WOMEN’S RALLYが、WRCラリージャパンの興奮冷めやらぬ恵那市を舞台に今年も開催!

レポート ラリー JAFWIM

2022年12月26日

WOMEN’S RALLY in恵那が、12月3~4日、恵那市役所をスタート&ゴールとする約190kmのラリールートで行われた。

Women in Motorsport L1
WOMEN’S RALLY in恵那 2022

開催日:2022年12月3~4日
開催場所:岐阜県恵那市
主催:MASC、LUCKSPORT、Love drive

 今年のWOMEN’S RALLY in恵那は昨年と同じく12月第1週の開催となった。恵那市は約半月前にはWRCラリージャパン最終日のルートともなった地であり、WRCの興奮冷めやらぬ中での開催だ。

 今回のWOMEN’S RALLYは従来まであったレディスドライバーを対象としたL1-1、L1-2、L1-3の3クラスに加え、男性ドライバーの車両も参加できるOPENクラスを新たに設けた。ただしこのOPENクラスについては、女性がコ・ドライバーであることが参加条件だ。今回はドライバー、コ・ドライバーともに女性の車両は6台が出走した。

 ラリーはふたつのセクションに分かれ、セクション1で3本のSSを、セクション2では4本のSSが用意されたが、昨年までこのラリーの名物ステージとして使われ、ラリージャパンでも「Nenoue Plateau」ステージの一部となった、恵那市東部の根ノ上SSは今回は使われなかった。よってSSは恵那市から北西部に進んだエリアに集中して設定された。

 望郷の森SS4.75kmは根ノ上SSと並ぶこのラリーの名物ステージだが、今年はステージ後半の区間が変更され、距離も約1km伸びた。ジムカーナのギャラリーSSとして知られた恵那笠置山モーターパークSSも、今年はモーターパークに繋がる林道部分からスタートする形となり、こちらも約600m伸びて1.13kmのステージとなっている。

 注目は今回、新しく設定された姫栗SS。望郷の森SSと同じ山系の中にあるため、大きく性格が異なるわけではないが、林間を駆け抜ける望郷の森に対して、視界の開けた稜線に近い場所を走る下り主体のステージで、アベレージスピードも高め。2.53kmと短めのステージながら、初見のステージとあって警戒するクルーは多かったようだ。

すっかり恒例となった恵那市役所でのセレモニアルスタート。選手達はスターターを務めた自由民主党モータースポーツ振興議員連盟の古屋圭司会長に見送られながら、7本のSSが待ち受けるラリーに臨んだ。
今年もギャラリーステージとなった恵那笠置山モーターパークでは、全日本ドライバーの三枝聖弥選手らがデモランを披露したほか、地元の特産品を紹介するブース等も出展され、多くの観客で賑わった。

 L1-1クラスは、昨年、圧倒的な速さを見せてこの大会連覇を飾った石川紗織/川名賢組の86がSS1望郷の森でまずベストタイムを獲得。1.6秒差で板倉麻美/木原雅彦組が続いた。2019年に全日本ラリーでヴィッツを駆り2度、2位獲得の実績を持つ板倉選手は昨年、Cast Racingチームのハイエースでこのラリーに初参戦。今年は同チームからGRヤリスに乗り換えての参戦だ。

 石川組はSS2姫栗では3.3秒差で板倉組を下して連続ベスト。得意とする笠置山のSS3でも圧倒的なタイムを叩き出してリードを拡大するが、対する板倉組はジムカーナ場の手前の林道区間でコースオフ。ホイールを曲げてしまい、このSSは6.2秒遅れる4番手にとどまり、石川組には11.2秒のビハインドでサービスに戻ってきた。

 セクション2に入っても石川組の速さは変わらず、SS1の再走となるSS4では1周目より6.4秒もタイムアップ。独走態勢を固めて終わってみれば全SSでベストを獲得して、3連覇を達成した。板倉組は2番手でゴール。2年連続で2位を獲得していた中島紀子/山田訓義組のランサーが、ひとつ順位を落として3位でラリーを終えた。

L1-1クラスは、石川紗織/川名賢組が全SSベストの快走を見せて、この大会3連覇を飾った。
「1番ゼッケンの難しさを痛感したラリーでした」と振り返った石川選手は、「(路面が掃けた)2周目からは、昨年とは違う選択をしたタイヤと自分の走りが合い出したのでタイムアップできたと思います。ラリー中も、川名さんのアドバイスを聞きながら色々なことに挑戦して、うまく行かないこともありましたが、また沢山の経験を積めたラリーでした」。川名選手も、「特に新しい道での走りが良かった。対応力が確実に上がっている印象を受けました」と石川選手の走りを評価していた。
ターマックの速さには定評のある板倉麻美/木原雅彦組が2位に入賞。「サービスでセッティングを変更したら、動きが変わり過ぎてしまって、2ステは攻め切れないまま、終わってしまった感じでした。ハイエースもGRヤリスも、どちらも面白いクルマですが、やはり(GRヤリスは)速かったですね。頑張ったつもりですが、クルマの性能を引き出せなかったのが悔しいです」と板倉選手。
常連の中島紀子/山田訓義組は、得意とする根ノ上SSがなかったことが影響したか、今回は3位にとどまった。
L1-1クラス上位入賞の各選手。

 L1-2クラスは、このラリーの常連でもある毛受(めんじょう)広子選手と平石康仁選手のコンビがまずSS1でベストタイムを奪う。しかしSS2ではSS1で3番手だった谷口いづみ/明治慎太郎組が0.1秒の僅差ながら毛受組を下してベスト。このSSで3番手以下を大きく引き離したこの2台のヤリスが先頭グループを形成する。

 毛受組は続くSS3笠置山では谷口組を0.3秒差で下すセカンドベストをマーク。谷口組に3.1秒のマージンでラリーを折り返すと、SS4では谷口組を2.5秒差で下してこの日、2度目のベスト。そしてSS2の再走となったSS5でも今度は0.7秒、谷口組に走り勝って連続ベストをマークする。

 毛受組は、最終的には9.3秒までリードを広げてトップでゴール。笠置山SSでミスコース判定を受けて勝負権を失った昨年の雪辱を果たして、2019年以来、3年ぶりの優勝を飾った。谷口組に続く3位には、長野の蓑島琴美/美馬純一組が入り、SS3でベストを奪った昨年のウィナー湯澤美幸/河西晴雄組は、蓑島組に1.9秒遅れの4位でフィニッシュとなった。

L1-2クラスは毛受広子/平石康仁組が3年ぶりの優勝を飾った。
「去年、二人とも笠置山で悔しい思いをしたので、今年は絶対にリベンジするという気持ちでラリーに臨みました」という毛受選手。「ヤリスにもまだ乗り慣れていないので、ラリー中も色々な気付きがある中で、何とか首位をキープできたという感じでした。姫栗も楽しく走れましたが、振り返ると、もっと踏めたなと思ったので、来年また設定されるのであれば、しっかり走りたいですね。周りの方々も速くなっているので、さらに面白いクラスになると思います」。
レースの経験が長い谷口いづみ選手と明治慎太郎選手のコンビが、このラリー初参加ながらも2位を獲得。「姫栗はクルマとの相性も良くて、車速の高さも全然問題なく走れましたが、望郷の森はSS1ではリズムが合わなくて、ノートを修正して2周目からは何とか走れるようになりました。3周目の最後のSS7で“走り方が掴めた”と思ったら、ラリーが終わってしまいました(笑)。でも距離の長いテクニカルな道を走れて、色々と勉強できたラリーでした」と谷口選手。
隣県の長野から参戦した蓑島琴美/美馬純一組が3位に入賞した。
L1-2クラス上位入賞の各選手。

 L1-3クラスは、2台のヤリスCVTによるマッチレースとなったが、波乱の展開となる。SS1、SS2と連続ベストを奪ったのはこのクラス2連覇を狙う富山の南久松奈々/坂井智幸組。約1か月前のJAF中部近畿ラリー選手権でも圧勝した南久松組は、両SSともヤリスMTを駆ったL1-2クラスのトップ2台を凌ぐタイムで上がって順調なスタートを切ったが、その後、側溝にタイヤを落として、まさかのリタイヤとなってしまう。

 トップに繰り上がったのは、このラリーの常連とも言える三重の四日市消化器病センターチームからエントリーした清水恵子/伊藤直美組。 完走すれば優勝が転がり込んでくる形となるが、競技車両をヴィッツからヤリスに変えたこともあり、慣れないマシンを最後まで慎重にゴールまで運び込んで、このラリー初優勝を達成した。

波乱の展開となったL1-3クラスは、清水恵子/伊藤直美組がWOMEN’S RALLY初優勝を獲得した。
「南久松組がリタイヤしているのを見たら一瞬、パニックになってしまって。その後は凄くプレッシャーがかかって、特に笠置山は“ミスコースしたらどうしよう”と、平常心でラリーを進めるのが大変でした。笠置山のパイロンが今年は優しい設定になっていたので助かりました(笑)」という清水/伊藤組。「ただ、二人ともドライバーとしてこのラリーを走った経験があるのが強みでしたし、このラリーやTGRラリーチャレンジで経験を積んで、多少のトラブルなら対処できるようにもなったので、以前よりは落ち着いてラリーに臨めていると思います。今日もプレッシャーがありつつも、2本の林道は楽しく走れました。ちょっと微妙な優勝ですけど(笑)、チームとしても初優勝ですし、素直に喜びたいですね。今後もチームの仲間と一緒に楽しくラリーを続けていければと思っています」とラリーを振り返っていた。
今年、新設のOPENクラスは、行徳聡/大貫明日香組が全SSベストの走りを見せて快勝した。
86/BRZ対決を制したKIZUNA/南武果歩組が2位に入った。
清水啓司/石丸愛組は3位でラリーを終えた。
OPENクラスで上位入賞の各選手。

フォト/遠藤樹弥、山口貴利、JAFスポーツ編集部 レポート/JAFスポーツ編集部

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