今年の栃茨ジムカーナフェスは地区戦ドライバーも参戦して大激戦!最多台数を集めたPN7クラスを制したのは杉谷伸夫選手!

レポート ジムカーナ

2022年12月7日

シリーズ戦も終了した11月はフェスティバルの季節!JMRC栃木・茨城ジムカーナシリーズも11月20日に恒例の走り納めイベントを開催した。

2022JMRC栃木・茨城ジムカーナフェスティバル
開催日:2022年11月20日
開催地:モビリティリゾートもてぎ(栃木県茂木町)
主催:JMRC栃木・茨城ジムカーナ部会

 ここまでモビリティリゾートもてぎマルチコース、つくるまサーキット那須、そして茨城中央サーキットを舞台に全7戦を戦ってきたJMRC栃木・茨城ジムカーナシリーズ。地方格式の県シリーズで3つのコースを会場にして開催するシリーズは、JMRC埼群ジムカーナシリーズとともに非常に珍しい存在として知られている。

 多彩なコースレイアウトとコースごとの特性による走り分けなど、これから地区戦へとステップアップするドライバーがスキルを磨くには打ってつけのシリーズとして名高いシリーズだ。そんな本シリーズもチャンピオンが確定し、無事このフェスティバル開催に至った。最後はこのシリーズから主戦場を地区戦へと移していったドライバーを交えての下剋上上等バトル。ともに全日本ジムカーナ選手権を戦う栃木出身の西野洋平選手と茨城出身の奥井優介選手を迎えての開催となった。

 フェスティバルということもあり、1年を締め括るのに相応しい思い切りアクセルを踏めるコース設定。「このコースはスピードがかなり高いので、パイロンの先、先を見越して攻めなくてはいけない。ステアリングもアクセルも先を見越して操作することが重要ですね。このマルチコースは奥が逆バンクになっているので、滑りやすさも想定して走ることも重要です」とコメントを残してくれたのは西野洋平選手だ。

 その言葉通り、ストレートをいかに長く取るかをメインに設定されたコースはダイナミックなレイアウト。同じパイロンを幾度も通過しなくてはならないため、ミスコース多発の覚悟を持っての設定だ。

モビリティリゾートのマルチコース。全体的に傾斜があるのでフラットなコースよりもクセのあるコースと言える。
JMRC栃木ジムカーナ部会を代表して、清島康伸部会長が挨拶した。
全日本ドライバー西野洋平選手もスタートフラッグを担当した。
今回のコース図。スタート直後から速度の乗るターンが待ち受け、攻め甲斐のあるレイアウトとなった。

 40分間の慣熟歩行の後、慣熟走行1本を経て、まず口火を切ってスタートしたのはシード選手を中心としたベテラン勢が参加するファーストクラスの3台。1本目にトップタイムをマークしたのはCR-Xをドライブする吉良仁秀選手。佐藤林選手はスタート直後のストレートエンドでブレーキをロックさせてしまい、大きくタイムを失ってしまう。

 午後の慣熟歩行を挟んで始まった2本目では、日が陰り、路面温度が下降した上に、ときおり雨が落ち始める。しかし、この状況で冷静になれたのは佐藤選手だった。グリップの限界点を探すように慎重に進入していく佐藤選手はスムーズなラインでパイロンをクリア。最終の2本巻きの360°ターンもパワーでそつなく決めてオーバーオールウィンとなるタイムを勝ち取った。

 そんな佐藤選手は「オーバーオールタイムを獲るのが一番難しいと思う栃茨でオーバーオールが獲れたのが、とても嬉しいです。1本目はパイロンも触ってしまったので、どうしたもんか、と思ったんですが、2本目はきちんとタイムを残せて良かったです。事前に試走を終えた奥井選手からアドバイスを頂いた通り、1本目の外周が全然グリップしなかったので、慎重になってしまいましたが、それが良かったのかもしれません」とコメントを残してくれた。

ランサーでオーバーオールウィンを記録した佐藤林選手。
ファーストクラス優勝の佐藤選手。

 続くPN1クラスは舟橋悟選手と高橋史佳選手の師弟対決。NDロードスターでのWエントリーだ。「今日は結構、走り甲斐があって攻め甲斐もあるコースでしたね。ロードスターが走りやすい2速で少しスライドしながらクリアするコーナーが多くて楽しめました。最終セクションは自分にとっては苦手な設定でしたが、他の選手の走りを見てプッシュアンダーを出さないように我慢して走ったのが良かったですね。無事、弟子にも勝てました」と喜ぶ舟橋選手。

アティック天竜ロードスターをドライブする舟橋悟選手が優勝。
PN1クラス優勝の舟橋選手。

 そして本大会最多8台のエントリーを集めたPN7クラス。本年のオールスターシリーズでも優勝をしている杉谷伸夫選手を迎えての下剋上戦。しかし1本目から杉谷選手は盤石の走りを見せてトップタイム。来年を見据えてマシンをBRZからロードスターに乗り換えた橋本恵太選手が2番手につけた。

 そして運命の2本目は、橋本選手が生タイムで100分の1秒、杉谷選手のタイムを上回る好走を見せるが、パイロンペナルティ。路面コンディションは確実に悪くなる中、それでも杉谷選手は自己ベストを更新。1本目はミスコースで沈んでいた小島秀治選手が2本目、逆転をかけて襲い掛かるも杉谷選手には届かず。杉谷選手が見事、地区戦ドライバーの貫禄の走りを披露した。

 2番手の橋本選手は、「来年を見据えて色々走りたくてこの大会に参加しました。まだ4回目の走行なので、杉谷さんのコンマ差で走れたのは、まぁまぁ良かったと思っています」とコメント。また、優勝した杉谷選手は、「いつもはTW200クラスに参戦しているんですが、今回はTW280クラスのタイヤで参戦してみました」と、ひとこと。

「普段履いているタイヤが、低温域の作動がなかなか難しいので、もうちょっと低温域でも気軽に練習できるタイヤを探したくて、この大会で試してみました。ピークグリップは落ちますが、非常にバランスの良いタイヤだったと思います。2本目は路面温度も下がって、条件的には厳しかったんですが、たまたまタイムアップできました(笑)」と今回の大会を振り返った。

PN7クラスはロードスターの杉谷伸夫選手が優勝。
橋本恵太選手は乗り換え4回目のロードスターで2位獲得(左)。小島秀治選手はミスコースから3位まで挽回した(右)。
PN7クラス表彰の各選手。

 往年の名車、AE86対決となったNTR1クラスは、栃木シリーズの主・岡本和弘選手が貫禄の走りで勝利。「もう少し頑張れたかと思います…。何とも言えませんが、スラローム後の外周とか、もうちょっと行けたと思うんですよね。ロードスターのようにいかなくても、もうちょっと上手く走りたいですよね」と勝って兜の緒を締めるコメント。

NTR1クラス優勝はベテランの岡本和弘選手!。30年近くこのAE86でジムカーナを続けている。
NTR1クラス優勝の岡本選手。

 続くNTR2クラスは、茨城を代表するBシードドライバーの長屋秀彦選手が圧倒的なタイムで1本目から牛耳る展開。ターボの力で追いかけるMR2勢を置き去りにする1分8秒台をマークする。2本目もスラロームの進入や、そこからの折り返しを見事に修正してタイムアップを果たし、1分7秒183という、ぶっちぎりのトップタイムをマークした。

「雨が降ってきそうでドキドキしましたが、何とかドライで走れて良かったですね。慣熟走行ではできたけど、1本目でできなかったのを、きちんと2本目で修正できたのが良かった。フロントタイヤを信頼しながら走れたのも良かったと思います」と、自分の走りを振り返った。

NTR2クラスは、長屋秀彦選手が2WD総合でも2番手に入るタイムで快勝した。
2番手につけたのはMR2の安部強選手(左)。NTR2クラス表彰の各選手(右)。

 そして茨城トヨタチームから、“モータースポーツをもっと身近なものに!”と今年から参戦している、宮田英行選手と島田直樹選手の対決となったNT4クラス。軍配は、普段はGRガレージ水戸けやき台店でサービスエンジニアとして勤務し、全日本ジムカーナ選手権では奥井優介選手のメカニックとして同行する島田選手に上がることに!

「いつも通り楽しめました。1本目、余計な所でサイドを引いちゃって、奥井選手の車載動画を見たりしながら研究しましたが、2本目はパイロンタッチをしてしまいました。でも、しっかりタイムは上がったんで、やってることは間違いないと思います。来年は地区戦にも参戦できたら嬉しいですね」と、島田選手は来季に向けた抱負も語ってくれた。

茨城トヨタチーム勢の対決となったNT4クラスは、島田直樹選手が制した。
NT4クラスを制した島田選手。

 一方、このフェスティバルの顔となっている、茨城勢のガチンコ対決が見もののS2クラス。ブルーガレージとICCSという茨城を代表する2つのクラブにそれぞれ所属する神谷幸男選手と堀井紳一郎選手の対決だ。1本目から1分7秒台のタイムをマークし、レベルの高さを示す2台。生タイムではトップタイムをマークしていながら、パイロンペナルティで泣いたのは堀井選手だ。

 このままでは2本目に逆転を許しかねない神谷選手は、2本目に勝負を賭ける。ハイスピードセクションを勝負所と捉え、絶妙なアクセルワークで荷重をかけてコーナーへ飛び込んでいく。フロントタイヤが逃げる寸前で奥のターンをクリアすると、ストレートもしっかり伸びて、自身のタイムをコンマ5秒押し上げて逃げ切った。

「普通に完敗しました(笑)」と堀井選手。神谷選手は、「頑張りました!普段は地区戦で走っているんですが、毎年このフェスティバルに2人で出て、対決しているんです。今日勝てて3勝2敗で勝ち越しできたんで、嬉しいですね。今日のコースは高速コーナーが多かったので、ボトムスピードを落とさず、タイヤの横を上手く使うことを意識して走ったのが良かったと思います」と、インタビューに答えてくれた。

地区戦ドライバー同士によるバトルとなったS2クラスを制したのは神谷幸男選手。
S2クラス優勝の神谷選手。

 そしてJMRC栃木・茨城ジムカーナシリーズの特長にもなっているGRクラス。GAZOO Racing Company協賛でレンタル車両が用意されるこのクラスは、トヨタ車、もしくはGR車両によって争われるクラスだ。

 2WDのGR2クラスはプリウスPHVの小林昭弘選手が優勝。「今日のコースはプリウスには不利かなと思ったんですが、とても楽しいコースでした。もともとGRグレードのプリウスで足回りも加速も遊べる車両なんで、満足しています」。

トヨタ車限定のGR2クラスを制したのは、プリウスPHVを駆る小林昭弘選手。
GR2クラス表彰の各選手。

 GR4クラスは、1週間後のキョウセイジムカーナシリーズのGR2クラスに参戦を決めているという大宅茂選手が優勝。「キョウセイの最終戦ではGRスープラに乗る予定なので、マニュアルの練習に備えてこのフェスティバルに参戦しました。もてぎは初めてでしたが、ヤリスは4WDなりに速く走れたので、楽しめました」とコメントを残してくれた。1台のみの参戦となったチャレンジKクラスは女性ドライバーの五味渕昌子選手が自慢のVIVIOをドライブして優勝を果たしている。

GR4クラスは、大宅茂選手がレンタルGRヤリスで完走し、見事優勝を飾った。
GR4クラス優勝の大宅選手。
チャレンジKクラス優勝はハードチューンのVIVIOを駆る五味渕昌子選手。
チャレンジKクラス優勝の五味渕選手。

 これからジムカーナをはじめるエントラントのために設定されたチャレンジクラス。入門者だけでなく、日光スピードパークの頃から走る古参組も復帰参戦するなど、こちらもビギナーとベテランがミックスされたクラスとなった。

 1本目にトップタイムをマークしたのはこのチャレンジクラスを主戦場にする福田孝太朗選手。2番手にはベテランの福田具史選手が追いかける展開で始まったが、2本目にこの2人をかわしてきたのは、普段はドリフトを中心に活動する中田一平選手だった。

 1本目はミスコースを喫したものの、2本目は丁寧なライン取りとアグレッシブなコーナーリングでS2000を操り、見事に自身初となる優勝を決めた。「1本目はクルマの挙動のことを考えていたらコースを見失ってしまったので、昼の慣熟歩行をしっかりやりました。攻略方法をひとつずつ考えながら歩いて、もう1度コースをしっかり覚えられたのが勝因ですね」と中田選手は振り返っていた。

チャレンジクラスで自身初優勝を飾ったのはS2000の中田一平選手。
MR2で参戦を続ける福田孝太朗選手が2番手タイムをマーク(左)。3位に滑り込んだのは日光スピードパーク時代から栃木シリーズに参戦してきた福田具史選手(右)。
チャレンジクラス表彰の各選手。
今回のフェスティバルで初めてジムカーナに参加した茨城トヨタチームの宇野麻美さん。「慣熟歩行で理解してコースを覚えたつもりでしたが、実際に走ってみると、頭の中が真っ白になってしまってミスコースしちゃいました。でも3本目は皆の応援もあって、しっかり完走できて良かったです。普段は奥井優介選手のマネージメントもやっていて、奥井選手がパイロンタッチをすると厳しく言っていたんですが、これからは優しくなれそうな気がします(笑)」と、初ジムカーナの感想を話してくれた。
最後は参加者全員で記念撮影。JMRC栃木茨城ジムカーナシリーズのような県シリーズや、ジムカーナコースシリーズでは、ビギナードライバー向けのクラスを用意し、初心者を迎え入れる準備をしているシリーズも多い。ジムカーナ未経験者でも楽しめる工夫が用意されており、試走を行うベテランドライバーたちは、オートテストからステップアップしてきたような初心者にも優しく自らのスキルを隠すことなく教えてくれる。ぜひ皆さんも、2023年はジムカーナからモータースポーツデビューを飾って欲しい。

フォト&レポート/鈴木あつし

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