旋を果たした角田裕毅選手。FIA-F4参戦以来の鈴鹿走行となる。

 F1日本グランプリは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受け、2020年、2021年と開催を見送らざるを得なかったが、外国人の入国に対する水際対策も緩和され、9月のFIA世界耐久選手権(WEC)富士大会に続いて、3年ぶりにF1が鈴鹿に帰ってきた。

 日本のファンも開催を待ちわびており、大会初日となった10月7日(金)には、前回開催の2019年より5000人も多い、3万8000人が来場。予想以上の盛り上がりを見せた。この日は、あいにくの雨模様だったが、12時00分のフリー走行1回目が始まる頃には、各スタンドとも満員に近い状態となっていた。

 ウエットコンディションということもあり、最初は各チームとも慎重な様子だったが、12時04分にケビン・マグヌッセン選手(Haas F1 Team)がコースインすると、場内は拍手喝采となった。

 そして、その30秒後には、初の母国グランプリを迎える角田裕毅選手(Scuderia Alpha Tauri)がコースイン。先ほどを上回る拍手が沸き起こっていた。その後も、スタンドに詰め掛けていたファンは、彼が目の前を通過するたびに拍手をしたり旗を振るなど、熱い声援を贈っていた。

 フリー走行1回目の最後にミック・シューマッハ選手(Haas F1 Team)がダンロップコーナーでクラッシュを喫してしまったものの、それ以外は大きなアクシデントはなくセッション終了。フェルナンド・アロンソ選手(BWT Alpine F1 Team)が1分42秒248でトップタイムを記録した。

 金曜15時00分から開始のフリー走行2回目では、当初2023年用のドライタイヤのテストが行われる予定だったのだが、雨天により中止となり、各車ともウエットコンディションでのマシンバランスの調整を行った。

 日曜の決勝も雨になる可能性が高いこともあり、このセッションでは各車とも限界を探って攻め込んでいた様子。その分、コースオフを喫するマシンも多かったが、それぞれが時間いっぱいにプログラムをこなしてセッションが終了する。

 最終的にジョージ・ラッセル選手(Mercedes-AMG Petronas F1 Team)が1分41秒935でトップタイムを計測し、2番手にはルイス・ハミルトン選手(Mercedes-AMG Petronas F1 Team)がつけて、シルバーアローの2台が上位を独占した。また、今回ランキングトップでチャンピオン獲得に王手をかけているマックス・フェルスタッペン選手(Oracle Red Bull Racing)は3番手で初日のセッションを終えた。

土曜のプラクティス1回目はフェルナンド・アロンソ選手が最速の1分42秒248を計測。
プラクティス2回目はジョージ・ラッセル選手が1分41秒935という最速タイムをマーク。

 10月8日(土)は一転して晴天に恵まれ、フリー走行3回目からドライコンディションとなった。土曜の観客動員は6万8000人。予選までの間にドライ路面でチェックできる時間が限られているため、グリーンシグナルと同時に、各車一斉にコースインし、精力的に周回を重ねていた。22周目にはフェルスタッペン選手が1分30秒671を計測して、そのままトップタイムとなった。

 15時00分からは、いよいよ公式予選が始まった。まず注目が集まったのは母国グランプリとなる角田裕毅選手(Scuderia Alfa Tauri)。Q1で3回のタイムアタックを行い、途中ブレーキトラブルに悩まされたものの12番手でQ1を突破。続くQ2でも果敢にコーナーを攻めていったが、わずか0.152秒届かず13番手に終わり、Q3進出は叶わなかった。

 そして、トップ10台に絞られて行われたQ3では、激しいタイムアタック合戦が展開された。まずは1回目のアタックで1分29秒304をマークしたフェルスタッペン選手がトップに浮上。これを追いかけて、フェラーリ陣営が2回目のアタックでタイムを詰めていく。途中のセクター2ではわずかにフェルスタッペン選手を上回っていたシャルル・ルクレール選手(Scuderia Ferrari)だが、最終的に0.010秒届かず2番手に。僚友のカルロス・サインツ選手(Scuderia Ferrari)も0.057秒差で3番手となった。

 これでフェルスタッペン選手が日本グランプリでポールポジションを獲得。エンジン+回生システムのレギュレーションになってからでは、ホンダ製パワーユニットが鈴鹿で初めてポールポジションを獲得することとなった。フェルスタッペン選手は今大会で優勝+ファステストラップを獲得するとタイトルを決められる状況だけに、鈴鹿でドライバータイトルが決まる可能性が現実味を帯びてきた。

 ポールポジションを獲得したフェルスタッペン選手のコメント:
「このコースを再びドライブすることができて、すごく嬉しい。特に予選では燃料搭載量を少なくした状態で攻める第1セクターは本当にすごい。もちろん、ポールを獲得できてハッピーだけど、こうしてまた鈴鹿を走ることができたのはスーパーハッピーだ」

ドライのプラクティス3回目では1分30秒671を計測したマックス・フェルスタッペン選手。予選では1分30秒台で推移したQ1とQ2を超え、Q3では最速となる1分29秒304を計測した。
2019年にセバスチャン・ベッテル選手が計測した1分27秒064には届かなかったが、フェルスタッペン選手が鈴鹿のポールポジションを獲得。左はFIAロバート・リード副会長。
ポールポジションはフェルスタッペン選手、2番手はシャルル・ルクレール選手、3番手はカルロス・サインツ選手。2番手タイムはわずかコンマ01秒差という接戦だった。

 そして、10月9日(日)の決勝日を迎える。9万4000人が詰めかけた注目の決勝レースは、再び雨模様となった。決勝レース前には岸田文雄首相が来場し、オープニングセレモニーに参加した。「ドライバーとチームの皆さんが一体となって、世界最高の技術に裏付けられた、世界最高のパフォーマンスをみんなで期待したいと思います。最後の最後まで手に汗に握るデッドヒートをみんなで楽しんでいきましょう!」と力強く挨拶した。

直前に明かされた岸田文雄首相の来訪。13時頃に会場入りし、ポディウムで来場者に挨拶をした後、雨が降り出す中で決勝前セレモニーに同席。その後はピットなどを視察した。
土日の午前に行われた「HRC Reborn 40th ANNIVERSARY」と題したデモラン。元F1ドライバーの佐藤琢磨選手や、F1鈴鹿でFP1走行経験を持つ山本尚貴選手らが走行を披露。
F1恒例の決勝開始前に行われる「ドライバーズパレード」。世界の名車に分乗してレーシングコースを1周するイベントで、曇り空の中、角田裕毅選手は観客の声援に応えた。

 14時00分、雨の中、いよいよフォーメーションラップが始まり、53周のスタートが切られた。レッドシグナルが消えると同時に好ダッシュを見せたのは2番手のルクレール選手。1コーナーまでの間に一瞬トップに立つが、フェルスタッペン選手も粘り強く応戦し、サイド・バイ・サイドのままコーナーに突入。2コーナーを超えたところでフェルスタッペン選手がアウトから競り勝ちトップを死守した。

 そして、後方では1コーナーで行き場を失ったセバスチャン・ベッテル選手(Aston Martin Aramco Cognizant F1 Team)がコースオフを喫したが、それ以外の選手は混乱なく1コーナーを通過していった。

 しかし、降りしきる雨による視界不良は思ったよりもひどく、コース後半に入ると混乱が発生。3番手を走っていたサインツ選手が、ヘアピンを立ち上がったところでバランスを崩しクラッシュしてしまった。後方でもスピンをする車両が後を絶たず、セーフティカーが導入されることになった。

 その後、雨脚が強くなったこともあり、2周目に赤旗が出されレース中断となった。

13時20分にピットレーンオープンを迎え、13時30分から決勝前セレモニー、そして14時には、53周または120分の決勝レースがスタートする。しかし、無情にも雨が降り出した。
雨の中、スタンディングスタートで始まった決勝レース。ストレートではルクレール選手が先行したが、フェルスタッペン選手がアウトから抜き去りトップを奪い返した。
1コーナーではベッテル選手がコースオフ、そして3番グリッドのサインツ選手はヘアピン立ち上がりでクラッシュ。セーフティカー導入の後に赤旗中断となってしまった。
14時50分からレース再開のアナウンスが出されたが、急きょ再開が延期。強く降りしきる雨の中、詰めかけた9万4000人の観客たちはレース再開をジッと待ち続けた。

 ひとまず、サインツ選手や、トラブルでストップを余儀なくされたアレックス・アルボン選手(Williams Racing)の車両回収が終わり、14時50分にレース再開のアナウンスが出されるが、再開2分前になって急きょレース再開が延期された。

 そこから雨が再び強くなり、サーキット全体が再開の瞬間を待つことになった。それでも、3年ぶりのF1日本グランプリを楽しみにしてくれていたファンの多くは、客席で待ち続けていた。それにドライバーやチームスタッフたちが反応し、サインガードのフェンスまで出て手を振るなど、待ってくれているファンにエールを贈った。

 レース開始から2時間を経過しても再開の目処が立っていなかったが、ついに雨脚が弱まり、レース再開の時を迎えることとなった。16時15分。セーフティカー先導でマシンが動き出し、数周の後にグリーンフラッグとなった。

 この時点で雨はほぼ止んでいたため、ほとんどのマシンがインターミディエイトタイヤに交換するべくピットイン。複数のマシンが同時に入ってきたこともあり大混乱となったが、フェルスタッペン選手のトップは変わらなかった。

 そこからフェルスタッペン選手は着実に後続との差を広げていき、15周目にはギャップを10秒にまで広げると、その後も安定したペースでリードを築き、完全に独走状態となっていた。

 一方、2番手を走るルクレール選手の後方には、4番グリッドスタートのセルジオ・ペレス選手(Oracle Red Bull Racing)が接近。10周目を過ぎた辺りから、徐々に差を詰め始め、22周目には1秒差まで接近し、オーバーテイクのチャンスを伺っていた。

 途中に約2時間以上の赤旗中断があったため、規定の53周に到達する前に、最大延長の3時間を迎えることとなった。フェルスタッペン選手は上限時間の残り数秒のところでファイナルラップとなる28周目に突入。最後もペースを落とさずに周回し、2番手以下に27秒もの大差をつけて、鈴鹿サーキットで今季13勝目を挙げた。

 そして、注目の2位争いは最終ラップも白熱。ペレス選手は各コーナーでルクレール選手に並びかけようとプレッシャーをかけるが、ルクレール選手も動じることはない。そして、そのまま最後の日立Astemoシケインに進入したところで、ルクレール選手がブレーキングでミス。シケインをショートカットした。その隙を突こうとペレス選手も攻め込んでいくが、結果的に順位は入れ替わらず。ルクレール選手が2番手でチェッカーを受けた。

 しかし、ルクレール選手がショートカットによりアドバンテージを得たということで、レース直後に5秒ペナルティが課せられることに。これでペレス選手が2位に繰り上がり、ホンダ製パワーユニットを搭載するマシンが見事ワンツーフィニッシュを飾った。

16時15分、セーフティカー先導でようやくレース再開となった。2周の後にグリーンが振られ本格的なレースが始まる。レース中断を経た場合は3時間上限の時間レースとなる。
ウエットからインターミディエイトに交換してからもフェルスタッペン選手の速さは手が付けられず独走態勢に。3時間経過で28周目を数え、これがファイナルラップとなった。
後続に約27秒もの大差を付けたフェルスタッペン選手がトップチェッカー。2番手フィニッシュのルクレール選手はシケインのショートカットによるペナルティ5秒が加算された。
優勝はマックス・フェルスタッペン選手、2位はセルジオ・ペレス選手でレッドブル勢がワンツー達成。3位はシャルル・ルクレール選手。左はHRC常務取締役の浅木泰昭部長。
最後の最後まで熱き2番手争いバトルを展開した2位のペレス選手と3位のルクレール選手。

 優勝はマックス・フェルスタッペン選手、2位はセルジオ・ペレス選手、3位はシャルル・ルクレール選手、4位はエステバン・オコン選手(BWT Alpine F1 Team)、5位はルイス・ハミルトン選手、6位はセバスチャン・ベッテル選手、7位はフェルナンド・アロンソ選手、8位はジョージ・ラッセル選手、9位はニコラス・ラティフィ選手(Williams Racing)、10位はランド・ノリス選手(McLaren F1 Team)で、以上がポイントを獲得。

 この結果により、フェルスタッペンが4戦を残して2年連続でのワールドチャンピオンを確定させた。ちなみに、鈴鹿でのF1日本グランプリは今年で32回目を数えるが、鈴鹿でワールドチャンピオンが誕生するのは、2011年のセバスチャン・ベッテル選手以来11年ぶりで、鈴鹿でのチャンピオン確定は11回目となった。

 優勝したフェルスタッペン選手のコメント:
「(最初のスタートは)僕自身、ダッシュがつかなくて良くないスタートだった。1コーナーから2コーナーにかけて、非常に接近していたけど、僕の方が外側のラインにいたから、少し有利だった。その後は雨が強くて中断もあったけど、再開後は良いタイミングでインターミディエイトに交換できた。ただ、タイヤを使い過ぎないようにするのが大変だった」
「(2連覇が決まって)もちろん、最高の気分だ。フィニッシュラインを通過した瞬間は自分がチャンピオンが確定したのか分からなかったけど、とにかく今日は良いレースができたし、全てにおいてマネジメントできた。ここで勝つことができてとても嬉しい。これでチャンピオンに対するプレッシャーが解消されたけど、残りのレースでも引き続き勝ち星を増やしていけるように、さらにがんばりたい」

場内のモニターから、フェルスタッペン選手のドライバーチャンピオン獲得の一報がもたらされ、2年連続でのワールドタイトルを鈴鹿サーキットで確定させることとなった。
Oracle Red Bull Racingを擁するRED BULL RACING RBPTのコンストラクターズ・タイトルの確定は次戦以降にお預け。2番手のFERRARIには大差を付けている。

 なお、角田選手は最初のスタートで9番手まで浮上するも、その後はペースで苦しみ、ライバルよりも1回多くピットに入ったことが裏目に出てしまい、13位でチェッカーを受けた。「ポイントを獲れなかったのは悔しいけど、やれることはやりました」と語った。

 こうして、決勝日は雨に悩まされる形となった3年ぶりのF1日本グランプリ。それでも、決勝日の観客動員数は前回の2019年大会より5000人多い結果となり、3日間での総来場者数は20万人を数えた。総数20万人を超えたのは2012年大会以来だった。

 ここ数年は来場者数が落ち込み傾向にあった日本グランプリだが、3年ぶりの開催やホンダ製パワーユニットの活躍もあり、再び活気に満ち溢れた週末となった。

Q2で敗退となり13番手スタートとなった角田裕毅選手は9番手にポジションをアップ。再開後にはタイヤ交換により16位まで下がったが、渾身の走りで13位でフィニッシュした。
F1日本グランプリのポディウムではJAF坂口正芳会長がプレゼンターを務めた。
W Seriesの併催が見送られ、ポルシェカレラカップ・ジャパン(PCCJ)第11戦が併催レースとなった。ポールポジションは、第10戦でタイトルを確定させた小河諒選手が獲得。
レースはチャンピオン小河選手と2番手スタートの近藤翼選手が接近戦を展開。セーフティカーが入り3周目に再開したが、小河選手が首位を守り切り、今季最終戦を制した。
F1日本グランプリのポディウムでの表彰式。総合およびProクラス優勝の小河諒選手、総合2位の近藤翼選手、総合3位のIKARI選手。IKARI選手はProAmクラス優勝でもある。
金曜は3万8000人、土曜は6万8000人、日曜は9万4000人、三日間合計で約20万人が集結した3年ぶりの鈴鹿大会。雨に祟られたが、世紀の瞬間を共有する貴重な機会となった。

PHOTO/吉見幸夫[Yukio YOSHIMI]、竹内英士[Euji TAKEUCHI]、Honda Mobilityland、Red Bull Media House、首相官邸ホームページ REPORT/吉田知弘[Tomohiro YOSHITA]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

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