五十嵐文太郎選手がFS-125/X30の熱戦を制し、地方カート選手権もてぎシリーズのチャンピオンに確定!

レポート カート JAFWIM

2022年11月30日

2022年の地方カート選手権モビリティリゾートもてぎシリーズが最終戦を迎えた。ここまでシリーズランキング2番手の五十嵐文太郎選手(チームエッフェガーラ)がポールから優勝、同時にチャンピオンを確定させた。

2022年JAF地方カート選手権 モビリティリゾートもてぎシリーズ 第6戦
2022 もてぎカートレース 第6戦

開催日:2022年11月27日
開催地:モビリティリゾートもてぎ北ショートコース(栃木県茂木町)
主催:ホンダモビリティランド株式会社

地方カート選手権 FS-125/X30

 2022年の地方カート選手権モビリティリゾートもてぎシリーズ(FS-125/X30)は、11月27日に最終戦を迎えた。全6戦で行われるこのシリーズは、合計ポイントを有効5戦で集計した結果で最終ランキングが決まる。

 シリーズの舞台は全長982mの栃木県・モビリティリゾートもてぎ北ショートコース。CIK-FIAワールドカップで若き日のルイス・ハミルトン選手やニコ・ロズベルグ選手も走った、東日本を代表するカートコースのひとつだ。前日の雨が去り、大会当日のサーキットは快晴。早朝の空気はキンと冷えていたが、コースに日が当たるにつれて徐々に暖かくなり、2022年ラストの戦いは絶好のレース日和の中で幕を開けた。

 この一戦に臨むのは17台。チャンピオン獲得の可能性を有しているのは、14歳の鈴木悠太選手(RT WORLD)と15歳の五十嵐選手のふたりだ。第5戦までを終えてのシリーズポイントは鈴木選手105点、五十嵐選手103戦と接戦状態で、両者ともこの一戦に勝てば無条件でチャンピオンを確定できる。

 とはいえ、このシリーズは実力伯仲。ここまで5戦すべてで異なるドライバーが優勝しており、チャンピオン候補のふたりには多数の手強いライバルたちとの戦いも待ち構えている。また、レギュラー参戦組に加えて、2週間前にジュニアカート選手権FP-Jr部門の戴冠を確定させたばかりで今回がデビュー戦の酒井龍太郎選手(K.SPEED WIN)など、スポット参戦組にも注目選手は多く、誰が勝ってもおかしくない状況だ。

 5分間計測のタイムトライアルでまずトップを獲ったのは五十嵐選手。0.094秒差の2番手には落合蓮音選手(Ash with Hojust)がつけた。実は五十嵐選手も落合選手もペナルティで最速タイムを抹消されたのだが、セカンドタイムの採用でもこのポジションを守った。五十嵐選手は今季4度目のトップタイムだ。3、4番手は春日龍之介選手(SPS川口)と菊池貴博選手(K.SPEED WIN)。5番手に武藤雅奈選手(TAKAGI PLANNING)が続き、鈴木選手は6番手だ。

 10周の予選は、かなり気温が上がってきた12時に始まった。トップ3はポジションをキープしてスタート。鈴木選手が4番手に上がってきた。先頭を行く五十嵐選手は徐々にリードを広げてフィニッシュ、危なげなく決勝のポールを手に入れた。2、3番手は落合選手と春日選手。鈴木選手は4番グリッドから王座に挑むこととなった。

 15時、3コーナー方向に日が傾きかけたサーキットで18周の決勝が始まった。五十嵐選手と落合選手はポジションキープでスタート。春日選手は順位を下げ、鈴木選手が3番手に、7番グリッドの中村仁選手(スクーデリアEDGE with Field MOTORSPORT)が4番手に上がってきた。すると、2周目に波乱が起きる。

 2周目、右180度ターンの6コーナーで五十嵐選手と落合選手が横並びのバトルになると、立ち上がりでスピードの鈍った五十嵐選手に後続が追突。五十嵐選手は大きく姿勢を乱して4番手に後退してしまった。先頭は落合選手から鈴木選手へと移り、勝利とチャンピオンの行方が大きく動いた。

 だが、五十嵐選手はここから落ち着いて逆襲を開始。6周目に中村選手を、8周目に落合選手を抜き返して2番手まで戻ると、10周目に鈴木選手もパスしてトップに返り咲いた。それに9番グリッドから浮上の酒井選手も続き、2番手に上がってきた。

 終盤戦の先頭集団は五十嵐選手、酒井選手、鈴木選手、落合選手の4台。レースが残り4周を切ると、その密集状態がややバラけた。最終ラップも残りわずかのところで五十嵐選手はちらりと後ろを振り返って後続との距離を確かめると、人差し指を立てた両手を真横に広げたポーズでチェッカーをくぐった。第4戦に続く今季2勝目、そしてチャンピオン獲得を確定させるゴールだ。

 全日本OK部門王者となった小田優選手のマシンを借りて出走した酒井選手は、最年少12歳でのデビュー戦を2位でフィニッシュ。鈴木選手は3番手でゴールしたがフロントフェアリングのペナルティで8位に下がり、4番手ゴールの落合選手もダミーグリッドでの作業の違反で9位に後退し、3位表彰台は菊池選手のものとなった。

「トップから落ちた後、優勝も欲しいけれどチャンピオン争いもしていたので、絶対にぶつかっちゃいけないと思いながら走っていました」とレースを振り返る五十嵐文太郎選手。「今回がFS-125部門最後のレースだったし、トップでゴールした時は最高の気分でした」と優勝を喜んだ。
2位は酒井龍太郎選手、3位は菊池貴博選手。
FS-125/X30表彰の各選手。
五十嵐選手は2018年のジュニアカート選手権FP-Jr Cadets部門のチャンピオンで、2021年より全日本カート選手権FS-125部門にステップアップ。地方カート選手権で念願のシリーズチャンピオン確定となった。

 この大会では地方選手権がかかったFS-125/X30以外にも、もてぎカートレース第6戦として7クラスのレースが行われ、2022シリーズの末尾を飾る大会はエントリー総数130台のにぎわいとなった。

ROTAX MOJO MAX CHALLENGE Senior MAX

 Senior MAXではポールから先頭を行く菊地晃功選手(ハルナカートクラブ)を小島風太選手(WAIBLINGEN)が追い詰め、残り4周で逆転、小島選手がウィナーとなった。菊地選手は2位。9番グリッドからの挽回で2位奪取目前までいった高野祐太選手(フレンズ&K・M・E)はフロントフェアリングのペナルティを受け、中島獅王選手(BUNZOU RACING with WISE)が3位となった。

「勝てないレースが続いていたので、うれしいというよりほっとした気持ちが大きいです」と語る小島風太選手。「予選の時点で後半はこちらの方がペースがいいことが分かっていたし、菊地選手の右リアタイヤがタレてくるのも後ろから見えていたので、前半は冷静に耐えて走っていました。なんとか菊地選手の隙を突いて前に出ることができました」
2位は菊地晃功選手、3位は中島獅王選手。
Senior MAX表彰の各選手。

ROTAX MOJO MAX CHALLENGE Junior MAX

 Junior MAXでは関口瞬選手(TECORSA)が3番グリッドからスタートでトップの座を奪い、そのまま逃げ切って優勝。終盤の追い上げで関口選手の真後ろに迫った中島獅心選手(BUNZOU RACING with WISE)が2位に。スタート直後のアクシデントでポールから6番手まで落ちた遠藤新太選手(AAA motor sports)が、挽回を続けて3位を得た。

ダブルエントリーの関口瞬選手が優勝を遂げる。「レース前は(ポールの)遠藤選手についていけたらいいなと思っていたけれど、スタートでインに隙が見えたので、そこに入ってトップに出ることができました。中島選手が追いついてきた時は、ちょっと厳しいかなとも思いました。すごく長い15周で、ゴールした時は解放感とうれしさが湧いてきました」
2位は中島獅心選手、3位は遠藤新太選手。
Junior MAX表彰の各選手。

ROTAX MOJO MAX CHALLENGE MAX Masters

 MAX Mastersでは、ポールの長戸和也選手(Macs Racing)が背後の争いにも乗じてリードを広げ、独走優勝を飾った。序盤に2番手争いの大集団を抜け出した矢嶋秀晃選手(チームオーガスト)が、単独走行で2位フィニッシュ。箭内優樹選手(Teamyuhi.with TECORSA)が最後尾17番グリッドからの猛追で3位表彰台をゲットした。

長戸和也選手の独走となったMAX Masters。「後ろを振り返ったらけっこう余裕があったので、これは大丈夫かなと思って、あとは単独でミスをしないように注意しながら走りました」と語るも「勝ってチャンピオンを獲れたことはうれしいんですが、今年は(今回不参加の)加藤雅規選手に1回も勝てなかったので、本当は加藤選手に勝ってチャンピオンになりたかったですね」とコメント。
2位は矢嶋秀晃選手、3位は箭内優樹選手。
MAX Masters表彰の各選手。

スーパーリード

 スーパーリードでは、四輪カテゴリーでも活躍する池島実紅選手(レーシングカートチームモリ)が、ひとり飛び抜けた速さで独走を続けてポール・トゥ・ウィン。中里龍昇選手(BEAR R.C)がスタートでのポジションダウンを取り戻して2位に、山田隆二選手(チームオーガスト)が3位に、それぞれ単独走行を続けて入賞した。

「今までは周回を重ねないとタイムが出なかったので、今回は最初のタイヤの温め方などを意識してトライしていました。ローリングスタートはカートレースでしかやらないことだし、2番グリッドがパワフルな若い選手だったので、スタートでは緊張もありました。ゴールしたらチームの人たちが喜んでくれているのが見えて、うれしかったです」と池島実紅選手。
2位は中里龍昇選手、3位は山田隆二選手。
スーパーリード表彰の各選手。

SLカートミーティング YAMAHA SS

 今大会最多の28台が出走したYAMAHA SSでは、酒井龍太郎選手(ミツサダ PWG RACING)、長井大和選手(Akigase Kart Club)、山本祐輝選手(チームTKC)の3台を軸にして、スタートからゴールまでホットな優勝争いが展開。ゴールまで残りふたつのコーナーとなったところで先頭と2番手の競り合いがアクシデントに発展し、8番グリッドから3番手まで上がっていた富下李央菜選手(チームTKC)が逆転優勝を飾った。2位の大越武選手(BEMAX RACING)はトップと0.116秒差、3位の山本選手は同0.296秒差の接戦ゴールだった。

並み居る強豪選手を抑えて富下李央菜選手が優勝。「予選ではファステストラップも取れて調子いいなと思っていたけれど、決勝はスタートしてみたらそんなに調子が良くなくて……。前も逃げてしまったし、これは追いつけるかなと不安だったんです。トップに出られた時はびっくりして、ラッキーって気持ちでした」と笑顔を見せた。
2位は大越武選手、3位は山本祐輝選手。
YAMAHA SS表彰の各選手。

SLカートミーティング YAMAHAスーパーSS

 YAMAHAスーパーSSでは、ポールからトップの座を守り続けてきた高田亮選手(Akigase Kart Club)が終盤に3番手まで後退するが、高田選手は最終ラップに2台を抜き返して勝利をつかみ取った。最終ラップを先頭で迎えた遠藤晴久選手(チームエッフェガーラ)は0.107秒差の2位。渡邉賢人選手(SuperRacingJunkie!)が6番グリッドから3位に入賞した。

「トップから3番手に下がった時は、チャンスがあればいくことしか考えてなかったです。(1周で2台を抜き返した)最終ラップは狙いどおりかなって感じでした」と優勝の高田亮選手。「今シーズンは1勝もできていなかったので、ゴールの時はうれしいというよりほっとしました」と語る一方、「1年間を通してみると悔しさも残った気分です」と本音を吐露した。
2位は遠藤晴久選手、3位は渡邉賢人選手。
YAMAHAスーパーSS表彰の各選手。

SLカートミーティング YAMAHAカデットオープン

 YAMAHAカデットオープンでは、松尾柊磨選手(brioly racing)がポールから好発進を決めると、リードを3秒弱まで広げて独走優勝。2番手でゴールした関口瞬選手(TECORSA)と4番手でゴールした阿部瑠緯選手(ミツサダ PWG RACING)がペナルティを受け、2位は関谷拓真選手(RT WORLD)、3位は高橋芽選手(KRS-DAI)のものとなった。

「(ずっと独走で)もうちょっとバトルしたかったけれど、後ろをちぎって引き離すのもいいかなって思いました」と3連勝を果たしてうれしい表情を見せる松尾柊磨選手。勝因について尋ねると「CRGのシャシーがすごく良かったのも勝てた理由のひとつだと思います」と語った。
2位は関谷拓真選手、3位は高橋芽選手。
YAMAHAカデットオープン表彰の各選手。

フォト/JAFスポーツ編集部 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部

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