FS-125部門東地域は波乱の展開、劇的な優勝をつかんだのは全日本初参戦の一宮總太朗選手!

レポート カート

2022年10月28日

大詰めを迎えた全日本カート選手権シリーズは、10月22~23日に静岡県・オートパラダイス御殿場で東地域第5戦が開催。FS-125部門では決勝上位2名へのペナルティによる繰り上げで、全日本選手権初参戦の一宮總太朗選手(KAKIE Racing Team)がデビューウィンを達成した。また、FP-3部門では春日龍之介選手(SPS川口)が2勝目を飾った。

2022年JAF全日本カート選手権 FS-125部門/FP-3部門 東地域第5戦
2022年JAFジュニアカート選手権 FP-Jr部門/FP-Jr Cadets部門 東地域第5戦

開催日:2022年10月22~23日
開催地:オートパラダイス御殿場(静岡県小山町)
主催:RTA

 2022年の全日本カート選手権FS-125部門/FP-3部門は東西各地域5戦+東西統一競技会で構成され、西地域ではひと足先に第5戦までを終了。この東地域第5戦を終えると残すは東西統一競技会のみとなり、チャンピオン争いはいよいよ佳境を迎える。

 なお、オートパラダイス御殿場では7月30~31日に西地域の第3戦が行われており、同じサーキットで同じ年に西地域と東地域の両大会が行われるという、珍しいシーズンとなった。

 10月も中旬を過ぎ、秋本番を迎えたサーキットは快晴に恵まれ、時折コースには富士山が姿をのぞかせた。朝晩は季節相応に冷え込むのだが、日中は気温が20度を超え、夏が戻ってきたような陽気にもなった。

FS-125部門東地域第5戦

 FS-125部門には6台のスポット参戦があり、出走は今季最多の21台にのぼった。西地域では百瀬翔選手(HRS JAPAN)が4戦連続のポール・トゥ・ウィンで大きくシリーズポイントを伸ばしており、今大会の結果次第では東西統一競技会を待たずに百瀬選手の戴冠が確定する状況だ。

 東地域でタイトル戦線に残っている落合蓮音選手(Formula Blue Ash)と五十嵐文太郎選手(Formula Blue エッフェガーラ)にとっては正念場だ。その五十嵐選手と落合選手が決勝のスターティンググリッドの最前列に並ぶ。しかし、26周のレースはふたりの思うようには運ばなかった。

 ポールの五十嵐選手はポジションを守ってスタートしたが、6周目に3番グリッドから発進した中井陽斗選手(TEAM EMATY)がトップを奪う。前半戦のトップグループは、5台から8台へと膨らんでいく。上位陣の実力は拮抗しており、わずかな差で大きく順位が入れ替わるつばぜり合いだ。

 そんな中、五十嵐選手は中盤戦に入った辺りから次々とポジションを下げ、折り返し点では8番手に後退した。3番手にいた落合選手も、後半戦に入ったあたりからリアのグリップダウンとエンジンの不調に見舞われて中団に沈んでいく。

 この実力均衡の戦いからわずかに抜け出したのが、中井選手と菊池貴博選手(K.SPEED WIN)だ。2台は2車身ほどの間隔のまま、ゴールに向かって周回を続けていく。この緊迫した戦いを、中井選手は渾身の走りで逃げ切り、前回の茂原大会に続いて真っ先にチェッカーをくぐった。

 チャンピオン候補ふたりのゴールは、五十嵐選手が6番手、落合選手が9番手。この瞬間、ふたりのタイトル獲得の可能性は消滅し、百瀬選手のチャンピオンが確定した……かに思われた。

 だが、ゴールの後に波乱が待っていた。レース後の審議の結果、トップ2の中井選手と菊池選手にはスタート進行でピット要員の退去違反があったとして10秒加算のペナルティを科される。2連勝を果たしたかに思われた中井選手は10位、菊池選手は11位という結果に。代わってウィナーとなったのは全日本初参戦の14歳、一宮選手だった。

 一宮選手は6番グリッドという好位置から決勝を迎えたが、スタート直後に9番手まで沈んでしまう。だが、このピンチから反転攻勢を開始。ファステストラップをマークしながら次々とポジションを上げ、16周目には3番手に浮上。ゴール間際には逃げていたトップ2を目の前に捕らえて3番手でチェッカーを受け、繰り上がりでデビューウィンを果たすこととなった。

 同じく繰り上がりの2位は塚本凛世選手(K.SPEED WIN)。開幕戦の快勝の後は不振が続いていた塚本選手だが、久々の好走で復調をアピールしてみせた。3位となった加納康雅選手(TIGRE)は、今季最上位だ。

 そして、正式結果表の5番目に落合選手の名前が。中井選手と菊池選手以外にも上位にペナルティがあったことで5位に繰り上がった落合選手は、首の皮一枚で逆転チャンピオンの可能性がつながり、全日本選手権初のタイトル獲得を目指して11月12~13日の東西統一競技会に臨むこととなった。

「いつも走っているレースとは違う人たちが周りを走っていて、ひとりひとり走りに個性があって緊張しました」と全日本初参戦の一宮總太朗選手。東西統一競技会への出場権を得るためにこの大会にエントリーし、見事優勝を果たした。「X30エンジンは今日が初めてのレースで、優勝できてうれしいです。全日本でも戦える手応えがありました」とコメント、次戦は実力で勝ちたいと抱負を語った。
2位は塚本凛世選手、3位は加納康雅選手。
FS-125部門表彰の各選手。

FP-3部門東地域第5戦

 今季最多のにぎわいとなったのは、FP-3部門も同様だった。10台のスポット参戦があり、出走は24台にのぼった。そんな中、決勝のポールポジションについたのは春日選手だ。

 4番グリッドの大越武選手(BEMAX RACING)がエンジン始動不能で戦線離脱する中、春日選手はポジションキープで24周のレースを発進。ポイントリーダーの富下李央菜選手(Formula Blue TKC)や地元勢の飛田陽宏選手(TBT RT with まえだ眼科)と活発なトップ争いを繰り広げ、何度か先頭の座を奪われながらも即座の逆転でレースをリードしていく。

 その奮闘が実り、春日選手は終盤戦に入ると後続を引き離すことに成功。1秒強のリードを保ってチェッカーを受け、今季2勝目を果たした。2位の富下選手は、今季4度目の表彰台登壇だ。予選をトップでゴールしながらジャンプスタートのペナルティで11番グリッドに沈んだスポット参戦の中野駿太選手(MRS)は、トップを上回るスピードでポジションを取り戻して優勝争いに迫り、3位入賞を果たした。

 この結果、春日選手は143点にシリーズポイントを伸ばして東西統一ランキングの首位に浮上。富下選手は2点差で2番手となった。

ポールスタートの春日龍之介選手が逃げて今季2勝目。「決勝では予選ほどのタイムが出なくて焦ったんですが、周回を重ねるごとにタイムも上がってきて、そうしたら後ろの音が遠くなっていきました。残り3周くらいで後ろを振り返ったら「いないじゃん!」となって、そこからは思い切って走れました」と自らのレースを振り返った。ここ最近の登り調子を維持して東西統一競技会に臨むようだ。
2位は富下李央菜選手、3位は中野駿太選手。
FP-3部門表彰の各選手。

FP-Jr部門/FP-Jr Cadets部門東地域第5戦

 同時開催のジュニアカート選手権東地域第5戦。FP-Jr部門では酒井龍太郎選手(ミツサダ PWG RACING)がタイムトライアルから決勝ゴールまで一度もトップを譲ることのないパーフェクトウィンで4連勝を飾った。この結果、酒井選手は西地域のポイントリーダーである伊藤聖七選手(かあと小僧 with Ash)と獲得順位もポイントもまったく同一のランキング首位に並び立ち、イーブンの条件で東西統一競技会での決戦に臨むこととなった。

 松井沙麗選手(BEMAX RACING)は3番グリッドからの逆転で2位となり、東地域のポイントランキングも2番手に浮上。塚本聖成選手(REON RACING TEAM)が5番グリッドから3位に入賞して初表彰台に立った。

 FP-Jr Cadets部門では、大集団の好バトルから終盤に常川将太郎選手(チームぶるーと)と関口瞬選手が抜け出し、マッチレースを展開。最終ラップの逆転で関口選手が2勝目を獲得した。前戦で初優勝を飾った常川選手は2連勝こそ逃すも、確かな成長を示すレースを演じた。3位の松居寿來選手(ガレージC)は、今季3度目の表彰台だ。

「予選でも決勝でもタイムが落ちることがあって厳しい状況でしたが、スタートの時点で後ろを離せたので、そこでひと安心できた感じでした。東西統一戦は勝つ以外ない状況でプレッシャーもかかりますが、何とか自分にも勝って、昨年に続いて2クラスでチャンピオンになりたいです」と優勝の酒井龍太郎選手。昨年のAPG大会でのトップチェッカーを思い出して、同じポーズでゴール!
2位は松井沙麗選手、3位は塚本聖成選手。
FP-Jr部門表彰の各選手。
関口瞬選手が2勝目を挙げたFP-Jr Cadets部門。「ちょっと危ないレースだったけれど、何とか1位で帰ってこられて良かったです」と優勝を喜んだ。「ストレートが速かったので、最後は2コーナーで前に出て、クロスさえ防げば大丈夫だと思って勝負にいきました。東西統一競技会では、東地域のランキング首位はもちろんだし、東西統一のチャンピオンも獲りたいので頑張ります」
2位は常川将太郎選手、3位は松居寿來選手。
FP-Jr Cadets部門表彰の各選手。

APG MAX Lights

 この大会では併催レースとしてAPG MAX Lightsも行われ、16台が実力伯仲の好レースを繰り広げた。16周の決勝をトップでゴールしたのは八田宗之選手(ガレージ茶畑)だったが、プッシングのペナルティを受けて結果は4位。繰り上がりで勝者となったのは、フェスティカサーキット瑞浪の同シリーズから遠征してきた舟橋弘典選手(Hirai Project with Ash)だった。0.139秒差の2位は、54歳の西野寛選手(RLアステック)。けーたこ選手(K3レーシング)が3位入賞を果たした。

「トップチェッカーで優勝したかったです」と悔しい表情を見せた舟橋弘典選手が繰り上がりで優勝。「速さがそろっていてみんな同じタイムで走ってしまうので、レースが激しくなって大変だったんですが、それがまた楽しかったです。APGシリーズ常連の方々は本当にいい人ばかりで、コース上では真剣だけれどピットでは和気あいあいと過ごすことができました」と充実した週末を過ごしたそうだ。
2位は西野寛選手、3位はけーたこ選手。
MAX Lights表彰の各選手。

フォト/JAPANKART、長谷川拓司、JAFスポーツ編集部 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部

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