女性ドライバーが企画した初心者向けラリー講習会が、群馬サイクルスポーツセンターで開催!

レポート ラリー JAFWIM

2022年12月16日

群馬県みなかみ町の群馬サイクルスポーツセンターで、ラリー入門者を対象とした講習会「ラリーってどーやるの?」が11月26日に開催された。

ラリー講習会「ラリーってどーやるの?」
開催日: 2022年11月26日(土)
開催場所: 群馬サイクルスポーツセンター(群馬県みなかみ町)
主催: Rally Team Kireidokoro

 ひと口に初心者といってもその幅は広く、明確な定義はないが、今回で2回目を迎えるこの講習会は、「ラリー未経験者~ラリーに出たことはあるけど復習したい方」が対象。すでにラリーに参加している初心者の選手はもちろんだが、これから参戦を考えている人や、参戦までは考えていないけど、ちょっとラリーに興味がある、といった人も視野に入れている。

 今回の講習会を主催したのは、女性のメンバーで活動する「Rally Team Kireidokoro」(ラリーチームきれいどころ)。その代表を務める石垣晴恵氏が中心となって、このイベントを企画した。石垣氏はダートトライアルドライバーとして20年以上のキャリアを持ち、近年はラリーを中心に活躍している女性ドライバー。競技参戦の傍ら、自身のチームを通じて、女性が積極的にラリー活動に取り組める環境作りも行っている。

 その石垣氏に、この講習会を開催する狙いを伺ってみると、「ラリーの参加を促すというよりも、少しでもラリーに興味を持った人に、競技の具体的な中身を知ってほしいというのが目的です。ルールや競技の流れを理解することで、よりラリーの魅力を伝えることができると考えています」と話してくれた。

 続けて「もっと女性もラリーに参加してほしいという想いから色々と活動してきたのですが、男女関係なくラリーの魅力を伝えていきたい」ということで、この講習会は、女性のみならず男性も受講可能。また、ラリーはドライバーとコ・ドライバーで行う競技だが、必ずしもペアである必要もなく、1人での参加も可能だ。

今回の講習を企画したRally Team Kireidokoroの石垣晴恵氏。長くJAF関東ダートトライアル選手権に参戦し、男性陣と互角に渡り合う走りで注目を集め、全日本ダートトライアル選手権ではプリウス、CR-Zを駆ってECOカードライバーの先駆者として活躍した。現在はRally Team Kireidokoroの牽引役として、ラリーに主軸を移して活動している。

 受講内容はラリーの基本的なルールの説明を中心に、実車を使用した模擬レッキや模擬リエゾン走行も体験できるものになっている。講師は石垣氏をはじめ、多比羅二三男氏、山本磨美氏、角田大輔氏、小坂典嵩氏と、全日本ラリー選手権等で活躍している豪華メンバーが担当する。

 前半の約2時間の座学では、ラリーの概念図をもとに、コマ図の見方をはじめ、ルート上に現れる標識の説明や、スマートフォンアプリのラリーコンピューターの使い方、TC(タイムコントロール)カードの記入等の講義となる。

 実際の競技中のインカー映像も交えて解説するので、競技中の車内でドライバーとコ・ドライバーがどういったやり取りをしているのかを知ることもでき、現場の雰囲気も感じることができる内容になっている。

座学では、まずラリーという競技の概要について、資料や映像を用いて解説を行った。ラリーで使われるロードブックや実際のインカー映像なども活用され、より具体的な形でラリー競技を把握できるような工夫がなされた。

 また後半の講義では、模擬レッキに備え、ペースノートの作り方も解説。ドライバーによってコーナーの形状や大きさの認識が違うため、作り方の明確な決まりはなく、自分自身が一番分かりやすい数値や言語で作る、ということが伝えられ、実際に同じコースで使用された複数の全日本ドライバーのペースノートの違いも、講師の解説付きで見ることができる。

模擬レッキの前にはペースノートの作り方について解説。実際に競技で使用されたノートなどを素材として、レッキ時のポイント等についてもレクチャーされた。

 座学が終ると、実車を使用して模擬レッキ、模擬リエゾン走行となるが、走行前にヘルメットやHANS、シートベルト等の安全装備についての講習も行われる。特にHANSは正しい装着方法についてレクチャーされるほか、その他の安全装備についても各装備の役割や装着することの意義そして重要性が説明された。

ヘルメットやシートベルト、HANSといったモータースポーツでは欠かせない安全装備についても、詳細な解説が行われた。

 模擬レッキ走行は、群馬サイクルスポーツセンター内のコースの一部をSSに見立て、ドライバーが読み上げた情報をコ・ドライバーが記入した後、そのペースノートを読み上げてもらい、実際に走行するというもの。

 模擬走行なので、スピードはかなり控えた走行となるが、やはり、レッキ時に記入した数値と走行時に感じた数値ではズレが生じることも多いので、これを3セット行った。初めてのレッキでも、3回目となれば、かなり精度が上がったペースノートになったようだ。

実技講習では、群馬サイクルスポーツセンター内の道路を一部使用して、TC区間を設定。ラリーの実際の流れを疑似体験できる形とした。

 次はドライバーとコ・ドライバーが入れ替わり、同じくペースノート作りを行う。つまり、ドライバーとコ・ドライバーの両方を体験できるということだ。模擬リエゾン走行は、群馬サイクルスポーツセンター内にTC箇所を設けて仮の時刻を設定し、周辺を走行後に設定した時刻にTCインしてTCカードの受け渡しを行う。

 もちろんクルマにはラリーコンピューターが装着されており、画面に表示された時間を見ながら自車の通過時刻に合わせ、ペナルティを受けないようにTC作業を行う。これもレッキと同じくドライバーとコ・ドライバーが入れ替わって双方の役割を担当した。

講習ではドライバー、コ・ドライバーそれぞれの立場からリエゾン走行を含むレッキを疑似体験。ペースノート作りの注意点などについても、より具体的なアドバイスが送られた。

 以上が主な講習内容となるが、ラリー講習と聞くと競技に特化した堅苦しいイメージを抱きがちだが、ここではラリーに関する素朴な疑問に対して、講師陣のラリー中のエピソードも交えて応えてくれるので、一人のラリーファンとして受講するのも全く問題ない。

 この講習は、今後も不定期であるが、継続して開催するとのこと。開催日時等の詳細はRally Team Kireidokoroのフェイスブックで告知されるので、少しでもラリーに興味を持った方は、参加してみてはいかがだろうか。

今回の講義を受講した雨谷昭久さんは、過去にレースには出場した経験があるが、ラリーは未経験とのこと。「ラリーは以前からやってみたいとは思っていたのですが、なかなか機会がなく、出場までは到りませんでした。ラリーは安全に速く走れる技術が身に付くと思うので、まずはラリーのことを理解したくて今日は参加しましたが、やはり、色々と難しいですね(笑)。想像していた以上に沢山のルールがあるのだな、と痛感しました。ペースノート作りも、もちろん初めてだったのですが、普段の運転でもそういったことを意識して走れば楽しくなるんじゃないかと思ったので、今回の経験を今後に生かしていきたいと思います」。
全日本選手権をはじめとする数多くのラリーで活躍している大ベテランの多比羅二三男氏(左)は、「モータースポーツには興味があるけどYou Tube等の映像でしか見てない人って沢山いると思うんですね。でも、そういう人達にもBライ競技に参加してほしいというのが私の希望です。今回のような講習に来た人達が最終的に競技に参加してくれることを期待しています」。2019年に全日本タイトルを獲得するなど、若手のコ・ドライバーとして注目を集めている山本磨美氏(右)も、「私がラリーを始めた頃は、こういった講習会はなかったので、専門用語などはラリーに参加しながら覚えて行った感じでしたが、これからは、こういった場で初心者の方に色々と教えていければと思っています」と、ともにラリー入門者にエールを贈った。
2020年に新井大輝選手とともに全日本チャンピオンを獲得した地元群馬在住の小坂典嵩氏(左)は、「ラリーってギャラリーの前を走っているのは、ほんの一部で、見えない所で沢山の色々なことが起こっている世界なので、ラリーの全体像を知ってもらえたら、その面白さが伝えられるのではないか、という気持ちで今日は講義させてもらいました」と振り返った。新井敏弘選手を輩出したJAF加盟クラブ、チームアルパイン群馬の代表を務める角田大輔氏(右)も、「ラリーをやってみたいけど最初に何をしていいのか分からず、踏み出せない人っていると思うんです。そういう人達が、こうした講習に参加してもらうことで、競技参加に向けてのきっかけを掴んでくれると嬉しいですね」と、今回の講習会の成果に期待を寄せた。
今回の講習に関わった皆さん。こうした地道な取り組みがラリー競技の発展に繋がることを期待したい。

フォト/友田宏之、JAFスポーツ編集部 レポート/友田宏之

ページ
トップへ