最終戦までもつれた全日本ラリー選手権JN3クラスは竹内源樹/木村悟士組がタイトルを確定

レポート ラリー JAFWIM

2022年10月28日

2022年は全8戦で組まれている全日本ラリー選手権。その最終戦となる第8戦「第49回M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズ2022」が、10月14~16日に岐阜県高山市周辺を舞台に開催された。シリーズチャンピオン未確定のJN3クラスは、スバルBRZを駆る竹内源樹/木村悟士組が勝利し、優勝でチャンピオンを確定させた。

2022年JAF全日本ラリー選手権 第8戦「第49回M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズ2022」
開催日:2022年10月14~16日
開催地:岐阜県高山市周辺
主催:M.C.S.C.

 ラリーは昨年と同様、岐阜県高山市郊外の道の駅「モンデウス飛騨位山」を拠点に、初日のレグ1は3か所の林道ステージを2ループする6SS、2日目のレグ2には初日の林道ステージを逆走する2本の林道ステージを含んだ3か所の林道ステージを2ループする6SSの計12SS(65.50km)が設定された。

 1本あたりのSSの平均距離が約5.45kmと、全日本選手権では比較的距離の短いSSが続くため、ここ数年は各クラスで0.1秒を競う戦いが展開されるスプリントラリーとなっている。また、今年は3年ぶりにギャラリーステージが復活。2日間とも好天に恵まれ、観戦ステージとなったひだ舟山スノーリゾートアルコピアには、県内外から多くのギャラリーが足を運び、全開でギャラリーステージを攻めるラリーカーのダイナミックな走りを堪能していた。

モンデウス飛騨位山スキー場駐車場に設けられたサービスパーク。開催期間中は天候に恵まれ、全日本最終戦を彩るに相応しい絶好のラリー日和となった。
今回のラリーで0カーを務めるのは地元の高山短大がデビューさせたGRヤリス。ドライバーは高山自動車短期大学の大橋智樹氏、コ・ドライバーは漆戸あゆみ選手だ。

 今シーズンは前戦の第7戦までにJN3クラス以外の5クラスがシリーズチャンピオンを確定させており、タイトル争いが最終戦までもつれ込んだJN3クラスは、竹内源樹/木村悟士組のスバルBRZと、山本悠太/立久井和子組のトヨタGR86との一騎打ちとなった。

 シリーズポイントではランキングトップにつける竹内/木村組が優位に立つものの、山本/立久井組もこの最終戦を制すれば逆転チャンピオンを確定させることができる。どちらがタイトルを確定させるかに注目が集まった。またこの最終戦には選手権外クラスのオープンクラスを含めて60台がエントリー。今年で49回目の開催を迎え、全日本では最も歴史ある伝統の一戦は、エントラントからも人気を集める大会となった。

JN3クラスはここまで3勝の竹内源樹/木村悟士組と、2勝の山本悠太/立久井和子組との一騎打ちの展開に。

 チャンピオン争いが注目されるJN3クラスは、ターマックラウンドで2勝を挙げている新鋭の山田啓介/藤井俊樹組のトヨタ86がSS1(千光寺1)を制する幕開けとなったが、シリーズランキングトップの竹内/木村組のスバルBRZがSS2(牛牧上り1)で山田/藤井組を逆転。

 その後は竹内/木村組と山田/藤井組がベストタイムを奪い合う展開となったが、竹内/木村組が山田/藤井組に11.1秒差をつけて逃げ切り、今季4勝目を獲得。竹内選手は初代BRZでタイトルを獲得した2014年以来、8年ぶりに全日本チャンピオンを確定させた。

JN3クラス優勝は竹内/木村組(YH CUSCO 大阪冷研BRZ)。最終戦を勝利してシリーズチャンピオンも確定させた。
逆転チャンピオンに望みをかけた山本/立久井組は、序盤からのタイム差が積み重なり、悔しい4位フィニッシュ。
JN3クラスのセレモニアルフィニッシュ。上段は1位の竹内/木村組、下段は左から2位の山田啓介/藤井俊樹組、3位の長﨑雅志/大矢啓太組。

 JN1クラスは、すでに前戦で今シーズンのタイトルを確定させているヘイキ・コバライネン/北川紗衣組のシュコダ・ファビアR5が、初日の6SSすべてでベストタイムをマークし、2番手以降を突き放す。

 2日目に入ってもコバライネン/北川組の勢いは止まらず、SS8のギャラリーエリアでハーフスピンして360度ターンでコースに復帰した際のタイムロスで奴田原文雄/東駿吾組にベストタイムを許した以外、すべてのSSでベストタイムを連発。最終的には2位に31.0秒の大差をつけ、有効戦数全勝となる今季6勝目を飾った。

 一方、2番手争いは勝田範彦/木村裕介組と奴田原/東組のトヨタGRヤリス同士の対決となり、SS2では勝田/木村組が奴田原/東組を0.4秒差に抑えるものの、SS3では奴田原/東組が勝田/木村組を1.1秒逆転。その後も0.1秒を競う勝負が展開されたが、2日目にペースを上げた奴田原/東組が勝田/木村組を13.3秒差まで離し、2位入賞を果たした。

JN1クラス優勝はヘイキ・コバライネン/北川紗衣組(AICELLOラックDL速心FABIA)。
JN1クラスの表彰式。左から2位の奴田原文雄/東駿吾組、1位のコバライネン/北川組、3位の勝田範彦/木村裕介組。

 1台のみのエントリーとなり、クラス不成立となったJN2クラス。WRCラリージャパンに向けてルノー・クリオ・ラリー5を導入した国沢光宏/木原雅彦組がテスト走行を兼ねて出場。シェイクダウンとなったラリーでは、同じSSを2回走るリピートステージで大幅なタイムアップを果たし、順調な仕上がりを見せてフィニッシュした。

JN2クラスは国沢光宏/木原雅彦組(ClioRally5日本名LUTECIA)が完走。

 スズキ・スイフトスポーツのワンメイク状態となったJN4クラスは、すでに2年連続のチャンピオンを確定させている西川真太郎/本橋貴司組がレグ2で一気にペースを上げ、黒原康仁/松葉謙介組に28.2秒差をつけ、今季4勝目を獲得。2位に黒原/松葉組、3位にはエンジンがセーフティモードに入り吹け上がらなくなる現象に悩まされながらも、ベテランの岡田孝一/河本拓哉組が入賞した。

JN4クラス優勝は西川真太郎/本橋貴司組(スマッシュDLモンスターitzzスイフト)。
JN4クラスのセレモニアルフィニッシュ。上段は1位の西川/本橋組、下段は左から2位の黒原康仁/松葉謙介組、3位の岡田孝一/河本拓哉組。

 JN5クラスは、SS1でベストタイムをマークした大倉聡/豊田耕司組のトヨタ・GRヤリスを藤原直樹/中嶋健太郎組のマツダ・RX-8が追いかける展開となったが、レグ2に入って藤原/中嶋組がペースダウン。

 その一方で、初日3番手を走行していた天野智之/井上裕紀子組のトヨタ・GRヤリスRSが、2日目のSS7で藤原/中嶋組を抜き2番手に浮上。また初日4番手を走行していた小濱勇希/竹下紀子組のトヨタ・ヤリスが、SS8で藤原/中嶋組を抜き3番手に浮上してくる。2番手以下の順位が変動する中、初日のマージンを活かした大倉/豊田組が、第7戦のラリー北海道に続き2連勝を飾った。

JN5クラス優勝は大倉聡/豊田耕司組(AISIN GR Yaris CVT)。
JN5クラスのセレモニアルフィニッシュ。上段は1位の大倉/豊田組、下段は左から2位の天野智之/井上裕紀子組、3位の小濱勇希/竹下紀子組。

 JN6クラスは、今シーズン2戦目の出場となる兼松由奈/保井隆宏組のトヨタ・ヴィッツが、初日のトップを奪う力走を見せる。2日目に入ると福島賢大郎/井上草汰組のトヨタ・アクアが3番手から2番手に浮上、さらに初日4番手の南久松奈々/坂井智幸組も初日4番手から3番手に浮上してくる中、SS11(無数河-アルコピア2)で福島/井上組が痛恨のコースアウト。

 初日トップの兼松/保井組が2日目も3本のSSでベストタイムを奪う走りで全日本初優勝を獲得し、2位に南久松/坂井組が入賞と、表情台上位は女性ドライバーが並ぶ結果となった。また3位には、一時は4番手までポジションを落とした鷲尾俊一/鈴木隆司組のマツダ・デミオが入賞した。

JN6クラス優勝は兼松由奈/保井隆宏組(CUSCOコマツヴィッツCVT)。
兼松/保井組としては全日本初優勝。また兼松選手は女性ドライバーとして久々の全日本優勝を飾った。
JN6クラスのセレモニアルフィニッシュ。上段は1位の兼松/保井組、下段は左から2位の南久松奈々/坂井智幸組、3位の鷲尾俊一/鈴木隆司組。
女性ドライバーが1-2フィニッシュの快挙。1位の兼松選手に続き、南久松選手が2位獲得。

 その他、トヨタ・GRヤリス同士の対決となったオープン2クラスは松波登/草加浩平組、オープン1クラスはトヨタ・86の大島和也/小野圭一組がそれぞれクラストップでフィニッシュした。

OP-2クラス優勝は松波登/草加浩平組(日本ヴューテックダンロップGRヤリス)。
OP-1クラス優勝は大島和也/小野圭一組(WINMAX/ARD86)。
レースドライバーの大島選手と、ジムカーナドライバーの小野選手という異色のクルーがトップフィニッシュ。

フォト/CINQ、遠藤樹弥、中島正義、山口貴利、JAFスポーツ編集部 レポート/CINQ、JAFスポーツ編集部

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