GT500はStanley NSX、GT300はARTA NSXがポール・トゥ・ウィン タイトルはGT500がカルソニックZ、GT300はリアライズGT-Rが獲得
2022年11月18日
スーパーGTシリーズ第8戦(最終戦)が11月5~6日に秋深まるモビリティリゾートもてぎにおいて300kmレースとして行われ、GT500クラスでは100号車STANLEY NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐組)がポール・トゥ・フィニッシュで今季初優勝。チャンピオン争いは12号車カルソニック IMPUL Z(平峰一貴/ベルトラン・バゲット組)が逆転でチーム27年ぶりのタイトルを獲得した。
GT300クラスでは55号車ARTA NSX GT3(武藤英紀/木村偉織組)がポール・トゥ・ウィンで両クラスともホンダが制覇。タイトル争いは、56号車リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R(藤波清斗/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組)が2年ぶりに戴冠。シリーズは両クラスとも日産が制覇した。
2022 SUPER GT Round.8
MOTEGI GT 300KM RACE GRAND FINAL
開催日:11月4~6日
開催場所:モビリティリゾートもてぎ(栃木県茂木町)
主催:ホンダモビリティランド(株)、M.O.S.C、(株)GTアソシエイション
2022年SUPER GTシリーズもついに最終戦。GT500、GT300クラスともドライバー、チームのタイトルが決定する。サーキット周辺の木々は赤や黄色に色づき、秋の深まりを感じさせた。
このレースは最終戦であり、これまでの7戦に出走したほとんどの車両のサクセスウェイト搭載はなく、車両そのものの性能を発揮したガチンコバトルが演じられる。またこのレースではドライバー交代時にタイヤ4本交換の義務があり、タイヤ無交換や2本交換という作戦は採れなくなる。
6日は雲が多いものの晴れ。朝に行われた公式練習では、ランキング2位の12号車Zがトップタイムで、ポイントリーダーの3号車CRAFTSPORTS MOTUL Z(千代勝正/高星明誠組)は3番手につけたが、ランキング3位の17号車Astemo NSX-GT(塚越広大/松下信治組)は11位と調子が上がらない。GT300クラスではポイントリーダーの56号車GT-Rがトップで、ランキング2位の61号車SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内組)も3位につけた。
気温16℃、路面温度27℃というコンディションの14時20分に始まった公式予選で1分35秒194のコースレコードでポールポジションを獲得したのは、ランキング4位で逆転戴冠を狙う100号車NSX。これに19号車WedsSport ADVAN GR Supra(国本雄資/阪口晴南組)、12号車Z、3号車Z、24号車リアライズコーポレーション ADVAN Z(佐々木大樹/平手晃平組)、8号車ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺組)が続いた。
GT300クラスでは55号車NSXがこちらもコースレコードでポールポジションを獲得。18号車UPGARAGE NSX GT3(小林崇志/太田格之進組)が2位でNSXがフロントローに並び、これに4号車グッドスマイル 初音ミク AMG(谷口信輝/片岡組)、65号車LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/篠原拓朗組)、88号車Welbo Primez ランボルギーニ GT3(小暮卓史/元嶋佑弥組)が続き、ポイントリーダーの56号車GT-Rは7位につけた。2.5点差を逆転したいランキング2位の61号車BRZは、Q2で山内選手がまさかのクラッシュを喫し16番グリッドと苦しい予選になった。
6日も朝から雲ひとつない快晴で、朝早くから2万6,000人のファンがサーキットに詰めかけ、ゲート付近では渋滞ができるほどだった。決勝を前にしたウォームアップ走行の直前には、航空自衛隊松島基地からF-2B戦闘機が2機飛来して歓迎フライトを行うと、スタンドのボルテージは一気に高まった。
栃木県警の白バイ、国産スーパーカーのパトカー先導で始まったフォーメーションラップを終え、13時7分に300kmの決勝レースがスタート。3コーナーで12号車Zのバゲット選手が2番手に上がるも130Rまでに19号車スープラの国本選手が2番手を奪い返す。そして5コーナーで3号車Zの千代選手が8号車NSXの野尻選手と接触し、野尻選手はスピン。千代選手にはドライブスルーのペナルティが課され、最後尾に沈むことになった。
9周目の3コーナーで多重クラッシュが発生。これでFCY(フルコースイエロー)からセーフティカー(SC)導入となり、千代選手はトップから大きく引き離されることはなかった。さらに14周目のストレートで大きな追突事故が起き、さらにSCランは続くことに。この時点で予選10位の17号車NSXが大きく順位を上げて4番手、予選11位の14号車ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/山下健太組)が5番手に浮上していた。
レースは20周完了でリスタート。21周で63周レースの1/3を消化してドライバー交代が可能になるが、最初に動いたのは2番手の19号車スープラ。22周でピットインをすると、次の周にはトップの100号車NSX、12号車Z、14号車スープラが、その次の24周で17号車NSXがピットインしてドライバー交代。残り40周での燃費とタイヤの摩耗がレースを左右しそうな展開となった。
ピット作業後は100号車NSXの牧野選手、12号車Zの平峰選手、14号車スープラの山下選手、17号車NSXの塚越選手、3号車Zの高星選手という順となり、GT500の全車がピット作業を済ませた38周目にはトップ5台は6秒の中に収まり、その差を縮めたり広げたりを続けた。
終盤の51周目に3号車Zが17号車NSXを捕らえ、4番手に上がるも、それ以降は順位の変動もなく63周でチェッカー。100号車NSXが嬉しい今季初優勝を飾り、2位は12号車Zでタイトルを確定、3位は14号車スープラとなった。12号車Zの平峰選手とバゲット選手は初のタイトル、TEAM IMPULは1995年以来27年ぶりのチャンピオンを獲得した。
GT300クラスは、スタート直後の3コーナーまでに18号車NSXの小林選手がトップを奪い、隊列をリードした。9周目にGT300とGT500車両の多重クラッシュが発生し、FCYからSC導入へ。さらに14周目にはストレートで後方車両が激しい追突事故を起こし、SCはピットロードを使用して続くことになった。この間にタイヤ交換や給油を済ませる車両もあったが、20周完了でリスタート。
ここでターボトラブルのために順位を落としていた61号車BRZら数台がピットインをすると、それに続いて早めのピットインをする車両が増えていった。25~26周で4番手56号車GT-Rの藤波選手、トップ18号車NSXの小林選手がピットイン。しかし18号車NSXはピットアウト時にクラッチが切れず、大きく順位を落としてしまった。
これでトップに立った55号車NSXは35周でピットインし、37周までに上位陣がピットインを済ませると太田選手が再びトップに躍り出た。これに続いたのが52号車埼玉トヨペットGB GR Supra GT(吉田広樹/川合孝汰組)の吉田選手、10号車TANAX GAINER GT-R(富田竜一郎/大草りき組)の富田選手、56号車GT-Rのオリベイラ選手、87号車Bamboo Airways ランボルギーニ GT3(松浦孝亮/坂口夏月組)の松浦選手。オリベイラ選手はこの順位をキープしていればタイトル獲得となる。
しかし42周目の3コーナーで56号車GT-Rの右フロントホイールが外れ、3輪走行に。オリベイラ選手はピットインしてホイールを装着してレースに戻るも、これで大きく順位を落としてタイトル獲得が絶望的になった。これでチャンピオンに近づいたのが、5位フィニッシュで大草選手がタイトルを獲得できる10号車GT-Rだった。
3番手を快調に走行していた10号車GT-Rの富田選手だったが、52周目の2コーナーで87号車ランボルギーニにかわされ4番手に。さらに54周目にはピット作業で遅れた18号車NSXの太田選手にかわされ、5番手へドロップして、56号車GT-R、52号車スープラ、10号車GT-Rは52点で並ぶことになった。
この時点で52号車スープラが2番手を守れば同ポイントながらタイトル獲得ということになったが、終盤57周目の90度コーナーで87号車ランボルギーニの松浦選手に逆転され、3番手へ順位を落としてタイトル争いから脱落。これで10号車GT-Rが5番手を守れば大草選手が同点ながらチャンピオン獲得だったが、ファイナルラップの2コーナーで88号車ランボルギーニに逆転されてタイトル獲得はならず。
60周を走り切った55号車NSXがこのコンビとなって初のトップチェッカー。2位は87号車ランボルギーニで今季初の表彰台獲得、3位は52号車スープラだった。56号車GT-Rは19位でノーポイントだったが、ライバルの61号車BRZは20位、10号車GT-Rは8位、52号車は3位となり、逃げ切って2年ぶりのタイトル獲得となった。
フォト/石原康、遠藤樹弥 レポート/皆越和也