TCR JAPAN、GR86/BRZカップは、シリーズ終盤を迎えてバトルもヒートアップ!

レポート レース JAFWIM

2022年11月16日

10月29~30日に鈴鹿サーキットで開催された第21回JAF鈴鹿グランプリのサポートレースとして、TCRジャパンのサタデーシリーズ、サンデーシリーズそしてGR86/BRZカップのプロフェッショナルシリーズとクラブマンシリーズの4レースが行われた。レースウィークは2日間とも好天に恵まれ、いずれも好バトルが繰り広げられた。

第21回JAF鈴鹿グランプリ
2022年JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権第9戦&第10戦
TCR JAPAN SERIES 2022 Round6 SUZUKA CIRCUIT
TOYOTA GAZOO Racing GR86/BRZ Cup 2022

開催日:2022年10月29~30日
開催地:鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)
主催:NRC、SMSC、株式会社モビリティランド

 6大会で争われるTCRジャパンは、これが最終大会。すでにサタデーシリーズはHIROBON選手のチャンピオンが確定しているが、サンデーシリーズには猪爪杏奈選手にも可能性が残されていた。勝ってなお、HIROBON選手の結果次第ではあったが……。

 その猪爪選手が、サタデー&サンデーシリーズともにポールポジションを獲得。「アタックは両方とも1コーナーでミスしちゃって、ちょっと行き過ぎちゃいました。その他はチームに教えてもらった通りに走れたと思います。チャンピオンはあんまり意識しないようにして、(予選と)同じ順位で帰って来たいですね」と、まずは連勝を目指していた。

 一方、「今回はシビックの方が、なんか速そうですね」と語るHIROBON選手は、サンデーシリーズこそ3番手ながら、サタデーシリーズは2番手相当のタイムが走路外走行と判定されて、6番手に降格と、予選ではやや出遅れた。

 サタデーシリーズ決勝は、予選3番手のMOTOTINO選手が決勝で絶妙のスタートを決めた。2番手の加藤正将選手をスタートでかわすと、1コーナーのアウトから猪爪選手に迫り、2コーナーでは前に出たのだ。

 しかし、勢いに乗る猪爪選手は、MOTOTINO選手を逃さなかった。1周目のシケインでインを刺し、早々とトップに返り咲く。そして2周目の1コーナーでは加藤選手が、MOTOTINO選手をかわして2番手に浮上。その間にスパートをかけた猪爪選手は、一気に逃げの構えに出てプレッシャーから解放されると、もう誰も寄せつけず。

 終盤には加藤選手が原因不明の振動でペースを抑えたこともあり、「スタートは、はい(苦笑)。その後はずっと安定したペースで走れました。鈴鹿で勝つのは初めてです!」と語った猪爪選手が、13秒もの大差で優勝。HIROBON選手は4位だった。

TCR JAPAN SERIES 2022第6戦サタデーシリーズは、猪爪杏奈選手(DOME RACING)がポールトゥウィンを飾った。
猪爪選手はサタデーシリーズでは今季初となる優勝を達成した。
加藤正将選手(Audi Team Mars)が2位(左)。MOTOTINO選手(55MOTO RACING)が3位に入賞した(右)。
左から2位加藤、優勝猪爪、3位MOTOTINOの3選手。

 サンデーシリーズ決勝では、2番グリッドから塩谷烈州選手が好スタートを切って、軽く当たりながらも、1コーナーで猪爪選手を抑えてトップに立つ。HIROBON選手もMOTOTINO選手に抜かれ、4番手でレースを開始する。

 何としても勝ちたい猪爪選手は、1周目のシケインで早くも勝負をかけ、塩谷選手をヒットする形となったものの、抜き去るまでには至らず。後にこの行為が5秒加算のタイムペナルティと判定されてしまう。一方、その直後には、HIROBON選手が加藤選手にも抜かれ、ポジションダウンする。

 なおも猪爪選手は諦めることなく、塩谷選手に何度も迫っていくが、ベテランのガードはその都度、固い。そんな中、先の接触の影響か、猪爪選手の右フロントフェンダーが浮き始め、それが抵抗となっているのか、ペースが落ち始め、そこにMOTOTINO選手が急接近。6周目の1コーナーにはスリーワイドで飛び込むが、ここは僅かに猪爪選手が前に出る。

 だが、並んだまま飛び込んだS字で塩谷選手と接触して弾かれた猪爪選手は5番手に後退。さらにその周のシケインでは、MOTOTINO選手と加藤選手が接触。その脇をスルリとかわしてHIROBON選手が2番手に上がる。

 その時点で2秒近くあった塩谷選手との差を、8周目には1秒を切るまでとしたHIROBON選手だったが、もはや無理をしていないのは明らか。逃げ切った塩谷選手は今季初優勝。「自分のラインはキープして、相手の出方を見ていました。ペースが全然違いましたからね。今週の猪爪選手はめっちゃ速かったんで、ぶつけなければ、きれいに抜いていけたんじゃないかな」と、塩谷選手は序盤の激しい攻防を振り返った。

「確実にチャンピオンを獲りにいきました。(2周目のシケインで)当てられた時は、一瞬、アカンかなと思いましたけどね。最後、行ったらいけたかもしれないけど、もう無理はしませんでした。今年もチャンピオンコンプリートできて、最高です!」と2位でゴールのHIROBON選手。初の3位フィニッシュとなった鈴木建自選手は感涙にむせて、しばらくマシンから降りられなかった。猪爪選手は最終的に5位でゴールとなった。

TCR JAPAN SERIES 2022第6戦サンデーシリーズでは、オープニングラップで首位に立った塩谷烈州選手(全薬工業 with TEAM G/MOTION’)がそのまま逃げ切った。
塩谷選手はサタデー、サンデー両シリーズを通して今季初の1勝をマークした。
HIROBON選手(BIRTH RACING PROJECT【BRP】)が2位(左)。鈴木建自選手(BIRTH RACING PROJECT【BRP】)が3位入賞を果たした(右)。
左から2位HIROBON、優勝塩谷、3位鈴木の3選手。
HIROBON選手は、サタデーシリーズとサンデーシリーズのダブルチャンピオンに輝いた。

 ここまで3戦開催されたGR86/BRZカップながら、初めて予選は完全なドライコンディションで競われた。34台がエントリーしたプロフェッショナルシリーズでは、名物のワンアタック合戦が、久々に繰り広げられていた。その一発をほぼ完璧に決めてポールポジションを獲得したのは、菅波冬悟選手だった。

「昨日より気温も路面温度も低かったので、タイムが出たかなという感じです。走りは、やることは全部できたかな? しっかり気持ちを強く持って、大きな失敗さえしなければ、抜かれるようなレースじゃないので、うまく抑えてなんとか逃げ切りたいと思います」と菅波選手。

 ところが、実際の決勝レースは、その言葉とは裏腹な展開になってしまう。予選2番手は堤優威選手で、3番手は小河諒選手。以下、吉田広樹選手、地頭所光選手、岡本大地選手という順位になった。

 決勝レースは、まさに雲ひとつない青空の下で行われた。注目のスタートでは、何と菅波選手がサイドブレーキを戻しておらず、完全に出遅れてしまう。一方、無難にスタートを決めた堤選手は菅波選手の寄せに遭うも、ピットロード出口まで避けて接触を回避するとともに、トップに浮上。そして2番手には小河選手、3番手には吉田選手が躍り出る。対して、菅波選手は130Rのオーバーランもあり、オープニングラップの内に9番手まで順位を落としていた。

 2周目に入ると、完全に堤選手と小河選手、吉田選手によるトップグループが形成される。この中で早々と動いたのが吉田選手だ。4周目のデグナーで小河選手をかわして2番手に浮上。逆に小河選手はヘアピンの立ち上がりでダートに足を落とし、ペースを鈍らせた隙を地頭所選手に捕らえられてしまう。

 この後は地頭所選手を含めた三つ巴でのトップ争いに転じ、ペースでは堤選手に優る2人だったが、逆転の決め手を欠いたまま、チェッカーが振られてしまう。辛くも逃げ切った堤選手にとっては、4年ぶりの勝利となった。

「前回のレースは練習中のクラッシュで出場できなかったので、チームに対して恩返しができました。終盤は後ろの2台が速くて厳しかったんですが、抑えるべき所は抑えられて、最後まで戦えたので良かったです」と堤選手。

 その後方でのバトルも激しく、リーダーとなっていたのは小河選手だったが、7周目のスプーンで岡本選手、冨林勇佑選手に相次いでかわされてしまう。最終ラップには元嶋佑弥選手も2台抜きを果たし、その間に一歩逃げた岡本選手が4位を獲得。一方、9番手でゴールした菅波選手だったが、スタート直後の行為がペナルティの対象とされ、40秒加算で31位にまで降格することになった。

TOYOTA GAZOO Racing GR86/BRZ Cup 2022プロフェッショナルシリーズ第4戦は、予選2番手からスタートした堤優威選手(T by Two カバナ BS)が今季初優勝を飾った。
堤選手は今回の優勝でランキングも2位に浮上した。
吉田広樹選手(埼玉トヨペットGB BS)はふたつポジションを上げて2位でフィニッシュ(左)。ファステストラップを記録した地頭所光選手(GB CAMP BS)が3位に入った(右)。
左から2位吉田、優勝堤、3位地頭所の3選手。

 38台がエントリーしたクラブマンシリーズは、ここまで2連勝でポイントリーダーの勝木崇文選手がPPを獲得。「今まで以上にプレッシャーがきつかったんですけど、いいタイムで走れました」と語る通り、2番手の松井宏太選手さえ、コンマ5秒の差をつけられていた。

 しかし、決勝では松井選手がスタートを決めて1コーナーへのホールショットに成功し、勝木選手を封じ込む。さらに5番グリッドから大﨑達也選手が一気に3番手に浮上。1周目を終えた時点で、早くも松井選手と勝木選手が後続を引き離しかけたが、直後のヘアピンでクラッシュがあり、セーフティカーが導入される。

 6周目からバトルは再開し、アクセルオンのタイミングで勝木選手を出し抜いた感もあった松井選手だったが、シケインの立ち上がりでミスをしてしまう。ピタリと着いて逆転を狙った勝木選手だが、ストレートエンドのあと一歩というところでリミッターに当たってしまい、松井選手を抜くまでには至らず。その後は大﨑選手のみならず、岩本佳之選手や菱井将文選手を加えてトップが競われるも、しっかりガードを固め続けた松井選手が、開幕戦以来となる2勝目をマークした。

「集中していけば、そのままトップをキープできるなと思っていて、最後までいいレースができたと思います」と語る松井選手に対して、「悔し過ぎです。次はスタートを失敗しないように、そこは必死にやっていきます」と、勝木選手は反省することしきりだった。3位はシリーズ初参戦の大﨑選手が獲得し、早速、表彰台に上がる快挙を達成した。

TOYOTA GAZOO Racing GR86/BRZ Cup 2022クラブマンシリーズ第4戦では、ホールショットを決めた松井宏太選手(TEAM SAMURAI)が逃げ切って優勝。
開幕戦に続くシーズン2勝目をマークした松井選手。
勝木崇文選手(Star5 ダイシン)は2番手に甘んじ、3連勝はならず(左)。シリーズ初参戦となった大﨑達也選手(奈良トヨペットCR DL)がデビュー戦で3位を勝ち取った(右)。
左から2位勝木、優勝松井、3位大﨑の3選手。

フォト/石原康、遠藤樹弥、吉見幸夫 レポート/はた☆なおゆき

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