スーパーFJ日本一決定戦はオートポリス王者の清水啓伸選手が涙で優勝を飾る!

レポート レース

2022年12月16日

2022年も残すはあとわずかの12月10~11日に「富士チャンピオンレースシリーズ 第7戦」が富士スピードウェイで開催された。スーパーFJ日本一決定戦、FCR-VITA 第4戦、そしてTOYOTA GAZOO Racing Yaris Cup 2022 Grand Finalのレポートをお届け。

2022 富士チャンピオンレースシリーズ 第7戦
開催日:2022年12月10~11日
開催地:富士スピードウェイ(静岡県小山町)
主催:富士スピードウェイ株式会社、FISCO-C

スーパーFJ日本一決定戦

 鈴鹿サーキットとモビリティリゾートもてぎで隔年で開催されていたスーパーFJ日本一決定戦は、2000年以来となる富士スピードウェイに舞台を移して開催された。今大会のエントリーは41台。レースはトーナメント形式で、予選と第1レグはA/Bの2組に分け、ファイナルが一斉に競われるのは従来どおり。

 また前大会より、ファイナルをスタートした車両のメンテナンスガレージに対してファイナルスタート賞が授与されるが、今大会はさらにファイナルをスタートしたドライバーに対してもファイナルスターティングマネー賞が授与されることとなった。かつての名物だったスカラシップこそ2020年で終了したが、1位賞金100万円はこの類のカテゴリーとしては破格。賞金総額は約500万円となった。

 予選ではシリーズチャンピオンを確定させているドライバーたちが上位につける順当な結果となった。A組トップはFJ協会が設けるスーパーFJジャパンチャレンジ王者の岡本大地選手で、2番手はオートポリス王者の清水啓伸選手。3番手は筑波・富士と、もてぎ・菅生の二冠王となった田上蒼竜選手。

 B組は鈴鹿王者の森山冬星選手がトップタイムを記録するも、複数回の走路外走行のペナルティで3グリッド降格となり、繰り上がってトップは筑波・富士でシリーズ2位の稲葉摩人選手で、鈴鹿でシリーズ2位の居附明利選手が続いていた。

 第1レグは6周の超スプリント。A組では岡本選手と清水選手、田上選手に加え、八巻渉選手の4人でトップが争われた。スタートに出遅れた田上選手が2周目のヘアピンで八巻選手を抜き返した以外に順位変動はなかったものの、ギリギリまでダウンフォースを削った清水選手のストレートでの速さが明らかになり、「コーナーで離しても全部取り返されちゃうので、ファイナルがやばいです」と、レース後に岡本選手。

 B組は稲葉選手のトップ発進なるも、1周目のうちに2番手に上がっていた森山選手が2周目の1コーナーでトップに浮上する。その後、居附選手を交えて激しくトップを入れ替えるも、最終ラップのダンロップコーナーで3番手を走っていた稲葉選手がオーバーラン。これで森山選手の逃げ切りかと思われたが、ゴール直前で「セクター3を森山選手に合わせて、最後はスリップが効いて抜けましたね」と語る居附選手が逆転を果たした。

第1レグA組は岡本大地選手(FTK・レヴレーシングガレージ)が制した。
レース後に行われた第1レグA組の表彰式。左から2位の清水啓伸選手、1位の岡本選手、3位の田上蒼竜選手。
第1レグB組は居附明利選手(SAccessRacing ES)が制した。
レース後に行われた第1レグB組の表彰式。左から2位の森山冬星選手、1位の居附選手、3位の藤原大暉選手。

 12周で競われるファイナルは、第1レグのフィニッシュタイムで勝ったことから、A組の岡本選手がポールポジションへ。日本一決定戦には5回出場し、近年は大本命とされ続けながら、実は一度も勝ったことがない。悪きジンクスがついに崩されるか注目された。

 スタートを決めた岡本選手はオープニングラップのうちに得意の逃げ足を見せ、やはり好スタートを切って2番手に浮上した森山選手にさえ1秒4の差をつけた。だが、これが思うように広がっていかない。4周目を終えると、森山選手だけでなく清水選手も背後につける。

 まずは清水選手が6周目の100Rで森山選手をかわして2番手に上がり、その勢いで7周目の1コーナーでは岡本選手も抜いてトップに立つも、ダンロップコーナーでは抜き返される。8周目の1コーナーで清水選手が再度トップに浮上。だが逃げ切るまでには至らず、9周目には岡本選手と森山選手に相次いでかわされていた。

 10周目の1コーナーで森山選手が待望のトップに。しかし、やはり岡本選手と清水選手が食らいついて離れない。それでも森山選手のガードは固く、最終ラップ突入時はトップのままだった。そこで勝負に打って出たのが岡本選手。ダンロップコーナーでオーバーテイクを試みるも、なんと2台は接触! その脇をすり抜けていったのが清水選手と居附選手だった。

 ゴールには清水選手が居附選手に先んじてコンマ7秒差で飛び込んで優勝を飾った。一方、すぐに復帰となった岡本選手は、ゴール前で田上選手、そして藤原大暉選手に並ばれるも、コンマ1秒だけ早く飛び込んで3位を獲得。一方、森山選手は痛恨の10位という結果に甘んじた。

「自分はストレートが速かったので、ストレートで抜いてインフィールドで頑張って追いつかれずになんとか、という戦略だったんですが、予想以上にみんなインフィールドが速くて、ストレートでもスリップにつかれたら全然離れなくて。そこは自分の予想とはちょっと違っていたんですが……。でも良かったです。来シーズンはステップアップしていると思います!」と清水選手。チェッカーを受けた時、自然と涙が流れたという。

ファイナルレース優勝は清水選手(DragoCORSE)。
2位は居附選手、3位は岡本選手。
ファイナルレース表彰の各選手。
ファイナルレースジェントルマンクラス優勝は吉田宣弘選手(EXTREME☆ミスト☆GY)。
2位は夕田大助選手、3位は宮本健一選手。
ファイナルレースジェントルマンクラス表彰の各選手。
レース終了後に行われた2022スーパーFJ日本一決定戦表彰式。ジャパンスカラシップシステムの畑川治代表が開演の挨拶。
FJ協会が各地方選手権のシリーズチャンピオンを表彰。左からもてぎ・菅生シリーズと筑波・富士シリーズチャンピオンの田上選手、鈴鹿シリーズチャンピオンの森山選手、オートポリスシリーズチャンピオンの清水選手。
全国6サーキットを転戦するジャパンチャレンジの表彰。左から2位の田上選手、1位の岡本選手、3位の渡会太一選手、4位の清水選手。
ファイナルレースで最も順位を上げたドライバーに贈られるジャンプアップ賞は内田涼風選手が受賞。
40歳以上のドライバーの中でファイナルレース上位3選手に贈られるジェントルマン賞。左から2位の夕田選手(代理)、1位の吉田選手、3位の宮本選手が受賞。
日本一決定戦に毎回参加するとともに、若手育成への支援を行う上吹越哲也選手(代理)にJSS特別賞が贈られた。
ファイナルレースに出走したドライバー全員に授与されるファイナルスターティングマネー。全ドライバーを代表して吉田選手が目録を受け取った。
ファイナルレース賞の表彰。前列左から2位の居附選手、1位の清水選手、3位の岡本選手。後列左から4位の田上選手、5位の藤原選手、6位の渡会選手、7位の八巻渉選手、8位の稲葉摩人選手、9位の白崎稜選手、10位の森山選手。
ファイナルレース優勝の清水選手にはダンロップ賞が贈られた。
2022年スーパーFJ日本一決定戦優勝者に贈られる、歴代優勝者名入りカップを手にする清水選手。

TOYOTA GAZOO Racing Yaris Cup 2022 Grand Final

 TOYOTA GAZOO Racing Yaris Cup 2022 Grand Finalは、シリーズ戦に参加していればエントリー可能とあって、実に91台を集めた。だが用意されたグリッドは54台で、またコンソレーションは行われないため、予備予選という難関が設けられた。シリーズ6位以内(CVTクラスは3位以内)であればシードドライバーとして免除された。

 ここでノンシードのドライバーがほぼ半分に絞られた上で、改めて予選が行われる。その予選でポールポジションを獲得したのは、西日本シリーズの最終戦を制した森口優樹選手で、チャンピオンの神谷裕幸選手が2番手に。

「計測1周目から行きました。温度は確かに低かったんですが、それでも今週走った中ではいちばん高く感じられたので、早い段階でタイムが出せるように調整していたんです。それと岡山の最終戦で勝てたことで、僕も勢いづいているというか(笑)」と森口選手。西日本勢がフロントローを占める中、東日本勢のトップは3番手の島拓海選手。チャンピオンの大森和也選手は7番手に甘んじていた。

 どうあれ、トップがひとりで逃げられるレースではない。決勝は終始、三つ巴の戦いとなっていた。森口選手が、神谷選手と島選手を背後に置き続けたのだ。序盤はあまりに森口選手が防戦一方となったため、10台以上が連結状態になるも、4周目のコカコーラコーナーで神谷選手の逆転を許してからは逆にスイッチが入った模様。5周目の1コーナーで再びトップに立つと、また三つ巴の状態とすべくペースが上がったからだ。

 加えて4番手争いが極めて激しく、8周目のダンロップコーナーで大渋滞が発生。これでよりトップ3が差を広げるように。だが、最後はベテランが圧巻の展開を見せた。最終ラップの最終コーナーで神谷選手が森口選手に並び、サイドスリップを使って徐々に前に出る。島選手も神谷選手のスリップストリームを使うのだが、ピット寄りを走って右からは出られないようにされた上に、左には森口選手がいるから抜け出せず。森口選手は最後の最後に3位となってしまう。

 コンマ14秒という僅差で優勝を飾った神谷選手は、「最初は様子を見つつ、森口選手はあまり富士のレースをやっていないので、どういう反応するか見ながらちょっとタイヤを使わせて、最後に仕掛けようと。うまくいって良かったです。Vitzを2001年から始めて、やっと日本一が獲れたんです。22年越しになります」と大喜びの様子だった。島選手と森口選手に続く4位は吹谷禎一郎選手で、大森選手は目の前で起きたスピンを回避できずリタイアを喫している。

Grand Final優勝は神谷裕幸選手(N中部GRGミッドレスYaris)。
2位は島拓海選手、3位は森口優樹選手。
Grand Final表彰の各選手。
Grand Finalの表彰。左から5位の黒田保男選手、4位の吹谷禎一郎選手、6位のCANDY TAKEKAWA選手。
Grand Final CVTクラス優勝は塚原啓之選手(ツカハラレーシング Yaris CVT)。
2位は飯田裕選手、3位は柚木宏一郎選手。
Grand Final CVTクラス表彰の各選手。暫定2位の近藤希望選手はペナルティにより降格、暫定3位の飯田選手が2位昇格となった。

FCR-VITA 第4戦

 FCR-VITAは、奇しくもチャンピオン候補の3人が予選でトップ3につけることに。ポールポジションを奪ったのはポイントリーダーの徳升広平選手で、チームメイトの翁長実希選手とスリップストリームを使い合って、フロントローを独占した。

「寒すぎてレコードにはあと一歩届きませんでした。しょうがない。その分、チャンピオンを決めます!」と徳升選手。3番手には塚田海斗選手がつけ、決勝でも直接対決が繰り広げられるものと思われた。

 しかしその予想はあっけなく崩れる。スタート直後の1コーナーで接触があり、スピンした車両を避けきれずに塚田選手は大きく順位を落としてしまったからだ。このアクシデントをうまく回避して3番手につけたのは、N1ロードスターから転向して1年の大野俊哉選手、そして新井薫選手が大きく順位を上げる。

 2周にわたるセーフティカーランの後、リスタートを決めた徳升選手がじわりじわりと逃げていく一方、6周目の1コーナーで大野選手が翁長選手をかわすも、続くコカコーラコーナーで抜き返されてしまう。

 その後は翁長選手も単独走行に持ち込む中、5周目に新井選手を抜いていた上野大哲選手と大野選手は、最後まで激しいバトルを繰り広げる。だが、コースの隅々を知り尽くした強みが大野選手にはあった。最後は辛くも逃げ切り、FCR-VITAでは初の表彰台に上がる。

 そして3連勝で徳升選手は2連覇を確定。「トップで最後まで走り切れるクルマをつくってくれたチームに感謝です。VITAで耐久には出ますが、スプリントはもういいかなと。来年はFIA-F4とフォーミュラビートを頑張ります!」と徳升選手。

第4戦優勝は徳升広平選手(フジタ薬局アポロ電工高山短大VITA)。
2位は翁長実希選手、3位は大野俊哉選手。
第4戦表彰の各選手。

フォト/遠藤樹弥 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部

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