激戦のシリーズを戦い抜いた東と西のカーターが鈴鹿に集う東西統一競技会が開催!

レポート カート

2022年11月18日

2022年の全日本カート選手権を締めくくる東西統一競技会が鈴鹿サーキット南コースで開催された。大会最終日はウェットコンディションとなり、FS-125部門では中井陽斗選手(TEAM EMATY)が2勝目を獲得、百瀬翔選手(HRS JAPAN)がチャンピオンに確定した。またFP-3部門では、スポット参戦の大槻直選手(ASH)が初優勝、春日龍之介選手(SPS川口)が2位でフィニッシュしてチャンピオンを確定させた。

2022年JAF全日本カート選手権 FS-125部門/FP-3部門 東西統一競技会
2022年JAFジュニアカート選手権 FP-Jr部門/FP-Jr Cadets部門 東西統一競技会

開催日:2022年11月12~13日
開催地:鈴鹿サーキット南コース(三重県鈴鹿市)
主催:SMSC

 2022年の全日本カート選手権FS-125部門/FP-3部門と、ジュニアカート選手権FP-Jr部門/FP-Jr Cadets部門は、いよいよシリーズ最後の大会を迎えた。ここまで東西ふたつの地域に分かれて5戦ずつを戦ってきたドライバーたちは、一年の締めくくりにこの東西統一競技会に集結してレースを戦い、東西統一の最終ランキングを決する。

 この重要な一戦では、決勝の結果にそれまでの1.5倍のシリーズポイントが与えられる。その舞台となったのは三重県・鈴鹿サーキット南コース。大会初日にタイムトライアルを、2日目に予選と決勝を行うスケジュールだ。

東地域と西地域とで戦ってきたドライバーたちの、シリーズの集大成となる東西統一競技会。だがその舞台に水を差すかのごとく、公式練習後から雨天に見舞われてしまう。
東西統一競技会のシリーズポイントは1.5倍と、ビッグポイントを獲得できるチャンス。チャンピオン獲得の可能性がある選手は祈る思いでレースに臨んだ。

FS-125部門東西統一競技会

 24台が参加したFS-125部門では、百瀬選手が西地域で4度のポール・トゥ・ウィンを果たしてポイントレースを圧倒的にリードしている。他にチャンピオン獲得の権利を持っているのは、東地域で2勝の落合蓮音選手(Formula Blue Ash)のみ。ただし、落合選手の逆転タイトル獲得には予選で2番手以内になり、決勝で優勝することが最低条件だ。

 快晴に恵まれた大会初日、午後に入っていよいよ公式セッションが始まった。まずタイムトライアルでトップタイムを叩き出したのは、西地域の開幕戦ウィナーで、今季2度目のスポット参戦の向畑疾走選手(KC NAGAHARA)。48秒932は鈴鹿南コースの新コースレコードだ。2番手は、速さはありながらまだ優勝のないの五十嵐文太郎選手(Formula Blue エッフェガーラ)。百瀬選手は8番手、落合選手は10番手につけた。

 大会2日目は公式練習終了後に雨が降り出し、12周の予選はぶっつけ本番のウェットレースとなる。ここでは向畑選手と五十嵐選手が3番手以下を引き離してラップを重ね、終盤の逆転で五十嵐選手がトップでゴール、2戦連続の決勝ポールを手に入れた。向畑選手からやや離れてゴールの3番手、4番手は、加納康雅選手(TIGRE)と塚本凛世選手(K.SPEED WIN)だ。

 落合選手は懸命に順位を上げるが、結果は5番手。この時点で、このヒートを8番手で終えた百瀬選手のチャンピオンが確定した。

 本降りの雨の中で行われた決勝は、22周の戦い。ここで他を上回る速さを見せたのが、中井選手だった。7番グリッドからスタートした中井選手は、オープニングラップで3番手に浮上すると、2周目には2番手へ。やがてトップを行く五十嵐選手のテールを捕らえると、6周目に1コーナーから3コーナーまで横並びのバトルを演じて五十嵐選手を下し、トップに浮上した。

 ここからは中井選手の独壇場。一気に後続を突き放すと、その後もアドバンテージをぐいぐいと拡大し、7秒以上のリードを築いてチェッカーをくぐった。これで中井選手は第4戦に続く2勝目。ペナルティで幻の勝利に終わった第5戦を含めると、3戦連続のトップチェッカーだった。

 2番手を行く五十嵐選手には、オープニングラップの4番手後退を挽回してきた向畑選手が接近。オーバーテイクの応酬の末、向畑選手が2位を獲得した。向畑選手は2戦の出場でランキング10位をゲットだ。

 五十嵐選手はラスト2周でさらにポジションを下げ、3位表彰台は11番グリッドから挽回した近江川暖人選手(HRS JAPAN)のものに。これで近江川選手はランキングも2位に浮上だ。4~6番手でゴールした落合選手、豊島里空斗選手(HRTwithカローラ新茨城CSI Racing)、百瀬選手がいずれもペナルティを課されたことで、喜納颯矢斗選手(YRHKS)が4位となった。

前戦は幻のトップチェッカーとなった中井陽斗選手が、東西統一競技会で快勝。「最初の方はちょっとフロントがグリップしないかなと思ったけれど、走るにつれてだんだんグリップが上がってきて、このままいけると思いました。中盤以降はけっこう水溜りも多くなっていたので路面の様子を見つつ、慎重に走っていました。タイムトライアルで13番手だった時はちょっとヤバいなと思ったけれど、決勝はこういう結果で終えることができたので、とてもうれしいです」
2位は向畑疾走選手、3位は近江川暖人選手。
FS-125部門表彰の各選手。
4度のポール・トゥ・ウィンを飾って臨んだ東西統一競技会、百瀬翔選手がチャンピオンを確定させた。「正直なところ、ちょっと複雑な気持ちですね」と語るのは、決勝8位に終わったことが理由だろう。「勝って一年を終わりたかったので、最後にこういう結果で終わってしまって悔しいです。天候がこういう感じでけっこう荒れたレースだったので、難しいレースではありましたね。予選まではグズグズだったけれど、決勝はまあまあって感じでした」とコメントした。

FP-3部門東西統一競技会

 FP-3部門は最大出走台数を超える37台が参加。予選はふたつのグループに分けて行われ、各グループ15番手以下の選手によるセカンドチャンスヒート(敗者復活戦)を経て、決勝に進出する34台のグリッドが決まる。

 この東西統一競技会にポイントリーダーとして臨むのは、東地域で2勝の春日選手だ。それに続くのは東地域の富下李央菜選手(Formula Blue TKC)と西地域の鈴木恵武選手(Formula Blue 増田スピード)。他に東地域の大越武選手(BEMAX RACING)、西地域の内海陽翔選手(シナジーリンクス)と中村海斗選手(TEAM NAGAO)もチャンピオンの可能性を残している。

 ドライコンディションのタイムトライアルでは、春日選手がトップ、富下選手が2番手につけた。ぽつぽつと雨粒が落ち始めた中で行われた予選では、Aグループで春日選手が独走ゴール。Bグループでウェットタイヤをチョイスした富下選手がやはり独走でトップゴールを果たし、決勝のスターティンググリッドはこのふたりがフロントローに並ぶこととなった。鈴木選手は予選Bグループを7番手で終え、決勝グリッドは13番手だ。

 完全なウェットコンディションとなった22周の決勝では、新たなヒーローが姿を現す。3番グリッドからスタートした17歳の大槻選手だ。大槻選手は4周目に富下選手を、6周目に春日選手を抜き去りトップに躍り出ると、その勢いのまま独走を開始。第3戦から出場すると、レースのたびに結果を上昇させ、前戦では2位表彰台に立った大槻選手が、東西統一競技会という大一番で初優勝を飾った。

 春日選手と富下選手は、レース中盤から最終ラップまで続く接近戦を展開。ここは春日選手が背後のライバルにチャンスを与えることなく走り切り、2位フィニッシュでチャンピオンを確定させた。3位の富下選手は初勝利こそつかめなかったものの、今季6戦で5度の表彰台に立ってみせた。

「中山(第5戦)に一番気合いを入れて臨んだものの、そこで勝てなかったので……、今回取り返すことができてうれしいです」と優勝を喜ぶ大槻直選手。「自分は雨が得意だと思っているので、(ウェットに変わった決勝は)むしろ気合いを入れてスタートしました。元々は他のレースがメインで、FP-3はそちらの練習のつもりで出始めたけれど、だんだんと結果を出せるようになってきて、後半からは本腰を入れて臨みました」と、良いシーズンを送れたようだ。
2位は春日龍之介選手、3位は富下李央菜選手。
FP-3部門表彰の各選手。
「大槻選手に先行されて、富下選手が迫ってきた時は危ないかなと思って、ミスのないよう気をつけて走りました。キャブレターを調整したらタイムがだんだん上がってきたし、ギヤ比がコンディションに合っていたこともあって、最後まで粘り切ることができて良かったです」と東西統一競技会を振り返る春日選手。2位でレースを終えたが、ライバルの富下選手を抑えてチャンピオンを確定させた。「今は4割くらい悔しい気持ちで、残りはうれしい気持ちです」

FP-Jr部門東西統一競技会

 ジュニアカート選手権のFP-Jr部門では、西地域のポイントリーダー伊藤聖七選手(かあと小僧with Ash)がスタートで2番グリッドからトップに立つと、独走を続けてゴール。対して、伊藤選手と同ポイントで横一線のチャンピオン争いを繰り広げていた酒井龍太郎選手は、予選でトップを獲ったが、雨の決勝ではやや苦戦して4番手のゴールに終わった。

 ところがレース後、伊藤選手はスタートでコリドーをはみ出ていたとして3ポジション罰退のペナルティを課され、結果は4位に。これで3位に繰り上がった酒井選手が、昨年のFP-Jr Cadets部門に続く2年連続のジュニア選手権チャンピオンとなった。ウィナーは14台中12番目のグリッドから目を見張る追い上げを演じた、台湾から遠征のクインテン・ル選手(China Future Speed)。松井沙麗選手(BEMAX RACING)が2位に入賞し、ランキング3位でシリーズを締めくくった。

各種カートレースでトップ争いを繰り広げる実力をつけてきた、台湾から遠征のクインテン・ル選手。「優勝できて素晴らしい気持ちです」とトップチェッカーの感想を述べた。「今年はジュニア選手権に2戦出場したけれど、とてもハードなレースでした。来年どのレースに出るかはまだ決まっていないけれど、また日本に戻ってきてレースをしたいです」と抱負を語った。
2位は松井沙麗選手、3位は酒井龍太郎選手。
FP-Jr部門表彰の各選手。
2年連続のチャンピオン確定となった酒井選手。「FP-Jr部門のワンメイクタイヤは、雨の鈴鹿で乗ったこともなかったので、決勝は厳しいレースになりました。伊藤選手がどんどん遠くへ逃げていくのを見て、これじゃあチャンピオン獲れないなって……」と苦しい気持ちを噛みしめていたようだ。だが車検が終わって伊藤選手のペナルティを知るや、「僕がチャンピオンだ! って。うれしいっていうより、信じられないような不思議な気持ちでした」と笑顔で喜んだ。

FP-Jr Cadets部門東西統一競技会

 出走20台のにぎわいとなったFP-Jr Cadets部門では、関口瞬選手(TECORSA)が決勝をポールから独走して3勝目を獲得した。一方、チャンピオン候補の最右翼として最終決戦に臨んだ澤田龍征選手(LUCE MOTOR SPORTS)は、目の前を行く横山輝翔選手(Energy JAPAN)を懸命に追い、残り2周の逆転で2位フィニッシュ。この結果、澤田選手が関口選手を0.5点上回ってシリーズチャンピオンを確定させた。

 最終ラップには森谷永翔選手(ERS with SACCESS)も横山選手をパスして3位をゲット。森谷選手は今季2回のスポット参戦で2度の表彰台登壇だ。合計ポイント首位で東西統一競技会を迎えた横山選手は4位でゴール、ランキング3位で2022シリーズを終了した。

チャンピオンの可能性を残して挑んだ東西統一競技会、独走で優勝を飾った関口選手だったが「チャンピオンには0.5ポイント届かなかったけど、最終戦で自分の力を出し切ることができて良かったです。まだ足りないところばかりだけれど、今年はレースの安定性とかドライビングとかバトルとか、成長できたと一年だったと思います。来年は、今年取りこぼしたチャンピオンを絶対に獲ります」と前向きだ。
2位は澤田龍征選手、3位は森谷永翔選手。
FP-Jr Cadets部門表彰の各選手。
わずか0.5ポイント差でチャンピオン確定を手繰り寄せたのは澤田選手。「横山選手は、抜いた後でまた抜き返されないよう、ゴールのぎりぎり直前まで抜くのを待ちました」と作戦の内を明かす。「1位になりたかったけれど、1位の子が逃げてしまったので、そこで(チャンピオン獲得の方に)気持ちを切り替えました」と2位でフィニッシュしつつ、ゴールした時は悔し涙を見せる場面も見られた。しかし「チャンピオンになれたので、良かったと思います」と締めた。
左からFS-125部門の百瀬選手、FP-Jr部門の酒井選手、OK部門の小田優選手、FP-Jr Cadets部門の澤田選手、FP-3部門の春日選手がチャンピオンを確定させた。カートスポーツ専門誌のJAPANKARTより、記念パネルが進呈された。

フォト/JAPANKART、長谷川拓司、JAFスポーツ編集部 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部

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