2023シーズンWRC開幕! 勝田貴元選手はラリー・モンテカルロを総合6位でフィニッシュ

レポート ラリー

2023年1月27日

2023年のFIA世界ラリー選手権(WRC)が1月19~22日に早くも開幕し、モナコおよびフランスを舞台に第1戦「ラリー・モンテカルロ」が開催された。この伝統の一戦にTOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムに参加中の日本人ドライバー、勝田貴元選手もコ・ドライバーのアーロン・ジョンストン選手とともにエントリー。マシンはGR YARIS Rally1 HYBRIDの2023年モデルで、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(TGR-WRT)の4台目のマシンで参戦した。

2023年FIA世界ラリー選手権 第1戦「ラリー・モンテカルロ」
開催日:2023年1月19~22日
開催地:モナコ・モンテカルロ周辺

 GR YARIS Rally1 HYBRIDの2023年モデルはボディサイドのエアダクトの形状が変更されたが、この点について勝田貴元選手は「おそらくデータ上で見れば空気抵抗がなくなる分、ストレートスピードが伸びていると思うんですけど、ドライビングではあまり影響はしていません」と語る。

 さらに2022年型モデルとの違いについて「ジオメトリーなど内部のアップデートもあって、格段に乗りやすくなってきました。ドライバーの理解度も上がっていますが、次元の違うところにきていて、何か起きたときにも対処しやすいクルマになってきたと思います」と分析。

 WRカーを含めて最高峰モデルで4回目のラリー・モンテカルロに挑む勝田貴元選手は「テストのときからずっとドライで、いいフィーリングでした」と好感触。事実、19日の夕刻にナイトステージとして設定されたSS1でも、勝田貴元選手は4番手タイムをマークするなど、素晴らしい立ち上がりを披露していた。

 しかし「いいスタートを切れたので好位置で戦えると思ったんですけど、SS2のスタートでハンドブレーキにトラブルが発生して、その状態で24.9kmのSSを走行しました。そのSS2が今回のラリーで一番ヘアピンの多いSSだったので、約50秒のタイムロスとなりました」と、勝田貴元選手は同SSを10番手タイムでフィニッシュ。その結果、トップから57秒遅れの総合9番手でデイ1を走り終えた。

 デイ1から浮き沈みを演じることとなった勝田貴元選手だが、「ハンドブレーキのトラブルの原因はすぐに分かって、チームが直してくれたので、2日目からは気持ちよく走れました」と、翌20日のデイ2では安定した走りを披露する。

 勝田貴元選手はこの日のオープニングステージとなるSS3こそ8番手タイムに留まっていたのだが、SS4、SS5、SS6、SS8で4番手タイムをマーク。「この日もドライでフィーリングが良かっただけに、もう一歩タイムを出したいところではあったんですけどね。それでもリスクを取らずにいいペースで走れていました」と、デイ2を総合7番手で終えた。

 21日のデイ3は「SSのキャラクターが変わってインカットできるコーナーが多かったです。そこから泥が出ていたので、ちょっと抑え気味になってしまいました」と語るように、勝田貴元選手は苦戦の展開を強いられる。それでも「ペースが上げられない状態でしたが、最終日まで長いので、ある程度プッシュしながら走りました」とコメント。我慢の走りを見せながらも2度の5番手タイムをマークするなど、持ち前の高い安定性を披露して総合6番手に浮上、デイ3を走り終えた。

 そして22日のデイ4は4本のSSが設定されていたのだが、勝田貴元選手によれば「長いループを1回のタイヤフィッティングで通さないといけないので、タイヤマネジメントが重要でした」と振り返り、難しい構成となっていたことを明かした。

「朝の2本はタイヤの状態とクルマのフィーリングを確認しながら走っていました」と言いつつも、SS15で6番手タイム、SS16で4番手タイムと順調な走りを見せていた勝田貴元選手は「アンダーステアが強かったので、デフのバランスを変えました。同時にタイヤのことを考えながら丁寧に走りました」と、続くSS17で2番手タイムをマーク。尻上がりにペースアップを果たしていた。

 総合5番手につけていたM-SPORT FORD WORLD RALLY TEAMのオィット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ組に対して0.1秒差まで詰め寄ったことから「総合5番手も行けるんじゃないか、ということもあってパワーステージは意気込んで走っていきました」と語っていた勝田貴元選手だが、続くパワーステージとして設定された最終ステージのSS18で予想外のハプニングが発生する。

「5kmぐらいの地点で駆動系のトラブルが発生しました。右コーナーの立ち上がりでリアの駆動が抜けてしまって、左の側面を岩肌にぶつけてしまったんです。左リアのバンパーと足回りを破損したんですけど、そこからスピードが上がらなかったのはデフのトラブルが原因でした」と、勝田貴元選手はSS18をトップから約58秒遅れの22番手タイムでフィニッシュ。

 それでも勝田貴元選手はポジションをキープしながら総合6位で開幕戦を終え、「パワーステージでは最後までプッシュできなかったので残念な結果になりましたが、ラリー・モンテカルロでのパフォーマンスとしては一番高かったと思います」と感想を語る。

 また手応えもつかんでいたようで、前述のとおりSS17で好タイムをマークした際にデフのセッティングを変えていたのだが、同時にドライビングについて「最初から攻めていくと最後でタイヤが垂れてくるので、タイヤを痛めないように丁寧に走ったところタイムも出ました。ドライバーによってタイヤマネジメントに振る選手とフィーリングをキープしたまま走る選手もいると思いますが、それほどタイムに差がなかったので、今後のヒントになるステージになりました」と勝田貴元選手。

「個人的には納得できない部分も多く、とくにインカットの多いステージの走り方に関しては改善していかないと(第4戦)クロアチアも苦労すると思うので反省点を洗い出して復習していきたいです」と、勝田貴元選手は次のターマックラリーを見据えたコメントも。

 こうして開幕戦のラリー・モンテカルロを6位で終えた勝田貴元選手だが、2023年はTGR-WRTのワークスメンバーとして、セバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ組とシートをシェアしながら3台目のマシンで参戦するラウンドと、ワークスノミネートを受けずに4台目のマシンで参戦するラウンドの2パターンでエントリー。

 このエントリー方式について勝田貴元選手は「自分のやるべきことを精一杯やって、ラリー中も自分のパフォーマンスを最大限に発揮することに集中するので、やることはあまり変わらないんですけど、3台目で参戦する場合はチームのポイントを取らないといけないのでプレッシャーはありますし、チームの状況を見ながら自分の役割を果たしていかないといけません。4台目で参戦する場合は自分のトライができると思います。とくに4台目で参戦するイベントは昨年にパフォーマンス不足で悩んだラリーが多いので、自分が足りない部分の改善に注力していきたいと思います」とのことだ。

 さらに2023年のターゲットについて「昨年以上に高いパフォーマンスを発揮することです。ポディウムの回数も昨年以上に獲りたいし、どのラリーでも昨年より高い順位でフィニッシュしたいと思っています。ペースが上がればリスクも上がりますので、リスクマネジメントをして、昨年と同じような安定性を見せながら底上げをしたいですね」

「そうすることで3台目の役割を果たせると思います。3台目をシェアしているオジエ選手が抜けたとき、1人でフルシーズンを戦うためにはどれだけポイントを獲れるのか、どれだけ競争力があるのかが重要になってくると思うので、そこを意識して戦いたいです」と意気込みを語る。

 勝田貴元選手は2月9~12日に開催されるスノーラリーの第2戦「ラリー・スウェーデン」に、ワークスノミネートとして3台目のマシンで参戦する予定で、「ラリー・モンテカルロでトヨタ勢は雪のないステージでテストを行ってきて、それがうまくはまったところが大きいですが、スウェーデンではまた別の展開になる可能性があります。ワークスノミネートもされるので、チームにいい結果を持って帰れるようにしたいです」と語っているだけに、その躍進に期待したい。

 なお、ラリー・モンテカルロではオジエ選手が大会最多勝利記録となる9勝目を獲得したほか、WRC通算56勝目とランデ選手のWRC初優勝をマーク。トヨタとしては通算5回目のラリー・モンテカルロ制覇となった。また、チームメイトでディフェンディングチャンピオンのカッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組が2位につけたことでTGR-WRTが1-2フィニッシュを達成するなど、トヨタ勢の強さが目立つ開幕戦となった。

セバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ組が2023年WRC初戦となるラリー・モンテカルロを制し、幸先の良いスタートを切った。

フォト/TOYOTA GAZOO Racing レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部

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